市民農園整備促進法

法律第四十四号(平二・六・二二)

 (目的)

第一条 この法律は、主として都市の住民のレクリエーション等の用に供するための市民農園の整備を適正かつ円滑に推進するための措置を講ずることにより、健康的でゆとりのある国民生活の確保を図るとともに、良好な都市環境の形成と農村地域の振興に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「農地」とは、耕作の目的に供される土地をいう。

2 この法律において「市民農園」とは、第一号に掲げる農地及び第二号に掲げる施設の総体をいう。

 一 主として都市の住民の利用に供される農地で次のイ又はロのいずれかに該当するもの

  イ 特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律(平成元年法律第五十八号)第二条第二項に規定する特定農地貸付け(第十一条第一項において「特定農地貸付け」という。)の用に供される農地

  ロ 相当数の者を対象として定型的な条件で、レクリエーションその他の営利以外の目的で継続して行われる農作業の用に供される農地(賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利の設定又は移転を伴わないで当該農作業の用に供されるものに限る。)

 二 前号に掲げる農地に附帯して設置される農機具収納施設、休憩施設その他の当該農地の保全又は利用上必要な施設(以下「市民農園施設」という。)

 (基本方針)

第三条 都道府県知事は、当該都道府県の区域内において相当数の市民農園の整備が見込まれる場合において、その適正かつ円滑な整備を図ることが必要であると認めるときは、市民農園の整備に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めるものとする。

2 基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

 一 市民農園の整備の基本的な方向

 二 市民農園として整備すべき区域の設定に関する事項

 三 市民農園施設の設置その他の市民農園の整備に関する事項

 四 市民農園の利用条件その他の市民農園の運営に関する事項

 五 その他必要な事項

3 基本方針は、良好な都市環境の形成及び農村地域の振興に資するように定めるものでなければならない。

4 基本方針は、都市計画及び農業振興地域整備計画との調和が保たれたものでなければならない。

5 都道府県知事は、情勢の推移により必要が生じたときは、基本方針を変更するものとする。

6 都道府県知事は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

 (市民農園区域)

第四条 市町村は、基本方針に基づき、農業委員会の決定を経て、当該市町村の区域内の一定の区域で次に掲げる要件に該当するもの(市街化区域(都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第七条第一項の規定による市街化区域をいう。第七条第一項において同じ。)内にある区域を除く。)を市民農園として整備すべき区域(以下「市民農園区域」という。)として指定することができる。

 一 当該区域内に相当規模の一団の農地が存在し、かつ、その自然的条件及び利用の動向からみて、市民農園として利用することが適当と認められること。

 二 当該区域の位置及び規模からみて、その周辺の地域における農用地(耕作の目的又は主として耕作若しくは養畜の事業のための採草若しくは家畜の放牧の目的に供される土地をいう。次条第三項において同じ。)の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障を生ずるおそれがないこと。

 三 交通施設の整備の状況その他都市の住民の利用上必要な立地条件からみて、市民農園の利用者が相当程度見込まれる区域であること。

2 市町村は、市民農園区域を指定しようとするときは、あらかじめ、都道府県知事の同意を得なければならない。

3 市町村は、市民農園区域を指定したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

4 市町村は、基本方針の変更その他情勢の推移により必要が生じたときは、その指定した市民農園区域を変更するものとする。

5 第二項及び第三項の規定は、前項の規定による市民農園区域の変更について準用する。

 (交換分合)

第五条 市町村は、前条第一項の規定により市民農園区域を指定し、又は同条第四項の規定によりその指定した市民農園区域を変更しようとする場合において、その指定し又は変更しようとする市民農園区域内における土地の保有及び利用の現況、農業経営の動向等からみて当該市民農園区域内にある土地の一部が市民農園以外の用途に供されることが見通されることにより、当該市民農園区域及びその周辺の地域における土地の市民農園としての利用と農業上の利用との調整に留意して当該市民農園区域内にある土地の市民農園としての利用を確保するため特に必要があると認めるときは、当該市民農園区域内にある土地を含む一定の土地に関し交換分合を行うことができる。

2 市町村は、前項の規定により交換分合を行おうとするときは、農林水産省令、建設省令で定めるところにより、交換分合計画を定め、その交換分合計画により交換分合をすべき土地について所有権、地上権、永小作権、質権、賃借権、使用貸借による権利又はその他の使用及び収益を目的とする権利を有する者のすべての同意を得て、都道府県知事の認可を受けなければならない。

3 交換分合計画は、第一項に規定する市民農園区域及びその周辺の地域における土地の市民農園としての利用と農業上の利用との調整に留意して当該市民農園区域内にある土地の市民農園としての利用を確保するとともに、当該市民農園区域内の周辺の地域における農用地の集団化その他農業構造の改善に資するように定めるものでなければならない。

第六条 農業振興地域の整備に関する法律(昭和四十四年法律第五十八号)第十三条の三の規定並びに土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)第九十九条(第一項及び第二項を除く。)、第百一条第二項、第百二条から第百七条まで、第百八条第一項及び第二項、第百九条、第百十条、第百十二条、第百十三条、第百十四条第一項、第百十五条、第百十八条(第二項を除く。)並びに第百二十一条から第百二十三条までの規定は、前条第一項の規定による交換分合について準用する。この場合において、これらの規定の準用について必要な技術的読替えは、政令で定める。

 (市民農園の開設の認定)

第七条 市民農園区域内又は市街化区域(都市計画法第四条第六項に規定する都市計画施設の区域、同条第七項に規定する市街地開発事業の施行区域その他の区域で政令で定めるものを除く。)内において市民農園を開設しようとする者は、農林水産省令、建設省令で定めるところにより、市民農園の整備及び運営に関する計画(以下「整備運営計画」という。)を定め、これを申請書に添えてその所在地を管轄する市町村に提出して、当該市民農園の開設が適当である旨の認定を受けることができる。

2 前項の整備運営計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

 一 市民農園の用に供する土地の所在、地番及び面積

 二 市民農園の用に供する農地の位置及び面積並びに第二条第二項第一号に掲げる農地のいずれに属するかの別

 三 市民農園施設の位置及び規模その他の市民農園施設の整備に関する事項

 四 利用者の募集及び選考の方法

 五 利用期間その他の条件

 六 市民農園の適切な利用を確保するための方法

 七 資金計画

 八 その他農林水産省令、建設省令で定める事項

3 市町村は、第一項の認定の申請があった場合において、その申請が次に掲げる要件に該当すると認めるときは、農業委員会の決定を経て、その認定をするものとする。

 一 整備運営計画の内容が基本方針に適合するものであること。

 二 市民農園の適正かつ円滑な利用を確保する見地からみて、市民農園の用に供する農地及び市民農園施設が適切な位置にあり、かつ、妥当な規模であること。

 三 市民農園の用に供する農地及び市民農園施設の位置及び規模からみて、周辺の道路、下水道等の公共施設の有する機能に支障を生ずるおそれがなく、かつ、周辺の地域における営農条件及び生活環境の確保に支障を生ずるおそれがないものであること。

 四 利用者の募集及び選考の方法が公平かつ適正なものであること。

 五 前項第五号から第八号までに掲げる事項が市民農園の確実な整備及び適正かつ円滑な利用を確保するために有効かつ適切なものであること。

 六 その他政令で定める基準に適合するものであること。

4 市町村は、第一項の規定による認定をしようとするときは、あらかじめ、都道府県知事の同意を得なければならない。

5 第一項の認定を受けた者(以下「認定開設者」という。)は、当該認定に係る整備運営計画を変更しようとするときは、市町村の認定を受けなければならない。

6 第三項及び第四項の規定は、前項の規定による整備運営計画の変更の認定について準用する。

 (報告の徴収)

第八条 市町村長は、認定開設者に対し、市民農園の整備又は運営の状況について報告を求めることができる。

 (勧告)

第九条 市町村長は、設定開設者が認定に係る整備運営計画(第七条第五項の規定による変更の認定があったときは、その変更後のもの。以下「認定計画」という。)に従って市民農園の整備又は運営を行っていないと認めるときは、当該認定開設者に対し、相当の期限を定めて、必要な改善措置をとるべきことを勧告することができる。

 (認定の取消し)

第十条 前条の規定による勧告を受けた認定開設者が当該勧告に従わないときは、市町村は、第七条第一項又は第五項の規定による認定を取り消すことができる。

 (農地法等の特例)

第十一条 第七条第一項又は第五項の規定による認定が第二条第二項第一号イに掲げる農地に係るものである場合には、認定開設者は、当該認定を受けた市民農園に係る特定農地貸付けにつき特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律第三条第三項の承認を受けたものとみなす。

2 認定開設者が認定計画に従って農地を農地以外のものにする場合には、農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)第四条第一項の許可があったものとみなす。

3 認定開設者が認定計画に従って農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地(農地以外の土地で、主として耕作又は養畜の事業のための採草又は家畜の放牧の目的に供されるものをいう。以下この項において同じ。)を採草放牧地以外のもの(農地を除く。)にするためこれらの土地について所有権又は使用及び収益を目的とする権利を取得する場合には、農地法第五条第一項の許可があったものとみなす。

 (都市計画法の特例)

第十二条 認定開設者が認定計画に従って整備する市民農園施設のうち休憩施設である建築物(建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第一号に規定する建築物をいう。以下この条において同じ。)その他の市民農園の適正かつ有効な利用を確保するための建築物で政令で定めるもの(次項において「認定市民農園建築物」という。)の建築(建築基準法第二条第十三号に規定する建築をいう。)の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更であって市街化調整区域(都市計画法第七条第一項の規定による市街化調整区域をいう。次項において同じ。)に係るもの(都市計画法第三十四条各号に掲げる開発行為に該当するものを除く。)は、都市計画法第三十四条の規定の適用については、同条第十号に掲げる開発行為とみなす。

2 都道府県知事又は地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市の長は、市街化調整区域のうち都市計画法第二十九条の規定による許可を受けた同法第四条第十三項に規定する開発区域以外の区域内において、認定市民農園建築物を新築し、又は建築物を改築し、若しくはその用途を変更して認定市民農園建築物とすることについて、同法第四十三条第一項の規定による許可の申請があった場合において、当該申請に係る認定市民農園建築物の新築、改築又は用途の変更が同条第二項の政令で定める許可の基準のうち同法第三十三条に規定する開発許可の基準の例に準じて定められた基準に適合するときは、その許可をしなければならない。

 (市民農園の整備についての配慮)

第十三条 国の行政機関又は地方公共団体の長は、認定計画に従って土地を認定に係る市民農園の用に供するため法律の規定による許可その他の処分を求められたときは、当該市民農園の整備の促進が図られるよう適切な配慮をするものとする。

 (資金の確保等)

第十四条 国及び地方公共団体は、認定計画に従って行われる市民農園の整備に要する経費に充てるために必要な資金の確保又はその融通のあっせんに努めるものとする。

 (援助)

第十五条 国及び地方公共団体は、認定開設者に対し必要な助言、指導その他の援助を行うよう努めるものとする。

 (罰則)

第十六条 第六条において準用する土地改良法第百九条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

第十七条 第八条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二十万円以下の罰金に処する。

第十八条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (農地法の一部改正)

第二条 農地法の一部を次のように改正する。

  第三条第一項第四号中「若しくは集落地域整備法(昭和六十二年法律第六十三号)」を「、集落地域整備法(昭和六十二年法律第六十三号)若しくは市民農園整備促進法(平成二年法律第四十四号)」に改める。

 (農林水産省設置法の一部改正)

第三条 農林水産省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。

  第四条第三十号の次に次の一号を加える。

  三十の二 市民農園整備促進法(平成二年法律第四十四号)の施行に関すること。

 (建設省設置法の一部改正)

第四条 建設省設置法(昭和二十三年法律第百十三号)の一部を次のように改正する。

  第三条第十一号中「及び集落地域整備法(昭和六十二年法律第六十三号)」を「、集落地域整備法(昭和六十二年法律第六十三号)及び市民農園整備促進法(平成二年法律第四十四号)」に改める。

(農林水産・建設・内閣総理大臣署名) 

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