住宅地造成事業に関する法律
法律第百六十号(昭三九・七・九)
目次
第一章 総則(第一条―第三条)
第二章 住宅地造成事業(第四条―第二十条)
第三章 雑則(第二十一条・第二十二条)
第四章 罰則(第二十三条―第二十七条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、人口の集中に伴う住宅用地の需要の著しい都市及びその周辺の地域において相当規模の住宅地の造成に関する事業が行なわれる場合に、当該事業の施行について災害の防止及び環境の整備のため必要な規制を行ない、あわせて、その適正な施行を促進するため必要な事項について規定することにより、良好な住宅地の造成を確保し、もつて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「住宅地の造成」とは、主として住宅建設の用に供する目的で一団の土地について行なう土地の区画形質の変更をいう。
2 この法律において「住宅地造成事業」とは、政令で定める規模以上の一団の土地について行なう住宅地の造成に関する事業をいう。
3 この法律において「事業主」とは、住宅地造成事業に関する工事の請負契約の注文者又は請負契約によらないでみずからその工事をする者をいう。
4 この法律において「工事施行者」とは、住宅地造成事業に関する工事の請負人又は請負契約によらないでみずからその工事をする者をいう。
5 この法律において「施行地区」とは、住宅地造成事業を施行する土地の区域をいう。
6 この法律において「公共施設」とは、道路、下水道その他政令で定める公共の用に供する施設をいう。
(住宅地造成事業規制区域)
第三条 建設大臣は、第一条の目的を達成するため、関係都道府県(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市(以下「指定都市」という。)の区域内の土地については、指定都市。以下第二十二条を除き同じ。)の申出に基づき、第一条に規定する地域内で、かつ、都市計画法(大正八年法律第三十六号)第二条に現定する都市計画区域内の土地の区域を住宅地造成事業規制区域として指定することができる。この場合において、都道府県は、その申出をしようとするときは、あらかじめ、関係市(特別区を含む。以下同じ。)町村の長の意見をきかなければならない。
2 建設大臣は、前項の指定をしようとするときは、あらかじめ、都市計画審議会の意見をきかなければならない。
3 第一項の指定は、建設省令で定めるところにより、官報に告示することによつて行なう。
第二章 住宅地造成事業
(住宅地造成事業の施行の認可)
第四条 住宅地造成事業規制区域(以下「規制区域」という。)内において行なわれる住宅地造成事業については、事業主は、建設省令で定めるところにより、その住宅地造成事業に関する工事(住宅地造成事業のうち次条第二項第二号に規定する空地に関する部分については、当該空地に関する工事)に着手する前に、事業計画及び工事施行者を定め、都道府県知事(指定都市の区域内において行なわれる住宅地造成事業については、指定都市の長。以下第二十条第二項を除き同じ。)の認可を受けなければならない。
(事業計画)
第五条 前条の事業計画においては、建設省令で定めるところにより、施行地区(施行地区を工区に分けるときは、施行地区及び工区)、設計及び資金計画並びに公共施設の管理者及び公共施設の用に供する土地の帰属に関する事項を定めなければならない。
2 事業計画においては、災害を防止し、及び環境の整備を図るため必要な事項が、次の各号に掲げるところに従つて定められていなければならない。
一 道路、下水道その他の施設に関して都市計画が決定されている場合においては、その都市計画に適合していること。
二 道路、広場その他の公共の用に供する空地(消防に必要な水利が充分でない場合に設置する消防の用に供する貯水施設を含む。)が、次に掲げる事項を勘案して、災害の防止上及び通行の安全上支障がないような規模及び構造で適当に配置されていること。この場合において、施行地区内の主要な道路は、施行地区外の相当規模の道路に接続させなければならない。
イ 施行地区の規模、形状及び周辺の状況
ロ 施行地区内の土地の地形及び地盤の性質
ハ 施行地区内に予定される建築物の敷地の規模及び配置
三 排水路その他の排水施設が、次に掲げる事項を勘案して、施行地区内の下水道法(昭和三十三年法律第七十九号)第二条第一号に規定する下水を有効に排出するとともに、その排出によつて施行地区及びその周辺の地域に溢水等による被害が生じないような構造及び能力で適当に配置されていること。
イ 当該地域における降水量
ロ 前号イ及びロに掲げる事項並びに放流先の状況
四 施行地区内の土地が地盤の軟弱な土地、がけくずれ又は出水のおそれが多い土地その他これらに類する土地である場合においては、地盤の改良、擁壁の設置等安全上支障がないように必要な措置が講ぜられていること。
五 施行地区内の土地が宅地造成等規制法(昭和三十六年法律第百九十一号)第三条第一項の宅地造成工事規制区域内の土地である場合においては、工事の計画が、同法第九条の規定に適合していること。
3 この法律に規定するもののほか、事業計画の設定について必要な技術的基準は、建設省令(その建設省令で都道府県の規則に委任した事項に関しては、その規則を含む。)で定める。
(設計者の資格)
第六条 規制区域内において行なわれる住宅地造成事業に関する工事のうち建設省令(前条第三項の建設省令で都道府県の規則に委任した事項に関しては、その規則を含む。)で定めるものの設計図書(工事を実施するため必要な図面(現寸図その他これに類するものを除く。)及び仕様書をいう。)は、建設省令で定める資格を有する者の作成したものでなければならない。
(公共施設の管理者の同意等)
第七条 第四条の認可を申請しようとする者は、あらかじめ、事業計画に関係がある公共施設の管理者及び施行地区となるべき土地の区域内の土地又はその土地にある工作物につき当該住宅地造成事業の施行の妨げとなる権利を有する者の同意を得、かつ、当該住宅地造成事業により設置される公共施設を管理することとなる者に協議しなければならない。
(認可の基準等)
第八条 都道府県知事は、次の各号のいずれにも該当しないと認める場合でなければ、第四条の認可をしてはならない。
一 事業計画の内容が、この法律又はこの法律に基づく命令に違反しているとき。
二 施行地区内に建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第三十九条第一項の災害危険区域、同法第四十八条第一項の工業地域、地すべり等防止法(昭和三十三年法律第三十号)第三条第一項の地すべり防止区域その他政令で定める住宅地の造成を行なうのに適当でない区域内の土地が含まれているとき。ただし、施行地区及びその周辺の地域の状況等により支障がないと認められる場合を除く。
三 事業主に当該住宅地造成事業を遂行するため必要な資力及び信用がないとき。
四 工事施行者に当該住宅地造成事業に関する工事を完成するため必要な能力がないとき。
2 都道府県知事は、第四条の認可に、住宅地造成事業の適正な施行を確保し、並びに当該住宅地造成事業を廃止する場合に工事によつてそこなわれた公共施設の機能を回復し、及び工事によつて生ずる災害を防止するため必要な条件を附することができる。この場合において、その条件は、当該認可を受けた者に不当な義務を課するものであつてはならない。
(認可又は不認可の通知)
第九条 都道府県知事は、第四条の認可の申請があつた場合においては、遅滞なく、認可又は不認可の処分をしなければならない。
2 前項の処分をするには、文書をもつて当該申請者に通知しなければならない。この場合において、不認可の処分をするときは、その理由をあわせて通知しなければならない。
(事業計画等の変更)
第十条 事業主は、事業計画又は工事施行者を変更しようとする場合においては、建設省令で定めるところにより、都道府県知事の認可を受けなければならない。ただし、建設省令で定める事業計画の軽微な変更をしようとする場合においては、この限りでない。
2 第七条から前条までの規定は、前項の認可について準用する。
(認可の承継)
第十一条 第四条の認可を受けた事業主について相続又は合併があつた場合においては、相続人又は合併後存続する法人若しくは合併により設立した法人は、その認可による事業主の地位を承継する。
2 前項の規定により事業主の地位を承継した者は、遅滞なく、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
(工事完了の検査等)
第十二条 事業主は、第四条の認可を受けた住宅地造成事業の施行地区(施行地区を工区に分けたときは、工区。以下この条において同じ。)の全部について工事を完了した場合においては、遅滞なく、建設省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
2 都道府県知事は、前項の届出があつた場合においては、遅滞なく、その工事が事業計画に適合しているかどうかについて検査し、その検査の結果工事が事業計画に適合していると認めたときは、建設省令で定める様式の検査済証を事業主に交付しなければならない。
3 都道府県知事は、前項の規定により検査済証を交付した場合においては、遅滞なく、建設省令で定めるところにより、当該施行地区について工事が完了した旨を公告しなければならない。
(建築制限)
第十三条 第四条の認可を受けた住宅地造成事業の施行地区内の土地においては、前条第三項の公告があるまでの間は、建築物を建築してはならない。ただし、次の各号の一に該当する場合は、この限りでない。
一 当該住宅地造成事業に関する工事用の仮設建築物を建築するとき、その他都道府県知事が支障がないと認めたとき。
二 事業主及び第七条(第十条第二項において準用する場合を含む。)の規定による同意をした者以外の者が権原に基づき建築物を建築するとき。
(住宅地造成事業の施行により設置された公共施設の管理)
第十四条 第四条の認可を受けた住宅地造成事業の施行により公共施設が設置された場合においては、その公共施設は、第十二条第三項の公告の日の翌日において、その公共施設の存する市町村の管理に属する。ただし、他の法律に基づく管理者が別にあるとき、又は事業計画に特に管理者の定めがあるときは、それらの者の管理に属するものとする。
(公共施設の用に供する土地の帰属)
第十五条 第四条の認可を受けた住宅地造成事業の施行により、従前の公共施設に代えて新たな公共施設が設置されることとなる場合においては、従前の公共施設の用に供していた土地で国又は地方公共団体が所有するものは、第十二条第三項の公告の日の翌日において事業計画で定める施行地区内の土地の所有者に帰属するものとし、これに代わるものとして事業計画で定める新たな公共施設の用に供する土地は、その日において、それぞれ国又は当該地方公共団体に帰属するものとする。
2 第四条の認可を受けた住宅地造成事業の施行により設置された公共施設の用に供する土地は、前項に規定するもの及び事業計画で特別の定めをしたものを除き、第十二条第三項の公告の日の翌日において、当該公共施設の管理者(その者が、国の機関であるときは国、地方公共団体の機関であるときは当該地方公共団体)に帰属するものとする。
(住宅地造成事業の廃止)
第十六条 第四条の認可を受けた住宅地造成事業を廃止した者は、遅滞なく、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
(事業主等に対する監督)
第十七条 都道府県知事は、規制区域内において施行されている住宅地造成事業で、第四条若しくは第十条第一項の規定に違反して認可を受けず、それらの規定による認可に附した条件に違反し、若しくはそれらの規定による認可を受けた事業計画に従つていないもの又は第十三条の規定に違反する建築工事については、当該事業主若しくは事業主であつた者、当該建築主(建築工事の請負契約の注文者又は請負契約によらないでみずからその工事をする者をいう。以下この項において同じ。)若しくは建築主であつた者又は当該工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者に対して、当該工事の停止を命じ、又は相当の猶予期限をつけて、違反を是正するため必要な措置をとることを命ずることができる。
2 都道府県知事は、前項の規定により処分をし、又は必要な措置をとることを命じようとする場合においては、あらかじめ、当該処分をし、又は当該措置をとることを命ずべき者について聴聞を行なわなければならない。
(立入検査)
第十八条 都道府県知事又はその命じた者若しくは委任した者は、第四条、第十条第一項、第十二条第二項又は前条第一項の規定による権限を行なうため必要がある場合においては、当該土地に立ち入り、当該土地又は当該土地において行なわれている工事の状況を検査することができる。
2 前項の規定により他人の土地に立ち入ろうとする者は、その身分を示す証明書を携帯しなければならない。
3 前項に規定する証明書は、関係人の請求があつた場合においては、これを提示しなければならない。
4 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(報告、勧告等)
第十九条 都道府県知事は、事業主又は工事施行者に対し、住宅地造成事業に関し、この法律の施行のため必要な限度において、報告若しくは資料の提出を求め、又は必要な勧告をすることができる。
(国及び地方公共団体の援助等)
第二十条 国及び地方公共団体は、良好な住宅地の造成を促進するため、第四条の認可を受けた事業主に対し、必要な技術上の助言又は資金上その他の援助に努めるものとする。
2 農林大臣又は都道府県知事は、施行地区内の農地又は採草放牧地を第四条の認可を受けた住宅地造成事業の用に供するため農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)の規定による許可を求められた場合においては、当該住宅地造成事業が促進されるよう配慮するものとする。
第三章 雑則
(手数料)
第二十一条 第四条又は第十条第一項の認可の申請をしようとする者は、十万円をこえない金額の範囲内において政令で定める額の手数料を都道府県に納めなければならない。
(適用の除外)
第二十二条 この法律の規定は、国又は都道府県(指定都市の区域内においては、指定都市を含む。)の行なう住宅地造成事業、一団地の住宅経営に関する都市計画事業、新住宅市街地開発事業その他政令で定める事業については、適用しない。
第四章 罰則
第二十三条 第十七条第一項の規定による都道府県知事の命令に違反した者は、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
第二十四条 次の各号の一に該当する者は、十万円以下の罰金に処する。
一 第四条の規定に違反した事業主
二 第十八条第一項の規定による立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
第二十五条 第十九条の規定による報告又は資料の提出を求められて、報告若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出をした事業主又は工事施行者は、五万円以下の罰金に処する。
第二十六条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務又は財産に関して前三条の違反行為をした場合においては、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。
第二十七条 第十一条第二項又は第十六条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、一万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して三月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
(建設省設置法の一部改正)
2 建設省設置法(昭和二十三年法律第百十三号)の一部を次のように改正する。
第三条第二十二号の五の次に次の一号を加える。
二十二の六 住宅地造成事業に関する法律(昭和三十九年法律第百六十号)の施行に関する事務を管理すること。
第四条第七項中「第二十三号から」を「第二十二号の六から」に改める。
(建築基準法の一部改正)
3 建築基準法の一部を次のように改正する。
第四十二条第一項第二号中「又は土地区画整理法(昭和二十九年法律第百十九号)」を「、土地区画整理法(昭和二十九年法律第百十九号)又は住宅地造成事業に関する法律(昭和三十九年法律第百六十号)」に、同項第五号中「又は土地区画整理法」を「、土地区画整理法又は住宅地造成事業に関する法律」に改める。
(宅地造成等規制法の一部改正)
4 宅地造成等規制法の一部を次のように改正する。
第八条に次の一項を加える。
4 第一項の工事を含む住宅地造成事業に関する法律(昭和三十九年法律第百六十号)第二条第二項に規定する住宅地造成事業について同法第四条又は第十条第一項の認可があつたときは、当該工事について第一項の許可があつたものとみなす。
第十二条に次の一項を加える。
3 第八条第四項に規定する住宅地造成事業について住宅地造成事業に関する法律第十二条第二項の検査があつたときは、当該工事について第一項の検査があつたものとみなす。この場合においては、前項の規定は、適用しない。
(大蔵・農林・建設・自治・内閣総理大臣署名)