下水道法
法律第七十九号(昭三三・四・二四)
目次
第一章 総則(第一条・第二条)
第二章 公共下水道(第三条―第二十五条)
第三章 都市下水路(第二十六条―第三十一条)
第四章 雑則(第三十二条―第四十四条)
第五章 罰則(第四十五条―第四十八条)
附則
第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、公共下水道及び都市下水路の設置その他の管理の基準等を定めて、下水道の整備を図り、もつて都市の健全な発達及び公衆衛生の向上に寄与することを目的とする。
(用語の定義)
第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 下水 生活若しくは事業(耕作の事業を除く。)に起因し、若しくは附随する廃水(以下「汚水」という。)又は雨水をいう。
二 下水道 下水を排除するために設けられる排水管、排水渠その他の排水施設(かんがい排水施設を除く。)、これに接続して下水を処理するために設けられる処理施設(屎尿浄化槽を除く。)又はこれらの施設を補完するために設けられるポンプ施設その他の施設の総体をいう。
三 公共下水道 主として市街地における下水を排除し、又は処理するために地方公共団体が設置する下水道で、下水を排除すべき区域が政令で定める規模以上のもの又は終末処理場を有するものであり、かつ、汚水を排除すべき排水施設の相当部分が暗渠である構造のものをいう。
四 都市下水路 主として市街地における下水を排除するために地方公共団体が管理している下水道(公共下水道を除く。)で、その規模が政令で定める規模以上のものであり、かつ、当該地方公共団体が第二十七条の規定により指定したものをいう。
五 終末処理場 屎尿を含む下水を最終的に処理して河川その他の公共の水域又は海域に放流するために下水道の施設として設けられる処理施設及びこれを補完する施設をいう。
六 排水区域 公共下水道により下水を排除することができる地域で、第九条第一項の規定により公示された区域をいう。
七 処理区域 排水区域のうち排除された下水を終末処理場により処理することができる地域で、第九条第二項において準用する同条第一項の規定により公示された区域をいう。
第二章 公共下水道
(管理)
第三条 公共下水道の設置、改築、修繕、維持その他の管理は、市町村が行うものとする。
2 前項の規定にかかわらず、都道府県は、二以上の市町村が受益し、かつ、関係市町村のみでは設置することが困難であると認められる場合においては、関係市町村と協議して、当該公共下水道の設置、改築、修繕、維持その他の管理を行うことができる。この場合において、関係市町村が協議に応じようとするときは、あらかじめその議会の議決を経なければならない。
(事業計画の認可)
第四条 前条の規定により公共下水道を管理する者(以下「公共下水道管理者」という。)は、公共下水道を設置しようとするときは、あらかじめ、政令で定めるところにより、事業計画を定め、主務大臣の認可を受けなければならない。認可を受けた事業計画の変更(政令で定める軽微な変更を除く。)をしようとするときも、同様とする。
(事業計画に定めるべき事項)
第五条 前条の事業計画においては、次の各号に掲げる事項を定めなければならない。
一 排水施設(これを補完する施設を含む。)の配置、構造及び能力並びに予定排水区域
二 終末処理場を設ける場合には、その配置、構造及び能力並びに予定処理区域
三 終末処理場以外の処理施設(これを補完する施設を含む。)を設ける場合には、その配置、構造及び能力
四 工事の着手及び完成の予定年月日
2 前項の事業計画の記載方法その他その記載に関し必要な事項は、主務省令で定める。
(認可基準)
第六条 主務大臣は、第四条の認可をしようとするときは、事業計画が次の基準に適合しているかどうかを審査して、これをしなければならない。
一 公共下水道の配置及び能力が当該地域における降水量、人口その他の下水の量及び水質に影響を及ぼすおそれのある要因、地形及び土地の用途並びに下水の放流先の状況を考慮して適切に定められていること。
二 公共下水道の構造が次条の技術上の基準に適合していること。
三 予定排水区域又は予定処理区域が排水施設又は終末処理場の配置及び能力に相応していること。
四 当該地域に関し都市計画法(大正八年法律第三十六号)第三条の規定により都市計画又は都市計画事業が決定されている場合には、公共下水道の配置及び工事の時期がその都市計画又は都市計画事業に適合していること。
(構造の基準)
第七条 公共下水道の構造は、政令で定める技術上の基準に適合するものでなければならない。
(放流水の水質の基準)
第八条 公共下水道から河川その他の公共の水域又は海域に放流される水(以下「放流水」という。)の水質は、政令で定める技術上の基準に適合するものでなければならない。
(供用開始の公示等)
第九条 公共下水道管理者は、公共下水道の供用を開始しようとするときは、あらかじめ、供用を開始すべき年月日、下水を排除すべき区域その他主務省令で定める事項を公示し、かつ、これを表示した図面を当該公共下水道管理者である地方公共団体の事務所において一般の縦覧に供しなければならない。公示した事項を変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の規定は、公共下水道管理者が終末処理場による下水の処理を開始しようとする場合に準用する。この場合において、同項中「供用を開始すべき年月日」とあるのは「下水の処理を開始すべき年月日」と、「下水を排除すべき区域」とあるのは「下水を処理すべき区域」と読み替えるものとする。
(排水設備の設置等)
第十条 公共下水道の供用が開始された場合においては、当該公共下水道の排水区域内の土地の所有者、使用者又は占有者は、遅滞なく、次の区分に従つて、その土地の下水を公共下水道に流入させるために必要な排水管、排水渠その他の排水施設(以下「排水設備」という。)を設置しなければならない。ただし、特別の事情により公共下水道管理者の許可を受けた場合その他政令で定める場合においては、この限りでない。
一 建築物の敷地である土地にあつては、当該建築物の所有者
二 建築物の敷地でない土地(次号に規定する土地を除く。)にあつては、当該土地の所有者
三 道路(道路法(昭和二十七年法律第百八十号)による道路をいう。)その他の公共施設(建築物を除く。)の敷地である土地にあつては、当該公共施設を管理すべき者
2 前項の規定により設置された排水設備の改築又は修繕は、同項の規定によりこれを設置すべき者が行うものとし、その清掃その他の維持は、当該土地の占有者(前項第三号の土地にあつては、当該公共施設を管理すべき者)が行うものとする。
3 第一項の排水設備の設置又は構造については、建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)その他の法令の規定の適用がある場合においてはそれらの法令の規定によるほか、政令で定める技術上の基準によらなければならない。
(排水に関する受忍義務等)
第十一条 前条第一項の規定により排水設備を設置しなければならない者は、他人の土地又は排水設備を使用しなければ下水を公共下水道に流入させることが困難であるときは、他人の土地に排水設備を設置し、又は他人の設置した排水設備を使用することができる。この場合においては、他人の土地又は排水設備にとつて最も損害の少い場所又は箇所及び方法を選ばなければならない。
2 前項の規定により他人の排水設備を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない。
3 第一項の規定により他人の土地に排水設備を設置することができる者又は前条第二項の規定により当該排水設備の維持をしなければならない者は、当該排水設備の設置、改築若しくは修繕又は維持をするためやむを得ない必要があるときは、他人の土地を使用することができる。この場合においては、あらかじめその旨を当該土地の占有者に告げなければならない。
4 前項の規定により他人の土地を使用した者は、当該使用により他人に損失を与えた場合においては、その者に対し、通常生ずべき損失を補償しなければならない。
(除害施設の設置等)
第十二条 公共下水道管理者は、次の各号に掲げる水質の下水を排除し、継続して公共下水道を使用する者に対し、政令で定める基準に従い、条例で、当該下水による障害を除去するために必要な施設(以下「除害施設」という。)を設け、又は必要な措置をしなければならない旨を定めることができる。
一 著しく公共下水道の施設の機能を妨げ、又は公共下水道の施設を損傷するおそれのある下水
二 多量の有毒物質を含む下水その他放流水の水質を第八条の技術上の基準に適合させることを著しく困難にするおそれのある下水
2 前項の条例は、公共下水道の機能及び、構造を保全し、又は放流水の水質を第八条の技術上の基準に適合させるために必要な最小限度のものであり、かつ、公共下水道を使用する者に不当な義務を課することとならないものでなければならない。
(排水設備等の検査)
第十三条 公共下水道管理者は、日出後日没前に限り、その職員をして排水区域内の他人の土地又は建築物に立ち入り、排水設備又は除害施設を検査させることができる。ただし、人の看守し、若しくは人の住居に使用する建築物又は閉鎖された門内に立ち入るときは、その看守者、居住者又はこれらに代るべき者の承諾を得なければならない。
2 前項の規定により、検査を行う職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
(使用制限)
第十四条 公共下水道管理者は、公共下水道に関する工事の施行その他やむを得ない理由がある場合には、排水区域の全部又は一部の区域を指定して、当該公共下水道の使用を一時制限することができる。
2 公共下水道管理者は、前項の規定により公共下水道の使用を制限しようとするときは、使用を制限しようとする区域及び期間並びに時間制限をする場合にあつてはその時間をあらかじめ関係者に周知させる措置を講じなければならない。
(兼用工作物の工事)
第十五条 公共下水道管理者は、公共下水道の施設が道路、堤防その他の公共の用に供する施設又は工作物(以下これらを「他の工作物」という。)の効用を兼ねるときは、当該他の工作物の管理者との協議により、その者に当該公共下水道の施設に関する工事を施行させ、又は当該公共下水道の施設を維持させることができる。
(公共下水道管理者以外の者の行う工事等)
第十六条 公共下水道管理者以外の者は、公共下水道管理者の承認を受けて、公共下水道の施設に関する工事又は公共下水道の施設の維持を行うことができる。ただし、公共下水道の施設の維持で政令で定める軽微なものについては、承認を受けることを要しない。
(兼用工作物の費用)
第十七条 公共下水道の施設が他の工作物の効用を兼ねるときは、当該公共下水道の施設の管理に要する費用の負担については、公共下水道管理者と当該他の工作物の管理者とが協議して定めるものとする。
(損傷負担金)
第十八条 公共下水道管理者は、公共下水道の施設を損傷した行為により必要を生じた公共下水道の施設に関する工事に要する費用については、その必要を生じた限度において、その行為をした者にその全部又は一部を負担させることができる。
(工事負担金)
第十九条 公共下水道管理者は、政令で定めるところにより算出した量以上の下水を排除することができる排水設備が設けられることにより、公共下水道の改築を行うことが必要となつたときは、その必要を生じた限度において、当該工事に要する費用の一部を当該排水設備を設ける者に負担させることができる。
(使用料)
第二十条 公共下水道管理者は、条例で定めるところにより、公共下水道を使用する者から使用料を徴収することができる。
2 使用料は、次の原則によつて定めなければならない。
一 使用者の使用の態様に応じて妥当なものであること。
二 能率的な管理の下における適正な原価をこえないものであること。
三 定率又は定額をもつて明確に定められていること。
四 特定の使用者に対し不当な差別的取扱をするものでないこと。
(放流水の水質検査等)
第二十一条 公共下水道管理者は、政令で定めるところにより、放流水の水質検査を行い、その結果を記録しておかなければならない。
2 公共下水道管理者は、政令で定めるところにより、終末処理場の維持管理をしなければならない。
(設計及び工事の監督管理)
第二十二条 公共下水道管理者は、公共下水道を設置し、又は改築する場合(政令で定める場合を除く。)においては、その設計(その者の責任において設計図書を作成することをいう。)又はその工事の監督管理(その者の責任において工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかどうかを確認することをいう。)については、政令で定める資格を有する者以外の者に行わせてはならない。
(公共下水道台帳)
第二十三条 公共下水道管理者は、その管理する公共下水道の台帳(以下「公共下水道台帳」という。)を調製し、これを保管しなければならない。
2 公共下水道台帳の記載事項その他その調製及び保管に関し必要な事項は、主務省令で定める。
3 公共下水道管理者は、公共下水道台帳の閲覧を求められた場合においては、これを拒むことができない。
(行為の制限等)
第二十四条 次に掲げる行為(政令で定める軽微な行為を除く。)をしようとする者は、条例で定めるところにより、公共下水道管理者の許可を受けなければならない。許可を受けた事項の変更(条例で定める軽微な変更を除く。)をしようとするときも、同様とする。
一 公共下水道の排水施設の開渠である構造の部分に固着し、若しくは突出し、又はこれを横断し、若しくは縦断して施設又は工作物その他の物件を設けること(第十条第一項の規定により排水設備を当該部分に固着して設ける場合を除く。)。
二 公共下水道の排水施設の開渠である構造の部分の地下に施設又は工作物その他の物件を設けること。
三 公共下水道の排水施設の暗渠である構造の部分に固着して排水施設を設けること(第十条第一項の規定により排水設備を設ける場合を除く。)。
2 公共下水道管理者は、前項の許可の申請があつた場合において、その申請に係る事項が必要やむを得ないものであり、かつ、政令で定める技術上の基準に適合するものであるときは、これを許可しなければならない。
3 公共下水道管理者は、公共下水道の排水施設の暗渠である構造の部分には、排水施設を固着して設ける場合又はあらかじめ他の施設若しくは工作物その他の物件の管理者と協議して共用の暗渠を設ける場合を除き、何人に対しても、いかなる施設又は工作物その他の物件も設けさせてはならない。
(条例で規定する事項)
第二十五条 この法律又はこの法律に基く命令で定めるもののほか、公共下水道の設置その他の管理に関し必要な事項は、公共下水道管理者である地方公共団体の条例で定める。
第三章 都市下水路
(管理)
第二十六条 都市下水路の設置、改築、修繕、維持その他の管理は、市町村が行うものとする。
2 前項の規定にかかわらず、都道府県は、二以上の市町村が受益し、かつ、関係市町村のみでは管理することが困難であると認められる場合においては、関係市町村と協議して、当該都市下水路の設置、改築、修繕、維持その他の管理を行うことができる。この場合において、関係市町村が協議に応じようとするときは、あらかじめその議会の議決を経なければならない。
(指定)
第二十七条 前条の規定により都市下水路を管理する者(以下「都市下水路管理者」という。)は、下水道を都市下水路として指定するときは、都市下水路となるべき下水道の区域を公示し、かつ、これを表示した図面を当該都市下水路管理者である地方公共団体の事務所において一般の縦覧に供しなければならない。公示した事項を変更するときも、同様とする。
2 都市下水路管理者は、前項の指定をしようとする場合において、当該指定に係る区域の全部又は一部がかんがい排水施設の用を兼ねているときは、あらかじめ当該指定に関係のある土地改良区(土地改良区の存しない地域にあつては、農業協同組合その他の水利関係団体)の意見をきかなければならない。
(管理の基準等)
第二十八条 都市下水路管理者は、当該都市下水路の機能を十分に維持するように管理しなければならない。
2 都市下水路の構造及び維持管理に関して必要な技術上の基準は、政令で定める。
(行為の制限等)
第二十九条 次に掲げる行為(政令で定める軽微な行為を除く。)をしようとする者は、条例で定めるところにより、都市下水路管理者の許可を受けなければならない。許可を受けた事項の変更(条例で定める軽微な変更を除く。)をしようとするときも、同様とする。
一 都市下水路に固着し、若しくは突出し、又はこれを横断し、若しくは縦断して施設又は工作物その他の物件を設けること。
二 都市下水路の地下に施設又は工作物その他の物件を設けること。
2 都市下水路管理者は、前項の許可の申請があつた場合において、その申請に係る事項が必要やむを得ないものであり、かつ、政令で定める技術上の基準に適合するものであるときは、これを許可しなければならない。
3 都市下水路の指定の際現に当該都市下水路に関し、権原に基き、第一項各号に規定する施設又は工作物その他の物件を設けている者(工事中の者を含む。)は、従前と同様の条件により、当該施設又は工作物その他の物件の設置について同項の許可を受けたものとみなす。
(都市下水路に接続する特定排水施設の構造)
第三十条 次に掲げる事業所の当該都市下水路に接続する排水施設の構造は、建築基準法その他の法令の規定の適用がある場合においてはそれらの法令の規定によるほか、政令で定める技術上の基準によらなければならない。
一 工場その他の事業所(一団地の住宅経営、社宅その他これらに類する施設を含む。以下この条において同じ。)で政令で定める量以上の下水を同一都市下水路に排除するもの
二 工場その他の事業所で政令で定める水質の下水を政令で定める量以上に同一都市下水路に排除するもの
2 前項の規定は、都市下水路の指定の際現に当該都市下水路に接続する排水施設については、同項の事業所について政令で定める大規模な増築又は改築をする場合を除き、適用しない。
(準用規定)
第三十一条 第十五条から第十八条まで、第二十三条及び第二十五条の規定は、都市下水路について準用する。この場合において、これらの規定中「公共下水道管理者」とあるのは「都市下水路管理者」と、「公共下水道」とあるのは「都市下水路」と、第二十三条中「公共下水道台帳」とあるのは「都市下水路台帳」と読み替えるものとする。
第四章 雑則
(他人の土地の立入又は一時使用)
第三十二条 公共下水道管理者若しくは都市下水路管理者又はその命じた者若しくは委任を受けた者は、公共下水道又は都市下水路に関する調査、測量若しくは工事又は公共下水道若しくは都市下水路の維持のためやむを得ない必要があるときは、他人の土地に立ち入り、又は特別の用途のない他人の土地を材料置場若しくは作業場として一時使用することができる。
2 前項の規定により他人の土地に立ち入ろうとするときは、あらかじめ当該土地の占有者にその旨を通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難であるときは、この限りでない。
3 第一項の規定により宅地又はかき、さく等で囲まれた土地に立ち入ろうとするときは、立入の際あらかじめその旨を当該土地の占有者に告げなければならない。
4 日出前又は日没後においては、占有者の承諾があつた場合を除き、前項に規定する土地に立ち入つてはならない。
5 第一項の規定により他人の土地に立ち入ろうとする者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
6 第一項の規定により特別の用途のない他人の土地を材料置場又は作業場として一時使用しようとするときは、あらかじめ、当該土地の占有者及び所有者に通知して、その者の意見をきかなければならない。
7 土地の占有者又は所有者は、正当な理由がない限り、第一項の規定による立入又は一時使用を拒み、又は妨げてはならない。
8 公共下水道管理者又は都市下水路管理者は、第一項の規定による立入又は一時使用によつて損失を受けた者に対し、通常生ずべき損失を補償しなければならない。
9 前項の規定による損失の補償については、公共下水道管理者又は都市下水路管理者と損失を受けた者とが協議しなければならない。
10 前項の協議が成立しないときは、公共下水道管理者又は都市下水路管理者は、自己の見積つた金額を損失を受けた者に支払わなければならない。この場合において、当該金額について不服がある者は、政令で定めるところにより、補償金額の支払を受けた日から三十日以内に収用委員会に土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第九十四条の規定による裁決を申請することができる。
(許可又は承認の条件)
第三十三条 この法律の規定による許可又は承認には、条件を附することができる。
2 前項の条件は、許可又は承認に係る事項の確実な実施を図るため必要な最小限度のものに限り、かつ、許可又は承認を受けた者に不当な義務を課することとならないものでなければならない。
(公共下水道及び都市下水路に関する費用の補助)
第三十四条 国は、公共下水道又は都市下水路の設置若しくは改築又は災害の復旧を行う地方公共団体に対し、予算の範囲内において、政令で定めるところにより、その設置若しくは改築又は災害の復旧に要する費用の一部を補助することができる。
(公共下水道に関する資金の融通)
第三十五条 国は、公共下水道の設置又は改築を行う地方公共団体に対し、これに必要な資金の融通に努めるものとする。
(国有地の無償貸付等)
第三十六条 普通財産である国有地は、公共下水道又は都市下水路の用に供する場合においては、国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)第二十二条又は第二十八条の規定にかかわらず、当該公共下水道管理者又は都市下水路管理者である地方公共団体に無償で貸し付け、又は譲与することができる。
(主務大臣の工事に関する監督等)
第三十七条 主務大臣は、公共下水道管理者のする工事が次の各号の一に該当する場合においては、当該公共下水道管理者に対し、その工事の中止、変更その他の必要な措置を命ずることができる。
一 第四条の認可を受けないで公共下水道に関する工事を施行する場合
二 第四条の認可を受けた事業計画に違反して公共下水道に関する工事を施行する場合
2 主務大臣は、公共下水道又は都市下水路の構造が第七条又は第二十八条第二項の技術上の基準に適合していない場合においては、当該公共下水道管理者又は都市下水路管理者に対し、期間を定めて、当該公共下水道又は都市下水路を改善すべき旨を命ずることができる。
(公共下水道管理者又は都市下水路管理者の監督処分等)
第三十八条 公共下水道管理者又は都市下水路管理者は、次の各号の一に該当する者に対し、この法律の規定によつてした許可若しくは承認を取り消し、若しくはその条件を変更し、又は行為若しくは工事の中止、変更その他の必要な措置を命ずることができる。
一 この法律又はこの法律に基く命令の規定に違反している者
二 この法律の規定による許可又は承認に附した条件に違反している者
三 偽りその他不正な手段により、この法律の規定による許可又は承認を受けた者
2 公共下水道管理者又は都市下水路管理者は、次の各号の一に該当する場合においては、この法律の規定による許可又は承認を受けた者に対し、前項に規定する処分をし、又は同項に規定する必要な措置を命ずることができる。
一 公共下水道又は都市下水路に関する工事のためやむを得ない必要が生じた場合
二 公共下水道又は都市下水路の保全上又は一般の利用上著しい支障が生じた場合
三 前二号に掲げる場合のほか、公共下水道又は都市下水路の管理上の理由以外の理由に基く公益上やむを得ない必要が生じた場合
3 公共下水道管理者又は都市下水路管理者は、前二項の規定により、処分をし、又は必要な措置を命じようとするときは、あらかじめ当該処分をされ、又は当該措置を命ぜられるべき者について聴聞を行わなければならない。ただし、その者が聴聞に応じないとき、又は緊急やむを得ないときは、この限りでない。
4 第一項又は第二項の規定により必要な措置を命じようとする場合において、過失がなくてその措置を命ぜられるべき者を確知することができないときは、公共下水道管理者又は都市下水路管理者は、その措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者に行わせることができる。この場合においては、相当の期限を定めて、その措置を行うべき旨及びその期限までにその措置を行わないときは、公共下水道管理者若しくは都市下水路管理者又はその命じた者若しくは委任した者がその措置を行うべき旨をあらかじめ公示しなければならない。
5 公共下水道管理者又は都市下水路管理者は、第二項の規定による処分又は命令により損失を受けた者に対し、通常生ずべき損失を補償しなければならない。
6 第三十二条第九項及び第十項の規定は、前項の補償について準用する。
7 公共下水道管理者又は都市下水路管理者は、第五項の規定による補償の原因となつた損失が第二項第三号の規定による処分又は命令によるものであるときは、当該補償金額を当該理由を生じさせた者に負担させることができる。
(報告の徴収)
第三十九条 主務大臣は、この法律を施行するため必要な限度において、公共下水道管理者又は都市下水路管理者から必要な報告を徴することができる。
(権限の委任)
第四十条 この法律の規定により主務大臣の権限に属する事項は、政令で定めるところにより、その一部を都道府県知事に委任することができる。
(国等の特例)
第四十一条 国又は地方公共団体が第二十四条第一項又は第二十九条第一項に規定する行為をしようとするときは、これらの規定にかかわらず、公共下水道管理者又は都市下水路管理者とあらかじめ協議することをもつて足りる。
(特別区に関する読替)
第四十二条 特別区の存する区域においては、この法律中「市町村」とあるのは、「都」と読み替えるものとする。
(異議の申立)
第四十三条 この法律の規定により公共下水道管理者又は都市下水路管理者がした処分について不服のある者は、当該処分のあつた日から三十日以内に、当該処分をした公共下水道管理者又は都市下水路管理者である地方公共団体の長に異議の申立をすることができる。
2 前項の異議の申立があつたときは、公共下水道管理者又は都市下水路管理者である地方公共団体の長は、申立を受理した日から三十日以内に、文書をもつて決定しなければならない。
3 訴願法(明治二十三年法律第百五号)第十二条の規定は、第一項の異議の申立について準用する。
(主務大臣)
第四十四条 この法律において主務大臣は、建設大臣(終末処理場に関する事項については、厚生大臣)とする。
2 この法律において主務省令は、厚生省令、建設省令とする。
第五章 罰則
第四十五条 公共下水道又は都市下水路の施設を損壊し、その他公共下水道又は都市下水路の施設の機能に障害を与えて下水の排除を妨害した者は、五年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
2 みだりに公共下水道又は都市下水路の施設を操作し、よつて下水の排除を妨害した者は、五万円以下の罰金に処する。
第四十六条 第三十二条第七項の規定に違反して土地の立入又は一時使用を拒み、又は妨げた者は、六月以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
第四十七条 第三十八条第一項又は第二項の規定による公共下水道管理者又は都市下水路管理者の命令に違反した者は、二十万円以下の罰金に処する。
第四十八条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一年をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
(下水道法の廃止)
第二条 下水道法(明治三十三年法律第三十二号。以下「旧法」という。)は、廃止する。
(公共下水道に関する経過措置)
第三条 この法律(以下「新法」という。)の施行前に市町村が旧法第二条の規定による認可を受けて築造した又は築造中の下水道(以下「既設公共下水道」という。)は、当該市町村が新法第四条の規定による事業計画の認可を受けて設置した又は設置中の公共下水道とみなす。
2 新法第七条の規定は、既設公共下水道については、これを改築する場合を除き、適用しない。
3 新法の施行の際現に供用を開始している既設公共下水道については、旧法第三条の規定に基き当該既設公共下水道により下水を排除すべき地域を新法第二条第六号に規定する排水区域とみなす。
4 新法の施行の際現に処理を開始している終末処理場については、附則第六条の規定による改正前の建築基準法第三十一条第三項の規定により特定行政庁が指定した区域を新法第二条第七号に規定する処理区域とみなす。
5 新法の施行の際現に既設公共下水道に関し、権原に基き、新法第二十四条第一項各号に規定する施設又は工作物その他の物件を設けている者(工事中の者を含む。)は、従前と同様の条件により、当該施設又は工作物その他の物件の設置について同項の許可を受けたものとみなす。
6 新法の施行の際現に既設公共下水道の排水施設の暗渠である構造の部分に関し、権原に基き、施設又は工作物その他の物件を設けている者(工事中の者を含む。)については、新法第二十四条第三項に規定する場合を除き、公共下水道管理者は、同項の規定にかかわらず、その権原に基いてなお当該施設又は工作物その他の物件を設けることができるものとされている期間に限り、従前と同様の条件により、当該施設又は工作物その他の物件を設けさせることができる。
(旧法に基く処分等に関する経過措置)
第四条 新法の施行前に旧法又は旧法に基く命令の規定によつてした処分、手続その他の行為は、新法の適用については、新法中これらの規定に相当する規定がある場合には、新法の規定によつてしたものとみなす。
(地方財政法の一部改正)
第五条 地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)の一部を次のように改正する。
第十条の二中第六号を削り、第七号を第六号とし、第八号を第七号とする。
第十条の三中第八号を削り、第九号を第八号とする。
(建築基準法の一部改正)
第六条 建築基準法の一部を次のように改正する。
第三十一条第一項中「汚物処理の設備を有する下水道を利用することができる区域」を「下水道法(昭和三十三年法律第七十九号)第二条第七号に規定する処理区域」に改め、同条第二項中「前項の下水道」を「下水道法第二条第五号に規定する終末処理場を有する公共下水道」に改め、同条第三項を削る。
(土地収用法の一部改正)
第七条 土地収用法の一部を次のように改正する。
第三条第十八号中「下水道法(明治三十三年法律第三十二号)による下水道」を「下水道法(昭和三十三年法律第七十九号)による公共下水道若しくは都市下水路」に改める。
(道路法の一部改正)
第八条 道路法の一部を次のように改正する。
第三十六条第一項中「下水道法(明治三十三年法律第三十二号)」を「下水道法(昭和三十三年法律第七十九号)」に改める。
(内閣総理・大蔵・厚生・建設大臣署名)