開拓営農振興臨時措置法
法律第五十八号(昭三二・四・六)
(目的)
第一条 この法律は、営農の基礎が不安定な開拓者が協同して自主的にその営農の改善を図ろうとする場合に、これに必要な助成等の措置を講ずることにより、これらの開拓者に営農の基礎を確立させ、もつて開拓地における農業の健全な発展に資することを目的とする。
(開拓営農振興組合)
第二条 この法律で「開拓営農振興組合」とは、その組合員たる開拓者で次の各号の一に該当するものの数が農林省令で定める基準に達している旨の都道府県知事の認定を受けた農業協同組合であつて、当該開拓者からの申請に基き、政令で定めるところにより、総会の議決を経て、振興計画(これらの開拓者の営農条件を改善するために当該農業協同組合が行うべき措置について定める計画をいう。以下同じ。)をたて、当該振興計画につき都道府県知事の承認を受けているものをいう。
一 その配分を受けた土地の自然的条件の劣悪、開墾建設工事の遅滞その他その者の責に帰することができない理由により、農業生産の基礎的条件の整備が遅延しているため、農業による総収入額が農林省令で定める基準に達しないこと。
二 その者の負債で農林省令で定めるものの年間要償還額が農林省令で定める基準をこえていること。
2 前項の振興計画は、農林省令で定めるところにより、同項に規定する開拓者の作成する営農改善計画に基き、次の各号に掲げる事項について定めるものとし、当該振興計画についての同項の承認の申請は、昭和三十四年三月三十一日までにするものとする。
一 営農改善計画の達成に必要な開墾建設工事、開墾作業等農業生産の基礎的条件の整備に関する事項
二 営農改善計画の達成に必要な資金の調達及び償還に関する事項
三 前二号に掲げる事項について国、地方公共団体、金融機関等から受けようとする援助に関する事項
四 その他農林省令で定める事項
(国の助成措置)
第三条 政府は、都道府県が、農林中央金庫又は政令で定める農業協同組合連合会(以下「融資機関」と総称する。)との契約により、当該融資機関が営農改善資金を貸し付けようとする開拓営農振興組合に対し当該資金に充てるために貸し付けた資金につき、当該融資機関に対し利子補給を行う場合における当該利子補給に要する経費の一部を、毎年度、予算の範囲内において、当該都道府県に対し補助することができる。
2 前項に規定する営農改善資金は、開拓営農振興組合が、第二条第一項に規定する開拓者に対し、当該開拓者が当該組合から借り入れた災害に係る経営資金(その経営資金の貸付に充てるための資金を、農業協同組合連合会が、都道府県との契約により利子補給又は損失補償を受けることを条件として当該組合に貸し付けた場合に、当該開拓者が当該組合からその貸付金の使途に従つて貸付を受けた経営資金で政令で定めるものに限る。)の返済に充てるために必要な資金として利率年五分五厘以内(政令で定める場合は、年三分五厘以内)及び政令で定めるその他の条件で貸し付ける資金とする。
3 第一項の規定により政府が都道府県に対して交付する補助金の額は、当該利子補給額の百分の五十に相当する額又は当該利子補給の対象となつた貸付金の総額につき年二分五厘の割合で計算した額のどちらか低い額の範囲内とする。ただし、貸付金の利率が前項の規定により年三分五厘以内に定められている資金に係るものにあつては、当該利子補給額の百分の六十五又は当該利子補給の対象となつた貸付金の総額につき年四分五厘で計算した額のどちらか低い額の範囲内とする。
第四条 政府は、都道府県が、融資機関との契約により、当該融資機関が前条第一項に規定する営農改善資金を貸し付けようとする開拓営農振興組合に対し当該資金に充てるための資金を貸し付けたことによつて受けた損失を、当該融資機関に対し補償する場合における当該損失補償に要する経費の一部を、毎年度、予算の範囲内において、当該都道府県に対し補助することができる。
2 前項の契約は、その契約条項中に次の各号に掲げる事項を含むものでなければならない。
一 融資機関は、当該契約により損失補償を受けた後も善良な管理者の注意をもつて当該融資に係る債権の回収に努めなければならないこと。
二 融資機関は、当該契約により損失補償を受けた後に当該融資に係る債権の回収によつて得た金額のうちから、債権行使のために必要とした費用を控除し、残額があるときは、これで当該融資につき損失補償を受けない損失をうめ、なお残額があるときは、当該契約により都道府県から受けた損失補償の金額に達するまでの金額を当該都道府県に納付しなければならないこと。
3 第一項の規定により政府が都道府県に対して交付する損失補償についての補助金の額は、当該損失補償額の百分の五十に相当する額又は当該損失補償の対象となつた貸付金の総額の百分の二十五に相当する額のどちらか低い額の範囲内とする。
(政府への納付金)
第五条 前条第一項の規定により補助金の交付を受けた都道府県は、融資機関から同条第二項第二号の契約条項による納付金を受けたときは、その一部を政府から補助を受けた割合に応じて政府に納付しなければならない。
(国及び都道府県の援助)
第六条 国及び都道府県は、第三条及び第四条に規定する助成措置のほか、開拓営農振興組合に対し、その振興計画の達成に資するため必要な援助に努めるものとする。
(農地法等の特例)
第七条 開拓営農振興組合の組合員たる第二条第一項に規定する開拓者から、農林省令で定めるところにより、その者が旧自作農創設特別措置法(昭和二十一年法律第四十三号。以下「措置法」という。)第四十一条第一項第一号、第三号若しくは第四号又は同条第四項で準用する措置法第二十八条の規定(農地法施行法(昭和二十七年法律第二百三十号。以下「施行法」という。)第三条の規定によりこれらの規定の例による場合を含む。)(買収した未墾地の売渡)により売渡を受けた土地、権利又は立木、工作物その他の物件(採草放牧地にあつては、措置法第四十条の六第一項(開発して農地とすべき牧野等の指定)の規定により指定されたものに限る。)で施行法第十二条(売渡後の未墾地の特例)の規定により適用される農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)第七十一条(売渡後の検査)の規定による都道府県知事の検査が完了していないものについて、当該検査の時期を延期すべき旨の申請があつたときは、都道府県知事は、施行法第十二条の規定により適用される農地法第七十一条の規定にかかわらず、措置法第四十一条第二項で準用する措置法第二十条第一項(売渡通知書の交付)の売渡通知書に記載された売渡の時期から起算して八年をこえない範囲内で相当と認める期日を指定し、その期日の到来後遅滞なく当該検査を行うものとする。
2 前項に規定する土地、権利又は立木、工作物その他の物件で同項の申請に係るものについて施行法第十二条前段の規定により農地法第七十二条第一項ただし書(買戻)、第七十三条第一項(処分の制限)及び第七十四条(適用除外)の規定を適用する場合には、施行法第十二条後段の規定にかかわらず、これらの規定中「第六十七条第一項第六号の時期」とあるのは、「開拓営農振興臨時措置法(昭和三十二年法律第五十八号)第七条第一項の規定により都道府県知事が指定する期日」と読み替えるものとする。
第八条 前条第一項に規定する土地で同項の申請に係るもの(農地となつたものに限る。)のうちその売渡の時期から起算して八年をこえ、十一年を経過するまでのものについては、政令で、耕土培養法(昭和二十七年法律第二百三十五号)第三条から第七条まで(耕土培養地域の指定、対策調査、耕土培養事業計画等)の規定の特例を定めることができる。
附 則
この法律は、公布の日から施行する。
(大蔵・農林・内閣総理大臣署名)