奄美群島復興特別措置法
法律第百八十九号(昭二九・六・二一)
(目的)
第一条 この法律は、鹿児島県大島郡の区域で北緯二十九度以南にある地域(以下「奄美群島」という。)の復帰に伴い、同地域の特殊事項にかんがみ、その急速な復興を図るとともに住民の生活の安定に資するために(特別措置としての総合的な復興計画(以下「復興計画」という。)を策定し、及びこれに基く事業を実施することを目的とする。
(復興計画の内容)
第二条 復興計画は、左に掲げる事業につき定めるものとする。
一 公共土木施設の整備事業
二 土地改良事業及び林業施設の整備事業
三 つむぎの生産、製糖、水産等の主要産業の復興事業
四 文教施設の整備事業
五 保健、衛生及び社会福祉施設の整備事業
六 電力、航路及び通信施設の整備事業
七 はぶの類及び病害虫の駆除事業
八 前各号に掲げるものの外、奄美群島の復興に関し必要な事業
2 前項の復興計画は、おおむね五箇年を目途として達成されるような内容のものでなければならない。
3 第一項の復興計画には、道路整備費の財源等に関する臨時措置法(昭和二十八年法律第七十三号)第二条の規定による道路整備五箇年計画に基く道路のほ装その他の改築及び修繕は、含まれないものとする。
(復興計画の決定及び変更)
第三条 鹿児島県知事は、復興計画の案を作成し、内閣総理大臣に提出するものとする。
2 内閣総理大臣は、前項の復興計画の案に基き、奄美群島復興審議会の審議を経て、復興計画を決定する。
3 前項の復興計画の決定は、昭和二十九年十月三十一日までにするものとする。
4 復興計画が決定された後、特別の必要が生じた場合においては、第一項及び第二項の例により、復興計画を変更することができる。
5 内閣総理大臣は、復興計画を決定し、又は変更したときは、これを鹿児島県知事に通知するものとする。
6 鹿児島県知事は、復興計画の案を作成する場合においては、公立の文教施設の整備事業については、あらかじめ県の教育委員会から提出された当該事業に関する経費の案に基いて、これと協議して定めるようにしなければならない。
(年度実施計画の設定)
第四条 鹿児島県知事は、毎年度、その年度開始前までに、復興計画に基き、これを実施するために必要な当該年度の復興実施計画を作成し、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。
2 内閣総理大臣は、前項の認可をしようとするときは、あらかじめ奄美群島復興審議会の意見を聞かなければならない。
3 前条第六項の規定は、第一項の規定により当該年度の復興実施計画を作成する場合に準用する。
(事業の実施)
第五条 復興計画に基く事業のうち、別表第一に掲げるものは、当該事業に関する法令の規定にかかわらず、鹿児島県知事が実施する。
2 復興計画に基く事業のうち、前項に掲げるもの以外のものは、当該事業に関する法令に定のあるものについてはその定めるところにより、当該事業に関する法令に定のないものについては復興計画の定めるところにより、県又は市町村その他の者が実施する。
3 港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)第二条第二項の重要港湾については、復興計画の定めるところにより、国は、第一項の規定にかかわらず、同法の規定に従い港湾工事を行うことができる。
(経費の支弁及び特別の助成)
第六条 復興計画に基く事業のうち、別表第一に掲げるものに要する経費は、予算の範囲内で、国が支弁する。
2 復興計画に基く事業のうち、別表第二に掲げるものに要する経費については、国は、当該事業に関する法令の規定にかかわらず、県又は市町村その他の者に対して、予算の範囲内で、それぞれ同表に掲げる割合により、その一部を負担し、又は補助するものとする。
3 国は、左に掲げる復興計画に基く事業で内閣総理大臣が主務大臣と協議して指定するものに要する経費については、県又は市町村その他の者に対して、予算の範囲内で、その全部又は一部を補助することができる。
一 奄美群島における産業復興のため必要な試験研究施設の整備事業
二 本土と奄美群島及び奄美群島内の各島を連絡するための地方公共団体の船舶及び通信施設の整備事業
三 はぶの類及び病害虫の駆除に必要な事業
四 水産、亜熱帯性農林作物の生産及び養蚕の振興に関し必要な事業
五 前各号に掲げるものの外、奄美群島における民生安定のため必要な産業の復興に関する事業
4 国は、復興計画に基く事業を実施する県が、復興計画の定めるところにより、左の各号に掲げる事業を行う者に対し資金を貸し付けるときは、その県に対し、当該貸付金額の十分の八に相当する金額の範囲内において、資金を貸し付けることができる。
一 電気事業
二 つむぎの生産事業
三 製糖事業
四 水産業
5 第二項及び第三項に掲げる事業並びに前項に規定する資金の貸付に要する経費に関する経理については、当該地方公共団体は、これを他の経理と分別しなければならない。
(奄美群島復興審議会の設置及び権限)
第七条 この法律の規定によりその権限に属せしめられた事項その他奄美群島の復興に関する重要事項を調査審議するために、総理府に奄美群島復興審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、奄美群島の復興に関する重要事項につき、内閣総理大臣に対し意見を申し出ることができる。
(審議会の組織等)
第八条 審議会は、関係行政機関の職員、鹿児島県知事、鹿児島県議会議長及び学識経験のある者につき、内閣総理大臣が任命する委員二十人以内で組織する。
2 審議会に会長を置き、委員の互選により選任する。
3 会長は、会務を総理する。
4 委員は、非常勤とする。
5 前各項に定めるものの外、審議会の議事、運営その他審議会に関し必要な事項は、政令で定める。
(指揮監督)
第九条 内閣総理大臣は、復興計画に基く事業の実施について、総合調整を行うとともに、これらの事業を実施する地方公共団体の長その他の機関又はその他の者を指揮監督する。
2 鹿児島県知事は、復興計画に基く事業の実施について、これらの事業を実施する市町村の長その他の機関又はその他の者を指揮監督する。この場合において、公立の文教施設の整備事業の実施に関する指揮監督については、鹿児島県知事は、あらかじめ県の教育委員会と協議しなければならない。
3 前二項の規定は、当該事業の実施について、主務大臣又は県の教育委員会の関係法令の規定による指揮監督の権限の行使を妨げるものではない。
(地方事務官等)
第十条 奄美群島において復興計画の実施の事務に従事する県の職員は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第百七十二条、第百七十三条及び第百七十五条の規定にかかわらず、国家公務員とする。
2 前項の職員は、地方事務官、地方技官その他の職員とし、その定員は、政令で定めるものとし、行政機関職員定員法(昭和二十四年法律第百二十六号)第二条第一項の規定に定める職員の定員の外にあるものとする。
3 第一項の職員の任免及び進退並びにこれに対する給与の支給は、内閣総理大臣が行う。
4 内閣総理大臣は、前項の事務を鹿児島県知事に委任することができる。
(復興計画に関する事務の所管)
第十一条 この法律に基く内閣総理大臣の権限の行使に関する事務、審議会に関する事務その他復興計画の策定に関する事務並びに復興計画に基く事業の予算に関する見積及び予算の執行(第五条第三項の規定による工事に係る予算の執行を除く。)に関する国の事務は、自治庁において掌理する。
(政令への委任)
第十二条 この法律に定めるものの外、この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行し、昭和三十六年三月三十一日にその効力を失う。
2 第四条の規定による昭和二十九年度に係る復興実施計画は、同条の規定にかかわらず、第三条第二項の規定による復興計画の決定の日から二月以内に、作成し、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。
3 奄美群島における道路のほ装その他の改築及び修繕で第二条第三項に掲げるものに要する経費は、他の法令の規定にかかわらず、予算の範囲内で、国が支弁する。
4 総理府設置法(昭和二十四年法律第百二十七号)の一部を次のように改正する。
第十五条第一項の表中
「 |
離島振興対策審議会 |
離島振興法(昭和二十八年法律第七十二号)の規定によりその権限に属せしめられた事項を行うこと。 |
」 |
を
「 |
離島振興対策審議会 |
離島振興法(昭和二十八年法律第七十二号)の規定によりその権限に属せしめられた事項を行うこと。 |
|
奄美群島復興審議会 |
奄美群島復興特別措置法(昭和二十九年法律第百八十九号)の規定によりその権限に属せしめられた事項を行うこと。 |
」 |
に改める。
別表第一
道路 |
道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第二条第一項に規定する道路の新設及び改築で内閣総理大臣が主務大臣と協議して指定するもの |
河川 |
河川法(明治二十九年法律第七十一号)第一条に規定する河川、同法第五条の規定によつて同法が準用される水流、水面若しくは河川若しくはその他の河川又はこれらのものの維持管理上必要な堤防、護岸、水制、床止その他の施設若しくは沿岸を保全するために防護することを必要とする河岸に関する工事で内閣総理大臣が主務大臣と協議して指定するもの |
砂防 |
砂防法(明治三十年法律第二十九号)第一条に規定する砂防設備又は同法第三条の規定によつて同法が準用される砂防のための施設に関する工事で内閣総理大臣が主務大臣と協議して指定するもの |
港湾 |
港湾法第二条第五項に規定する水域施設、外かく施設、けい留施設又は港湾の利用及び管理上重要な臨港交通施設の新設及び改良並びに同法同条同項に規定する港湾施設用地の取得及び整備で内閣総理大臣が主務大臣と協議して指定するもの |
漁港 |
漁港法(昭和二十五年法律第百三十七号)第三条に規定する基本施設、漁港の利用及び管理上重要な輸送施設又は漁業用通信施設の新設及び改良並びに同法同条に規定する漁港施設用地の取得及び整備で内閣総理大臣が主務大臣と協議して指定するもの |
海岸 |
国土を保全するために防護することを必要とする海岸又はこれに設置する堤防、護岸、突堤その他海岸を防護するための施設に関する工事で内閣総理大臣が主務大臣と協議して指定するもの |
別表第二
事業の区分 |
国の負担又は補助の割合 |
|
土地改良 |
土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)第二条第二項に規定する土地改良事業で内閣総理大臣が主務大臣と協議して指定するもの |
十分の四から十分の八まで |
林業施設 |
林道、林地荒廃防止施設その他林地若しくは森林資源の利用又は保全上必要な林業用施設及び風害、水害、潮害等の防備、水源のかん養、土砂の流失若しくは崩壊の防備、なだれ若しくは落石の危険の防止又は火災の防備その他災害の防除に必要な保安施設の建設及び補修並びに造林で内閣総理大臣が主務大臣と協議して指定するもの |
十分の五から十分の八まで |
文教施設 |
公立の文教施設の用に供する建物その他の工作物の新築及び改築、これらのものの敷地の取得及び整備並びに公立の文教施設の用に供する設備の新設及び改良で内閣総理大臣が主務大臣と協議して指定するもの |
十分の五から十分の九まで |
保健、衛生及び社会福祉施設 |
地方公共団体の設置する保健、衛生及び社会福祉施設の整備で内閣総理大臣が主務大臣と協議して指定するもの |
四分の二から四分の三まで |
(内閣総理・大蔵・文部・厚生・農林・通商産業・運輸・郵政・建設大臣署名)