硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法

法律第百七十三号(昭二九・六・一〇)

 (目的)

第一条 この法律は、硫安工業の合理化を促進し、及び硫安の輸出を調整することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「硫安」とは、硫酸アンモニア及び政令で定めるその他のアンモニア系窒素肥料をいう。

 (硫安工業の合理化)

第三条 通商産業大臣は、硫安工業の合理化を促進するため必要があると認めるときは、肥料審議会の意見を聞いて、硫安の生産業者に対し、生産設備及び技術の近代化、企業形態の改善その他の措置を講ずべき旨を勧告することができる。

第四条 政府は、必要があると認めるときは、硫安の生産業者に対し、硫安工業の合理化を促進するため必要な資金について、融通のあつ旋その他適切な措置を講ずるものとする。

 (日本硫安輸出株式会社)

第五条 日本硫安輸出株式会社(以下「会社」という。)は、硫安の輸出に関する事業を経営することを目的とする株式会社とする。

 (事業の範囲)

第六条 会社は、左の業務を営むものとする。

 一 輸出用の硫安の譲受

 二 硫安の輸出

 三 輸出業者に対する輸出用の硫安の譲渡

 四 前三号の業務に附帯する業務

2 前項第一号の硫安の譲受は、臨時肥料需給安定法(昭和二十九年法律第百七十二号)第十二条第一項の規定により通商産業大臣の承認を受けた買入計画に従つて行うものとする。

 (商号の使用制限)

第七条 会社以外の者は、その商号中に日本硫安輸出株式会社という文字を使用してはならない。

 (定款の変更等)

第八条 会社の定款の変更、合併及び解散の決議は、通商産業大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。

 (監督)

第九条 通商産業大臣は、公共の福祉を確保するため特に必要があると認めるときは、会社に対し、業務に関し監督上必要な命令をすることができる。

 (報告及び検査)

第十条 通商産業大臣は、この法律の施行に必要な限度において、会社からその業務の状況に関する報告を徴し、又はその職員に、会社の事務所若しくは倉庫に立ち入り、その帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。

2 前項の規定により検査をする職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係人に呈示しなければならない。

3 第一項の規定による検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

 (輸出の制限)

第十一条 会社以外の者は、会社から譲り受けたものでなければ、硫安を輸出してはならない。

 (流用の禁止)

第十二条 輸出する目的で会社から硫安を譲り受けた者は、当該硫安を輸出以外の用に供してはならない。但し、会社に譲渡する場合は、この限りでない。

 (協定の認可)

第十三条 硫安の生産業者は、臨時肥料需給安定法第十二条第一項の承認があつた後において、通商産業大臣の認可を受けて、会社に譲渡すべき硫安の数量又はその取引条件について協定を締結することができる。

2 通商産業大臣は、前項の認可の申請があつた場合において、その協定の内容が不当に差別的であると認めるときは、認可をしてはならない。

3 通商産業大臣は、第一項の認可をしようとするときは、公正取引委員会の同意を得なければならない。

 (私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外)

第十四条 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)の規定は、会社の行う正当な行為及び硫安の生産業者が前条第一項の認可を受けてする行為には、適用しない。但し、不公正な取引方法については、この限りでない。

 (罰則)

第十五条 左の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

 一 第十一条の規定に違反して硫安を輸出した者

 二 第十二条の規定に違反して硫安を輸出以外の用に供した者

第十六条 第九条の規定による命令に違反し、又は第十条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をした場合においては、その違反行為をした会社の代表者、代理人、使用人その他の従業者は、三万円以下の罰金に処する。

第十七条 第十条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、三万円以下の罰金に処する。

第十八条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して、各本条の罰金刑を科する。

第十九条 第七条の規定に違反して商号中に日本硫安輸出株式会社という文字を使用した者は、一万円以下の過料に処する。

   附 則

1 この法律は、公布の日から施行する。但し、第十一条及び第十二条の規定は、会社の設立の日から起算して一月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。

2 この法律は、昭和三十四年七月三十一日又は会社の解散の時のいずれか早い時に、その効力を失う。但し、その時までにした行為に対する罰則の適用については、この法律は、その時以後も、なおその効力を有する。

3 この法律の施行の際現に硫安の輸出の契約を締結している者は、第十一条の規定にかかわらず、輸出することを妨げない。

4 通商産業大臣は、発起人を指定して、会社の設立に関する事務を処理させる。

5 発起人は、定款を作成して通商産業大臣の認可を受けなければならない。

6 発起人は、設立の登記をしたときは、遅滞なく、その旨を通商産業大臣に届け出なければならない。

7 この法律の施行の際現にその商号中に日本硫安輸出株式会社という文字を使用している者は、この法律の施行後六月以内にその商号を変更しなければならない。

8 第七条の規定は、前項の期間内は、前項に規定する者には、適用しない。

(内閣総理・農林・通商産業大臣署名) 

法令一覧(年度別)に戻る