昭和二十九年五月の北海道東南海域暴風雨による漁業災害の復旧資金の融通に関する特別措置法

法律第百六十八号(昭二九・六・九)

 (この法律の目的)

第一条 この法律は、北海道及びその東南海域を主たる被害区域とする昭和二十九年五月九日及び十日の暴風雨によつて損失を受けた漁業者又は水産業協同組合に対し、漁船及び漁網の復旧に必要な資金の融通を円滑にする措置を講ずることを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「被害漁業者」とは、前条の暴風雨によりその所有する漁船又は漁網(政令で定めるものを除く。以下同じ。)が沈没し、流失し、又は損壊したため、著しい損失を受けた漁業者をいう。

2 この法律において「被害組合」とは、前条の暴風雨によりその所有する漁船又は漁網が沈没し、流失し、又は損壊したため、著しい損失を受けた水産業協同組合をいう。

3 この法律において「金融機関」とは、農林中央金庫その他政令で定める金融機関をいう。

4 この法律において「復旧資金」とは、金融機関が、昭和二十九年十二月三十一日までに、被害漁業者又は被害組合に対し貸し付ける漁船の復旧に必要な資金(漁船損害補償法(昭和二十七年法律第二十八号)に基いて支払われる保険金の金額に相当する資金を除く。)及び漁網の復旧に必要な資金であつて、左の各号に該当するものをいう。

 一 一被害漁業者又は一被害組合に対する当該金融機関の貸付金が一千万円以内であること。

 二 償還期限が一年以上五年以内のものであること。

 三 利率が年六分五厘以内のものであること。

5 この法律において「転貸資金」とは、金融機関が昭和二十九年十二月三十一日までに貸し付ける左に掲げる資金をいう。

 一 被害漁業者の加入する漁業協同組合又は被害組合の加入する漁業協同組合若しくは漁業協同組合連合会で当該被害漁業者又は当該被害組合に復旧資金を貸し付けようとするものに対し当該資金に充てるために貸し付ける資金

 二 漁業協同組合連合会で前号の資金を貸し付けようとするものに対し当該資金に充てるために貸し付ける資金

 (国庫補助)

第三条 政府は、都道府県に対し、予算の範囲内で左の各号に掲げる経費の全部又は一部を補助する。

 一 都道府県が、金融機関との契約により、当該金融機関に対し、当該金融機関が被害漁業者又は被害組合に貸し付けた復旧資金(転貸資金をもつて貸し付けたものを除く。第三号、第五号及び第七号において同じ。)につき、利子補給を行う場合における当該利子補給に要する経費

 二 都道府県が、金融機関との契約により、当該金融機関に対し、当該金融機関が漁業協同組合又は漁業協同組合連合会に貸し付けた転貸資金(その貸付を受けた前条第五項第二号の転貸資金をもつて貸し付けた同項第一号の転貸資金を除く。第四号、第六号及び第八号において同じ。)につき、利子補給を行う場合における当該利子補給に要する経費

 三 市町村が、金融機関との契約により、当該金融機関に対し、当該金融機関が被害漁業者又は被害組合に貸し付けた復旧資金につき、利子補給を行うのに要する経費の全部又は一部を都道府県が補助する場合における当該補助に要する経費

 四 市町村が、金融機関との契約により、当該金融機関に対し、当該金融機関が漁業協同組合又は漁業協同組合連合会に貸し付けた転貸資金につき、利子補給を行うのに要する経費の全部又は一部を都道府県が補助する場合における当該補助に要する経費

 五 都道府県が、金融機関との契約により、当該金融機関に対し、当該金融機関が被害漁業者又は被害組合に復旧資金を貸し付けたことによつて受けた損失を、農林大臣の承認を得て、補償する場合における当該損失補償に要する経費

 六 都道府県が、金融機関との契約により、当該金融機関に対し、当該金融機関が漁業協同組合又は漁業協同組合連合会に転貸資金を貸し付けたことによつて受けた損失を、農林大臣の承認を得て、補償する場合における当該損失補償に要する経費

 七 市町村が、金融機関との契約により、当該金融機関に対し、当該金融機関が被害漁業者又は被害組合に復旧資金を貸し付けたことによつて受けた損失を補償するのに要する経費につき、漁船に係るものにあつてはその六分の五以内、漁網に係るものにあつてはその五分の四以内を都道府県が補助する場合における当該補助に要する経費

 八 市町村が、金融機関との契約により、当該金融機関に対し、当該金融機関が漁業協同組合又は漁業協同組合連合会に転貸資金を貸し付けたことによつて受けた損失を補償するのに要する経費につき、漁船に係るものにあつてはその六分の五以内、漁網に係るものにあつてはその五分の四以内を都道府県が補助する場合における当該補助に要する経費

2 前項第五号から第八号までの契約には、左の各号に掲げる事項を含まなければならない。

 一 当該契約の当事者である金融機関は、当該契約により損失補償を受けた後も善良な管理者の注意をもつて当該融資に係る債権の回収に努めなければならないこと。

 二 当該契約の当事者である金融機関は、当該契約により損失補償を受けた後に当該融資に係る債権の回収によつて得た金額のうちから、債権行使のために必要とした費用を控除し、残額があるときは、これを当該融資についての損失補償を受けない損失のてん補に充当し、なお残額があるときは、当該契約により都道府県又は市町村から受けた損失補償の金額に達するまでの金額を当該都道府県又は当該市町村に納付しなければならないこと。

3 第一項第五号から第八号までの損失は、融資元本の償還期限到来後政令で定める期間を経過してなお元本又は利子(政令で定める遅延利子を含む。)の全部又は一部が回収されなかつた場合におけるその回収されなかつた金額とする。

第四条 前条第一項の規定により政府が都道府県に対し補助する場合における当該補助に係る同項各号の復旧資金及び転貸資金の総額は、八億五千万円を限度とする。

2 前条第一項の規定により政府が都道府県に対して交付する補助金は、同項第一号から第四号までの経費については、当該利子補給額の二分の一に相当する額又は当該利子補給の対象となつた貸付金の総額につき年二分五厘の割合で計算した額のいずれか低い額の範囲内とし、同項第五号から第八号までの経費については、当該損失補償額の二分の一に相当する額又は当該損失補償の対象となつた貸付金の総額につき、漁船に係るものにあつてはその百分の三十、漁網に係るものにあつてはその百分の二十五に相当する額のいずれか低い額の範囲内とする。

 (政府への納付金)

第五条 第三条第一項の規定により補助金の交付を受けた都道府県は、金融機関から同条第二項第二号の契約事項により納付金を受けたときは、その一部を政府から補助を受けた割合に応じて政府に納付しなければならない。

2 第三条第一項の規定により補助金の交付を受けた都道府県は、当該都道府県から補助金の交付を受けた市町村が金融機関から同条第二項第二号の契約事項により納付金を受けたときは、その全部又は一部を当該市町村が都道府県から補助を受けた割合に応じて当該市町村から納付させ、その納付金の全部又は一部を政府から補助を受けた割合に応じて政府に納付しなければならない。

 (補助金の打切又は返還)

第六条 政府は、都道府県若しくはその補助を受けた市町村がこの法律若しくはこの法律に基く命令に違反したとき、又は当該都道府県若しくは市町村と第三条第五号から第八号までの契約を結んだ金融機関が同条第二項各号の契約事項に違反したときは、当該都道府県に対し交付すべき補助金の全部若しくは一部を交付せず、又は既に交付した補助金の全部若しくは一部の返還を命ずることができる。

   附 則

 この法律は、公布の日から施行する。

(大蔵・農林・内閣総理大臣署名) 

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