臨時肥料需給安定法

法律第百七十二号(昭二九・六・一〇)

 (目的)

第一条 この法律は、肥料の需給の調整及び価格の安定を図ることを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「肥料」とは、硫酸アンモニア及び政令で定めるその他の重要肥料をいう。

2 この法律において「肥料年度」とは、毎年八月一日から翌年七月三十一日までの期間をいう。

 (肥料の需給計画)

第三条 農林大臣及び通商産業大臣は、肥料審議会の意見を聞いて、毎肥料年度の開始前に、政令の定めるところにより、当該肥料年度における肥料の需給計画を定めなければならない。

2 前項の需給計画に定める事項は、次の通りとする。

 一 前年度からの繰越数量

 二 生産見込数量又は輸入見込数量

 三 国内消費見込数量

 四 需給調整用としての保留数量

 五 輸出見込数量

 六 生産業者又は輸入業者の翌年度への繰越在庫見込数量

3 前項第三号の国内消費見込数量は、政令の定めるところにより、国内消費実績の推定量と農業生産の事情とを勘案して定める。

4 第二項第四号の保留数量は、肥料の需給の調整のため必要な数量とし、同項第三号の国内消費見込数量の一割を基準とし、肥料の需給事情を勘案して定める。

5 第二項第五号の輸出見込数量及び同項第六号の繰越在庫見込数量は、その合計が、同項第一号及び第二号の合計数量から同項第三号及び第四号の合計数量を差し引いて得た数量となるように定める。

6 農林大臣及び通商産業大臣は、第一項の需給計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

第四条 農林大臣及び通商産業大臣は、肥料の生産条件、需給状況その他経済事情の変動のため特に必要があると認めるときは、肥料審議会の意見を聞いて、前条第一項の需給計画を変更することができる。

2 農林大臣及び通商産業大臣は、前項の規定により前条第一項の需給計画を変更したときは、遅滞なく、その変更に係る事項を公表しなければならない。

 (生産業者に対する生産の指示)

第五条 通商産業大臣は、肥料の需給の適正化を図るため必要があると認めるときは、肥料審議会の意見を聞いて、第三条第一項の需給計画に基き、肥料の生産業者に対し、肥料の種類、数量及び品質を定めてその生産を指示することができる。

 (保管団体による肥料の買取、保管等)

第六条 農林大臣は、肥料の需給の調整を図るため、その指定する団体(以下「保管団体」という。)に対し、政令の定めるところにより、肥料の生産業者又は輸入業者からその生産し又は輸入した肥料を買い取るべき旨を指示するものとする。

2 農林大臣は、肥料の需給の調整を図るためやむを得ない必要があると認めるときは、前項の規定による肥料の買取の指示に代えて、保管団体に対し、政令の定めるところにより、肥料の原料の生産業者又は輸入業者からその生産し又は輸入した政令で定める肥料の原料を買い取るべき旨の指示をすることができる。

3 第一項の規定による保管団体の指定は、農業者を直接又は間接に構成員とする団体につき、当該団体の申出によつて行うものとする。

4 保管団体は、第一項又は第二項の指示を受けたときは、その指示に従つて肥料又は肥料の原料(以下「肥料等」という。)を買い取らなければならない。

5 農林大臣は、保管団体が前項の規定による買取の結果保有する肥料の数量(同項の規定による買取の結果保有する肥料の原料の数量に基き政令の定めるところにより算出した肥料の数量を含む。)の合計が第三条第二項第四号の保留数量に相当する数量をこえない限度において、第一項又は第二項の指示をするものとする。

第七条 保管団体は、前条第四項の規定により買い取つた肥料等(同項の規定により買い取つた肥料の原料から生産された肥料を含む。以下同じ。)を農林大臣の指示するところに従つて保管しなければならない。

2 保管団体は、農林大臣の指示によるのでなければ、前項の規定により保管する肥料等を譲渡し、加工し、又は消費してはならない。

3 農林大臣は、前項の指示をするには、あらかじめ、肥料審議会の意見を聞かなければならない。但し、災害その他緊急の場合は、この限りでない。

4 前項但書の場合には、農林大臣は、遅滞なく、肥料審議会にその旨を報告しなければならない。

 (保管団体の区分経理)

第八条 保管団体は、第六条第四項の規定による肥料等の買取並びに前条の規定による肥料等の保管及び処分の業務については、政令の定めるところにより、毎肥料年度、他の業務と会計を区分して経理しなければならない。

 (欠損の補てん)

第九条 前条の規定により他の業務と区分して経理される会計に、毎肥料年度末において政令で定める事由により欠損を生じたときは、政府は、毎会計年度予算の範囲内において、政令の定めるところにより、その欠損金の額に相当する金額を当該団体に補助し、当該会計の欠損を補てんするものとする。

 (資金の融通)

第十条 政府は、必要があると認めるときは、保管団体に対し、第六条第四項の規定による肥料等の買取及び第七条第一項の規定による肥料等の保管をするため必要な資金について、その融通のあつ旋その他適切な措置を講ずるものとする。

 (生産業者等に対する譲渡の指示)

第十一条 農林大臣及び通商産業大臣は、肥料の需給の調整を図るため必要があると認めるときは、肥料審議会の意見を聞いて、肥料の生産業者又は輸入業者に対し、その在庫状況、出荷能力等を勘案して、肥料を譲渡すべき旨の指示をすることができる。

2 前項の規定による指示は、次条第一項の規定により承認を受けた買入計画による買入に支障を及ぼすものであつてはならない。

 (日本硫安輸出株式会社の買入計画の承認)

第十二条 日本硫安輸出株式会社は、第三条第二項第五号の輸出見込数量の範囲内で、硫酸アンモニア及び政令で定めるその他のアンモニア系窒素肥料の買入計画を定め、通商産業大臣の承認を受けなければならない。

2 通商産業大臣は、前項の承認をしようとするときは、農林大臣の同意を得なければならない。

 (販売価格の最高額)

第十三条 農林大臣及び通商産業大臣は、肥料の価格の安定を図るため必要があると認めるときは、肥料審議会の意見を開いて、肥料の生産業者又は輸入業者の販売価格につき、その最高額を定めることができる。

2 前項の販売価格の最高額は、政令の定めるところにより、生産費又は輸入価格を基準とし、農産物価格、肥料の国際価格その他の経済事情を参しやくして定める。

3 第一項の規定による販売価格の最高額の定は、告示をもつてしなければならない。

第十四条 前条第一項の規定により販売価格の最高額が定められたときは、肥料の生産業者又は輸入業者は、その額をこえる価格による肥料の販売の契約をし、又は対価の受領をしてはならない。

2 前条第一項の規定により販売価格の最高額が定められたときは、何人も、その額をこえる価格による生産業者若しくは輸入業者からの肥料の購入の契約をし、又は生産業者若しくは輸入業者への対価の支払をしてはならない。

3 前二項の規定は、政令の定めるところにより、農林大臣及び通商産業大臣の許可を受けたときは、適用しない。

 (報告及び検査)

第十五条 農林大臣及び通商産業大臣は、肥料の生産費、輸入価格その他肥料の需給の調整及び価格の安定に関し必要な事項を調査するため必要があるときは、肥料等の生産業者、輸入業者又は販売業者に対し、政令の定めるところにより、必要な事項の報告を求めることができる。

2 農林大臣及び通商産業大臣は、肥料の生産費又は輸入価格を調査するため必要があるときは、その職員に肥料の生産業者又は輸入業者の事務所、工場又は倉庫に立ち入らせ、その帳簿書類その他業務に関係のある物件を検査させることができる。

3 農林大臣は、この法律の施行に必要な限度において、保管団体からその業務の状況に関する報告を徴し、又はその職員に保管団体の事務所若しくは倉庫に立ち入らせ、その帳簿書類その他業務に関係のある物件を検査させることができる。

4 第二項又は前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を証する証票を携帯し、関係人にこれを呈示しなければならない。

5 第二項又は第三項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

 (肥料審議会)

第十六条 経済審議庁に、肥料審議会(以下「審議会」という。)を置く。

2 審議会は、関係各大臣の諮問に応じ、肥料の需給の調整及び価格の安定並びに日本硫安輸出株式会社に対し通商産業大臣がする処分その他の行為に関する重要な事項について調査審議する。

3 審議会は、肥料の需給の調整及び価格の安定並びに日本硫安輸出株式会社に対し通商産業大臣がする処分その他の行為に関する重要な事項について関係各大臣に建議することができる。

第十七条 審議会は、委員十五人以内で組織する。

2 委員は、左に掲げる者につき、内閣総理大臣が任命する。

 一 肥料の生産業者を代表する者    三人以内

 二 肥料の販売業者を代表する者    二人以内

 三 肥料の消費者を代表する者     三人以内

 四 学識経験のある者         七人以内

3 審議会に会長を置く。

4 会長は、委員のうちから互選する。

5 会長は、会務を総理し、審議会を代表する。

6 会長に事故があるときは、会長があらかじめ指定したものがその職務を代行する。

7 委員は、非常勤とする。

8 前各項に定めるものの外、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。

 (罰則)

第十八条 第十四条第一項又は第二項の規定に違反して、契約をし、又は対価の受領若しくは支払をした者は、一年以下の懲役若しくは十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

第十九条 左の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。

 一 第七条第二項の規定に違反して、譲渡し、加工し、又は消費した者

 二 第十五条第一項又は第三項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者

 三 第十五条第二項又は第三項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者

第二十条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して、各本条の罰金刑を科する。

   附 則

1 この法律の施行期日は、公布の日から起算して四月をこえない範囲内において政令で定める。

2 この法律は、昭和三十四年七月三十一日限り、その効力を失う。但し、その時までにした行為に対する罰則の適用並びにその時までに保管団体が行つた肥料等の買取、保管及び処分の業務の結果第八条の規定により他の業務と区分して経理する会計に生じた欠損又は残余財産についての第九条又は附則第四項の規定の適用については、この法律は、その時以後も、なおその効力を有する。

3 昭和二十八年度肥料においては、第三条第一項の需給計画は、同項の規定にかかわらず、政令で定める期日までに定めれば足りる。

4 附則第二項の規定によりこの法律が効力を失つた場合において、保管団体が第八条の規定により他の業務と区分して経理する会計に清算の結果残余財産があるときは、政府は、政令の定めるところにより、当該保管団体に対し当該残余財産の全部又は一部に相当する金額を国庫に納付すべきことを命ずることができる。

5 農林省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。

  第八条第一項第六号中「肥料の生産に関すること」を「肥料の生産に関することで次号に掲げるもの以外のもの」に改め、同号の次に次の一号を加える。

 六の二 臨時肥料需給安定法(昭和二十九年法律第百七十二号)に基く硫酸アンモニアその他重要肥料の生産業者及び輸入業者の販売価格の決定並びに生産費及び輸入価格の調査に関すること。

6 経済審議庁設置法(昭和二十七年法律第二百六十三号)の一部を次のように改正する。

 第十一条を次のように改める。

  (附属機関)

 第十一条 左の表の上欄に掲げる機関は、本庁の附属機関として置かれるものとし、その目的は、それぞれ下欄に記載する通りとする。

種類

目的

経済審議会

内閣総理大臣の諮問に応じ、経済に関する重要な政策、計画等につき調査審議すること。

肥料審議会

関係各大臣の諮問に応じ、硫酸アンモニアその他重要肥料に関する重要事項につき調査審議すること。

2 前項に掲げる附属機関の組織、所掌事務及び委員その他の職員については、他の法律(これに基く命令を含む。)に別段の定がある場合を除く外、政令で定める。

(内閣総理・大蔵・農林・通商産業大臣署名) 

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