国有林野法

法律第二百四十六号(昭二六・六・二三)

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 境界の確定(第三条―第六条)

 第三章 貸付、使用及び売払(第七条・第八条)

 第四章 部分林(第九条―第十七条)

 第五章 共用林野(第十八条―第二十四条)

 附則

   第一章 総則

 (この法律の趣旨)

第一条 国有林野の取得、維持、保存及び運用(以下「管理」という。)並びに処分についての国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)の特例は、他の法律に特別の定がある場合を除く外、この法律の定めるところによる。

 (定義)

第二条 この法律において「国有林野」とは、左に掲げるものをいう。

 一 国の所有に属する森林原野であつて、国において森林経営の用に供し、又は供するものと決定し、国有財産法第三条(国有財産の分類及び種類)第二項第四号の企業用財産となつているもの

 二 国の所有に属する森林原野であつて、国民の福祉のための考慮に基き森林経営の用に供されなくなり、国有財産法第三条第三項の普通財産となつているもの(同法第四条(定義)第二項の所管換又は同条第三項の所属替をされたものを除く。)

   第二章 境界の確定

 (境界確定の協議)

第三条 営林局長は、国有林野の境界が明らかでないため国有林野の管理又は処分に支障があるときは、隣接地所有者に対し、立会場所、期日その他必要な事項を通知して、境界を確定するための協議を求めることができる。この場合において、通知を受けるべき者の所在が知れないときは、省令で定める手続に従い、当該通知の内容を公告して、これに代えることができる。

2 前項の規定により協議を求められた隣接地所有者は、やむを得ない場合を除き、同項の通知に従い、その場所に立ち会つて境界の確定につき協議しなければならない。

3 第一項の協議がととのつた場合には、営林局長及び隣接地所有者は、書面により、確定された境界を明らかにしなければならない。

4 第一項の協議がととのわない場合には、境界を確定するためにいかなる行政上の処分も行われてはならない。

 (境界の決定)

第四条 営林局長は、前条第一項の規定により協議を求めた隣接地所有者が立ち会わないため協議することができないときは、当該隣接地の所在する市町村の職員の立会を求めて境界を定めることができる。但し、当該隣接地所有者が正当な事由により立ち会うことができない場合において、その旨をあらかじめ営林局長に通知したときは、この限りでない。

2 前項の規定により境界を定めた場合には、営林局長は、その定めた境界及びその理由を当該隣接地の知れた所有者その他の権利者に通知するとともにこれを公告しなければならない。

第五条 隣接地の所有者その他の権利者は、前条第一項の規定により営林局長が定めた境界に異議がある場合には、同条第二項の公告のあつた日から起算して六十日以内に、理由を附して、営林局長に対し、その定めた境界に同意しない旨を通告することができる。

第六条 前条の期間内に第四条第二項の通知を受けた隣接地所有者から前条の規定による通告がなかつた場合には、当該期間満了の時に、境界の確定に関し、その者の同意があつたものとみなす。但し、同条の期間内に当該隣接地のその他の権利者から同条の規定による通告があつたときは、この限りでない。

2 前項の規定により同意があつたものとみなされる場合には、営林局長は、すみやかに、境界が確定した旨を当該隣接地所有者及び当該隣接地の知れたその他の権利者に通知するとともにこれを公告しなければならない。

3 前条の期間内に同条の通告があつた場合には、第三条第四項の規定を準用する。

   第三章 貸付、使用及び売払

 (国有林野の貸付、売払等)

第七条 第二条第一号の国有林野は、左の各号の一に該当する場合には、貸し付け、又は貸付以外の方法により使用(収益を含む。以下同じ。)させることができる。

 一 公用、公共用又は公益事業の用に供するとき。

 二 土地収用法(明治三十三年法律第二十九号)その他の法令により他人の土地を使用することができる事業の用に供するとき。

 三 放牧又は採草の用に供するとき。

 四 貸し付け、又は使用させる面積が五町歩をこえないとき。

第八条 第二条第二号の国有林野を売り払い、貸し付け、又は使用させようとする場合において、左に掲げる者からその買受、借受又は使用の申請があつたときは、これを他に優先させなければならない。

 一 当該林野を公用、公共用又は公益事業の用に供する者

 二 当該林野を基本財産に充てる地方公共団体

 三 当該林野に特別の縁故がある者で省令で定めるもの

 四 当該林野をその所在する地方の農山漁村の産業の用に供する者

   第四章 部分林

 (部分林の設定)

第九条 農林大臣は、国有林野について、契約により、国以外の者に造林させ、その収益を国及び造林者が分収するものとすることができる。

 (部分林契約の内容)

第十条 前条の契約(以下「部分林契約」という。)においては、左に掲げる事項を定めなければならない。

 一 部分林契約の目的たる国有林野(以下「部分林」という。)の所在及び面積

 二 当該契約の存続期間

 三 植栽(人工下種を含む。以下同じ。)すべき樹種及び本数

 四 植栽の期間及び方法

 五 手入の方法

 六 伐採の時期及び方法

 七 収益分収の割合

 八 その他必要な事項

 (部分木の持分等)

第十一条 部分林につき、部分林契約に基き植栽した樹木(以下「部分木」という。)は、国と造林者との共有とし、その持分は、当該契約に定められた収益分収の割合によるものとする。

2 根株は、国の所有とする。但し、契約をもつて特別の定をすることができる。

3 部分林契約があつた後において天然に生じた樹木であつて、部分木とともに生育させるものとして営林署長が指定したものは、部分木とみなす。

4 民法(明治二十九年法律第八十九号)第二百五十六条(共有物の分割請求)の規定は、部分木には、適用しない。

 (部分林契約の存続期間)

第十二条 部分林契約の存続期間は、八十年をこえることができない。

2 部分林契約は、更新することができる。

 (保護義務)

第十三条 造林者は、部分林について、左に掲げる事項を行わなければならない。

 一 火災の予防及び消防

 二 盗伐、誤伐その他の加害行為の予防及び防止

 三 有害動物及び有害植物の駆除及びそのまん延の防止

 四 境界標その他の標識の保存

 (林産物の採取)

第十四条 造林者は、左に掲げる部分林の林産物を採取することができる。

 一 下草、落葉及び落枝

 二 木の実及びきのこ類

 三 部分林契約のあつた後において天然に生じた樹木(第十一条第三項の規定により営林署長が指定したものを除く。)

 四 植栽後二十年以内において手入のため伐採する部分木

 (権利の処分等の制限)

第十五条 造林者は、その権利を担保に供し、又は処分することができない。但し、営林局長の許可を受けた場合は、この限りでない。

第十六条 造林者は、部分林契約の目的以外の目的に部分林を使用してはならない。但し、部分林契約の目的を妨げないと認めて営林局長が許可した場合は、この限りでない。

 (部分林契約の解除)

第十七条 農林大臣は、左の各号の一に該当する場合には、部分林契約を解除することができる。但し、造林者の責に帰することができない場合は、この限りでない。

 一 当該契約に定められた植栽期間の始期から一年を経過しても造林者が植栽に着手しないとき。

 二 当該契約に定められた植栽期間が満了しても造林者が植栽を完了していないとき。

 三 植栽を終つた後五年を経過しても成林の見込がないとき。

 四 造林者が当該契約に定められた植栽、手入又は伐採の方法に従わなかつたとき。

 五 造林者が第十三条に掲げる事項の実施を怠つたとき。

 六 造林者が前条の規定に違反したとき。

 七 造林者がその部分林につき罪を犯したとき。

2 前項の規定により部分林契約を解除した場合には、植栽を終つた樹木は、国の所有に帰する。

3 農林大臣は、国又は公共団体において部分林を公用、公共用又は国の企業若しくは公益事業の用に供する必要を生じたときは、部分林契約を解除することができる。

4 農林大臣は、第一項又は前項の規定により部分林契約を解除しようとするときは、造林者に対し、あらかじめ、理由を附して、その旨を通知し、造林者又はその代理人が公開の聴聞において意見を述べ、且つ、有利な証拠を提出する機会を与えなければならない。

5 第三項の規定により部分林契約を解除した場合には、国有財産法第二十四条第二項及び第二十五条(契約解除の場合の損失補償)の規定を準用する。この場合において、同法第二十四条第二項中「借受人」とあるのは「造林者」と読み替えるものとする。

   第五章 共用林野

 (共用林野の設定)

第十八条 農林大臣は、国有林野の経営と当該国有林野の所在する地方の市町村の住民の利用とを調整することが土地利用の高度化を図るため必要であると認めるときは、契約により、当該市町村の住民又は当該市町村内の一定の区域に住所を有する者に対し、これらの者が当該国有林野を左に掲げる用途に共同して使用する権利を取得させることができる。

 一 自家用薪炭の原料に用いる枝又は落枝の採取

 二 自家用の肥料若しくは飼料又はこれらの原料に用いる落葉又は草の採取

 三 自家用薪炭の原木の採取

 四 省令で定める林産物の採取

 五 耕作に附随して飼養する家畜の放牧

2 前項第三号の規定による権利を取得させる場合は、旧来の慣行その他特別の事由があるときに限る。

3 第一項の規定により国有林野を使用する権利を取得させることを内容とする契約(以下「共用林野契約」という。)の相手方は、当該契約に基いて当該国有林野を使用することができる者(以下「共用者」という。)の住所地の属する市町村とする。但し、市町村内の一定の区域に住所を有する者を共用者とする場合には、共用者の全員を相手方とすることを妨げない。

 (共用林野契約の内容)

第十九条 共用林野契約においては、左に掲げる事項を定めなければならない。

 一 共用林野契約の目的たる国有林野(以下「共用林野」という。)の所在及び面積

 二 当該契約の存続期間

 三 採取することができる林産物の種類、数量及び採取方法又は放牧することができる家畜の種類及び頭数

 四 使用の対価(使用の対価を徴しないときは、その旨)

 五 市町村内の一定の区域に住所を有する者を共用者とする場合には、その区域及び共用者としての要件

 六 その他必要な事項

 (共用林野契約の存続期間)

第二十条 共用林野契約の存続期間は、五年をこえることができない。

2 共用林野契約は、更新することができる。

 (使用の対価の免除)

第二十一条 共用林野契約において、使用の対価を徴しない旨の定をすることができるのは、当該契約に共用者が当該林野について第十三条に掲げる事項を行うべき旨の定がある場合に限る。

 (共用者の地位の得喪)

第二十二条 市町村内の一定の区域に住所を有する者を共用者とする共用林野契約においては、共用者が当該区域に住所を有しなくなり、その他当該契約に定める共用者としての要件を欠くに至つたときは、その者は、共用者としての地位を失う。

2 前項の契約においては、共用者以外の者で当該区域内に住所を有し、且つ、当該契約に定める共用者としての要件を備えるものは、省令の定めるところにより当該契約に加入することを当該共用林野を管轄する営林署長及び共用者の代表者に通知することによつて、共用者としての地位を取得する。

 (共用林野契約の解除等)

第二十三条 農林大臣は、共用者が左の各号の一に該当する場合には、共用林野契約を解除し、又はその者の使用を制限し、若しくは禁止することができる。

 一 その共用林野を当該契約で定められた用途以外の用途に使用したとき。

 二 その共用林野につき罪を犯したとき。

 三 当該契約に共用者が第十三条に掲げる事項を行うべき旨の定がある場合において、正当な事由がないのに、その実施を怠つたとき。

2 前項の規定により共用林野契約を解除し、又は使用を制限し、若しくは禁止しようとする場合には、第十七条第四項の規定を準用する。この場合において、「造林者に対し」とあるのは「共用林野契約の相手方又は共用者に対し」と、「造林者又はその代理人」とあるのは「共用林野契約の相手方若しくは共用者又はその代理人」と読み替えるものとする。

 (共用者等の賠償責任)

第二十四条 共用者が共用林野に損害を与えたときは、市町村との共用林野契約である場合には当該市町村及び共用者が、その他の場合には共用者が連帯してその損害を賠償しなければならない。

   附 則

1 この法律は、公布の日から施行する。

2 国有林野法(明治三十二年法律第八十五号)は、廃止する。

3 この法律の施行の際現に貸し付け、又は使用させている国有林野については、その契約期間中は、なお従前の例による。

4 この法律の施行の際現に存する部分林については、その契約期間中は、なお従前の例による。

5 この法律の施行の際現に保護を委託している国有林野については、その委託期間中は、なお従前の例による。

6 国有林野事業特別会計法(昭和二十二年法律第三十八号)の一部を次のように改正する。

  第一条第二項中「第一条」を「第二条」に改め、「及び北海道における国有林野」を削る。

(大蔵・農林・内閣総理大臣署名) 

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