モーターボート競走法
法律第二百四十二号(昭二六・六・一八)
第一章 総則
(この法律の趣旨)
第一条 この法律は、モーターボートの性能の向上等品質の改善、モーターボートに関する海外宣伝その他モーターボートの製造に関する事業の振興に寄与し、あわせて海事思想の普及宣伝と観光事業に資するとともに、地方財政の改善を図るために行うモーターボート競走に関し規定するものとする。
第二章 施行者並びにモーターボート競走会及び全国モーターボート競走会連合会
(競走の施行)
第二条 都道府県及び人口、財政等を考慮して地方財政委員会が指定する市町村(以下「施行者」という。)は、その議会の議決を経て、この法律の規定により、モーターボート競走(以下「競走」という。)を行うことができる。
2 施行者以外の者は、勝舟投票券その他これに類似するものを発売して、競走を行つてはならない。
(競走の実施の委任)
第三条 施行者は、競走の実施を当該都道府県に設立するモーターボート競走会(以下「競走会」という。)に委任することができる。
(競走会及び全国競走会連合会)
第四条 競走会は、競走の実施を目的とし、都道府県内に各一箇を限り設立するものとする。
2 すべての競走会は、国内において一箇の全国モーターボート競走会連合会(以下「全国競走会連合会」という。)を設立し、その会員となるものとし、各会員は、一箇の平等の表決権を有し、多数決をもつて全国競走会連合会の総会の議事を議決する。
3 全国競走会連合会は、モーターボート競走場(以下「競走場」という。)、競走に出場する選手、競走に使用するボート及びモーター及び審判員の登録、各施行者の競走日程の作成その他の競走の実施に関する指導調整並びにモーターボートに関する事項の振興を目的とする。
4 競走会及び全国競走会連合会は、民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条(公益法人の設立)の規定により設立される法人とする。
第三章 競走の実施
(競走場)
第五条 競走は、競走場で行わなければならない。
(登録)
第六条 競走場、競走に出場する選手、競走に使用するボート及びモーター並びに審判員は、全国競走会連合会に登録されたものでなければならない。
2 全国競走会連合会は、登録規準に合致する競走場、選手、ボート、モーター及び審判員については、その登録を拒むことはできない。
(入場料)
第七条 施行者は、競走を開催するときは、入場者から入場料を徴収しなければならない。
(勝舟投票券)
第八条 施行者は、一口金五十円又は百円の勝舟投票券を券面金額で発売することができる。
2 施行者は、前項の勝舟投票券十枚分を一枚をもつて代表する勝舟投票券を発売することができる。
(勝舟投票券の購入等の禁止)
第九条 左の各号の一に該当する者は、勝舟投票券を購入し、又は譲り受けてはならない。但し、第二号に該当する者が、みずからその運営に従事しない競走について、勝舟投票券を購入し、又は譲り受ける場合は、この限りでない。
一 選手、審判員、競走会の役員並びに全国競走会連合会の役員及び職員
二 前号に掲げる者を除き、競走監督官及び競走の執行委員、事務員、会計係員、連絡係員その他の競走の運営に従事する者
(払戻金)
第十条 施行者は、勝舟投票の的中者に対し、その競走についての勝舟投票券の売上金(勝舟投票券の発売金額から第十二条の規定により返還すべき金額を差し引いたもの。以下同じ。)の額の百分の七十五に相当する金額の払戻金を当該勝舟に対する各勝舟投票券にあん分して交付しなければならない。
2 勝舟投票の的中者がない場合における売上金は、その金額の百分の七十五に相当する金額を、当該競走における勝舟以外の出走したモーターボートに投票した者に対し、各勝舟投票券にあん分して払戻金として交付しなければならない。
3 前二項の規定により勝舟投票の的中者又は勝舟投票券を購入した者に交付すべき金額の算出方法及びその交付については、運輸省令で定める。
第十一条 前条の規定により払戻金を交付する場合において、その金額に一円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。
2 前項の端数切捨によつて生じた金額は、施行者の収入とする。
(投票の無効)
第十二条 勝舟投票券を発売した後、左の各号の一に該当する事由が生じたときは、その投票は、無効とする。
一 出走すべきモーターボートがなくなり、又は一隻のみとなつたこと。
二 競走が成立しなかつたこと。
三 競走に勝舟がなかつたこと。
2 発売した勝舟投票券に表示されたモーターボートが出走しなかつた場合は、そのモーターボート(第一着及び第二着となつたモーターボートをその順位で一組として勝舟とする勝舟投票法(以下「連勝式勝舟投票法」という。)にあつてはそのモーターボートの属する組)に対する投票は、無効とする。連勝式勝舟投票法において同一の連勝式番号をつけられたモーターボートを一組とした場合において、表示されたモーターボートのうちいずれか一隻のみが出走したときは、その組に対する投票についても、同様である。
3 前二項の場合においては、当該勝舟投票券を所有する者は、施行者に対して、その券面金額の返還を請求することができる。
(払戻金及び返還金の支払)
第十三条 第十条の規定による払戻金又は前条の規定による返還金は、競走の終了後遅滞なく、当該勝舟投票券と引換に、請求し、且つ、支払うものとする。
(払戻金及び返還金の債権の時効)
第十四条 第十条の規定による払戻金又は第十二条の規定による返還金の債権は、三十日間行わないときは、時効によつて消滅する。
(券面金額及び入場料の返還の禁止)
第十五条 施行者は、第十二条第三項に規定する場合を除くの外、券面金額の返還請求に応ずることができない。入場料についても、同様である。
(競走の公正を確保するための措置)
第十六条 全国競走会連合会は、競走の公正且つ安全な実施を確保するため必要があると認めるときは、モーターボートの出走停止又は選手の出場停止の処分をすることができる。
(競走場内の取締)
第十七条 施行者は、競走場内の秩序を維持するため、入場者の整理、競走に関する犯罪及び不正の防止並びに競走場内における品位及び衛生の保持について必要な措置を講じなければならない。
第十八条 施行者又は競走会は、競走の公正且つ安全な実施を確保し、又は競走場内の秩序を維持するため必要があると認めるときは、左の各号に掲げる処分をすることができる。
一 モーターボートの出走を停止すること。
二 選手の出場を停止すること。
三 入場を拒否し、又は入場者に対し競走場外への退去を命ずること。
第四章 収入及び支出
(施行者の収入)
第十九条 施行者は、勝舟投票券の売上金の額の百分の二十五に相当する金額を自己の収入とするものとする。
(国庫納付金)
第二十条 施行者は、前条の規定により自己の収入とすべき金額の中から、勝舟投票券の売上金の額の百分の三に相当する金額を国庫に納付しなければならない。
(競走会への交付金)
第二十一条 施行者は、競走会に競走の実施を委任したときは、第十九条の規定により自己の収入とすべき金額の中から、勝舟投票券の売上金の額の百分の五を超えない金額を当該競走会に交付しなければならない。
(施行者の負担する実施に要する費用)
第二十二条 施行者は、第十九条の規定により自己の収入とすべき金額から前二条の規定により支出すべき金額を差し引いた残額の一部をもつて、競走の実施につき競走会に委任しない事項に関する経費に充てなければならない。
第五章 雑則
(勝舟投票券の発売停止等)
第二十三条 運輸大臣は、施行者、競走会又は、全国競走会連合会がこの法律若しくはこの法律に基く命令又はこれらに基いてする処分に違反したときは、当該施行者、競走会又は全国競走会連合会に対し、あらかじめ戒告をした上、勝舟投票券の発売の停止その他必要な措置を命ずることができる。
2 運輸大臣は、前項の規定により戒告以外の処分をしようとするときは、あらかじめ、期日及び場所を通知して、当該施行者、競走会又は全国競走会連合会に対し公開による聴聞をしなければならない。但し、急速を要する場合は、事後に聴聞をすることができる。
(競走監督官)
第二十四条 運輸大臣は、運輸省の職員に、その身分を示す証票を携帯させて、勝舟投票券の発売、払戻金及び返還金の交付その他競走の実施に関し、監督を行わせることができる。
2 前項の職員は、競走監督官とする。
(届出又は報告)
第二十五条 運輸大臣は、施行者から、競走の開催、終了及び会計その他必要があると認める事項について届出又は報告を求めることができる。
(委任事項)
第二十六条 この法律に定めるものの外、競走の実施の委任に関する事項、競走場、競走に出場する選手、競走に使用するボート及びモーター並びに審判員の登録規準その他登録に関する事項その他この法律の施行に関し必要な事項は、運輸省令で定める。
第六章 罰則
第二十七条 左の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役若しくは五万円以下の罰金に処し、又はその刑を併科する。
一 第二条第二項の規定に違反した者
二 この法律の規定により行う競走に関し、多数の者に対し財物をもつてかけごとをした者
三 第九条の規定により勝舟投票券の購入又は譲受を禁止されている者であつて前号に規定する行為の相手方となつた者
第二十八条 左の各号の一に該当する者は、五万円以下の罰金に処する。
一 第九条の規定により勝舟投票券の購入を禁止されている者であることを知りながら、その者に対して勝舟投票券を発売した者
二 第九条の規定に違反した者
三 前条第一号に規定する行為の相手方となつた者
四 前条第三号に規定する者を除き、同条第二号に規定する行為の相手方となつた者
第二十九条 競走会若しくは全国競走会連合会の役員、競走の執行委員その他の競走の運営に従事する者又は選手が、その職務又は競走に関して、賄ろを収受し、又はこれを要求し、若しくは約束したときは、三年以下の懲役に処する。
2 前項に規定する者が、その職務又は競走に関して、賄ろを収受し、又はこれを要求し、若しくは約束し、よつて不正の行為をなし、又はなすべき行為をしなかつたときは、五年以下の懲役に処する。
3 前二項の場合において、収受した賄ろは、没収する。もし、その全部又は一部を没収することができない場合には、その価額を追徴する。
第三十条 前条第一項又は第二項に規定する賄ろを供与し、又はその申込若しくは約束をした者は、三年以下の懲役に処する。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 運輸省設置法(昭和二十四年法律第百五十七号)の一部を次のように改正する。
第二十四条第一項第五号の次に次の一号を加える。
六 モーターボート競走の施行に関すること。
3 地方財政委員会設置法(昭和二十五年法律第二百十号)の一部を次のように改正する。
第四条第一項中第二十四号を第二十五号とし、以下一号ずつ繰り下げ、第二十三号の次に次の一号を加える。
二十四 モーターボート競走を行うことのできる市町村を指定すること。
(内閣総理・運輸大臣署名)