特別鉱害復旧臨時措置法

法律第百七十六号(昭二五・五・一一)

目次

 第一章 総則(第一条―第四条)

 第二章 復旧工事の施行(第五条―第十二条)

 第三章 特別鉱害復旧公社(第十三条―第三十四条)

 第四章 雑則(第三十五条・第三十六条)

 第五章 罰則(第三十七条―第四十二条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、石炭鉱業による特別の鉱害を急速且つ計画的に復旧することによつて、公共の福祉を確保し、あわせて石炭鉱業の健全な発達に資することを目的とする。

 (用語の定義)

第二条 この法律において「鉱業権」とは、旧重要鉱物増産法(昭和十三年法律第三十五号)附則第三項の規定によりなおその効力を有する同法第十七条ノ二の規定による使用権及び石炭鉱業権等臨時措置法(昭和二十三年法律第百五十四号)第十七条の規定による使用権を含み、「鉱業権者」とは、これらの使用権を有する者を含む。

2 この法律において「特別鉱害」とは、第三条第一項の規定により通商産業大臣が認定した鉱害をいう。

3 この法律において「復旧工事」とは、特別鉱害の発生している土地その他の物件が本来有していた効用を回復するように、その土地その他の物件について施行する工事をいう。

 (特別鉱害の認定及び鉱業権者の指定)

第三条 通商産業大臣は、主務大臣の請求又は地方公共団体若しくは利害関係人の請求に基き、左の各号に該当する鉱害を認定しなければならない。但し、その請求又は申請は、この法律施行の日から九十日以内にすることを要し、通商産業大臣は、その請求又は申請のあつた日から六箇月以内に左の各号に該当する鉱害であるかどうかを認定しなければならない。

 一 太平洋戦争中戦争遂行のための緊急な国の要請に基く石炭増産の応急措置としてした法令による命令又はこれに準ずると認められるべき行政上の措置に基いて、通常の場合は鉱害の防止のため掘採しない箇所を掘採し通常の場合は鉱害の防止のため掘採方法を制限する箇所をその制限をしないで掘採し、その他鉱害の防止のため通常講ずべき措置を講じなかつたために発生したもの。

 二 復旧工事を施行するのに適し、且つ、危害の防止、交通の確保、民生の安定その他公共の福祉を確保するために急速に復旧工事を施行する必要があるもの。

2 通商産業大臣は、特別鉱害について、特別鉱害の発生の時における当該鉱区の鉱業権者、特別鉱害の発生の時鉱業権が消滅しているときは、鉱業権消滅の時における当該鉱区の鉱業権者を指定しなければならない。

3 前項の場合において、特別鉱害が二以上の鉱区の鉱業権者の作業のうちいずれによつて生じたかを知ることができないときは、その全部の鉱業権者を指定しなければならない。

4 前二項の場合において、特別鉱害の発生の後鉱業権者がその鉱業権を譲渡したときは、特別鉱害の発生の時の鉱業権者及びその後の鉱業権者を指定しなければならない。

5 通商産業大臣は、第一項の規定により認定した特別鉱害及び第二項から前項までの規定により指定した鉱業権者又は鉱業権者であつた者(以下「被指定者」という。)を公告しなければならない。

 (処分、手続その他の行為の効力)

第四条 この法律又はこの法律に基く命令の規定によつてした処分、手続その他の行為は、石炭を目的とする鉱業権者、被指定者、復旧工事の施行者又は関係人の承継人に対しても、その効力を有する。

   第二章 復旧工事の施行

 (工事の施行者)

第五条 復旧工事の施行者は、他の法令に定のあるときは、それによるものとする。

2 前項に規定する場合の外、復旧工事に要する費用の全部又は一部が国の公共事業費によつて支弁されるときは、その復旧工事の施行者は、主務大臣が定める。

3 前二項に規定する場合の外、復旧工事の施行者は、その特別鉱害に関する被指定者(第三条第三項及び第四項の規定による被指定者の場合においては、その被指定者のうち通商産業大臣の定める者)とする。但し、農地及び上下水道の復旧工事の施行者については、主務大臣は、適当と認める者を選定し、その同意を得て、その者を復旧工事の施行者とすることができる。

4 前項の規定は、第二十五条第一項の認可を受けた者が同項の規定により復旧工事の施行者となることを妨げるものではない。

5 被指定者が工事施行の能力を欠くとき、その他特別の事由により工事を施行するのに適しないと認めるときは、第三項本文の規定にかかわらず、通商産業大臣は、隣接地域における復旧工事の施行者その他適当と認める者を選定し、その同意を得て、その者を復旧工事の施行者とすることができる。

6 通商産業大臣は、前項の規定により適当な復旧工事の施行者を定めることができないときは、特別鉱害復旧公社を復旧工事の施行者とすることができる。

 (工事計画等の認可)

第六条 復旧工事(主務大臣の自ら施行する工事を除く。)の施行者は、主務大臣の指示を受けたときは、その工事計画、工事の完了の時期並びに工事に要する費用及びその費用のうち特別鉱害復旧公社の負担となる費用について、主務大臣の定める期間内に、その認可を申請しなければならない。

2 前項の認可を受けた者は、認可を受けた事項を変更しようとするときは、主務大臣の認可を受けなければならない。

3 前二項の認可を申請するときは、その申請書に、その特別鉱害を現に受けている者であつて、その認可を申請する事項に利害関係を有している者の同意書を添附しなければならない。但し、その同意書を得ることができないときは、その事由を記載した書面を添附しなければならない。

4 主務大臣は、必要があると認めるときは、第一項若しくは第二項の認可をする場合においてその申請を変更して認可し、又は第一項若しくは第二項の認可をした事項を変更することができる。

5 主務大臣が自ら施行する工事の施行、第一項の指示、同項及び第二項の認可並びに前項の規定による認可事項の変更は、通商産業大臣が主務大臣に協議して定める基準に従つて行わなければならない。

 (認可事項の公告)

第七条 主務大臣は、前条第一項の認可をしたときは、その特別鉱害並びに復旧工事の施行者及び完了の時期を公告しなければならない。これらの事項に変更のあつたときも、同様とする。

 (工事施行の義務)

第八条 第六条第一項の認可を受けた復旧工事の施行者は、同条の規定による工事計画に従つて復旧工事を施行し、且つ、同条の規定による完了の時期までにこれを完了しなければならない。

2 前項に規定する復旧工事の施行者が同項の規定に違反して、復旧工事を施行し、又は施行しない場合において、必要と認めるときは、主務大臣は、第六条第一項の認可を取り消すことができる。

3 主務大臣は、前項の規定による取消をしたときは、その旨を公告しなければならない。

 (工事の施行の承継)

第九条 第六条第一項の認可を受けた復旧工事の施行者が鉱業権の譲渡その他特別の事由により、工事の施行を継続することができない場合において、鉱業権の譲受人その他適当と認められる者を定め、その者と連名で工事施行の承継につき主務大臣に申請したときは、主務大臣は、その者にその工事の施行を承継させることができる。

 (工事の着手及び完了の届出)

第十条 復旧工事(主務大臣の自ら施行する工事を除く。)の施行者は、その工事に着手したとき、及びこれを完了したときは、遅滞なく主務大臣にその旨を届け出なければならない。

 (復旧費の負担)

第十一条 復旧工事に要する費用は、国又は地方公共団体の負担となるもの及び第二十五条第一項の規定により同項の認可を受けた者の負担となるものを除いては、特別鉱害復旧公社が負担する。但し、他の法令の定のある場合その他特別の事由のある場合において、国、地方公共団体及び第三条第二項から第四項までに規定する鉱業権者又は鉱業権者であつた者としての被指定者以外に、その費用の全部又は一部を負担する者のあるときは、その者の負担となる費用については、この限りでない。

2 前項の場合において、その復旧工事の施行の結果著しく利益を受ける者があるときは、主務大臣は、その利益を受ける限度において負担すべき工事に要する費用の額を定め、これを特別鉱害復旧公社に納付させることができる。

3 第一項本文の規定による特別鉱害復旧公社の負担は、第六条第一項若しくは第二項の認可を受けた特別鉱害復旧公社の負担となる費用又は同条第四項の規定により変更された特別鉱害復旧公社の負担となる費用の額の範囲内で行う。

 (損害賠償の責任の消滅)

第十二条 この法律の規定により復旧工事が施行されたときは、その限度において、鉱業法(明治三十八年法律第四十五号)第七十四条ノ二(旧重要鉱物増産法附則第三項の規定によりなおその効力を有する同法第十七条ノ二十二及び石炭鉱業権等臨時措置法第三十三条において準用する場合を含む。)の規定による損害賠償の責任は、消滅したものとみなす。

   第三章 特別鉱害復旧公社

 (目的及び法人格)

第十三条 特別鉱害復旧公社(以下「復旧公社」という。)は、国及び地方公共団体の負担とならない復旧工事に要する費用の供給を確保し、石炭鉱業による特別の鉱害の急速且つ計画的な復旧に資するためにこの法律に基き設立される公法上の法人とする。

 (事務所)

第十四条 復旧公社は、主たる事務所を福岡市に置く。

2 復旧公仕は、通商産業大臣の認可を受けて、必要な地に従たる事務所を置くことができる。

 (定款)

第十五条 復旧公社は、定款をもつて左の事項を規定しなければならない。

 一 目的

 二 名称

 三 事務所の所在地

 四 役員に関する事項

 五 業務及びその執行に関する事項

 六 会計に関する事項

 七 公告の方法

2 定款は、通商産業大臣の認可を受けて、変更することができる。

 (登記)

第十六条 復旧公社は、主たる事務所の変更、従たる事務所の新設その他政令で定める事項について、政令で定める手続により、登記しなければならない。

2 前項の規定により登記を必要とする事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。

 (非課税)

第十七条 復旧公社には、所得税及び法人税を課さない。

 (民法の準用)

第十八条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)、第五十条(法人の住所)、第五十四条(代表権の制限)及び第五十七条(法人と理事との利益が反する場合)の規定は、復旧公社に準用する。この場合においては、同法第五十七条中「此場合ニ於テハ前条ノ規定ニ依リテ特別代理人ヲ選任スルコトヲ要ス」とあるのは「此場合ニ於テハ監事法人ヲ代表ス」と読み替えるものとする。

 (役員)

第十九条 復旧公社に、役員として、理事長一人並びに理事及び監事各一人以上を置く。

2 理事長は、復旧公社を代表し、その業務を総理する。

3 理事は、定款の定めるところにより、復旧公社を代表し、理事長を補佐して復旧公社の業務を執行し、理事長に事故があるときは、その職務を行う。

4 監事は、復旧公社の業務を監査する。

 (役員の任命)

第二十条 理事長、理事及び監事は、通商産業大臣が任命する。

 (代理人の選任)

第二十一条 理事長及び理事は、定款の定めるところにより、主たる事務所又は従たる事務所の業務に関し、一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する代理人を選任することができる。

 (業務)

第二十二条 復旧公社は、第十三条の目的を達成するため、左の業務を行う。

 一 石炭を目的とする鉱業権者等の納付金の徴収

 二 復旧工事の施行者に対する工事に要する費用の支払

 三 前二号の業務の外、石炭鉱業による特別の鉱害の復旧に必要な金銭の出納

 四 復旧公社が復旧工事の施行者として定められた場合において、その復旧工事の施行

2 復旧公社は、前項の業務の外、通商産業大臣の認可を受けて、その目的を達成するため必要な業務を行うことができる。

 (役員及び職員の地位)

第二十三条 復旧公社の役員及び職員(常時復旧公社に勤務して一定の報酬を受ける職員であつて、二箇月以内の期間を定めて雇用される者以外の者をいう。以下同じ。)は、国家公務員とする。

2 復旧公社の役員及び職員は、通商産業大臣が通商産業省の職員のうちから兼ねて任命することができる。

3 通商産業省の職員のうちから兼ねて任命された復旧公社の役員及び職員は、復旧公社から復旧公社の役員又は職員としての報酬を受けない。

 (復旧公社に対する納付金)

第二十四条 石炭を目的とする鉱業権者であつてその事業場の中に特別鉱害に係る事業場を有している者(特別鉱害が二以上の鉱区の二人以上の鉱業権者の作業のうちいずれによつて生じたかを知ることができないときは、第三条第三項の規定により指定された全部の鉱業権者を、特別鉱害に係る鉱業権の全部が消滅しているときは、その特別鉱害に関する被指定者を含む。)は、復旧公社がその業務を行うのに要する費用に充てるため、一定の金額を通商産業大臣の定める期日までに復旧公社に納付しなければならない。

2 前項の一定の金額は、第一号及び第二号の事業場を有する納付義務者については、第一号及び第二号の金額を合算した金額とし、第一号の事業場のみを有する納付義務者については、同号の金額とする。但し、被指定者の鉱業権が消滅しているとき、被指定者が現に石炭を掘採していないとき、その他被指定者についてこの算定方法により同項の一定の金額を定めることが適当でないときは、通商産業大臣は、当該特別鉱害の復旧工事に要する費用の二分の一をこえない範囲内において、当該特別鉱害の発生原因、被指定者の資力その他の事情を考慮して、その額を定めることができる。

 一 石炭一トンにつき二十円をこえない範囲内において通商産業大臣が定める金額に、納付義務者が昭和二十四年九月十六日以降における通商産業大臣の定める一定期間ごとに当該特別鉱害に係る事業場において掘採した石炭の数量を乗じて得た金額

 二 石炭一トンにつき十円をこえない範囲内において通商産業大臣が定める金額に、納付義務者が昭和二十四年九月十六日以降における通商産業大臣の定める一定期間ごとに前号の事業場以外の事業場において掘採した石炭の数量を乗じて得た金額

3 掘採した石炭が低品位であるとき、その他特別の事情がある場合において、前二項の規定により一定の金額を納付させることが著しく不適当であるときは、通商産業大臣は、命令で定める基準に従い、第一項に規定する納付義務者に対し、同項の規定による納付義務を免除し、又は前二項の規定により納付する金額を減額することができる。

4 通商産業大臣は、第二項各号の規定により石炭一トン当りの金額を定め、又は同項但書の規定により第一項の一定の金額を定めたときは、遅滞なくその旨を公告しなければならない。

 (被指定者がその者の負担において復旧工事の施行者となる場合)

第二十五条 前条第一項に規定する納付義務者は、その者が同条第二項の規定により納付すべき金額の総額が、その者に係る特別鉱害の復旧工事に要する費用の総額から国及び地方公共団体の負担となる費用並びに第十一条第一項但書に規定する者の負担となるべき費用を控除した額に相当する金額をこえるときは、当該特別鉱害の復旧工事(国若しくは地方公共団体又は日本国有鉄道が復旧工事に要する費用の全部又は一部を負担すべき場合においては、その復旧工事を除く。)について、その工事計画及び工事の完了の時期につき通商産業大臣の認可を受け、その者の負担(第十一条第一項但書の規定により費用の全部又は一部を負担する者があるときは、その費用については、その者の負担)において、当該復旧工事の施行者となることができる。

2 前項の規定の適用については、納付義務者が前条第二項本文の規定により納付すべき金額の総額は、その者が、同項第一号の事業場又は同項第二号の事業場において、それぞれ、昭和二十四年九月十六日からこの法律施行後五年を経過する時までに、その者が同項第一号の事業場又は同項第二号の事業場において昭和二十四年中に掘採した石炭の数量のそれぞれ五・五倍の数量の石炭を掘採するものとみなし、同項本文の規定を適用して算出した金額とする。

3 第一項の認可の申請は、当該納付義務者の納付すべき金額に係る前条第四項の規定による公告があつた日から六十日以内にしなければならない。

4 第六条第二項から第五項まで及び第七条から第九条までの規定は、第一項の認可の申請に関し準用する。この場合においては、これらの規定中「主務大臣」とあるのは「通商産業大臣」と読み替えるものとする。

5 第一項の認可を受けた者については、その者に係る特別鉱害の復旧工事に要する費用から、国及び地方公共団体の負担となる費用、その者が同項の規定により施行する復旧工事に要すべき費用並びに第十一条第一項但書に規定する者の負担となるべき費用を控除した額に相当する金額をもつて、前条第一項の一定の金額とする。

6 第四項において準用する第八条第二項の規定による取消があつたときは、前項の規定は、その適用がなかつたものとみなす。この場合においては、当該施行者が既に支出し、又は支出すべき金額のうち、通商産業大臣が、第四項において準用する第八条第一項の規定に従つて施行された工事に要したものと認めた金額は、前条の規定により納付すべき金額から控除する。

7 第四項において準用する第九条の規定による工事の施行の承継があつたときは、その承継人は、当該工事に関し、被承継人の権利義務を承継する。

 (復旧公社に対する寄附金)

第二十六条 復旧公社は、復旧公社の負担となる復旧工事に要する費用に充てるため、地方公共団体、石炭を目的とする鉱業権者その他の者から寄附金を受けることができる。

 (復旧公杜の復旧費の支払義務)

第二十七条 復旧公仕は、第六条第一項の認可を受けた復旧工事の施行者から、その復旧工事に要する費用のうち、通商産業大臣の定める毎一定期間内に施行する工事に要する費用であつて、第十一条第一項の規定により復旧公社の負担となるものにつき、支払の請求があつたときは、その金額を支払わなければならない。

 (復旧公社に対する返納金)

第二十八条 第八条第二項の規定による取消があつたときは、当該施行者は、復旧公社から前条の規定により既に支払を受けた金額のうち、主務大臣が第八条第一項の規定に従つて施行された工事に要したもの以外のものと認めた金額を復旧公社に返納しなければならない。

 (強制徴収権)

第二十九条 第十一条第二項に規定する利益を受ける者が同項の規定により主務大臣の定める金額を納付しないとき、鉱業権者若しくは被指定者が第二十四条第一項の一定の金額を納付しないとき、又は前条に規定する復旧工事の施行者が同条の規定により返納すべき金額を返納しないときは、市町村(特別区のある地においては特別区。以下同じ。)は、復旧公社の請求により、地方税の滞納処分の例によつてこれを処分する。この場合は、復旧公社は、その徴収金額の百分の四を市町村に交付しなければならない。

2 市町村が前項の請求を受けた日から三十日以内にその処分に着手せず、又は九十日以内にこれを終了しないときは、復旧公社は、地方税の滞納処分の例により、通商産業大臣の認可を受けて、その処分をすることができる。

3 前項の規定による徴収金の先取特権の順位は、特別区税又は市町村税に次ぐものとし、その時効については、市町村税の例による。

 (事業年度)

第三十条 復旧公社の事業年度は、毎年四月に始まり、翌年三月に終る。

 (監督)

第三十一条 復旧公社は、通商産業大臣が監督する。

 (財産目録等の承認)

第三十二条 復旧公社は、毎事業年度に、財産目録、貸借対照表及び損益計算書を作成し、当該事業年度経過後二箇月以内に、これを通商産業大臣に提出し、その承認を受けなければならない。

 (監督命令)

第三十三条 通商産業大臣は、復旧公社に対し、監督上必要な命令をすることができる。

 (報告及び検査)

第三十四条 通商産業大臣は、必要があると認めるときは、復旧公社から報告をさせ、又は当該職員に復旧公社の業務及び財産の状況を検査させることができる。

2 前項の規定により検査をする職員は、その身分を示す証票を携帯し、且つ、関係人の請求があるときは、これを呈示しなければならない。

   第四章 雑則

 (報告及び立入検査)

第三十五条 主務大臣は、特別鉱害の認定若しくは第三条第二項から第四項までの規定による鉱業権者若しくは鉱業権者であつた者の指定を行い、又は復旧工事の施行若しくは復旧工事に要する費用の負担の適正を図るため特に必要があると認めるときは、石炭を目的とする鉱業権者若しくは石炭を目的とする鉱業権者であつた者、復旧工事の施行者、特別鉱害を現に受けている者若しくは第十一条第二項に規定する利益を受ける者から報告をさせ、又は当該職員に左に掲げる場所に立ち入り、特別鉱害若しくは復旧工事の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。

 一 石炭鉱業の事業場

 二 特別鉱害が発生している場所又は第三条第一項各号に該当する鉱害が発生していると認められる場所

 三 復旧工事を施行している作業場若しくは復旧工事を施行しようとする作業場又はこれらの附属材料置場

 四 石炭を目的とする鉱業権者、石炭を目的とする鉱業権者であつた者、復旧工事の施行者又は第十一条第二項に規定する利益を受ける者の事務所又は営業所

2 前項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

3 前条第二項の規定は、第一項の規定により立入検査をする職員に準用する。

 (権限の委任及び訴訟)

第三十六条 通商産業大臣は、この法律による権限の一部を石炭局長に委任することができる。

2 この法律の規定による通商産業大臣その他の行政官庁の処分に不服のある者は、その不服の理由が事実問題であると法律問題であるとを問わず、その処分のあつた日から九十日以内に、裁判所に訴を提起することができる。

   第五章 罰則

第三十七条 第六条第一項の規定に違反して、同項の主務大臣の定める期間内に認可を申請しなかつた者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。

第三十八条 第八条第一項(第二十五条第四項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、工事計画に従わないで復旧工事を施行し、又は工事の完了の時期までに復旧工事を完了しなかつた者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。

第三十九条 左の各号の一に該当する者は、六月以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。

 一 第十条の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者

 二 第三十四条第一項又は第三十五条第一項の規定に違反して、報告をせず、又は虚偽の報告をした者

 三 第三十四条第一項又は第三十五条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者

第四十条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関して前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。

第四十一条 左の場合においては、復旧公社の理事長、理事又は監事を一万円以下の過料に処する。

 一 第二十二条に規定されていない業務を行つたとき。

 二 第三十三条の規定による通商産業大臣の命令に違反したとき。

第四十二条 左の場合においては、復旧公社の理事長、理事又は監事を五千円以下の過料に処する。

 一 この法律又はこの法律に基く政令に違反して、登記することを怠り、又は不実の登記をしたとき。

 二 第三十二条の規定による書類に記載すべき事項を記載せず、又は不実の記載をしたとき。

   附 則

1 この法律施行の期日は、公布の日から起算して三十日をこえない期間内において、政令で定める。

2 この法律は、施行の日から五年を経過した時に、その効力を失う。但し、その時までにした行為に対する罰則の適用及び復旧公社の清算に関しては、この法律は、その時以後もなおその効力を有する。

3 復旧公社は附則第十三項の規定による引渡の日に解散するものとし、その解散に関し必要な事項は、政令で定める。

4 通商産業大臣は、設立委員を命じ、復旧公社の設立に関する事務を処理させる。

5 設立委員は、定款を作成して、通商産業大臣の認可を受けなければならない。

6 前項の認可があつたときは、設立委員は、遅滞なくその事務を復旧公社の理事長に引き継がなければならない。

7 理事長が前項の事務の引継を受けたときは、理事長、理事及び監事の全員は、遅滞なく設立の登記をしなければならない。

8 復旧公社は、設立の登記をすることによつて成立する。

9 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。

  第十九条第七号中「又ハ閉鎖機関整理委員会」を「、閉鎖機関整理委員会又ハ特別鉱害復旧公杜」に、「又ハ閉鎖機関整理委員会令」を「、閉鎖機関整理委員会令又ハ特別鉱害復旧臨時措置法」に改める。

10 印紙税法(明治三十二年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。

  第五条第六号ノ八の次に次の一号を加える。

  六ノ九 特別鉱害復旧公社ノ業務ニ関シ発スル証書帳簿

11 経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律(昭和十九年法律第四号)の一部を次のように改正する。

  別表乙号第三十一号の次に次の一号を加える。

  三十二 特別鉱害復旧公社

12 地方税法(昭和二十三年法律第百十号)の一部を次のように改正する。

  第十三条第十五号の次に次の一号を加える。

  十五の二 特別鉱害復旧公社の事業

13 この法律の規定による復旧公社の業務は、昭和二十五年十二月三十一日又はそれより早い時に通商産業省に引き渡さなければならない。

(内閣総理大臣・法務総裁・大蔵・厚生・農林・通商産業・運輸・建設大臣・経済安定本部総裁署名) 

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