農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律
法律第百六十九号(昭二五・五・一〇)
(目的)
第一条 この法律は、農地、農業用施設、林業用施設及び漁港施設(以下「農地等」という。)の災害復旧事業を行う者に対し、その災害復旧事業に要する費用につき国が補助を行い、もつて農林水産業の維持を図り、あわせてその経営の安定に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律で「農地」とは耕作の目的に供される土地をいい、「農業用施設」とは農地の利用又は保全上必要な公共的施設てあつて左に掲げるものをいう。
一 かんがい排水施設
二 農業用道路
三 農地又は農作物の災害を防止するため必要な施設
2 この法律で「林業用施設」とは、林地の利用又は保全上必要な公共的施設であつて左に掲げるものをいう。
一 林地荒廃防止施設
二 林道
3 この法律で「漁港施設」とは、漁業の根拠地となる水域及び陸域内にある施設であつて、左に掲げるものをいう。
一 外かく施設
二 けい留施設
三 水域施設
4 この法律で「災害」とは、暴風、こう水、高潮、地震その他の異状な天然現象により生じた災害をいう。
5 この法律で「災害復旧事業」とは、災害によつて必要を生じた事業で、災害にかかつた農地等を原形に復旧することを目的とするもののうち、一箇所の工事の費用が十五万円以上のものをいう。
6 災害によつて必要を生じた事業で、災害にかかつた施設(農地を含む。以下同じ。)を原形に復旧することが著しく困難又は不適当な場合においてこれに代るべき必要な施設をすることを目的とするもののうち、一箇所の工事の費用が十五万円以上のものは、この法律の適用については、災害復旧事業とみなす。
7 前二項の場合において、一の施設について災害にかかつた箇所が五十メートル(漁港施設にあつては二十メートル。以下同じ。)以内の間隔で連続しているものに係る工事並びに一の施設について災害にかかつた箇所が五十メートルをこえる間隔で連続しているものに係る工事又は二以上の施設にわたる工事で当該工事を分離して施行することが当該施設の効用上困難又は不適当なものは、一箇所の工事とみなす。但し、当該工事を施行する者が二以上あるものについては、この限りでない。
(補助の対象及び補助率)
第三条 国は、農地等の災害復旧事業について、当該事業を施行する者に対し、予算の範囲内で、その事業費(前条第六項に規定する事業のうち原形に復旧することが不適当な場合に之に代るべき必要な施設をすることを目的とするものについては、当該事業の事業費が当該施設を原形に復旧するものとした場合に要する金額をこえる場合においては、原形に復旧するものとした場合に要する金額に相当する金額。以下同じ。)の一部を補助することができる。
2 前項の規定により国が行う補助の比率は、左の区分による。
一 農地に係るもの 当該災害復旧事業の事業費の十分の五
二 農業用施設に係るもの 当該災害復旧事業の事業費の十分の六・五
三 林業用施設に係るもの
イ 林地荒廃防止施設に係るもの 当該災害復旧事業の事業費の三分の二
ロ 林道に係るもの 当該災害復旧事業の事業費の十分の五
四 漁港施設に係るもの
イ 都道府県又はその機関の維持管理に属する施設に係るもので当該都道府県が施行するもの 当該災害復旧事業の事業費の十分の六・五
ロ 市町村、特別地方公共団体(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第一条に規定するものをいう。)若しくはそれらの機関又は水産業協同組合(以下「市町村等」という。)の維持管理に属する施設に係るもので当該市町村等の施行するもの
当該災害復旧事業の事業費の十分の四・五。但し、当該都道府県が当該災害復旧事業につき当該市町村等に対して行う補助金の交付又は市町村等の負担金の免除の額のその事業費に対する比率とあわせて十分の十をこえる場合は、そのこえる部分を減じた比率。
(補助金の返還)
第四条 前条の規定により補助金の交付を受けた者は、その交付を受けた年度において当該補助の目的である災害復旧事業の事業費に剰余を生じたときは、その交付を受けた補助金のうち災害復旧事業費の剰余額に同条の比率を乗じて得た額に相当する金額を、当該年度の終了後遅滞なく国に返還しなければならない。
2 農林大臣は、前条の規定により補助金の交付を受けた者がその補助金を受けた年度において当該補助の目的である災害復旧事業にその補助金を使用しないとき、当該補助の目的に反してその補助金を使用したとき、又は当該補助の目的である工事の施行が著しく不適当であるときは、その者に対し、補助金の全部又は一部の返還を命ずることができる。
3 前項の規定により補助金の返還を命ぜられた者は、その返還を命ぜられた金額を遅滞なく国に返還しなければならない。
(適用除外)
第五条 この法律は、左に掲げる災害復旧事業については適用しない。
一 経済効果の小さいもの
二 維持工事とみるべきもの
三 明らかに設計の不備又は工事の施行の粗漏に基因して生じたものと認められる災害に係るもの
四 はなはだしく維持管理の義務を怠つたことに基因して生じたものと認められる災害に係るもの
五 災害復旧事業以外の事業の施行中に生じた災害に係るもの
六 土砂流入による農地の災害復旧事業のうち、その筆における流入土砂の平均の厚さが、粒径一ミリメートル以下の土砂にあつては二センチメートル、粒径〇・二五ミリメートル以下の土砂にあつては五センチメートルに満たない農地に係るもの
七 耕土流失による農地の災害復旧事業のうち、その筆における流失耕土の平均の厚さが一割に満たない農地に係るもの
八 災害により搬出不能となつた用薪材の量が二千石に満たない林道その他農地等のうち主務大臣の定める小規模な施設に係るもの
九 地方公共団体(ロにあつては都道府県)が左の基準以上の助成を行わないもの
イ 農地、農業用施設又は林道に係るもの 当該災害復旧事業の事業費の十分の一に相当する額の補助金の交付又は負担金の免除
ロ 市町村等の維持管理に属する漁港施設に係るもの 当該災害復旧事業の事業費の十分の二・五に相当する額の補助金の交付又は負担金の免除
(都道府県知事の指導)
第六条 都道府県知事は、農地等の災害復旧事業につきこの法律により補助を受けて工事を行う者に対し、当該災害復旧事業を適正に実施させるため、必要な調査を行い、報告を求め、又は事業の施行に関し必要な指示をすることができる。
(他の法律との関係)
第七条 この法律により国が補助を行う災害復旧事業については、都道府県災害土木費国庫負担ニ関スル法律(明治四十四年法律第十五号)による補助は行わない。
(実施規定)
第八条 この法律の実施のための手続その他その執行について必要な事項は、政令で決める。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行し、昭和二十五年四月一日から適用する。
2 昭和二十一年に発生した南海震災及び昭和二十二年に新潟県において発生した融雪地すべりによる農地及び農業用施設の災害復旧事業の事業費に対する昭和二十五年度における補助の比率については、第三条の規定にかかわらず、左の区分によるものとする。
災害別 |
県別 |
災害を受けた種目別 |
|
農地 |
農業用施設 |
||
南海震災 |
高知 |
十分の八・五 |
十分の九 |
和歌山 |
十分の八 |
十分の八・五 |
|
徳島 |
十分の七・五 |
十分の八・五 |
|
三重 |
十分の七・五 |
十分の八・五 |
|
香川 |
― |
十分の八・五 |
|
融雪地すべり |
新潟 |
十分の九 |
十分の八・五 |
(大蔵・農林大臣・経済安定本部総裁・内閣総理大臣署名)