農林物資規格法
法律第百七十五号(昭二五・五・一一)
(法律の目的)
第一条 この法律は、適正且つ合理的な農林物資の規格を制定し、これを普及させることによつて、農林物資の品質の改善、生産の合理化、取引の単純公正化及び使用又は消費の合理化を図り、あわせて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律で「農林物資」とは、国内において生産される農産物、林産物、畜産物及び水産物並びにこれらを原料又は材料として製造し、又は加工した物資であつて政令で定めるものをいう。
2 この法律で「日本農林規格」とは、第八条から第十一条までの規定により制定された農林物資の規格をいう。
(農林物資規格調査会)
第三条 農林省に農林物資規格調査会(以下「調査会」という。)を置く。
2 調査会は、農林大臣の諮問に応じて、左に掲げる事項を調査審議し、その結果を農林大臣に報告するものとする。
一 第八条、第九条第二項、第十二条及び第十六条第三項の規定による目本農林規格の制定、改正又は廃止に関する事項
二 第二十二条第二項の規定による日本農林規格による格付に関する事項
3 調査会は、日本農林規格の制定、改正又は廃止について調査研究し、その結果必要と認める事項を農林大臣に建議することができる。
第四条 調査会は、委員五十人以内で組織する。
2 委員は、関係行政機関の職員及び農林物資の規格に関し学識経験のある者のうちから、農林大臣が任命する。
3 委員は、実質的に利害関係がある各方面を代表する者でなければならない。
4 学識経険のある者のうちから任命された委員の任期は、三年とする。但し、特別の事由があるときは、任期中これを解任することを妨げない。
第五条 調査会に委負の互選による会長を置く。
2 会長は、調査会の会務を総理する。
第六条 特別な事項を調査するため必要があるときは、調査会に専門委員を置くことができる。
2 専門委員は、会長の命を受け、専門の事項を調査する。
3 専門委員は、会長の申出により、農林大臣が任命する。
第七条 前四条及び国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)に定めるものの外、調査会に関しこの法律の範囲内において必要な事項は、省令で定める。
(日本農林規格の制定)
第八条 農林大臣は、日本農林規格を制定しようとするときは、農林物資の種類を定め、あらかじめ調査会の議に付さなければならない。
第九条 都道府県又は利害関係人は、省令で定める手続に従い、農林物資の種類を定め、原案を具して、日本農林規格を制定すべきことを農林大臣に申し出ることができる。
2 農林大臣は、前項の規定による申出を受けたときは、その申出に係る農林物資について日本農林規格を制定すべきかどうかについて調査会の意見を徴し、その結果、これを制定すべきものと認めるときは、前項の原案を調査会に付議し、これを制定する必要がないと認めるときは、理由を附してその旨を申出人に通知しなければならない。
第十条 調査会は、省令で定める公正な手続に従い、日本農林規格の案を審議し、その結果を農林大臣に答申しなければならない。
2 調査会は、日本農林規格の案を審議するため必要があると認めるときは、公聴会を開いて利害関係人及び学識経験のある者の意見をきくことができる。
3 前項に定めるものの外、公聴会について必要な事項は、省令で定める。
第十一条 農林大臣は、調査会が制定すべきものと答申した日本農林規格の案がすべての実質的な利害関係を有する者の意向を反映し、且つ、その適用に当つて同様な条件の下にある者に対して不公正に差別を附するものでなく、適当であると認めるときは、これを日本農林規格として制定しなければならない。
(日本農林規格の改正及び廃止)
第十二条 前四条の規定は、日本農林規格の改正又は廃止に準用する。
(公示)
第十三条 日本農林規格の制定、改正又は廃止は、その施行期日を定め、その期日の少くとも三十日前に公示してしなければならない。
(日本農林規格の呼称の禁止)
第十四条 何人も、日本農林規格でない農林物資の規格について日本農林規格又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。
(都道府県の定める規格)
第十五条 都道府県は、日本農林規格の制定されている農林物資については、規格を定めることができない。
2 農林物資について都道府県の定めた規格がある場合において、当該農林物資について日本農林規格が施行されたときは、都道府県の定めた当該規格は、その効力を失う。
(公聴会)
第十六条 日本農林規格に実質的な利害関係を有する者は、日本農林規格がすべての実質的な利害関係を有する者の意向を反映し、又はその適用に当つて同様な条件の下にある者に対して不公正に差別を附するものでないかどうかについて、農林大臣に公聴会の開催を請求することができる。
2 農林大臣は、前項の請求があつたときは、公聴会を開かなければならない。
3 農林大臣は、公聴会において明らかにされた事実を検討し、日本農林規格の改正を必要と認めるときは、その改正について調査会に適切な審議を行わせなければならない。
4 前三項に定めるものの外、公聴会について必要な事項は、省令で定める。
(規格証票)
第十七条 都道府県は、条例で定めるところにより、農林物資について日本農林規格により格付を行つたときは、当該農林物資又はその包装若しくは容器に、日本農林規格により格付をしたことを示す証票(以下「規格証票」という。)を附することができる。
農林省の機関が農林物資について日本農林規格により格付を行つたときも、同様とする。
2 規格証票の様式及び表示の方法について必要な事項は、省令で定める。
第十八条 前条の規定による格付を行つた農林省の機関又は都道府県でなければ、農林物資又はその包装若しくは容器に規格証票又はこれに紛らわしい表示を附してはならない。
第十九条 規格証票の附してある包装材料又は容器は、その規格証票をまつ消した後でなければ、再び農林物資の包装材料又は容器として使用してはならない。
(規格証票又は格付についての申出)
第二十条 規格証票により日本農林規格による格付の表示を附された農林物資が、その規格証票の表示に係る日本農林規格に適合しないと認める者は、省令で定める手続に従い、農林大臣にその旨を申し出ることができる。
(調査及び報告)
第二十一条 農林大臣は、前条の規定による申出を受けたときはその他必要があると認めるときは、その職員に都道府県の格付の設備、方法その他格付について必要な事項を調査させ、又は都道府県から格付について必要な報告を求めることができる。
(監督)
第二十二条 農林大臣は、前条の規定による調査の結果、都道府県の行う格付が適当でないと認めるときは、当該都道府県に対し、その改善を命じ、又は規格証票を添附することを禁止することができる。
2 農林大臣は、前項の規定による命令をしようとするときは、あらかじめ、調査会の意見をきかなければならない。
(食品衛生法の適用)
第二十三条 この法律の規定は、食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)の適用を排除するものと解してはならない。
(罰則)
第二十四条 左の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
一 第十四条の規定に違反した者
二 第十八条の規定に違反した者
三 第十九条の規定に違反した者
第二十五条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して同条の罰金刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため当該業務に対し相当の注意及び監督が尽されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。
附 則
1 この法律は、公布の日から起算して三十日を経過した日から施行する。
2 この法律施行の際現に日本農林規格又はこれに紛らわしい名称を用いている者については、この法律施行後二箇月間を限り第十四条の規定を適用しない。
3 指定農林物資検査法(昭和二十三年法律第二百十号)は、廃止する。
4 この法律施行の際農林物資について現に指定農林物資検査法第三条の規定に基いて指定農林物資の規格(同法第十九条第二項の規定により同法第三条の規定による規格とみなされたものを除く。)が定められているときは、当該規格は、第八条から第十一条までの規定により日本農林規格が制定されるまでの間、当該農林物資についての日本農林規格とみなす。
5 指定農林物資検査法廃止前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
6 工業標準化法(昭和二十四年法律第百八十五号)の一部を次のように改正する。
第二条第一号中「指定農林物資検査法(昭和二十三年法律第二百十号)による指定農林物資」を「農林物資規格法(昭和二十五年法律第百七十五号)による農林物資」に改める。
7 農林省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。
第四条第二十号を次のように改める。
二十 日本農林規格を定めること。
第七条第十七号を次のように改める。
十七 輸出農林畜水産物の等級、標準及び包装条件並びに検査に関すること。
一七の二 日本農林規格に関すること。
(農林・通商産業・内閣総理大臣署名)