刑事訴訟法施行法
法律第二百四十九号(昭二三・一二・一八)
第一条 この法律において、「新法」とは、刑事訴訟法を改正する法律(昭和二十三年法律第百三十一号)による改正後の刑事訴訟法をいい、「旧法」とは、従前の刑事訴訟法(大正十一年法律第七十五号)をいい、「応急措置法」とは、日本国憲法の施行に伴う刑事訴訟法の応急的措置に関する法律(昭和二十二年法律第七十六号)をいう。
第二条 新法施行前に公訴の提起があつた事件については、新法施行後も、なお旧法及び応急措置法による。
第三条 前条の事件については、前条の規定にかかわらず、新法第五十三条の規定を適用する。但し、新法施行前に終結した被告事件の訴訟記録については、その保存状態、閲覧のための設備その他の事情によりこれを閲覧させることが著しく困難なときは、新法施行後六箇月間に限り、その閲覧を許さないことができる。
第四条 新法施行の際まだ公訴が提起されていない事件については、新法を適用する。但し、新法施行前に旧法及び応急措置法によつて生じた効力を妨げない。
2 前項但書の場合において、旧法又は応急措置法によつてした訴訟手続で新法にこれに相当する規定のあるものは、これを新法によつてしたものとみなす。
第五条 前条の事件について、被告人からあらかじめ書面で弁護人を必要としない旨の申出があつたときは、簡易裁判所においては、新法施行の日から一年間は、新法第二百八十九条の規定にかかわらず、弁護人がなくても開廷することができる。
第六条 第四条の事件について、新法施行前から進行を始めた法定の期間及び訴訟行為をすべき者の住居又は事務所の所在地と裁判所所在地との距離に従つて法定の期間に加えるべき期間については、新法施行後も、なお旧法及び応急措置法による。
第七条 第四条の事件について、新法施行前に旧法により過料に処すべき行為をした者の処罰については、新法施行後も、なお旧法による。
第八条 新法施行前に旧法第二百五十五条の規定により裁判官の命じた鑑定については、新法施行後も、なお旧法による。
第九条 新法施行前に公訴を提起しない処分をした事件については、新法第二百六十二条第二項中「第二百六十条の通知を受けた日から七日以内に、」とあるのは、「新法施行の日から一箇月以内に、」と読み替えるものとする。
第十条 新法第四十六条の規定により訴訟関係人から裁判書又は裁判を記載した調書の謄本又は抄本の交付を請求する場合の費用の額は、当分の間、その謄本又は抄本の用紙一枚につき五円とする。第二条の事件について旧法第五十三条の規定により請求する場合についても、同様である。
2 前項の費用は、収入印紙で納めさせることができる。
第十一条 新法第五十三条第四項の規定による訴訟記録閲覧の手数料は、当分の間、一件につき一回十円とする。
2 前条第二項の規定は、前項の手数料に準用する。
第十二条 新法施行の際現に係属している私訴については、民事訴訟法を適用する。但し、旧法及び応急措置法によつて生じた効力を妨げない。
第十三条 この法律に定めるものを除く外、新法施行の際現に裁判所に係属している事件の処理に関し必要な事項は、裁判所の規則の定めるところによる。
第十四条 衆議院議員選挙法(大正十四年法律第四十七号)第百四十一条ノ二(参議院議員選挙法〔昭和二十二年法律第十一号〕第七十五条において例による場合並びに地方自治法〔昭和二十二年法律第六十七号〕第六十八条第三項及び政治資金規正法〔昭和二十三年法律第百九十四号〕第四十六条において準用する場合を含む。)の適用については、旧法中私訴に関する規定は、新法施行後も、なおその効力を有する。この場合において、旧法第五百六十九条及び第五百九十五条中に引用されている旧法の規定で、これに相当する新法の規定のあるものは、新法の規定が引用されているものとする。
第十五条 刑事訴訟費用法(大正十年法律第六十八号)の一部を次のように改正する。
第一条中「及通事」を「、通訳人及翻訳人」に、「止宿料」を「宿泊料」に改め、「予審又ハ」を削り、同条に次の一号を加える。
三 刑事訴訟法第三十八条ノ規定ニ依リ弁護人ニ給スヘキ日当、旅費、宿泊料及報酬
第二条中「予審判事、受託判事又ハ裁判所」を「裁判所又ハ受託裁判官」に改める。
第三条第一項中「及通事」を「、通訳人及翻訳人」に、「予審判事、受託判事又ハ裁判所」を「裁判所又ハ受託裁判官」に改め、同条第二項を次のように改める。
鑑定料、通訳料、翻訳料及鑑定人、通訳人又ハ翻訳人ニ対シ弁償スヘキ立替金ノ額ハ裁判所又ハ受託裁判官ノ相当卜認ムル所ニ依ル
第四条中「及通事」を「、通訳人及翻訳人」に、「予審判事、受託判事又ハ裁判所」を「裁判所又ハ受託裁判官」に改める。
第五条中「及通事ノ止宿料」を「、通訳人及翻訳人ノ宿泊料」に、「予審判事、受託判事又ハ裁判所」を「裁判所又ハ受託裁判官」に改める。
第六条中「及通事」を「、通訳人及翻訳人」に、「止宿料」を「宿泊料」に改め、「予審ニ付テハ其ノ終結前公判ニ付テハ」を削る。
第七条を次のように改める。
第七条 刑事訴訟法第三十八条ノ規定ニ依リ弁護人ニ給スヘキ日当、旅費及宿泊料ニ付テハ第三条乃至前条ノ規定ヲ準用ス但シ弁護人カ期日ニ出頭シ又ハ取調若ハ処分ニ立会ヒタル場合ニ限ル
同法第三十八条ノ規定ニヨリ弁護人ニ給スヘキ報酬ノ額ハ裁判所ノ相当ト認ムル所ニ依ル
第十六条 訴訟費用等臨時措置法(昭和十九年法律第二号)の一部を次のように改正する。
第三条中「刑事訴訟費用法第三条」及び「刑事訴訟費用法第四条」の下に「(同法第七条第一項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)」を加え、「民事訴訟費用法第十二条及刑事訴訟費用法第五条ノ止宿料」を「民事訴訟費用法第十二条ノ止宿料及刑事訴訟費用法第五条ノ宿泊料(同法第七条第一項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)」に改める。
第十七条 司法警察事務上巡査に於て警部代理方(明治十四年司法省布達甲第五号)及び裁判言渡の謄本等を求むる者費用上納額(明治十四年司法省布達甲第七号)は、廃止する。
附 則
この法律は、刑事訴訟法を改正する法律施行の日(昭和二十四年一月一日)から施行する。
(法務総裁・内閣総理大臣署名)