国家公務員退職手当法等の一部を改正する法律

法律第六十六号(平九・六・四)

 (国家公務員退職手当法の一部改正)

第一条 国家公務員退職手当法(昭和二十八年法律第百八十二号)の一部を次のように改正する。

  第二条の二に次の一項を加える。

 2 次条から第五条までの規定による退職手当(以下「一般の退職手当」という。)及び第九条の規定による退職手当は、職員が退職した日から起算して一月以内に支払わなければならない。ただし、死亡により退職した者に対する退職手当の支給を受けるべき者を確知することができない場合その他特別の事情がある場合は、この限りでない。

  第八条第一項中「第三条から第五条までの規定による退職手当(以下「一般の退職手当」という。)」を「一般の退職手当」に、「左の各号の一」を「次の各号のいずれか」に改める。

  第十二条第一項中「起訴」を「起訴(当該起訴に係る犯罪について禁錮以上の刑が定められているものに限り、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第六編に規定する略式手続によるものを除く。第三項及び次条第三項において同じ。)を」に改め、同条第三項中「次条第一項」を「次条及び第十二条の三第一項」に、「起訴」を「起訴を」に改める。

  第十二条の二第一項中「処せられたときは」の下に「、各省各庁の長は」を加え、同条を第十二条の三とし、第十二条の次に次の一条を加える。

  (退職手当の支給の一時差止め)

 第十二条の二 各省各庁の長(財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第二十条第二項に規定する各省各庁の長をいう。以下同じ。)は、退職した者に対しまだ一般の退職手当等の額が支払われていない場合において、その者の在職期間中の行為に係る刑事事件に関して、その者が逮捕されたとき又はその者から聴取した事項若しくは調査により判明した事実に基づきその者に犯罪があると思料するに至つたときであつて、その者に対し一般の退職手当等を支給することが、公務に対する国民の信頼を確保し、退職手当制度の適正かつ円滑な実施を維持する上で重大な支障を生ずると認めるときは、一般の退職手当等の支給を一時差し止めることができる。

 2 前項の規定による一般の退職手当等の支給を一時差し止める処分(以下「一時差止処分」という。)を受けた者は、行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)第四十五条に規定する期間が経過した後においては、当該一時差止処分後の事情の変化を理由に、当該一時差止処分をした者に対し、その取消しを申し立てることができる。

 3 各省各庁の長は、一時差止処分について、次の各号のいずれかに該当するに至つた場合には、速やかに当該一時差止処分を取り消さなければならない。ただし、第二号に該当する場合において、一時差止処分を受けた者がその者の在職期間中の行為に係る刑事事件に関し現に逮捕されているときその他これを取り消すことが一時差止処分の目的に明らかに反すると認めるときは、この限りでない。

  一 一時差止処分を受けた者について、当該一時差止処分の理由となつた行為に係る刑事事件につき公訴を提起しない処分があった場合

  二 一時差止処分を受けた者がその者の在職期間中の行為に係る刑事事件に関し起訴をされることなくその者の退職の日から起算して一年を経過した場合

 4 前項の規定は、各省各庁の長が、一時差止処分後に判明した事実又は生じた事情に基づき、一般の退職手当等の支給を差し止める必要がなくなつたとして当該一時差止処分を取り消すことを妨げるものではない。

 5 一時差止処分を受けた者に対する第十条の規定の適用については、当該一時差止処分が取り消されるまでの間、その者は、一般の退職手当等の支給を受けない者とみなす。

 6 前条第二項の規定は、一時差止処分を受けた者が、当該一時差止処分が取り消されたことにより一般の退職手当等の支給を受ける場合について準用する。

 7 各省各庁の長は、一時差止処分を行う場合は、当該一時差止処分を受けるべき者に対し、当該一時差止処分の際、一時差止処分の事由を記載した説明書を交付しなければならない。

 8 各省各庁の長は、一時差止処分を行おうとする場合は、あらかじめ、総理府令で定めるところにより、内閣総理大臣に通知しなければならない。一時差止処分を取り消した場合も、同様とする。

 (一般職の職員の給与に関する法律の一部改正)

第二条 一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第九十五号)の一部を次のように改正する。

  第五条第一項中「第十九条の八」を「第十九条の十」に改める。

  第十九条の四第一項中「この条」の下に「から第十九条の六まで」を、「定める日」の下に「(次条及び第十九条の六においてこれらの日を「支給日」という。)」を、「退職し」の下に「、若しくは国家公務員法第三十八条第一号に該当して同法第七十六条の規定により失職し」を加え、同条第三項中「退職し」の下に「、若しくは失職し」を加える。

  第十九条の八を第十九条の十とする。

  第十九条の七第一項中「第十九条の五」を「第十九条の七」に改め、同条を第十九条の九とし、第十九条の六を第十九条の八とする。

  第十九条の五第一項中「退職し」の下に「、若しくは国家公務員法第三十八条第一号に該当して同法第七十六条の規定により失職し」を加え、同条第二項中「退職し」の下に「、若しくは失職し」を加え、同条第四項中「前条第四項」を「第十九条の四第四項」に、「次条第三項」を「第十九条の七第三項」に改め、同条に次の一項を加え、同条を第十九条の七とする。

 5 前二条の規定は、第一項の規定による勤勉手当の支給について準用する。この場合において、第十九条の五中「前条第一項」とあるのは「第十九条の七第一項」と、同条第一号中「基準日から」とあるのは「基準日(第十九条の七第一項に規定する基準日をいう。以下この条及び次条において同じ。)から」と、「支給日」とあるのは「支給日(同項に規定する人事院規則で定める日をいう。以下この条及び次条において同じ。)」と読み替えるものとする。

  第十九条の四の次に次の二条を加える。

 第十九条の五 次の各号のいずれかに該当する者には、前条第一項の規定にかかわらず、当該各号の基準日に係る期末手当(第四号に掲げる者にあつては、その支給を一時差し止めた期末手当)は、支給しない。

  一 基準日から当該基準日に対応する支給日の前日までの間に国家公務員法第八十二条の規定による懲戒免職の処分を受けた職員

  二 基準日から当該基準日に対応する支給日の前日までの間に国家公務員法第七十六条の規定により失職した職員(同法第三十八条第一号に該当して失職した職員を除く。)

  三 基準日前一箇月以内又は基準日から当該基準日に対応する支給日の前日までの間に離職した職員(前二号に掲げる者を除く。)で、その離職した日から当該支給日の前日までの間に禁錮以上の刑に処せられたもの

  四 次条第一項の規定により期末手当の支給を一時差し止める処分を受けた者(当該処分を取り消された者を除く。)で、その者の在職期間中の行為に係る刑事事件に関し禁錮以上の刑に処せられたもの

 第十九条の六 各庁の長又はその委任を受けた者は、支給日に期末手当を支給することとされていた職員で当該支給日の前日までに離職したものが次の各号のいずれかに該当する場合は、当該期末手当の支給を一時差し止めることができる。

  一 離職した日から当該支給日の前日までの間に、その者の在職期間中の行為に係る刑事事件に関して、その者が起訴(当該起訴に係る犯罪について禁錮以上の刑が定められているものに限り、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第六編に規定する略式手続によるものを除く。第三項において同じ。)をされ、その判決が確定していない場合

  二 離職した日から当該支給日の前日までの間に、その者の在職期間中の行為に係る刑事事件に関して、その者が逮捕された場合又はその者から聴取した事項若しくは調査により判明した事実に基づきその者に犯罪があると思料するに至つた場合であつて、その者に対し期末手当を支給することが、公務に対する国民の信頼を確保し、期末手当に関する制度の適正かつ円滑な実施を維持する上で重大な支障を生ずると認めるとき。

 2 前項の規定による期末手当の支給を一時差し止める処分(以下「一時差止処分」という。)を受けた者は、国家公務員法第九十条の二に規定する処分説明書を受領した日から起算すべき期間が経過した後においては、当該一時差止処分後の事情の変化を理由に、当該一時差止処分をした者に対し、その取消しを申し立てることができる。

 3 各庁の長又はその委任を受けた者は、一時差止処分について、次の各号のいずれかに該当するに至つた場合には、速やかに当該一時差止処分を取り消さなければならない。ただし、第三号に該当する場合において、一時差止処分を受けた者がその者の在職期間中の行為に係る刑事事件に関し現に逮捕されているときその他これを取り消すことが一時差止処分の目的に明らかに反すると認めるときは、この限りでない。

  一 一時差止処分を受けた者が当該一時差止処分の理由となった行為に係る刑事事件に関し禁錮以上の刑に処せられなかつた場合

  二 一時差止処分を受けた者について、当該一時差止処分の理由となつた行為に係る刑事事件につき公訴を提起しない処分があつた場合

  三 一時差止処分を受けた者がその者の在職期間中の行為に係る刑事事件に関し起訴をされることなく当該一時差止処分に係る期末手当の基準日から起算して一年を経過した場合

 4 前項の規定は、各庁の長又はその委任を受けた者が、一時差止処分後に判明した事実又は生じた事情に基づき、期末手当の支給を差し止める必要がなくなったとして当該一時差止処分を取り消すことを妨げるものではない。

 5 各庁の長又はその委任を受けた者は、一時差止処分を行う場合は、当該一時差止処分を受けるべき者に対し、当該一時差止処分の際、一時差止処分の事由を記載した説明書を交付しなければならない。

 6 一時差止処分に対する行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)による不服申立てについては、一時差止処分は国家公務員法第八十九条第一項に規定する処分と、一時差止処分を受けた者は同法第九十条第一項に規定する職員と、前項の説明書は同法第九十条の二の処分説明書とそれぞれみなして、同法第九十条から第九十二条の二までの規定を適用する。

 7 前各項に規定するもののほか、一時差止処分に関し必要な事項は、人事院規則で定める。

  第二十三条第七項中「退職し」の下に「、若しくは国家公務員法第三十八条第一号に該当して同法第七十六条の規定により失職し」を加え、同条に次の一項を加える。

 8 前項の規定の適用を受ける職員の期末手当の支給については、第十九条の五及び第十九条の六の規定を準用する。この場合において、第十九条の五中「前条第一項」とあるのは、「第二十三条第七項」と読み替えるものとする。

 (防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部改正)

第三条 防衛庁の職員の給与等に関する法律(昭和二十七年法律第二百六十六号)の一部を次のように改正する。

  第十八条の二中「第十九条の五第四項」を「第十九条の七第四項」に改める。

  第二十三条第六項中「退職し」の下に「、若しくは自衛隊法第三十八条第一項第一号に該当して同条第二項の規定により失職し」を加え、「当該各項の」を「第二項、第三項又は前項の」に改め、同条に次の一項を加える。

 7 前項の規定の適用を受ける職員が第十八条の二においてその例によることとされる一般職給与法第十九条の五各号のいずれかに該当する者である場合又は第十八条の二においてその例によることとされる一般職給与法第十九条の六第一項各号のいずれかに該当する場合におけるその者に支給すべき期末手当の支給に関しては、一般職給与法第十九条の五又は第十九条の六の規定の例による。

   附 則

 (施行期日等)

1 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

2 改正後の国家公務員退職手当法第十二条の二の規定は、この法律の施行の日以後の退職に係る退職手当について適用する。

 (特別職の職員の給与に関する法律の一部改正)

3 特別職の職員の給与に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十二号)の一部を次のように改正する。

  第七条の三中「第十九条の五第四項」を「第十九条の七第四項」に改める。

 (在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部改正)

4 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律(昭和二十七年法律第九十三号)の一部を次のように改正する。

  第四条第一項中「第十九条の八」を「第十九条の十」に改める。

 (最高裁判所裁判官退職手当特例法の一部改正)

5 最高裁判所裁判官退職手当特例法(昭和四十一年法律第五十二号)の一部を次のように改正する。

  第四条中「並びに第十二条の二第一項」を「、第十二条の二並びに第十二条の三第一項」に、「第八条第一項」を「第二条の二第二項」に改める。

 (国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法の一部改正)

6 国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(昭和四十六年法律第七十七号)の一部を次のように改正する。

  第四条第一号中「第十九条の五」を「第十九条の七」に改める。

 (国有林野事業改善特別措置法の一部改正)

7 国有林野事業改善特別措置法(昭和五十三年法律第八十八号)の一部を次のように改正する。

  第十条第一項第二号中「第十二条の二第一項」を「第十二条の三第一項」に改める。

 (日本国有鉄道の経営する事業の運営の改善のために昭和六十一年度において緊急に講ずべき特別措置に関する法律の一部改正)

8 日本国有鉄道の経営する事業の運営の改善のために昭和六十一年度において緊急に講ずべき特別措置に関する法律(昭和六十一年法律第七十六号)の一部を次のように改正する。

  附則第二項中「国家公務員退職手当法第十二条の二第一項」を「国家公務員退職手当法第十二条の三第一項」に改める。

 (日本国有鉄道改革法等施行法の一部改正)

9 日本国有鉄道改革法等施行法(昭和六十一年法律第九十三号)の一部を次のように改正する。

  附則第五条第四項中「第十二条の二第一項」を「第十二条の三第一項」に改める。

 (一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律の一部改正)

10 一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律(平成八年法律第百十二号)の一部を次のように改正する。

  附則第十七項中「第十九条の五第二項」を「第十九条の七第二項」に改める。

 (一般職の任期付研究員の採用、給与及び勤務時間の特例に関する法律の一部改正)

11 一般職の任期付研究員の採用、給与及び勤務時間の特例に関する法律(平成九年法律第六十五号)の一部を次のように改正する。

  第七条第一項中「第十九条の五」を「第十九条の七」に改める。

(内閣総理・法務・外務・文部・農林水産・運輸大臣署名) 

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