国会議事堂等周辺地域及び外国公館等周辺地域の静穏の保持に関する法律
法律第九十号(昭六三・一二・八)
(目的)
第一条 この法律は、国会議事堂等周辺地域及び外国公館等周辺地域における拡声機の使用について必要な規制を行うことにより、これらの地域の静穏を保持し、もつて国会の審議権の確保と良好な国際関係の維持に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「国会議事堂等周辺地域」とは、別表第一に定める国会議事堂周辺地域及び次条第一項の規定により指定された地域をいう。
2 この法律において「外国公館等周辺地域」とは、第四条第一項の規定により指定された地域をいう。
(政党事務所周辺地域の指定)
第三条 内閣総理大臣は、衆議院議長又は参議院議長のいずれかの要請があつたときは、衆議院議員又は参議院議員が所属している政党の主たる事務所及びその周辺の地域のうち、第一条の目的に照らし静穏を保持することが必要であると認める地域を、期間を定めて、政党事務所周辺地域として指定するものとする。
2 前項の衆議院議長又は参議院議長の要請は、同項に規定する政党の申出により行うものとする。
3 内閣総理大臣は、第一項の規定により政党事務所周辺地域を指定しようとするときは、あらかじめ、国家公安委員会と協議しなければならない。
4 内閣総理大臣は、政党事務所周辺地域を指定する場合には、その旨並びにその区域及び期間を官報で告示しなければならない。
5 内閣総理大臣は、政党事務所周辺地域についてその指定の必要がなくなつたと認めるときは、当該指定を解除しなければならない。
6 第三項の規定は、前項の規定による指定の解除について準用する。
7 内閣総理大臣は、政党事務所周辺地域の指定を解除したときは、その旨を官報で告示しなければならない。
(外国公館等周辺地域の指定)
第四条 外務大臣は、外交関係に関するウィーン条約第一条(i)に規定する使節団の公館、領事関係に関するウィーン条約第一条1(j)に規定する領事機関の公館及び条約において不可侵とされる外国政府又は国際機関の事務所並びにその周辺の地域並びに別表第二に定める外国要人の所在する場所及びその周辺の地域のうち、第一条の目的に照らし静穏を保持することが必要であると認める地域を、期間を定めて、外国公館等周辺地域として指定することができる。
2 前条第三項から第七項までの規定は、外国公館等周辺地域の指定について準用する。
(拡声機の使用の制限)
第五条 何人も、国会議事堂等周辺地域及び外国公館等周辺地域において、当該地域の静穏を害するような方法で拡声機を使用してはならない。
2 前項の規定は、次に掲げる拡声機の使用については、適用しない。
一 公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)の定めるところにより選挙運動又は選挙における政治活動のためにする拡声機の使用
二 災害、事故等が発生した場合において、人の生命、身体又は財産に対する危害を防止するためにする拡声機の使用
三 国又は地方公共団体の業務を行うためにする拡声機の使用
(違反に対する措置)
第六条 警察官は、前条第一項の規定に違反して拡声機を使用している者があるときは、その者に対し、拡声機の使用をやめるべきことその他の当該違反を是正するために必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
(罰則)
第七条 前条の規定による警察官の命令に違反した者は、六月以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
(適用上の注意等)
第八条 この法律の適用に当たつては、国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。
2 この法律の規定は、法令の規定に従つて行われる請願のための集団行進について何らの影響を及ぼすものではない。
附 則
この法律は、公布の日から起算して十日を経過した日から施行する。
別表第一 国会議事堂周辺地域(第二条関係)
東京都千代田区霞が関二丁目及び三丁目並びに同区永田町一丁目及び二丁目の区域(側端の一方のみが当該区域に含まれる道路(道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第二条第一項第一号に規定する道路をいう。以下この表において同じ。)の区間のうち、当該区域に含まれる道路の部分を除く。)
別表第二 外国要人(第四条関係)
一 外国の元首(当該国の憲法に基づき元首の任務を遂行する団体の構成員を含む。)及び外国の元首の任務を代行し得る地位にある者並びにこれらの者の家族の構成員
二 外国の政府の長及び外国の政府の長の任務を代行し得る地位にある者並びにこれらの者の家族の構成員
三 外国の外務大臣及びこれに同行する家族の構成員並びに外国の外務大臣に準ずる地位にある者
四 外国の外務大臣以外の外国の大臣及びこれに同行する家族の構成員並びに外国の外務大臣以外の外国の大臣に準ずる地位にある者
五 国際連合の事務総長及び事務次長並びに我が国が加盟国となつている国際機関の事務局長並びにこれらに同行する家族の構成員
六 前各号に掲げる者以外の者で、外務大臣がこれらの者と同等の接遇を行う必要があると認めて指定するもの
(内閣総理・外務大臣臨時代理署名)