振動規制法
法律第六十四号(昭五一・六・一〇)
目次
第一章 総則 (第一条―第三条)
第二章 特定工場等に関する規制(第四条―第十三条)
第三章 特定建設作業に関する規制(第十四条・第十五条)
第四章 道路交通振動に係る要請(第十六条)
第五章 雑則(第十七条―第二十四条)
第六章 罰則(第二十五条―第二十九条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、工場及び事業場における事業活動並びに建設工事に伴つて発生する相当範囲にわたる振動について必要な規制を行うとともに、道路交通振動に係る要請の措置を定めること等により、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「特定施設」とは、工場又は事業場(鉱山保安法(昭和二十四年法律第七十号)第二条第二項に規定する鉱山を除く。以下同じ。)に設置される施設のうち、著しい振動を発生する施設であつて政令で定めるものをいう。
2 この法律において「規制基準」とは、特定施設を設置する工場又は事業場(以下「特定工場等」という。)において発生する振動の特定工場等の敷地の境界線における大きさの許容限度をいう。
3 この法律において「特定建設作業」とは、建設工事として行われる作業のうち、著しい振動を発生する作業であつて政令で定めるものをいう。
4 この法律において「道路交通振動」とは、自動車(道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)第二条第二項に規定する自動車及び同条第三項に規定する原動機付自転車をいう。)が道路を通行することに伴い発生する振動をいう。
(地域の指定)
第三条 都道府県知事は、住居が集合している地域、病院又は学校の周辺の地域その他の地域で振動を防止することにより住民の生活環境を保全する必要があると認めるものを指定しなければならない。
2 都道府県知事は、前項の規定による指定をしようとするときは、関係市町村長の意見を聴かなければならない。これを変更し、又は廃止しようとするときも、同様とする。
3 都道府県知事は、第一項の規定による指定をするときは、総理府令で定めるところにより、公示しなければならない。これを変更し、又は廃止するときも、同様とする。
第二章 特定工場等に関する規制
(規制基準の設定)
第四条 都道府県知事は、前条第一項の規定による指定をするときは、環境庁長官が特定工場等において発生する振動について規制する必要の程度に応じて昼間、夜間その他の時間の区分及び区域の区分ごとに定める基準の範囲内において、当該指定に係る地域について、これらの区分に対応する時間及び区域の区分ごとの規制基準を定めなければならない。
2 市町村は、前条第一項の規定により指定された地域(以下「指定地域」という。)の全部又は一部について、当該地域の自然的、社会的条件に特別の事情があるため、前項の規定により定められた規制基準によつては当該地域の住民の生活環境を保全することが十分でないと認めるときは、条例で、環境庁長官の定める範囲内において、同項の規制基準に代えて適用すべき規制基準を定めることができる。
3 前条第三項の規定は、第一項の規定による規制基準の設定並びにその変更及び廃止について準用する。
(規制基準の遵守義務)
第五条 指定地域内に特定工場等を設置している者は、当該特定工場等に係る規制基準を遵守しなければならない。
(特定施設の設置の届出)
第六条 指定地域内において工場又は事業場(特定施設が設置されていないものに限る。)に特定施設を設置しようとする者は、その特定施設の設置の工事の開始の日の三十日前までに、総理府令で定めるところにより、次の事項を都道府県知事に届け出なければならない。
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
二 工場又は事業場の名称及び所在地
三 特定施設の種類及び能力ごとの数
四 振動の防止の方法
五 特定施設の使用の方法
六 その他総理府令で定める事項
2 前項の規定による届出には、特定施設の配置図その他総理府令で定める書類を添付しなければならない。
(経過措置)
第七条 一の地域が指定地域となつた際現にその地域内において工場若しくは事業場に特定施設を設置している者(設置の工事をしている者を含む。以下この項において同じ。)又は一の施設が特定施設となつた際現に指定地域内において工場若しくは事業場(その施設以外の特定施設が設置されていないものに限る。)にその施設を設置している者は、当該地域が指定地域となつた日又は当該施設が特定施設となった日から三十日以内に、総理府令で定めるところにより、前条第一項各号に掲げる事項を都道府県知事に届け出なければならない。
2 前条第二項の規定は、前項の規定による届出について準用する。
(特定施設の変更等の届出)
第八条 第六条第一項又は前条第一項の規定による届出をした者は、その届出に係る第六条第一項第三号から第五号に掲げる事項の変更をしようとするときは、当該事項の変更に係る工事の開始の日の三十日前までに、総理府令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。ただし、その変更が総理府令で定める軽微なものであるときは、この限りでない。
2 第六条第一項又は前条第一項の規定による届出をした者は、当該特定工場等に設置している特定施設以外の施設が特定施設となつたときは、当該特定施設以外の施設が特定施設となつた日から三十日以内に、総理府令で定めるところにより、第六条第一項各号に掲げる事項を都道府県知事に届け出なければならない。
3 第六条第二項の規定は、前二項の規定による届出について準用する。
(計画変更勧告)
第九条 都道府県知事は、第六条第一項又は前条第一項の規定による届出があつた場合において、その届出に係る特定工場等において発生する振動が規制基準に適合しないことによりその特定工場等の周辺の生活環境が損なわれると認めるときは、その届出を受理した日から三十日以内に限り、その届出をした者に対し、その事態を除去するために必要な限度において、振動の防止の方法又は特定施設の使用の方法若しくは配置に関する計画を変更すべきことを勧告することができる。
(氏名の変更等の届出)
第十条 第六条第一項又は第七条第一項の規定による届出をした者は、その届出に係る第六条第一項第一号若しくは第二号に掲げる事項に変更があつたとき、又はその届出に係る特定工場等に設置する特定施設のすべての使用を廃止したときは、その日から三十日以内に、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
(承継)
第十一条 第六条第一項又は第七条第一項の規定による届出をした者からその届出に係る特定工場等に設置する特定施設のすべてを譲り受け、又は借り受けた者は、当該特定施設に係る当該届出をした者の地位を承継する。
2 第六条第一項又は第七条第一項の規定による届出をした者について相続又は合併があつたときは、相続人又は合併後存続する法人若しくは合併により設立した法人は、当該届出をした者の地位を承継する。
3 前二項の規定により第六条第一項又は第七条第一項の規定による届出をした者の地位を承継した者は、その承継があつた日から三十日以内に、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
(改善勧告及び改善命令)
第十二条 都道府県知事は、指定地域内に設置されている特定工場等において発生する振動が規制基準に適合しないことによりその特定工場等の周辺の生活環境が損なわれていると認めるときは、当該特定工場等を設置している者に対し、期限を定めて、その事態を除去するために必要な限度において、振動の防止の方法を改善し、又は特定施設の使用の方法若しくは配置を変更すべきことを勧告することができる。
2 都道府県知事は、第九条の規定による勧告を受けた者がその勧告に従わないで特定施設を設置しているとき、又は前項の規定による勧告を受けたものがその勧告に従わないときは、期限を定めて、その勧告に従うべきことを命ずることができる。
3 前二項の規定は、第七条第一項の規定による届出をした者の当該届出に係る特定工場等については、同項に規定する指定地域となつた日又は同項に規定する特定施設となつた日から三年間(当該施設が政令で定める施設である場合にあつては、四年間)は、適用しない。ただし、当該地域が指定地域となつた際又は当該施設が特定施設となつた際その者に適用されている地方公共団体の条例の規定で第一項の規定に相当するものがあるとき、及びその者が第八条第一項の規定による届出をした場合において当該届出が受理された日から三十日を経過したときは、この限りでない。
(小規模の事業者に対する配慮)
第十三条 都道府県知事は、小規模の事業者に対する第九条又は前条第一項若しくは第二項の規定の適用に当たつては、その者の事業活動の遂行に著しい支障を生ずることのないよう当該勧告又は命令の内容について特に配慮しなければならない。
第三章 特定建設作業に関する規制
(特定建設作業の実施の届出)
第十四条 指定地域内において特定建設作業を伴う建設工事を施行しようとする者は、当該特定建設作業の開始の日の七日前までに、総理府令で定めるところにより、次の事項を都道府県知事に届け出なければならない。ただし、災害その他非常の事態の発生により特定建設作業を緊急に行う必要がある場合は、この限りでない。
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
二 建設工事の目的に係る施設又は工作物の種類
三 特定建設作業の種類、場所、実施期間及び作業時間
四 振動の防止の方法
五 その他総理府令で定める事項
2 前項ただし書の場合において、当該建設工事を施工する者は、速やかに、同項各号に掲げる事項を都道府県知事に届け出なければならない。
3 前二項の規定による届出には、当該特定建設作業の場所の付近の見取図その他総理府令で定める書類を添付しなければならない。
(改善勧告及び改善命令)
第十五条 都道府県知事は、指定地域内において行われる特定建設作業に伴つて発生する振動が総理府令で定める基準に適合しないことによりその特定建設作業の場所の周辺の生活環境が著しく損なわれると認めるときは、当該建設工事を施工する者に対し、期限を定めて、その事態を除去するために必要な限度において、振動の防止の方法を改善し、又は特定建設作業の作業時間を変更すべきことを勧告することができる。
2 都道府県知事は、前項の規定による勧告を受けた者がその勧告に従わないで特定建設作業を行つているときは、期限を定めて、その勧告に従うべきことを命ずることができる。
3 都道府県知事は、当該施設又は工作物に係る建設工事の工期が遅延することによつて公共の福祉に著しい障害を及ぼすおそれのあるときは、当該施設又は工作物に係る建設工事として行われる特定建設作業について前二項の規定による勧告又は命令を行うに当たつては、生活環境の保全に十分留意しつつ、当該建設工事の実施に著しい支障を生じないよう配慮しなければならない。
第四章 道路交通振動に係る要請
(測定に基づく要請)
第十六条 都道府県知事は、第十九条の測定を行つた場合において、指定地域内における道路交通振動が総理府令で定める限度を超えていることにより道路の周辺の生活環境が著しく損なわれていると認めるときは、道路管理者に対し当該道路の部分につき道路交通振動の防止のための舗装、維持又は修繕の措置を執るべきことを要請し、又は都道府県公安委員会に対し道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)の規定による措置を執るべきことを要請するものとする。
2 道路管理者は、前項の要請があつた場合において、道路交通振動の防止のため必要があると認めるときは、当該道路の部分の舗装、維持又は修繕の措置を執るものとする。
第五章 雑則
(報告及び検査)
第十七条 都道府県知事は、この法律の施行に必要な限度において、政令で定めるところにより、特定施設を設置する者若しくは特定建設作業を伴う建設工事を施工する者に対し、特定施設の状況、特定建設作業の状況その他必要な事項の報告を求め、又はその職員に、特定施設を設置する者の特定工場等若しくは特定建設作業を伴う建設工事を施工する者の建設工事の場所に立ち入り、特定施設その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(電気工作物及びガス工作物に係る取扱い)
第十八条 電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第二条第七項に規定する電気工作物又はガス事業法(昭和二十九年法律第五十一号)第二条第七項に規定するガス工作物である特定施設を設置する者については、第六条から第十三条までの規定を適用せず、電気事業法又はガス事業法の相当規定の定めるところによる。
2 通商産業大臣は、第六条、第八条第一項、第十条又は第十一条第三項の規定に相当する電気事業法又はガス事業法の規定による前項に規定する特定施設に係る許可若しくは認可の申請又は届出があつたときは、その許可若しくは認可の申請又は届出に係る事項のうちこれらの規定による届出事項に該当する事項を当該特定施設の所在地を管轄する都道府県知事に通知するものとする。
3 都道府県知事は、第一項に規定する特定施設を設置する特定工場等において発生する振動によりその特定工場等の周辺の生活環境が損なわれると認めるときは、通商産業大臣に対し、当該特定施設について、第九条又は第十二条の規定に相当する電気事業法又はガス事業法の規定による措置を執るべきことを要請することができる。
4 通商産業大臣は、前項の規定による要請があつた場合において講じた措置を当該都道府県知事に通知するものとする。
(振動の測定)
第十九条 都道府県知事は、指定地域について、振動の大きさを測定するものとする。
(関係行政機関の協力)
第二十条 都道府県知事は、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長又は関係地方公共団体の長に対し、特定施設、特定建設作業又は道路交通振動の状況に関する資料の送付その他の協力を求め、又は振動の防止に関し意見を述べることができる。
(国の援助)
第二十一条 国は、特定工場等において発生する振動及び特定建設作業に伴つて発生する振動の防止のための施設の設置又は改善につき必要な資金のあつせん、技術的な助言その他の援助に努めるものとする。
(研究の推進等)
第二十二条 国は、振動を発生する施設の改良のための研究、振動の生活環境に及ぼす影響の研究その他振動の防止に関する研究を推進し、その成果の普及に努めるものとする。
(事務の委任)
第二十三条 この法律の規定により都道府県知事の権限に属する事務は、政令で定めるところにより、市町村長に委任することができる。
(条例との関係)
第二十四条 この法律の規定は、地方公共団体が、指定地域内に設置される特定工場等において発生する振動に関し、当該地域の自然的、社会的条件に応じて、この法律とは別の見地から、条例で必要な規制を定めることを妨げるものではない。
2 この法律の規定は、地方公共団体が、指定地域内に設置される工場若しくは事業場であつて特定工場等以外のもの又は指定地域内において建設工事として行われる作業であつて特定建設作業以外のものについて、その工場若しくは事業場において発生する振動又はその作業に伴つて発生する振動に関し、条例で必要な規制を定めることを妨げるものではない。
第六章 罰則
第二十五条 第十二条第二項の規定による命令に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第二十六条 第六条第一項の規定による届出をせず、若しくは虚偽の届出をした者又は第十五条第二項の規定による命令に違反した者は、三十万円以下の罰金に処する。
第二十七条 第七条第一項、第八条第一項若しくは第二項若しくは第十四条第一項の規定による届出をせず、若しくは虚偽の届出をした者又は第十七条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、若しくは同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、十万円以下の罰金に処する。
第二十八条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。
第二十九条 第十条、第十一条第三項又は第十四条第二項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、三万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、附則第四項中特定工場における公害防止組織の整備に関する法律(昭和四十六年法律第百七号)第三条第一項及び第四条第一項に一号を加える改正規定は、公布の日から起算して二年を経過した日から施行する。
(中小企業近代化資金等助成法の一部改正)
2 中小企業近代化資金等助成法(昭和三十一年法律第百十五号)の一部を次のように改正する。
第五条中「発生する騒音を防止するための施設」の下に「、振動規制法(昭和五十一年法律第六十四号)第二条第二項の特定工場等において発生する振動を防止するための施設」を加える。
(道路交通法の一部改正)
3 道路交通法の一部を次のように改正する。
第百十条の二第一項中「又は騒音規制法(昭和四十三年法律第九十八号)第十七条第一項」を「、騒音規制法(昭和四十三年法律第九十八号)第十七条第一項又は振動規制法(昭和五十一年法律第六十四号)第十六条第一項」に改める。
(特定工場における公害防止組織の整備に関する法律の一部改正)
4 特定工場における公害防止組織の整備に関する法律の一部を次のように改正する。
第二条に次の一号を加える。
五 著しい振動を発生する施設で政令で定めるもの(以下「振動発生施設」という。)が設置されている工場のうち、振動規制法(昭和五十一年法律第六十四号)第三条第一項の規定により指定された地域内にあるもの
第三条第一項に次の一号を加える。
五 前条第五号の特定工場にあつては、振動発生施設の使用の方法及び配置その他振動の防止の措置に関すること。
第四条第一項に次の一号を加える。
五 第二条第五号の特定工場にあつては、前条第一項第五号に掲げる業務のうち、振動発生施設の配置の改善その他の主務省令で定める技術的事項
第八条第一項中「又は騒音」を「、騒音又は振動」に改める。
第十条第一項中「騒音規制法」の下に「、振動規制法」を加える。
第十四条中「騒音発生施設」を「騒音発生施設又は振動発生施設」に改める。
(環境庁設置法の一部改正)
5 環境庁設置法(昭和四十六年法律第八十八号)の一部を次のように改正する。
第四条中第十九号の二を第十九号の三とし、第十九号の次に次の一号を加える。
十九の二 振動規制法(昭和五十一年法律第六十四号)の施行に関する事務を処理すること。
第五条第五項中「及び第十九号の二」を「から第十九号の三まで」に改める。
(内閣総理・大蔵・厚生・農林・通商産業・運輸・建設大臣署名)