生産緑地法
法律第六十八号(昭四九・六・一)
(目的)
第一条 この法律は、第一種生産緑地地区に関する都市計画及び第二種生産緑地地区に関する都市計画に関し必要な事項を定めることにより、農林漁業との調整を図りつつ、良好な都市環境の形成に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 農地等 現に農業の用に供されている農地若しくは採草放牧地、現に林業の用に供されている森林又は現に漁業の用に供されている池沼(これらに隣接し、かつ、これらと一体となつて農林漁業の用に供されている農業用道路その他の土地を含む。)をいう。
二 公共施設等 公園、緑地その他の政令で定める公共の用に供する施設及び学校、病院その他の公益性が高いと認められる施設で政令で定めるものをいう。
三 生産緑地 次条第一項の規定により定められた第一種生産緑地地区又は第四条第一項の規定により定められた第二種生産緑地地区の区域内の土地又は森林をいう。
四 地方公共団体等 地方公共団体及び土地開発公社その他の政令で定める法人をいう。
(第一種生産緑地地区に関する都市計画)
第三条 市街化区域(都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第七条第一項の規定による市街化区域をいう。次条第一項において同じ。)のうち土地区画整理法(昭和二十九年法律第百十九号)による土地区画整理事業の施行に係る土地の区域及び次条第一項に規定する開発行為が行われる、又は行われた土地の区域を除く区域内にある農地等で、次に掲げる条件に該当する一団のものの区域については、都市計画に第一種生産緑地地区を定めることができる。
一 公害又は災害の防止等良好な生活環境の確保に相当の効用があり、かつ、公共施設等の敷地の用に供する土地として適しているものであること。
二 おおむね一ヘクタール(森林若しくは果樹、茶その他の永年性植物が栽培されている農地又は都市公園法(昭和三十一年法律第七十九号)第二条第一項に規定する都市公園に隣接している農地等(当該都市公園の面積と当該農地等の面積との合計がおおむね一ヘクタール以上のものに限る。)にあつては、おおむね〇・二ヘクタール)以上の規模の区域であること。
三 用排水その他の状況を勘案して農林漁業の継続が可能な条件を備えていると認められるものであること。
2 第一種生産緑地地区に関する都市計画の案については、当該第一種生産緑地地区内の農地等について所有権、対抗要件を備えた地上権若しくは賃借権又は登記した永小作権、先取特権、質権若しくは抵当権を有する者及びこれらの権利に関する仮登記、これらの権利に関する差押えの登記又はその農地等に関する買戻しの特約の登記の登記名義人の同意を得なければならない。
3 第一種生産緑地地区に関する都市計画を定めるに当たつては、当該第一種生産緑地地区に係る農地等及びその周辺の地域における幹線街路、下水道等の主要な都市施設の整備に支障を及ぼさないようにし、かつ、当該都市計画区域内における土地利用の動向、人口及び産業の将来の見通し等を勘案して、合理的な土地利用に支障を及ぼさないようにしなければならない。
(第二種生産緑地地区に関する都市計画)
第四条 市街化区域内における土地区画整理法による土地区画整理事業の施行に係る区域内の土地のうち同法第九十九条第一項若しくは第二項の規定により使用若しくは収益が開始されている土地若しくは同法第百三条第四項の規定による公告があつた土地に係る農地等又は開発行為(主として建築物の建築又は都市計画法第四条第九項に規定する第一種特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更をいう。以下この項において同じ。)が行われた土地の区域内にある農地等で、次に掲げる条件に該当する一団のものの区域については、当該土地区画整理事業の施行に係る区域又は開発行為が行われた土地の区域の面積のおおむね三十パーセントを超えない範囲内において、都市計画に第二種生産緑地地区を定めることができる。
一 前条第一項第一号及び第三号に掲げる条件
二 おおむね〇・二ヘクタール以上の規模の区域であること。
2 第二種生産緑地地区に関する都市計画においては、都市計画法第八条第二項に定める事項のほか、当該都市計画の告示の日から起算して十年を経過した日を当該都市計画が失効すべき日として定めるものとする。
3 前条第二項の規定は、第二種生産緑地地区に関する都市計画の案について準用する。この場合において、「農地等」とあるのは、「農地等(土地区画整理法第九十八条第一項の規定により仮換地として指定された農地等にあつては、当該農地等に対応する従前の土地)」と読み替えるものとする。
(第二種生産緑地地区に関する都市計画の変更の特例)
第五条 第二種生産緑地地区に関する都市計画に定められた当該都市計画が失効すべき日の変更は、都市計画法第二十一条第一項の規定にかかわらず、その日の前一年内に、一回に限り、することができる。この場合において、変更後の都市計画が失効すべき日は、変更前の都市計画が失効すべき日から起算して十年を経過した日としなければならない。
2 第二種生産緑地地区に関する都市計画が失効すべき日についての都市計画の変更に関しては、前条第三項の規定は、適用しない。
(標識の設置等)
第六条 市町村は、第一種生産緑地地区又は第二種生産緑地地区(以下「生産緑地地区」と総称する。)に関する都市計画が定められたときは、その地区内に、これを表示する標識を設置しなければならない。
2 当該生産緑地の所有者又は占有者は、正当な理由がない限り、前項の標識の設置を拒み、又は妨げてはならない。
3 何人も、第一項の規定により設けられた標識を設置者の承諾を得ないで移転し、若しくは除却し、又は汚損し、若しくは損壊してはならない。
4 市町村は、第一項の規定による行為により損失を受けた者がある場合においては、その損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償する。
5 前項の規定による損失の補償については、市町村長と損失を受けた者が協議しなければならない。
6 前項の規定による協議が成立しない場合においては、市町村長又は損失を受けた者は、政令で定めるところにより、収用委員会に土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第九十四条第二項の規定による裁決を申請することができる。
(生産緑地の管理)
第七条 生産緑地について使用又は収益をする権利を有する者は、当該生産緑地を農地等として管理しなければならない。
(生産緑地地区内における行為の制限)
第八条 生産緑地地区内においては、次に掲げる行為は、市町村長の許可を受けなければ、してはならない。ただし、公共施設等の設置若しくは管理に係る行為、当該生産緑地地区に関する都市計画が定められた際既に着手していた行為又は非常災害のため必要な応急措置として行う行為については、この限りでない。
一 建築物その他の工作物の新築、改築又は増築
二 宅地の造成、土石の採取その他の土地の形質の変更
三 水面の埋立て又は干拓
2 市町村長は、前項各号に掲げる行為のうち、次に掲げる施設で当該生産緑地において農林漁業を営むために必要となるものの設置又は管理に係る行為で生活環境の悪化をもたらすおそれがないと認めるものに限り、同項の許可をすることができる。
一 農産物、林産物又は水産物の生産又は集荷の用に供する施設
二 農林漁業の生産資材の貯蔵又は保管の用に供する施設
三 農産物、林産物又は水産物の処理又は貯蔵に必要な共同利用施設
3 市町村長は、第一項の許可の申請があつた場合において、当該生産緑地の保全のため必要があると認めるときは、許可に期限その他必要な条件を付けることができる。
4 生産緑地地区内において公共施設等の設置又は管理に係る行為で第一項各号に掲げるものをしようとする者は、あらかじめ、市町村長にその旨を通知しなければならない。
5 生産緑地地区に関する都市計画が定められた際当該生産緑地地区内において既に第一項各号に掲げる行為に着手している者は、その都市計画が定められた日から起算して三十日以内に、市町村長にその旨を届け出なければならない。
6 生産緑地地区内において非常災害のため必要な応急措置として第一項各号に掲げる行為をした者は、その行為をした日から起算して十四日以内に、市町村長にその旨を届け出なければならない。
7 市町村長は、第四項の規定による通知又は第五項若しくは前項の規定による届出があつた場合において、当該生産緑地の保全のため必要があると認めるときは、通知又は届出をした者に対して、必要な助言又は勧告をすることができる。
8 国の機関又は地方公共団体が行う第二項各号に掲げる施設の設置又は管理に係る第一項各号に掲げる行為については、同項の許可を受けることを要しない。この場合において、当該国の機関又は地方公共同体は、その行為をしようとするときは、あらかじめ、市町村長に協議しなければならない。
9 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるものについては、第一項から第七項まで及び前項後段の規定は、適用しない。
(原状回復命令等)
第九条 市町村長は、前条第一項の規定に違反した者又は同条第三項の規定により許可に付けられた条件に違反した者がある場合においては、これらの者又はこれらの者から当該土地若しくは建築物その他の工作物についての権利を承継した者に対して、相当の期限を定めて、当該生産緑地の保全に対する障害を排除するため必要な限度において、その原状回復を命じ、又は原状回復が著しく困難である場合に、これに代わるべき必要な措置を採るべき旨を命ずることができる。
2 市町村長は、前項の規定により原状回復又はこれに代わるべき必要な措置(以下この条において「原状回復等」という。)を命じようとするときは、あらかじめ、当該原状回復等を命ずべき者について聴聞を行わなければならない。ただし、その者が正当な理由がなくて聴聞に応じないときは、この限りでない。
3 第一項の規定により原状回復等を命じようとする場合において、過失がなくて当該原状回復等を命ずべき者を確知することができないときは、市町村長は、その者の負担において、当該原状回復等を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者にこれを行わせることができる。この場合においては、相当の期限を定めて、当該原状回復等を行うべき旨及びその期限までに当該原状回復等を行わないときは、市町村長又はその命じた者若しくは委任した者が当該原状回復等を行う旨をあらかじめ公告しなければならない。
4 前項の規定により原状回復等を行おうとする者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
(生産緑地の買取りの申出)
第十条 生産緑地(生産緑地のうち土地区画整理法第九十八条第一項の規定により仮換地として指定された土地にあつては、当該土地に対応する従前の土地。この項後段において同じ。)の所有者は、当該生産緑地に係る生産緑地地区に関する都市計画についての都市計画法第二十条第一項(同法第二十一条第二項において準用する場合を含む。)の規定による告示の日から起算して、第一種生産緑地地区に係る場合にあつては十年、第二種生産緑地地区に係る場合にあつては五年を経過したとき、又は当該告示後に当該生産緑地に係る農林漁業の主たる従事者が死亡し、若しくは農林漁業に従事することを不可能にさせる故障として建設省令で定めるものを有するに至つたときは、市町村長に対し、建設省令で定める様式の書面をもつて、当該生産緑地を時価で買い取るべき旨を申し出ることができる。この場合において、当該生産緑地が他人の権利の目的となつているときは、第十二条第一項又は第二項の規定による買い取る旨の通知書の発送を条件として当該権利を消滅させる旨の当該権利を有する者の書面を添付しなければならない。
(生産緑地の買取り等)
第十一条 市町村長は、前条の規定による申出があつたときは、次項の規定により買取りの相手方が定められた場合を除き、特別の事情がない限り、当該生産緑地を時価で買い取るものとする。
2 市町村長は、前条の規定による申出があつたときは、当該生産緑地の買取りを希望する地方公共団体等のうちから当該生産緑地の買取りの相手方を定めることができる。この場合において、当該生産緑地の周辺の地域における公園、緑地その他の公共空地の整備の状況及び土地利用の状況を勘案して必要があると認めるときは、公園、緑地その他の公共空地の敷地の用に供することを目的として買取りを希望する者を他の者に優先して定めなければならない。
(生産緑地の買取りの通知等)
第十二条 市町村長は、前条第二項の規定により買取りの相手方が定められた場合を除き、第十条の規定による申出があつた日から起算して一月以内に、当該生産緑地を時価で買い取る旨又は買い取らない旨を書面で当該生産緑地の所有者に通知しなければならない。
2 前条第二項の規定により買取りの相手方として定められた者は、前項に規定する期間内に、当該生産緑地を時価で買い取る旨を書面で当該生産緑地の所有者及び市町村長に通知しなければならない。
3 前二項の規定により買い取る旨の通知がされた場合における当該生産緑地の時価については、買い取る旨の通知をした者と生産緑地の所有者とが協議して定める。
4 第六条第六項の規定は、前項の場合について準用する。
(第一種生産緑地地区に係る生産緑地の取得のあつせん)
第十三条 市町村長は、第一種生産緑地地区に係る生産緑地について、前条第一項の規定により買い取らない旨の通知をしたときは、当該生産緑地において農林漁業に従事することを希望する者がこれを取得できるようにあつせんすることに努めなければならない。
(生産緑地地区内における行為の制限の解除)
第十四条 第十条の規定による申出があつた場合において、その申出の日から起算して、第一種生産緑地地区に係る生産緑地にあつては三月以内に、第二種生産緑地地区に係る生産緑地にあつては一月以内に、当該生産緑地の所有権の移転(相続その他の一般承継による移転を除く。)が行われなかつたときは、当該生産緑地については、第七条から第九条までの規定は、適用しない。
(生産緑地の買取り希望の申出)
第十五条 生産緑地の所有者は、第十条の規定による申出ができない場合であつても、疾病等により農林漁業に従事することが困難である等の特別の事情があるときは、市町村長に対し、建設省令で定めるところにより、当該生産緑地の買取りを申し出ることができる。
2 市町村長は、前項の規定による申出がやむを得ないものであると認めるときは、当該生産緑地を自ら買い取ること又は地方公共団体等若しくは当該生産緑地において農林漁業に従事することを希望する者がこれを取得できるようにあつせんすることに努めなければならない。
(買い取つた生産緑地の管理)
第十六条 第十一条第一項若しくは前条第二項の規定により、又は第十二条第二項の規定により生産緑地を買い取つた市町村長又は地方公共団体等は、当該生産緑地をこの法律の目的に従つて適切に管理しなければならない。
(報告及び立入検査等)
第十七条 市町村長は、生産緑地の保全のため必要があると認めるときは、その必要な限度において、第八条第一項の許可を受けた者又はその者から当該土地若しくは建築物その他の工作物についての権利を承継した者に対して、当該行為の実施状況その他必要な事項について報告を求めることができる。
2 市町村長は、第八条第一項若しくは第三項又は第九条第一項の規定による処分をするため必要があると認めるときは、その必要な限度において、その職員に、生産緑地若しくは生産緑地地区内の建物に立ち入り、その状況を調査させ、又は第八条第一項各号に掲げる行為の実施状況を検査させ、若しくはこれらの行為が当該生産緑地の保全に及ぼす影響を調査させることができる。
3 前項に規定する職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
4 第二項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(罰則)
第十八条 第九条第一項の規定による命令に違反した者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
第十九条 次の各号の一に該当する者は、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
一 第八条第一項の規定に違反した者
二 第八条第三項の規定により許可に付けられた条件に違反した者
第二十条 次の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。
一 第六条第三項の規定に違反した者
二 第十七条第一項の規定により報告を求められて、これに従わず、又は虚偽の報告をした者
三 第十七条第二項の規定による立入調査又は立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
第二十一条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(都市計画法の一部改正)
2 都市計画法の一部を次のように改正する。
第八条第一項に次の一号を加える。
十三 生産緑地法(昭和四十九年法律第六十八号)第三条第一項の規定による第一種生産緑地地区又は同法第四条第一項の規定による第二種生産緑地地区
第八条に次の一項を加える。
3 第二種生産緑地地区について都市計画に定めるべき事項は、前項に定めるもののほか、別に法律で定める。
第十三条第三項中「第十二号」を「第十三号」に改める。
(公有地の拡大の推進に関する法律の一部改正)
3 公有地の拡大の推進に関する法律(昭和四十七年法律第六十六号)の一部を次のように改正する。
第四条第一項中第五号を第六号とし、第四号の次に次の一号を加える。
五 都市計画法第八条第一項第十三号に掲げる第一種生産緑地地区又は第二種生産緑地地区の区域内に所在する土地
(建設省設置法の一部改正)
4 建設省設置法(昭和二十三年法律第百十三号)の一部を次のように改正する。
第三条第六号の六の次に次の一号を加える。
六の七 生産緑地法(昭和四十九年法律第六十八号)の施行に関する事務を管理すること。
第四条第四項中「第六号の五まで」の下に「、第六号の七」を加える。
(地方税法の一部改正)
5 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
附則第十一条第二項中「農業振興地域内」の下に「又は都市計画法第八条第一項第十三号に掲げる第一種生産緑地地区(生産緑地法(昭和四十九年法律第六十八号)第三条第二項の規定により同意が得られた第一種生産緑地地区に関する都市計画の案に係る区域を含む。)内」を加える。
附則第十九条の二第一項中「第四条第五項」を「第八条第一項第十三号に掲げる第一種生産緑地地区及び第二種生産緑地地区の区域内の農地並びに同法第四条第五項」に改める。
(建設・自治・内閣総理大臣署名)