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民法の一部を改正する法律

法律第九十九号(昭四六・六・三)

 民法(明治二十九年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。

 目次中「第三節 抵当権ノ消滅」を

第三節 抵当権ノ消滅

第四節 根抵当

に改める。

 第三百七十三条に次の二項を加える。

 抵当権ノ順位ハ各抵当権者ノ合意ニ依リテ之ヲ変更スルコトヲ得但利害ノ関係ヲ有スル者アルトキハ其承諾ヲ得ルコトヲ要ス

 前項ノ順位ノ変更ハ其登記ヲ為スニ非ザレバ其効力ヲ生ゼズ

 第二編第十章に次の一節を加える。

    第四節 根抵当

第三百九十八条ノ二 抵当権ハ設定行為ヲ以テ定ムル所ニ依リ一定ノ範囲ニ属スル不特定ノ債権ヲ極度額ノ限度ニ於テ担保スル為メニモ之ヲ設定スルコトヲ得

 前項ノ抵当権(以下根抵当権ト称ス)ノ担保スベキ不特定ノ債権ノ範囲ハ債務者トノ特定ノ継続的取引契約ニ因リテ生ズルモノ其他債務者トノ一定ノ種類ノ取引ニ因リテ生ズルモノニ限定シテ之ヲ定ムルコトヲ要ス

 特定ノ原因ニ基キ債務者トノ間ニ継続シテ生ズル債権又ハ手形上若クハ小切手上ノ請求権ハ前項ノ規定ニ拘ハラズ之ヲ根抵当権ノ担保スベキ債権ト為スコトヲ得

策三百九十八条ノ三 根抵当権者ハ確定シタル元本並ニ利息其他ノ定期金及ビ債務ノ不履行ニ因リテ生ジタル損害ノ賠償ノ全部ニ付キ極度額ヲ限度トシテ其根抵当権ヲ行フコトヲ得

 債務者トノ取引ニ因ラズシテ取得スル手形上又ハ小切手上ノ請求権ヲ根抵当権ノ担保スベキ債権ト為シタル場合ニ於テ債務者ガ支払ヲ停止シタルトキ、債務者ニ付キ破産、和議開始、更生手続開始、整理開始若クハ特別清算開始ノ申立アリタルトキ又ハ抵当不動産ニ対スル競売ノ申立若クハ滞納処分ニ因ル差押アリタルトキハ其前ニ取得シタルモノニ付テノミ其根抵当権ヲ行フコトヲ得但其事実ヲ知ラズシテ取得シタルモノニ付テモ之ヲ行フコトヲ妨ゲズ

第三百九十八条ノ四 元本ノ確定前ニ於テハ根抵当権ノ担保スベキ債権ノ範囲ノ変更ヲ為スコトヲ得債務者ノ変更ニ付キ亦同ジ

 前項ノ変更ヲ為スニハ後順位ノ抵当権者其他ノ第三者ノ承諾ヲ得ルコトヲ要セズ

 第一項ノ変更ニ付キ元本ノ確定前ニ登記ヲ為サザルトキハ其変更ハ之ヲ為サザリシモノト看做ス

第三百九十八条ノ五 根抵当権ノ極度額ノ変更ハ利害ノ関係ヲ有スル者ノ承諾ヲ得ルニ非ザレバ之ヲ為スコトヲ得ズ

第三百九十八条ノ六 根抵当権ノ担保スベキ元本ニ付テハ其確定スベキ期日ヲ定メ又ハ之ヲ変更スルコトヲ得

 第三百九十八条ノ四第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス

 第一項ノ期日ハ之ヲ定メ又ハ変更シタル日ヨリ五年内タルコトヲ要ス

 第一項ノ期日ノ変更ニ付キ其期日前ニ登記ヲ為サザルトキハ担保スベキ元本ハ其期日ニ於テ確定ス

第三百九十八条ノ七 元本ノ確定前ニ根抵当権者ヨリ債権ヲ取得シタル者ハ其債権ニ付キ根抵当権ヲ行フコトヲ得ズ元本ノ確定前ニ債務者ノ為メニ又ハ債務者ニ代ハリテ弁済ヲ為シタル者亦同ジ

 元本ノ確定前ニ債務ノ引受アリタルトキハ根抵当権者ハ引受人ノ債務ニ付キ其根抵当権ヲ行フコトヲ得ズ

第三百九十八条ノ八 元本ノ確定前ニ債権者又ハ債務者ノ交替ニ因ル更改アリタルトキハ其当事者ハ第五百十八条ノ規定ニ拘ハラズ根抵当権ヲ新債務ニ移スコトヲ得ズ

第三百九十八条ノ九 元本ノ確定前ニ根抵当権者ニ付キ相続ガ開始シタルトキハ根抵当権ハ相続開始ノ時ニ存スル債権ノ外相続人ト根抵当権設定者トノ合意ニ依リ定メタル相続人ガ相続ノ開始後ニ取得スル債権ヲ担保ス

 元本ノ確定前ニ債務者ニ付キ相続ガ開始シタルトキハ根抵当権ハ相続開始ノ時ニ存スル債務ノ外根抵当権者ト根抵当権設定者トノ合意ニ依リ定メタル相続人ガ相続ノ開始後ニ負担スル債務ヲ担保ス

 第三百九十八条ノ四第二項ノ規定ハ前二項ノ合意ヲ為ス場合ニ之ヲ準用ス

 第一項及ビ第二項ノ合意ニ付キ相続ノ開始後六个月内ニ登記ヲ為サザルトキハ担保スベキ元本ハ相続開始ノ時ニ於テ確定シタルモノト看做ス

第三百九十八条ノ十 元本ノ確定前ニ根抵当権者ニ付キ合併アリタルトキハ根抵当権ハ合併ノ時ニ存スル債権ノ外合併後存続スル法人又ハ合併ニ因リテ設立シタル法人ガ合併後ニ取得スル債権ヲ担保ス

 元本ノ確定前ニ債務者ニ付キ合併アリタルトキハ根抵当権ハ合併ノ時ニ存スル債務ノ外合併後存続スル法人又ハ合併ニ困リテ設立シタル法人ガ合併後ニ負担スル債務ヲ担保ス

 前二項ノ場合ニ於テハ根抵当権設定者ハ担保スベキ元本ノ確定ヲ請求スルコトヲ得但前項ノ場合ニ於テ其債務者ガ根抵当権設定者ナルトキハ此限ニ在ラズ前項ノ請求アリタルトキハ担保スベキ元本ハ合併ノ時ニ於テ確定シタルモノト看做ス

 第三項ノ請求ハ根抵当権設定者ガ合併アリタルコトヲ知リタル日ヨリ二週間ヲ経過シタルトキハ之ヲ為スコトヲ得ズ合併ノ日ヨリ一个月ヲ経過シタルトキ亦同ジ

第三百九十八条ノ十一 元本ノ確定前ニ於テハ根抵当権者ハ第三百七十五条第一項ノ処分ヲ為スコトヲ得ズ但其根抵当権ヲ以テ他ノ債権ノ担保ト為スコトヲ妨ゲズ

 第三百七十六条第二項ノ規定ハ前項但書ノ場合ニ於テ元本ノ確定前ニ為シタル弁済ニ付テハ之ヲ適用セズ

第三百九十八条ノ十二 元本ノ確定前ニ於テハ根抵当権者ハ根抵当権設定者ノ承諾ヲ得テ其根抵当権ヲ譲渡スコトヲ得

 根抵当権者ハ其根抵当権ヲ二個ノ根抵当権ニ分割シテ其一ヲ前項ノ規定ニ依リ譲渡スコトヲ得此場合ニ於テハ其根抵当権ヲ目的トスル権利ハ譲渡シタル根抵当権ニ付キ消滅ス

 前項ノ譲渡ヲ為スニハ其根抵当権ヲ目的トスル権利ヲ有スル者ノ承諾ヲ得ルコトヲ要ス

第三百九十八条ノ十三 元本ノ確定前ニ於テハ根抵当権者ハ根抵当権設定者ノ承諾ヲ得テ其根抵当権ノ一部譲渡ヲ為シ之ヲ譲受人ト共有スルコトヲ得

第三百九十八条ノ十四 根抵当権ノ共有者ハ各其債権額ノ割合ニ応ジテ弁済ヲ受ク但元本ノ確定前ニ之ト異ナル割合ヲ定メ又ハ或者ガ他ノ者ニ先チテ弁済ヲ受クベキコトヲ定メタルトキハ其定ニ従フ

 根抵当権ノ共有者ハ他ノ共有者ノ同意ヲ得テ第三百九十八条ノ十二第一項ノ規定ニ依リ其権利ヲ譲渡スコトヲ得

第三百九十八条ノ十五 抵当権ノ順位ノ譲渡又ハ抛棄ヲ受ケタル根抵当権者ガ其根抵当権ノ譲渡又ハ一部譲渡ヲ為シタルトキハ譲受人ハ其順位ノ譲渡又ハ抛棄ノ利益ヲ受ク

第三百九十八条ノ十六 第三百九十二条及ビ第三百九十三条ノ規定ハ根抵当権ニ付テハ其設定ト同時ニ同一ノ債権ノ担保トシテ数個ノ不動産ノ上ニ根抵当権ガ設定セラレタル旨ヲ登記シタル場合ニ限リ之ヲ適用ス

第三百九十八条ノ十七 前条ノ登記アル根抵当権ノ担保スベキ債権ノ範囲、債務者若クハ極度額ノ変更又ハ其譲渡若クハ一部譲渡ハ総テノ不動産ニ付キ其登記ヲ為スニ非ザレバ其効力ヲ生ゼズ

 前条ノ登記アル根抵当権ノ担保スベキ元本ハ一ノ不動産ニ付テノミ確定スベキ事由ガ生ジタル場合ニ於テモ亦確定ス

第三百九十八条ノ十八 数個ノ不動産ノ上ニ根抵当権ヲ有スル者ハ第三百九十八条ノ十六ノ場合ヲ除ク外各不動産ノ代価ニ付キ各極度額ニ至ルマデ優先権ヲ行フコトヲ得

第三百九十八条ノ十九 根抵当権設定者ハ根抵当権設定ノ時ヨリ三年ヲ経過シタルトキハ担保スベキ元本ノ確定ヲ請求スルコトヲ得但担保スベキ元本ノ確定スベキ期日ノ定アルトキハ此限ニ在ラズ

 前項ノ請求アリタルトキハ担保スベキ元本ハ其請求ノ時ヨリ二週間ヲ経過シタルニ因リテ確定ス

第三百九十八条ノ二十 左ノ場合ニ於テハ根抵当権ノ担保スベキ元本ハ確定ス

  一 担保スベキ債権ノ範囲ノ変更、取引ノ終了其他ノ事由ニ因リ担保スベキ元本ノ生ゼザルコトト為リタルトキ

  二 根抵当権者ガ抵当不動産ニ付キ競売又ハ第三百七十二条ニ於テ準用スル第三百四条ノ規定ニ依ル差押ヲ申立テタルトキ但競売手続ノ開始又ハ差押アリタルトキニ限ル

  三 根抵当権者ガ抵当不動産ニ対シ滞納処分ニ因ル差押ヲ為シタルトキ

  四 根抵当権者ガ抵当不動産ニ対スル競売手続ノ開始又ハ滞納処分ニ因ル差押アリタルコトヲ知リタル時ヨリ二週間ヲ経過シタルトキ

  五 債務者又ハ根抵当権設定者ガ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキ前項第四号ノ競売手続ノ開始若クハ差押又ハ同項第五号ノ破産ノ宣告ノ効力ガ消滅シタルトキハ担保スベキ元本ハ確定セザリシモノト看做ス但元本ガ確定シタルモノトシテ其根抵当権又ハ之ヲ目的トスル権利ヲ取得シタル者アルトキハ此限ニ在ラズ

第三百九十八条ノ二十一 元本ノ確定後ニ於テハ根抵当権設定者ハ其根抵当権ノ極度額ヲ現ニ存スル債務ノ額ト爾後二年間ニ生ズベキ利息其他ノ定期金及ビ債務ノ不履行ニ因ル損害賠償ノ額トヲ加ヘタル額ニ減ズベキコトヲ請求スルコトヲ得

 第三百九十八条ノ十六ノ登記アル根抵当権ノ極度額ノ減額ニ付テハ前項ノ請求ハ一ノ不動産ニ付キ之ヲ為スヲ以テ足ル

第三百九十八条ノ二十二 元本ノ確定後ニ於テ現ニ存スル債務ノ額ガ根抵当権ノ極度額ヲ超ユルトキハ他人ノ債務ヲ担保スル為メ其根抵当権ヲ設定シタル者ハ抵当不動産ニ付キ所有権、地上権、永小作権若クハ第三者ニ対抗スルコトヲ得ベキ賃借権ヲ取得シタル第三者ハ其極度額ニ相当スル金額ヲ払渡シ又ハ之ヲ供託シテ其根抵当権ノ消滅ヲ請求スルコトヲ得此場合ニ於テハ其払渡又ハ供託ハ弁済ノ効力ヲ有ス

 第三百九十八条ノ十六ノ登記アル根抵当権ハ一ノ不動産ニ付キ前項ノ請求アリタルトキハ消滅ス

 第三百七十九条及ビ第三百八十条ノ規定ハ第一項ノ請求ニ之ヲ準用ス


   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、昭和四十七年四月一日から施行する。

 (経過措置の原則)

第二条 この法律による改正後の民法(以下「新法」という。)の規定は、別段の定めがある場合を除き、この法律の施行の際現に存する抵当権で根抵当であるもの(以下「旧根抵当権」という。)にも適用する。ただし、改正前の民法の規定により生じた効力を妨げない。

 (新法の適用の制限)

第三条 旧根抵当権で、極度額についての定めが新法の規定に適合していないもの又は附記によらない極度額の増額の登記があるものについては、その極度額の変更、新法第三百九十八条ノ四の規定による担保すべき債権の範囲又は債務者の変更、新法第三百九十八条ノ十二の規定による根抵当権の譲渡、新法第三百九十八条ノ十三の規定による根抵当権の一部譲渡及び新法第三百九十八条ノ十四第一項ただし書の規定による定めは、することができない。

2 前項の規定は、同項に規定する旧根抵当権以外の旧根抵当権で、民法第三百七十五条第一項の規定による処分がされているものについて準用する。ただし、極度額の変更及び新法第三百九十八条ノ十二第二項の規定による根抵当権の譲渡をすることは、妨げない。

 (極度額についての定めの変更)

第四条 旧根抵当権で、極度額についての定めが新法の規定に適合していないものについては、元本の確定前に限り、その定めを変更して新法の規定に適合するものとすることができる。この場合においては、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しない。

 (附記によらない極度額の増額の登記がある旧根抵当権の分割)

第五条 附記によらない極度額の増額の登記がある旧根抵当権については、元本の確定前に限り、根抵当権者及び根抵当権設定者の合意により、当該旧根抵当権を分割して増額に係る部分を新法の規定による独立の根抵当権とすることができる。この場合においては、旧根抵当権を目的とする権利は、当該増額に係る部分について消滅する。

2 前項の規定による分割をする場合には、増額に係る部分を目的とする権利を有する者その他の利害の関係を有する者の承諾を得なければならない。

3 附則第十四条の規定による改正後の不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)第百十七条第二項、第百十八条及び第百十九条の規定は、第一項の規定による分割による権利の変更の登記の申請について準用する。

4 前項の登記は、増額の登記に附記してする。この場合においては、登記官は、分割により根抵当権の設定を登記する旨を記載し、かつ、分割前の旧根抵当権の登記に分割後の極度額を附記しなければならない。

5 不動産登記法第百四十七条第二項の規定は、前項の場合において、増額の登記に当該増額に係る部分を目的とする第三者の権利に関する登記があるときに準用する。

 (元本の確定すべき期日に関する経過措置)

第六条 この法律の施行の際旧根抵当権について現に存する担保すべき元本の確定すべき時期に関する定め又はその登記は、その定めにより元本が確定することとなる日をもつて新法第三百九十八条ノ六第一項の期日とする定め又はその登記とみなす。ただし、その定めにより元本が確定することとなる日がこの法律の施行の日から起算して五年を経過する日より後であるときは、当該定め又はその登記は、当該五年を経過する日をもつて同項の期日とする定め又はその登記とみなす。

 (弁済による代位に関する経過措置)

第七条 この法律の施行前から引き続き旧根抵当権の担保すべき債務を弁済するについて正当な利益を有していた者が、この法律の施行後元本の確定前にその債務を弁済した場合における代位に関しては、なお従前の例による。

 (旧根抵当権の処分に関する経過措置)

第八条 この法律の施行前に元本の確定前の旧根抵当権についてされた民法第三百七十五条第一項の規定による処分に関しては、なお従前の例による。

 (同一の債権の担保として設定された旧根抵当権の分離)

第九条 同一の債権の担保として設定された数個の不動産の上の旧根抵当権については、元本の確定前に限り、根抵当権者及び根抵当権設定者の合意により、当該旧根抵当権を一の不動産について他の不動産から分離し、これらの不動産の間に、民法第三百九十二条の規定の適用がないものとすることができる。ただし、後順位の抵当権者その他の利害の関係を有する者の承諾がないときは、この限りでない。

2 前項の規定による分離による権利の変更の登記は、当該一の不動産の上の旧根抵当権の設定の登記に附記してする。この場合においては、登記官は、当該不動産が他の不動産とともに担保の目的である旨の記載を朱抹しなければならない。

3 不動産登記法第百二十八条の規定は、前項の権利の変更の登記をした場合について準用する。

4 第一項の規定による分離は、新法第三百九十八条ノ十六の規定の適用に関しては、根抵当権の設定とみなす。

 (元本の確定の時期に関する経過措置)

第十条 この法律の施行前に、新法第三百九十八条ノ二十第一項第二号に規定する申立て、同項第三号に規定する差押え、同項第四号に規定する競売手続の開始若しくは差押え又は同項第五号に規定する破産の宣告があつた旧根抵当権で、担保すべき元本が確定していないものについては、この法律の施行の日にこれらの事由が生じたものとみなして、同項の規定を適用する。

 (旧根抵当権の消滅請求に関する経過措置)

第十一条 極度額についての定めが新法の規定に適合していない旧根抵当権については、その優先権の限度額を極度額とみなして、新法第三百九十八条ノ二十二の規定を適用する。

 (民事訴訟法の一部改正)

第十二条 民事訴訟法(明治二十三年法律第二十九号)の一部を次のように改正する。

  第六百五十三条の次に次の一条を加える。

 第六百五十三条ノ二 裁判所ハ競売開始ノ決定ヲ為シタルトキハ第六百四十八条第三号及ビ第五号ニ掲ゲタル者ニ其旨ヲ通知ス可シ但通知ヲ受クベキ者ノ所在明カナラザルトキ又ハ外国ニ在ルトキハ此限ニ在ラズ


 (競売法の一部改正)

第十三条 競売法(明治三十一年法律第十五号)の一部を次のように改正する。

  第二十七条第一項中「為シタルトキハ」の下に「第四項第三号及ビ第五号ニ記載シタル者ニ其旨ヲ通知シ且」を加え、同条第二項中「之ヲ通知スル」を「対シテ其通知ヲ発スル」に改め、同条第二項の次に次の一項を加える。

  前二項ノ通知ハ之ヲ受クベキ者ノ住所若クハ居所ガ知レザルトキ又ハ外国ニ在ルトキハ之ヲ為スコトヲ要セズ

  第四十五条第一項中「及ビ第二項」を「乃至第三項」に改める。

 (不動産登記法の一部改正)

第十四条 不動産登記法の一部を次のように改正する。

  第百十七条に次の一項を加える。

  民法第三百九十八条ノ二第一項ノ抵当権(以下根抵当権ト称ス)ノ設定ノ登記ヲ申請スル場合ニ於テハ前項ノ規定ニ拘ハラズ申請書ニ担保スベキ債権ノ範囲及ビ極度額ヲ記載シ若シ同法第三百七十条但書ノ定アルトキ又ハ担保スベキ元本ノ確定スベキ期日ノ定アルトキハ之ヲ記載スルコトヲ要ス

  第百十九条ノ四中「前二条」を「前七条」に改め、同条を第百十九条ノ九とし、第百十九条ノ三を第百十九条ノ四とし、同条の次に次の四条を加える。

 第百十九条ノ五 民法第三百九十八条ノ九第一項又ハ第二項ノ合意ノ登記ハ相続ニ因ル根抵当権ノ移転又ハ債務者ノ変更ノ登記ヲ為スニ非ザレバ之ヲ為スコトヲ得ズ

  前項ノ合意ノ登記ハ附記ニ依リテ之ヲ為ス

 第百十九条ノ六 根抵当権ヲ甲根抵当権及ビ乙根抵当権ニ分割シテ乙根抵当権ヲ譲渡シタルニ因ル乙根抵当権ノ移転ノ登記ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ乙根抵当権ノ極度額ノ外根抵当権ノ設定ノ登記ノ申請書受附ノ年月日、受附番号、登記原因及ビ其日附並ニ其根抵当権ノ担保スベキ債権ノ範囲及ビ債務者ヲ記載シ若シ其登記ニ民法第三百七十条但書ノ定又ハ担保スベキ元本ノ確定スベキ期日ノ定ノ記載アルトキハ其定ヲ記載スルコトヲ要ス

  第百三十四条ノ規定ハ前項ノ移転ノ登記ニ付テハ之ヲ適用セズ

  第一項ノ移転ノ登記ヲ為ス場合ニ於テ其登記ノ順位番号ヲ記載スルニハ譲渡前ノ根抵当権ノ登記ノ番号ヲ用ヰテ之ヲ為スコトヲ要ス

  第一項ノ移転ノ登記ヲ為シタルトキハ甲根抵当権ノ登記ニ極度額ノ減額ヲ附記スルコトヲ要ス此場合ニ於テハ同項ノ移転ノ登記ヲ為シタルニ因リテ其登記ヲ為ス旨ヲ記載スルコトヲ要ス

 第百十九条ノ七 前条第一項ノ移転ノ登記ヲ申請スル場合ニ於テ譲渡前ノ根抵当権ノ登記ニ関スル共同担保目録アルトキハ申請書ニ其共同担保目録ニ掲ゲタル不動産ニ関スル権利ノ表示ヲ為シタル共同担保目録ヲ添附スルコトヲ要ス

  第百二十五条ノ規定ハ前項ノ規定ニ従ヒテ登記ノ申請アリタル場合ニ於テ登記ヲ為ストキニ之ヲ準用ス

 第百十九条ノ八 第百十九条ノ二ノ規定ハ民法第三百九十八条ノ十四第一項但書ノ定ノ登記ニ之ヲ準用ス

  前項ノ登記ハ附記ニ依リテ之ヲ為ス

  第百十九条ノ二を第百十九条ノ三とし、第百十九条の次に次の一条を加える。

 第百十九条ノ二 抵当権ノ順位ノ変更ノ登記ハ各抵当権ノ登記名義人ノ申請ニ因リ之ヲ為ス

  前項ノ登記ノ申請書ニハ其抵当権ノ登記ノ登記済証ヲ添附スルコトヲ要ス

  第四十四条ノ規定ハ前項ノ登記済証ガ滅失シタル場合ニ之ヲ準用ス


 (不動産登記法の一部改正に伴う経過措置)

第十五条 附則第二条ただし書の規定により効力を有する事項の登記については、なお従前の例による。


 (担保附社債信託法の一部改正)

第十六条 担保附社債信託法(明治三十八年法律第五十二号)の一部を次のように改正する。

  第五十二条第一項中「第七十五条」の下に「、第七十五条ノ二」を加える。

  第七十三条中「順位」を「抵当権又ハ其ノ順位」に改める。

  第七十五条ノ二中「譲渡シ又ハ」を「変更シ又ハ担保権若ハ其ノ順位ヲ譲渡シ若ハ」に改める。

  第八十三条第一項中「若ハ委任」を削る。


 (鉄道抵当法の一部改正)

第十七条 鉄道抵当法(明治三十八年法律第五十三号)の一部を次のように改正する。

  第七条第二項に次のただし書を加える。

  但シ一定ノ範囲ニ属スル不特定ノ債権ヲ極度額ノ限度ニ於テ担保スル為設定セラレタル抵当権(以下根抵当権ト称ス)ノ場合ニ在リテハ第四号及第五号ニ掲ゲタル事項ニ代へ極度額及担保スベキ債権ノ範囲ヲ記載スべシ

  第十六条に次の一項を加える。

  民法(明治二十九年法律第八十九号)第三百七十三条第二項及第三項ノ規定ハ抵当権ノ順位ノ変更ニ付之ヲ準用ス

  第二十五条の次に次の一条を加える。

 第二十五条ノ二 根抵当権ニ付テハ民法第三百九十八条ノ二第二項及第三項並ニ第三百九十八条ノ三乃至第三百九十八条ノ二十二ノ規定ヲ準用ス

  第三十条第二号中「第五号」の下に「又ハ同項第三号及同項但書」を加える。


 (鉄道抵当法の一部改正に伴う経過措置)

第十八条 前条の規定による鉄道抵当法の一部改正に伴う経過措置については、附則第二条から附則第十一条までの規定の例による。


 (銀行等の事務の簡素化に関する法律の一部改正)

第十九条 銀行等の事務の簡素化に関する法律(昭和十八年法律第四十二号)の一部を次のように改正する。

  第七条第二項中「譲渡又ハ」を「変更又ハ其ノ権利若ハ其ノ順位ノ譲渡若ハ」に改める。


 (地方税法の一部改正)

第二十条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。

  第十四条の十二第二項中「債権額」の下に「又は極度額」を加える。

  第二十条の六第二項中「(根抵当であるものを除く。)」を削り、同項に次のただし書を加える。

   ただし、その抵当権が根抵当である場合において、その担保すべき元本の確定前に納付又は納入があつたときは、この限りでない。


 (地方税法の一部改正に伴う経過措置)

第二十一条 この法律の施行前において第三者が地方団体の徴収金を納付し、又は納入すべき者に代わつてその徴収金を納付し、又は納入した場合については、前条の規定による改正後の地方税法第二十条の六第二項の規定にかかわらず、なお従前の例による。

 (自動車抵当法の一部改正)

第二十二条 自動車抵当法(昭和二十六年法律第百八十七号)の一部を次のように改正する。

  第十九条の次に次の一条を加える。

  (根抵当権)

 第十九条の二 抵当権は、設定行為をもつて定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる。

 2 民法第三百九十八条ノ二第二項及び第三項、第三百九十八条ノ三から第三百九十八条ノ十まで、第三百九十八条ノ十二第一項、第三百九十八条ノ十三、第三百九十八条ノ十四第一項本文及び第二項並びに第三百九十八条ノ十九から第三百九十八条ノ二十二までの規定は、前項の抵当権について準用する。

 (自動車抵当法の一部改正に伴う経過措置)

第二十三条 前条の規定による自動車抵当法の一部改正に伴う経過措置については、附則第二条、附則第三条第一項、附則第四条から附則第七条まで、附則第十条及び附則第十一条の規定の例による。

 (航空機抵当法の一部改正)

第二十四条 航空機抵当法(昭和二十八年法律第六十六号)の一部を次のように改正する。

  第十条に次の一項を加える。

 2 民法第三百七十三条第二項及び第三項の規定は、抵当権の順位の変更について準用する。

  第二十二条の次に次の一条を加える。

  (根抵当権)

 第二十二条の二 抵当権は、設定行為をもつて定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる。

 2 民法第三百九十八条ノ二第二項及び第三項並びに第三百九十八条ノ三から第三百九十八条ノ二十二までの規定は、前項の抵当権について準用する。


 (航空機抵当法の一部改正に伴う経過措置)

第二十五条 前条の規定による航空機抵当法の一部改正に伴う経過措置については、附則第二条から附則第十一条までの規定の例による。


 (建設機械抵当法の一部改正)

第二十六条 建設機械抵当法(昭和二十九年法律第九十七号)の一部を次のように改正する。

  第十四条に次の一項を加える。

 2 民法第三百七十三条第二項及び第三項の規定は、抵当権の順位の変更について準用する。

  第二十四条の次に次の一条を加える。

  (根抵当権)

 第二十四条の二 抵当権は、設定行為をもつて定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる。

 2 民法第三百九十八条ノ二第二項及び第三項並びに第三百九十八条ノ三から第三百九十八条ノ二十二までの規定は、前項の抵当権について準用する。


 (建設機械抵当法の一部改正に伴う経過措置)

第二十七条 前条の規定による建設機械抵当法の一部改正に伴う経過措置については、附則第二条から附則第十一条までの規定の例による。


 (企業担保法の一部改正)

第二十八条 企業担保法(昭和三十三年法律第百六号)の一部を次のように改正する。

  第九条中「第二百九十六条」の下に「、第三百七十三条第二項及び第三項」を加え、「第三百七十六条及び」を「第三百七十六条並びに」に改める。


 (国税徴収法の一部改正)

第二十九条 国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)の一部を次のように改正する。

  第十八条第二項中「債権額」の下に「又は極度額」を加える。


 (国税通則法の一部改正)

第三十条 国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)の一部を次のように改正する。

  第四十一条第二項中「(根抵当であるものを除く。)」を削り、同項に次のただし書を加える。

   ただし、その抵当権が根抵当である場合において、その担保すべき元本の確定前に納付があつたときは、この限りでない。


 (国税通則法の一部改正に伴う経過措置)

第三十一条 この法律の施行前において第三者が国税を納付すべき者に代わつてその国税の納付をした場合については、前条の規定による改正後の国税通則法第四十一条第二項の規定にかかわらず、なお従前の例による。


 (登録免許税法の一部改正)

第三十二条 登録免許税法(昭和四十二年法律第三十五号)の一部を次のように改正する。

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  第十二条第一項中「抵当権により担保される」を「抵当権につき」に、「又は債権金額」を「、債権金額又は極度金額」に改める。

  別表第一第一号(五)中「債権金額」の下に「、極度金額」を加え、同号(六)中「債権金額」の下に「又は極度金額」を加え、同号(六)の次に次のように加える。

(六の二)根抵当権の一部譲渡による移転の登記

一部譲渡後の共有者の数で極度金額を除して計算した金額

千分の二

(六の三)抵当権の順位の変更の登記

抵当権の件数

一件につき五百円

  別表第一第二号(五)及び(六)中「債権金額」の下に「又は極度金額」を加え、同号(六)の次に次のように加える。

(六の二)根抵当権の一部譲渡による移転の登記

一部譲渡後の共有者の数で極度金額を除して計算した金額

千分の二

(六の三)抵当権の順位の変更の登記

抵当権の件数

一件につき五百円

  別表第一第三号(二)及び(三)中「債権金額」の下に「又は極度金額」を加え、同号(三)の次に次のように加える。

(三の二)根抵当権の一部譲渡による移転の登録

一部譲渡後の共有者の数で極度金額を除して計算した金額

千分の一・五

(三の三)抵当権の順位の変更の登録

抵当権の件数

一件につき五百円

  別表第一第四号(三)及び(四)中「債権金額」の下に「又は極度金額」を加え、同号(四)の次に次のように加える。

(四の二)根抵当権の一部譲渡による移転の登録

一部譲渡後の共有者の数で極度金額を除して計算した金額

千分の二

(四の三)抵当権の順位の変更の登録

抵当権の件数

一件につき五百円

  別表第一第五号(二)中「債権金額」の下に「又は極度金額」を加え、同号(二)の次に次のように加える。

(二の二)根抵当権の一部譲渡による移転の登記

一部譲渡後の共有者の数で極度金額を除して計算した金額

千分の一・五

(二の三)抵当権の順位の変更の登記

抵当権の件数

一件につき三千円

  別表第一第五号(三)中「債権金額」の下に「又は極度金額」を加える。

  別表第一第六号(一)の次に次のように加える。

(一の二)企業担保権の順位の変更の登記

企業担保権の件数

一件につき三千円

  別表第一第六号(三)中「(一)又は(二)」を「(一)から(二)まで」に改める。

  別表第一第七号(一)中「債権金額」の下に「又は極度金額」を加え、同号(一)の次に次のように加える。

(一の二)根抵当権の一部譲渡による移転の登録

一部譲渡後の共有者の数で極度金額を除して計算した金額

千分の一・五

(一の三)抵当権の順位の変更の登録

抵当権の件数

一件につき三千円

  別表第一第七号(二)中「債権金額」の下に「又は極度金額」を加え、同号(三)中「(一)又は(二)」を「(一)から(二)まで」に改める。

  別表第一第八号(一)イ及びロ中「債権金額」の下に「又は極度金額」を加え、同号(一)ニを同号(一)ヘとし、同号(一)ハ中「イ又はロ」を「イからニまで」に改め、同号(一)中ハをホとし、ロの次に次のように加える。

 ハ 根抵当権の一部譲渡による移転の登記

一部譲渡後の共有者の数で極度金額を除して計算した金額

千分の一・五

 ニ 抵当権の順位の変更の登記

抵当権の件数

一件につき五百円

  別表第一第八号(二)イ及びロ中「債権金額」の下に「又は極度金額」を加え、同号(二)ニを同号(二)ヘとし、同号(二)ハ中「イ又はロ」を「イからニまで」に改め、同号(二)中ハをホとし、ロの次に次のように加える。

 ハ 根抵当権の一部譲渡による移転の登記

一部譲渡後の共有者の数で極度金額を除して計算した金額

千分の一・五

 ニ 抵当権の順位の変更の登記

抵当権の件数

一件につき五百円

  別表第一第八号(三)イ及びロ中「債権金額」の下に「又は極度金額」を加え、同号(三)中ニをホとし、ハをニとし、ロの次に次のように加える。

 ハ 根抵当権の一部譲渡による移転の登録

一部譲渡後の共有者の数で極度金額を除して計算した金額

千分の一・五

  別表第一第十五号(十三)中「債権金額」の下に「又は極度金額」を加え、同号(十六)の次に次のように加える。

(十六の二)抵当権の順位の変更の登録

抵当権の件数

一件につき五百円

  別表第一第十六号(九)中「債権金額」の下に「又は極度金額」を加え、同号(十二)の次に次のように加える。

(十二の二)抵当権の順位の変更の登録

抵当権の件数

一件につき五百円

  別表第一第十八号(七)中「債権金額」の下に「、極度金額」を加え、同号(八)の次に次のように加える。

(八の二)抵当権の順位の変更の登録

抵当権の件数

一件につき五百円

(内閣総理・法務・大蔵・通商産業・運輸・建設・自治大臣署名) 

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