沖縄における公用地等の暫定使用に関する法律

法律第百三十二号(昭四六・一二・三一)

 (趣旨等)

第一条 この法律は、沖縄(硫黄鳥島及び伊平屋島並びに北緯二十七度以南の南西諸島(大東諸島を含む。)をいう。以下同じ。)の復帰に伴い、沖縄における公用地等のための土地又は工作物に関する暫定使用について特別な措置を定めるものとする。

2 この法律の規定により使用することができる土地又は工作物については、この法律の規定による使用の開始後であつても、当該土地又は工作物の所有者その他の権利者との合意によりこれを使用することとなるよう努めるものとする。

 (土地又は工作物の暫定使用)

第二条 次の各号に掲げる土地又は工作物は、それぞれ当該各号に掲げる者が、この法律の施行の日から当該土地又は工作物について権原を取得するまでの間、使用することができる。ただし、この法律の施行の日から起算して五年をこえない範囲内において当該土地又は工作物の種類及び設置場所等を考慮して必要と認められる期間として政令で定める期間を経過した日(その日前に、事業の廃止、変更その他の事由により、当該土地又は工作物を使用する必要がなくなつたときは、その事由が生じた日の翌日)以後においては、この限りでない。

 一 この法律の施行の際沖縄においてアメリカ合衆国の軍隊の用に供されている土地又は工作物で、次に掲げるもの 国

  イ 引き続き自衛隊の部隊の用に供する土地又は工作物

  ロ 引き続き日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(以下この項において「地位協定」という。)の規定に従いアメリカ合衆国の軍隊の用に供する土地又は工作物

  ハ ロの土地又は工作物で、この法律の施行の日から起算して一年を経過する日までの間に、地位協定の規定に従いアメリカ合衆国から日本国に返還され、引き続き自衛隊の部隊の用に供するもの

 二 この法律の施行の際琉球水道公社の設立(千九百五十八年高等弁務官布令第八号)に基づく琉球水道公社が水道法(昭和三十二年法律第百七十七号)による水道事業又は水道用水供給事業に相当する事業の用に供する施設の用に供している土地(当該施設に関する工事の用に供している土地を含む。)で、引き続き同法による水道事業又は水道用水供給事業の用に供する施設の用に供するもの(当該施設に関する工事の用に供する土地を含む。) 沖縄県

 三 この法律の施行の際琉球電力公社の設立(千九百五十四年琉球列島米国民政府布令第百二十九号)に基づく琉球電力公社が電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)による電気工作物に相当する工作物の用に供している土地で、引き続き同法による電気事業の用に供する電気工作物の用に供するもの 沖縄振興開発特別措置法(昭和四十六年法律第百三十一号)により設立される沖縄電力株式会社

 四 この法律の施行の際沖縄にある飛行場の敷地である土地で、引き続き運輸大臣が設置する飛行場の敷地となるもの 国

 五 この法律の施行の際沖縄にある航空機の航行を援助するための施設又は航空通信の用に供する電気通信設備の用に供されている土地で、次に掲げるもの 国

  イ 引き続き運輸大臣が設置する航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)による航空保安施設又は運輸大臣が航空通信の用に供する電気通信設備の用に供する土地

  ロ 第一号ロの土地で、この法律の施行の日から起算して一年を経過する日までの間に、地位協定の規定に従いアメリカ合衆国から日本国に返還され、引き続き運輸大臣が設置する航空法による航空保安施設の用に供するもの

 六 この法律の施行の際沖縄にある航路標識法(昭和二十四年法律第九十九号)による航路標識に相当する施設の用に供されている土地で、引き続き海上保安庁長官が設置する同法による航路標識の用に供するもの 国

 七 この法律の施行の際沖縄において一般交通の用に供されているアメリカ合衆国の軍隊の築造に係る道の敷地である土地で、引き続き道路法(昭和二十七年法律第百八十号)による道路を構成する敷地となるもの 国又は地方公共団体

2 前項各号に掲げる土地となるべきものの区域又は同項第一号に掲げる工作物となるべきもの及び当該土地又は工作物の使用の方法は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に掲げる者がこの法律の施行前に告示する。

 一 前項第一号に掲げる土地又は工作物 防衛施設庁長官

 二 前項第二号に掲げる土地 厚生大臣

 三 前項第三号に掲げる土地 通商産業大臣

 四 前項第四号に掲げる土地 運輸大臣

 五 前項第五号に掲げる土地 運輸大臣

 六 前項第六号に掲げる土地 海上保安庁長官

 七 前項第七号に掲げる土地 建設大臣

3 第一項の規定により土地又は工作物を使用する者は、この法律の施行後、遅滞なく、当該土地の区域又は工作物及び土地又は工作物の使用の方法をその所有者並びにその氏名又は名称及び住所が明らかな関係人(この法律の施行の日に当該土地又は工作物に関して所有権以外の権利を有する者及びその承継人をいう。以下同じ。)に通知しなければならない。この場合において、その所有者の氏名若しくは名称又は住所を確知することができないときは、政令で定めるところにより、その通知すベき事項を公示しなければならない。

 (土地又は工作物の使用に伴う損失の補償)

第三条 前条第一項の規定により土地又は工作物を使用する者は、当該土地又は工作物を使用することによつてその所有者及び関係人が通常受ける損失を補償しなければならない。

2 前項の規定による損失の補償は、政令で定める区分に応じ、各年度(国の会計年度をいう。以下同じ。)に係る分を当該年度においてしなければならない。この場合において、損失の補償は、各年度に係る分について、当該年度の開始する日(この法律の施行の日の属する年度にあつては、この法律の施行の日。以下同じ。)の価格(土地又は土地に関する所有権以外の権利に対する損失の補償についてはその土地及び近傍類地の地代及び借賃等を考慮し、工作物又は工作物に関する所有権以外の権利に対する損失の補償についてはその工作物及び近傍同種の物件の使用料及び借賃等を考慮して算定した当該年度の開始する日の価格)によつて算定しなければならない。

3 第一項の規定による損失の補償は、各年度に係る分について前条第一項の規定により土地又は工作物を使用する者と当該土地又は工作物の所有者及び関係人とが協議して定めなければならない。ただし、協議をすることができないときは、この限りでない。

4 前条第一項の規定により土地又は工作物を使用する者は、その所有者及び関係人の請求があるときは、自己の見積つた当該年度に係る損失の補償の額を払い渡さなければならない。

5 第三項本文の規定による協議が成立しないとき、又は同項ただし書に規定する場合に該当するときは、前条第一項の規定により土地若しくは工作物を使用する者又は当該土地若しくは工作物の所有者若しくは関係人は、政令で定めるところにより、収用委員会に土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第九十四条の規定による裁決を申請することができる。


 (原状回復の義務)

第四条 第二条第一項の規定により土地又は工作物を使用する者は、同項ただし書の規定により当該土地又は工作物を使用することができなくなつたときは、遅滞なく、当該土地又は工作物をその所有者に返還しなければならない。この場合においては、政令で定めるところにより、当該土地又は工作物を原状に回復し、又は原状に回復しないことによつて生ずる損失を補償しなければならない。


 (政令への委任)

第五条 前三条に定めるもののほか、第二条の規定による土地又は工作物の使用について必要な事項は、政令で定める。


   附 則


 (施行期日)

1 この法律は、琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の効力発生の日から施行する。ただし、第二条第二項及び次項の規定は、公布の日から施行する。


 (琉球政府行政主席への通知)

2 内閣総理大臣は、この法律の内容を琉球政府行政主席に通知しなければならない。

(内閣総理・厚生・通商産業・運輸・建設大臣署名) 

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