スポーツ振興法
法律第百四十一号(昭三六・六・一六)
目次
第一章 総則(第一条―第四条)
第二章 スポーツの振興のための措置(第五条―第十七条)
第三章 スポーツ振興審議会及び体育指導委員(第十八条・第十九条)
第四章 国の補助等(第二十条―第二十三条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、スポーツの振興に関する施策の基本を明らかにし、もつて国民の心身の健全な発達と明るく豊かな国民生活の形成に寄与することを目的とする。
2 この法律の運用に当たつては、スポーツをすることを国民に強制し、又はスポーツを前項の目的以外の目的のために利用することがあつてはならない。
(定義)
第二条 この法律において「スポーツ」とは、運動競技及び身体運動(キャンプ活動その他の野外活動を含む。)であつて、心身の健全な発達を図るためにされるものをいう。
(施策の方針)
第三条 国及び地方公共団体は、スポーツの振興に関する施策の実施に当たつては、国民の間において行なわれるスポーツに関する自発的な活動に協力しつつ、ひろく国民があらゆる機会とあらゆる場所において自主的にその適性及び健康状態に応じてスポーツをすることができるような諸条件の整備に努めなければならない。
2 この法律に規定するスポーツの振興に関する施策は、営利のためのスポーツを振興するためのものではない。
(計画の策定)
第四条 文部大臣は、スポーツの振興に関する基本的計画を定めるものとする。
2 文部大臣は、前項の基本的計画を定めるについては、あらかじめ、保健体育審議会の意見をきかなければならない。
3 都道府県及び市(特別区を含む。以下同じ。)町村の教育委員会は、第一項の基本的計画を参しやくして、その地方の実情に即したスポーツの振興に関する計画を定めるものとする。
4 都道府県及びスポーツ振興審議会が置かれている市町村の教育委員会は、前項の計画を定めるについては、あらかじめ、スポーツ振興審議会の意見をきかなければならない。
第二章 スポーツの振興のための措置
(スポーツの日)
第五条 国民の間にひろくスポーツについての理解と関心を深めるとともに積極的にスポーツをする意欲を高揚するため、スポーツの日を設ける。
2 スポーツの日は、十月の第一土曜日とする。
3 国及び地方公共団体は、スポーツの日の趣旨にふさわしい事業を実施するとともに、この日において、ひろく国民があらゆる地域及び職域でそれぞれその生活の実情に即してスポーツをすることができるような行事が実施されるよう、必要な措置を講じ、及び援助を行なうものとする。
(国民体育大会)
第六条 国民体育大会は、財団法人日本体育協会、国及び開催地の都道府県が共同して開催する。
2 国民体育大会においては、都道府県ごとに選出された選手が参加して総合的に運動競技をするものとする。
3 国は、国民体育大会の円滑な運営に資するため、財団法人日本体育協会及び開催地の都道府県に対し、必要な援助を行なうものとする。
(スポーツ行事の実施及び奨励)
第七条 地方公共団体は、ひろく住民が自主的かつ積極的に参加できるような運動会、競技会、運動能力テスト、スポーツ教室等のスポーツ行事を実施するように努め、かつ、団体その他の者がこれらの行事を実施するよう奨励しなければならない。
2 国は、地方公共団体に対し、前項の行事の実施に関し必要な援助を行なうものとする。
(青少年スポーツの振興)
第八条 国及び地方公共団体は、青少年スポーツの振興に関し特別の配慮をしなければならない。
(職場スポーツの奨励)
第九条 国及び地方公共団体は、勤労者が勤労の余暇を利用して積極的にスポーツをすることができるようにするため、職場スポーツの奨励に必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(野外活動の普及奨励)
第十条 国及び地方公共団体は、心身の健全な発達のために行なわれる徒歩旅行、自転車旅行、キャンプ活動その他の野外活動を普及奨励するため、コースの設定、キャンプ場の開設その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(指導者の充実)
第十一条 国及び地方公共団体は、スポーツの指導者の養成及びその資質の向上のため、講習会、研究集会等の開催その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(施設の整備)
第十二条 国及び地方公共団体は、体育館、水泳プールその他の政令で定めるスポーツ施設(スポーツの設備を含む。以下同じ。)が政令で定める基準に達するよう、その整備に努めなければならない。
(学校施設の利用)
第十三条 国及び地方公共団体は、その設置する学校の教育に支障のない限り、当該学校のスポーツ施設を一般のスポーツのための利用に供するよう努めなければならない。
2 国及び地方公共団体は、前項の利用を容易にさせるため、当該学校の施設(設備を含む。)の補修等に関し適切な措置を講ずるよう努めなければならない。
(スポーツの水準の向上のための措置)
第十四条 国及び地方公共団体は、わが国のスポーツの水準を国際的に高いものにするため、必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(顕彰)
第十五条 国及び地方公共団体は、スポーツの優秀な成績を収めた者及びスポーツの振興に寄与した者の顕彰に努めなければならない。
(スポーツ事故の防止)
第十六条 国及び地方公共団体は、登山事故、水泳事故その他のスポーツ事故を防止するため、施設の整備、指導者の養成、事故防止に関する知識の普及その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(科学的研究の促進)
第十七条 国は、医学、生理学、心理学、力学その他の諸科学を総合して、スポーツに関する実際的、基礎的研究を促進するよう努めるものとする。
第三章 スポーツ振興審議会及び体育指導委員
(スポーツ振興審議会)
第十八条 都道府県に、スポーツ振興審議会を置く。
2 市町村に、スポーツ振興審議会を置くことができる。
3 スポーツ振興審議会は、第四条第四項に規定するもののほか、都道府県の教育委員会若しくは知事又は市町村の教育委員会の諮問に応じて、スポーツの振興に関する重要事項について調査審議し、及びこれらの事項に関して都道府県の教育委員会若しくは知事又は市町村の教育委員会に建議する。
4 スポーツ振興審議会の委員は、スポーツに関する学識経験のある者及び関係行政機関の職員の中から、教育委員会が任命する。この場合において、都道府県の教育委員会は知事の、市町村の教育委員会はその長の意見をきかなければならない。
5 第一項から前項までに定めるもののほか、スポーツ振興審議会の委員の定数、任期その他スポーツ振興審議会に関し必要な事項については、条例で定める。
(体育指導委員)
第十九条 市町村の教育委員会に、体育指導委員を置く。
2 体育指導委員は、教育委員会規則の定めるところにより、当該市町村におけるスポーツの振興のため、住民に対し、スポーツの実技の指導その他スポーツに関する指導、助言を行なうものとする。
3 体育指導委員は、社会的信望があり、スポーツに関する深い関心と理解をもち、及びその職務を行なうのに必要な熱意と能力をもつ者の中から、教育委員会が任命する。
4 体育指導委員は、非常勤とする。
第四章 国の補助等
(国の補助)
第二十条 国は、地方公共団体に対し、予算の範囲内において、政令で定めるところにより、次の各号に掲げる経費について、その一部を補助する。この場合において、国の補助する割合は、それぞれ当該各号に掲げる割合によるものとする。
一 地方公共団体の設置する学校の水泳プールその他の政令で定めるスポーツ施設の整備に要する経費 三分の一
二 地方公共団体の設置する一般の利用に供するための体育館、水泳プールその他の政令で定めるスポーツ施設の整備に要する経費 三分の一
三 都道府県が行なうスポーツの指導者の養成及びその資質の向上のための講習に要する経費 二分の一
四 都道府県の教育委員会の推せんに基づいて文部大臣が指定する市町村が行なう青少年スポーツの振興のための事業に要する経費 二分の一
2 国は、地方公共団体に対し、予算の範囲内において、政令で定めるところにより、次の各号に掲げる経費について、その一部を補助する。
一 国民体育大会の運営に要する経費であつてその開催地の都道府県において要するもの
二 その他スポーツの振興のために地方公共団体が行なう事業に要する経費であつて特に必要と認められるもの
3 国は、学校法人に対し、その設置する学校のスポーツ施設の整備に要する経費について、予算の範囲内において、その一部を補助することができる。この場合においては、私立学校法(昭和二十四年法律第二百七十号)第五十九条第二項から第六項までの規定の適用があるものとする。
4 国は、スポーツの振興のための事業を行なうことを主たる目的とする団体であつて当該事業がわが国のスポーツの振興に重要な意義を有すると認められるものに対し、当該事業に関し必要な経費について、予算の範囲内において、その一部を補助することができる。
(他の法律との関係)
第二十一条 前条第一項から第三項までの規定は、他の法律の規定に基づき国が負担し、又は補助する経費については、適用しない。
(地方公共団体の補助)
第二十二条 地方公共団体は、スポーツの振興のための事業を行なうことを主たる目的とする団体に対し、当該事業に関し必要な経費についてその一部を補助することができる。
(保健体育審議会への諮問等)
第二十三条 国又は地方公共団体が第二十条第四項又は前条の規定により団体に対し補助金を交付しようとする場合には、あらかじめ、国にあつては文部大臣が保健体育審議会の、地方公共団体にあつては教育委員会がスポーツ振興審議会の意見をきかなければならない。この意見をきいた場合においては、社会教育法(昭和二十四年法律第二百七号)第十三条の規定による社会教育審議会又は社会教育委員の会議の意見をきくことを要しない。
附 則
(施行期日)
1 この法律中第四条第四項及び第十八条の規定、第二十三条の規定(地方公共団体に係る部分に限る。)並びに附則第七項の規定は昭和三十七年四月一日から、その他の規定は公布の日から起算して三箇月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
(体育指導委員の設置に関する経過措置)
2 第十九条の規定の施行の際、現に同条第二項に規定するような職務を行なう者として市町村に置かれている者は、別に辞令を発せられないときは、同条の規定による体育指導委員として市町村の教育委員会が任命したものとみなす。
3 市町村の教育委員会は、第十九条の規定の施行の際、前項の規定により体育指導委員として任命したものとみなされる者がいないときは、昭和三十七年三月三十一日までの間は、同条の規定にかかわらず、体育指導委員を置かないことができる。
(文部省設置法の一部改正)
4 文部省設置法(昭和二十四年法律第百四十六号)の一部を次のように改正する。
第十条の二第一号イ中「運動競技及びレクリエーション」を「スポーツ」に、同条第四号中「運動競技」を「スポーツ事業」に改める。
(地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部改正)
5 地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和三十一年法律第百六十二号)の一部を次のように改正する。
第二十三条第十三号中「体育」の下に「(スポーツを含む。以下同じ。)」を加える。
(地方自治法の一部改正)
6 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)の一部を次のように改正する。
別表第一第三十四号の次に次の一号を加える。
三十四の二 スポーツ振興法(昭和三十六年法律第百四十一号)の定めるところにより、スポーツの振興に関する計画を定める等スポーツの振興に必要な事務を行なうこと。
別表第二第二号(三十)の次に次のように加える。
(三十の二) スポーツ振興法の定めるところにより、スポーツの振興に関する計画を定める等スポーツの振興に必要な事務を行なうこと。
別表第六第二号の表市町村の部中
「 |
統計主事 |
統計法第十条第六項の定めるところによる。 |
」 |
を
「 |
体育指導委員 |
」 |
|
統計主事 |
統計法第十条第六項の定めるところによる。 |
に改める。
7 地方自治法の一部を次のように改正する。
別表第七第一号の表中地方産業教育審議会に係る附属機関及び担任する事務の欄を
「 |
地方産業教育審議会 |
産業教育振興法第十二条の規定による産業教育に関する重要事項の調査審議及び都道府県の教育委員会又は知事に対する建議に関する事務 |
」 |
スポーツ振興審議会 |
スポーツ振興法第十八条第三項の規定によるスポーツの振興に関する重要事項についての調査審議及び都道府県の教育委員会に対する建議に関する事務 |
に改める。
(大蔵・文部・自治・内閣総理大臣署名)