関税暫定措置法

法律第三十六号(昭三五・三・三一)

 (趣旨)

第一条 この法律は、特定の物品について関税を軽減し、又は免除するため関税定率法(明治四十三年法律第五十四号)及び関税法(昭和二十九年法律第六十一号)の暫定的特例を定めるものとする。


 (重要機械類の免税)

第二条 国民経済の健全な発展に資するため設備の緊急な近代化を必要とする事業又は特に育成を必要とする事業で政令で定めるものの用に供される機械類のうち、次に掲げる要件を備えるもので政令で定めるものについては、昭和三十六年三月三十一日までに輸入されるものに限り、政令で定めるところにより、その関税を免除する。

 一 新式又は高性能の産業用機械類で、本邦において製作することが困難であること。

 二 事業の主要な作業工程において欠くことができないものであること。


 (給食用乾燥脱脂ミルクの免税)

第三条 小学校、中学校、夜間において授業を行なう課程を置く高等学校、盲学校、聾学校若しくは養護学校の児童、生徒若しくは幼児又は保育所の児童の給食の用に供される乾燥脱脂ミルクについては、昭和三十六年三月三十一日までに輸入されるものに限り、政令で定めるところにより、その関税を免除する。


 (原子力研究用物品等の免税)

第四条 政令で定める原子力の研究の用に供される物品及び原子力発電設備に使用される物品のうち、本邦において製作することが困難と認められるもので政令で定めるものについては、昭和三十八年三月三十一日までに輸入されるものに限り、政令で定めるところにより、その関税を免除する。


 (航空機及びその部分品の免税)

第五条 航空機及びこれに使用する部分品のうち、本邦において製作することが困難と認められるもので政令で定めるものについては、昭和三十八年三月三十一日までに輸入されるものに限り、政令で定めるところにより、その関税を免除する。


 (農林漁業用重油の免税)

第六条 関税定率法別表第五百十九号に掲げる重油のうち、温度十五度における比重が〇・八七六二をこえ、〇・八九をこえないもの(温度十五度における比重が〇・八九をこえ、〇・九二五をこえないもので、温度五十度における粘度が七十レッドウッド秒をこえないものを含むものとし、引火点が温度百十五度をこえるこれらのものを除く。)で、農林漁業の用に供されるもの(外国から本邦に到着した時においてその性質を有するものに限る。)については、昭和三十六年三月三十一日までに輸入されるものに限り、政令で定めるところにより、その関税を免除する。


 (肥料製造用原油の免税)

第七条 関税定率法別表第五百十九号に掲げる原油で、昭和三十六年三月三十一日までに輸入され、その輸入の許可の日から一年以内において税関長の指定する期間内に、税関長の承認を受けた製造工場でアンモ二ア系窒素肥料の製造の原料として使用され、かつ、当該肥料の製造が終了するものについては、政令で定めるところにより、その関税を免除する。

2 関税定率法第十三条第三項から第五項まで(製造用原料品の減免税の手続等)の規定は、前項の規定により関税を免除する場合について準用する。この場合において、同条第四項中「これと同種の他の原料品」とあるのは、「これと同種の他の原料品又はその製品の原料となるべき他の物品」と読み替えるものとする。

3 次の各号の一に該当する場合においては、当該各号に掲げる原油の数量について第一項の規定により免除を受けた関税を、直ちに徴収する。ただし、同項の原油又は製品が災害その他のやむを得ない理由により亡失した場合又は税関長の承認を受けて滅却された場合は、この限りでない。

 一 第一項に規定する期間内に同項に規定する製造を終えなかつたとき(第十条第一項又は第十二条第二項の規定により関税を徴収するときを除くものとし、前項において準用する関税定率法第十三条第五項の規定による届出をしなかつたときを含む。)。 当該製造を終えず、又は届出をしなかつた原油

 二 第一項の規定により税関長の承認を受けた製造工場以外の場所で同項に規定する製造を行ない、又は前項において準用する関税定率法第十三条第四項の規定に違反して当該製造を行なつたとき。 当該製造に供した原油


 (その他の物品の免税及び減税)

第八条 別表第一に掲げる物品で昭和三十六年三月三十一日までに輸入されるものについては、その関税を免除する。

2 別表第二に掲げる物品で昭和三十六年三月三十一日までに輸入されるものに課する関税の税率は、同表に定めるところによる。

3 前二項に規定する物品のうち特定の用途に供するものであることを要件としているもので政令で定めるものについて、これらの規定により関税の免除又は軽減を受ける者は、政令で定める手続をしなければならない。


 (用途外使用等の制限)

第九条 第二条から第六条まで又は第七条第一項の規定により関税の免除を受けた物品及び前条第一項又は第二項の規定により関税の免除又は軽減を受けた同条第三項に規定する物品は、その輸入の許可の日から二年以内(第七条第一項の規定により関税の免除を受けた物品については、同項に規定する期間内)に、その免除又は軽減を受けた用途(第二条又は第四条の規定により関税の免除を受けた物品については、政令で定めるところにより税関長が承認する用途を含む。)以外の用途に供し、又はこれらの用途以外の用途に供するため譲渡してはならない。ただし、やむを得ない理由がある場合において、政令で定めるところにより税関長の承認を受けたときは、この限りでない。


 (用途外使用等の承認があつた場合の関税の徴収)

第十条 前条ただし書の場合においては、同条ただし書の承認を受けた物品につき第二条から第六条まで、第七条第一項又は第八条第一項若しくは第二項の規定により免除又は軽減を受けた関税を、当該承認を受けた者から直ちに徴収する。この場合において、使用による減粍、変質その他のやむを得ない理由による価値の減少があつたときは、関税定率法第十条(変質又は損傷による減税)の規定に準じてその関税を軽減することができる。

2 次の各号に掲げる物品につき前項前段の規定により関税を徴収する場合において、前条ただし書の承認を受けた者が当該関税の免除又は軽減を受けた者以外の者であるとき、その他当該物品の課税価格が明らかでないときは、その徴収する関税の額は、当該各号に掲げる額とする。

 一 第六条の規定により関税の免除を受けた重油 当該承認を受けた時において当該重油の輸入があつたものとみなして関税定率法別表(製油原料の用に供することにより徴収するときは、別表第二)の税率により計算した額

 二 第八条第二項の規定により関税の軽減を受けた原油、重油又は粗油 当談承認を受けた時においてこれらの輸入があつたものとみなして関税定率法別表の税率により計算した額と別表第二の税率により計算した額との差額に相当する額

3 第一項の規定による関税の徴収については、関税法第十条(担保を提供した場合の充当又は徴収)の規定の適用がある場合を除き、国税徴収の例による。


 (税関職員の権限)

第十一条 関税法第百五条第一項第五号(税関職員の権限)の規定は、第二条から第六条まで又は第七条第一項の規定により関税を免除した場合及び第八条第一項又は第二項の規定により同条第三項に規定する物品について関税を免除し、又は軽減した場合について準用する。


 (罰則)

第十二条 第九条の規定に違反して同条の物品を同条に規定する用途以外の用途に供し、又はこれに供するため譲渡した者は、一年以下の徴役又は二十万円以下の罰金に処する。

2 前項の場合においては、その違反に係る物品につき第二条から第六条まで、第七条第一項又は第八条第一項若しくは第二項の規定により免除又は軽減を受けた関税を、犯人から直ちに徴収する。

3 第十条第二項及び第三項の規定は、前項の規定により関税を徴収する場合について準用する。この場合において、同条第二項中「前条ただし書の承認を受けた」とあり、又は「当該承認を受けた」とあるのは、「第十二条第一項の違反行為をした」と読み替えるものとする。

第十三条 第十一条において準用する関税法第百五条第一項第五号(税関職員の権限)の規定による税関職員の検査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、五万円以下の罰金に処する。

第十四条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業員がその法人又は人の業務又は財産について、前二条の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。


 (犯則事件の調査及び処分)

第十五条 関税法第十一章(犯則事件の調査及び処分)の規定は、前三条の犯則事件の調査及び処分について準用する。


   附 則

1 この法律は、昭和三十五年四月一日から施行する。

2 関税定率法の一部を改正する法律(昭和二十九年法律第四十二号)の一部を次のように改正する。

  附則第五項から第二十項までを削り、以下十六項ずつ繰り上げる。

  別表甲号、別表乙号及び別表丙号を削る。

3 この法律の施行前に改正前の関税定率法の一部を改正する法律の規定により関税の軽減又は免除を受けた物品については、なお従前の例による。

4 この法律の施行前にした行為及び前項の規定により従前の例によることとされる物品に係るこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

 別表第一

関税定率法別表の番号

品名

一一二

動物(別号に掲げるものを除く。)のうちさる(急性灰白髄炎ワクチンの製造又は検定をする際に使用するものに限る。)

二〇五

小麦

六七一

コールタール分りゆう物から誘導した化学的生成品及びこれと同じ成分を有するもの(医薬及び別号に掲げるものを除く。)のうちジイソプロピル・ベンゼン・ハイドロパーオキシド(合成ゴムを製造する際に使用するものに限る。)

六九五

薬材、化学薬、医薬及びこれらの調合品(別号に掲げるものを除く。)

 二 その他のうち次に掲げるもの

  (1) 四エチル鉛

  (2) 放射性元素及びその化合物

  (3) モリブデン・コバルト触媒又はニッケル・コバルト・クロム触媒(エチレン、べンゼン、トルエン又はキシレンを製造するため、これらに混じている不飽和炭化水素に水素添加をする際に使用するものに限る。)、銀触媒(エチレンを酸化して酸化エチレンを製造する際に使用するものに限る。)、シリカ・アルミナ・クロム触媒又はモリブデン・アルミナ触媒(エチレンを重合してポリエチレンを製造する際に使用するものに限る。)クロム・アルミナ触媒(ブタン又はブチレンを脱水素してブタジエンを製造する際に使用するものに限る。)、銅・亜鉛触媒(第二ブタノールを脱水素してメチルエチルケトンを製造する際に使用するものに限る。)及びシリカ・アルミナ触媒(混合キシレンを異性化してパラキシレンを製造する際に使用するものに限る。)

  (4) メンタン・ハイドロパーオキシド及び第三ドデシル・メルカプタン(ブタジエンとスチレン又はアクリルニトリルとを共重合させて合成ゴムを製造する際に使用するものに限る。)

  (5) 五酸化バナジウム

一二二八

コークスのうち石油コークス

一四〇五

鉄鋼(別号に掲げる特殊鋼を除く。)

 五 板のうち厚さが〇・六ミリメートル以下でめつきしてないもの(長さが一・八メートル以下で幅が〇・九五メートル以下のもの又は面積が一・五平方メートル以下のものに限る。)

一六二七

金銭登録機、計算機その他これらに類するもの及びこれらのものの部分品

 二 その他のうち次に掲げるもの

  (1) 計数式電子計算機(カード式又は磁気テープ式の入力機又は入出力機を使用することができるもののうち、記憶容量が一万八千字以上の磁気コアー式内部記憶装置を有するものに限る。)及びこれに附属する制御機

  (2) カード式入力機、出力機、カード式入出力機、記憶機及びこれらに附属する制御機((1)に掲げる電子計算機又はカード式の入力機若しくは入出力機を使用することができる計数式電子計算機と一組を構成するもので、これらの計算機とともに輸入するものに限る。)並びに磁気テープ式入出力機((1)に掲げる電子計算機と一組を構成するもので、これとともに輸入するものに限る。)

一六八六

機械(別号に掲げるものを除く。)のうち穿孔カード式統計会計機械(穿孔機、自動検孔機、電子管式分類機、製表機、照合機及び翻訳機に限る。)

一七〇九

木材

 一 単に切り、ひき、又は割つたもの

  甲 パイン、ファー、シダーその他の針葉樹

   ロ その他

     ロの一のうちヘムロックその他のつが属のもの(厚さが二百ミリメートルをこえないものに限る。)

別表第二

関税定率法別表の番号

品名

税率

五一九

炭化水素油(別号に掲げるものを除く。)

 

 一 原油、重油及び粗油のうち製油原料として使用するもの

六分

 二 その他(動植物性油脂、石けん、アルコール等を加えたものを含む。)

 

  乙 その他のうち温度十五度における比重が〇・八七六二をこえず、かつ、引火点が温度百十五度をこえないもので、一般に燃料として使用するもの

二割

六七一

コールタール分りゆう物から誘導した化学的生成品及びこれと同じ成分を有するもの(医薬及び別号に掲げるものを除く。)のうち合成なめし剤(芳香族スルフォン酸又はその塩類の縮合物を主成分とするものに限る。)

五分

六九五

薬材、化学薬、医薬及びこれらの調合品(別号に掲げるものを除く。)

 

 二 その他のうち次に掲げるもの

 

  (1) ピグメントレジンカラー用のエキステンダー

一割

  (2) 合成なめし剤(芳香族スルフォン酸又はその塩類の縮合物を主成分とするものに限る。)

五分

七〇五

合成染料

 

 六 建染染料

 

  乙 その他

一割五分

七三三

染料及び顔料(別号に掲げるものを除く。)のうちピグメントレジンカラーベース

一割

一一〇一

印刷用紙

 

 二 その他(一平方メートルの重量が三十グラムをこえ、三百グラムをこえないものに限る。)

 

  甲 一平方メートルの重量が五十八グラムをこえないもの(砕木パルプも含むもので、巻取りのものに限る。)

七分五厘

備考

 この表において「重油」とは、炭化水素油のうち、温度十五度における比重が〇・八七六二をこえ、かつ、引火点が温度百三十度をこえないもので一般に燃料として使用するもの及び原油を蒸りゆうしてできたかま残油をいう。

(大蔵・内閣総理大臣署名) 

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