海外経済協力基金法

法律第百七十三号(昭三五・一二・二七)

目次

 第一章 総則(第一条―第八条)

 第二章 役員等(第九条―第十九条)

 第三章 業務(第二十条―第二十四条)

 第四章 財務及び会計(第二十五条―第三十二条)

 第五章 監督(第三十三条・第三十四条)

 第六章 雑則(第三十五条・第三十六条)

 第七章 罰則(第三十七条―第三十九条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 海外経済協力基金は、東南アジア地域その他の開発途上にある海外の地域(以下「東南アジア等の地域」という。)の産業の開発に寄与するため、その開発に必要な資金で日本輸出入銀行及び一般の金融機関から供給を受けることが困難なものについてその円滑な供給を図る等のために必要な業務を行ない、もつて海外経済協力を促進することを目的とする。

 (法人格)

第二条 海外経済協力基金(以下「基金」という。)は、法人とする。

 (事務所)

第三条 基金は、事務所を東京都に置く。

 (資本金)

第四条 基金の資本金は、次に掲げる金額の合計額とし、政府がその全額を出資する。

 一 附則第七条の規定により日本輸出入銀行から承継した資産の金額五十億円

 二 附則第八条第二項の規定により日本輸出入銀行から承継した資産に相当する金額

2 政府は、必要があると認めるときは、予算に定める金額の範囲内において、基金に追加して出資することができる。

3 基金は、前項の規定による政府の出資があつたときは、その出資額により資本金を増額するものとする。

 (定款)

第五条 基金は、定款をもつて次の事項を規定しなければならない。

 一 目的

 二 名称

 三 事務所の所在地

 四 資本金、出資及び資産に関する事項

 五 役員に関する事項

 六 業務及びその執行に関する事項

 七 財務及び会計に関する事項

 八 公告の方法

2 定款の変更は、経済企画庁長官の認可を受けなければ、その効力を生じない。

 (登記)

第六条 基金は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。

2 前項の規定により登記を必要とする事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。

 (名称の使用制限)

第七条 基金でない者は、海外経済協力基金という名称を用いてはならない。

 (民法の準用)

第八条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)及び第五十条(法人の住所)の規定は、基金に準用する。

   第二章 役員等


 (役員)

第九条 基金に、役員として、総裁一人、理事二人及び監事一人を置く。


 (役員の職務及び権限)

第十条 総裁は、基金を代表し、その業務を総理する。

2 理事は、総裁の定めるところにより、総裁を補佐して基金の業務を掌理し、総裁に事故があるときはその職務を代理し、総裁が欠員のときはその職務を行なう。

3 監事は、基金の業務を監査する。


 (役員の任命)

第十一条 総裁及び監事は、内閣総理大臣が任命する。

2 理事は、総裁が任命する。この場合において、理事のうち一人は、日本輸出入銀行の総裁の推薦に基づき、日本輸出入銀行の理事のうちから任命するものとする。


 (役員の任期)

第十二条 役員の任期は、四年とする。

2 日本輸出入銀行の理事のうちから任命された理事は、その任期中に日本輸出入銀行の理事でなくなつたときは、理事の職を退任したものとする。

3 役員は、再任されることができる。


 (役員の欠格条項)

第十三条 次の各号の一に該当する者は、役員となることができない。

 一 国務大臣、国会議員、地方公共団体の議会の議員又は地方公共団体の長

 二 政府又は地方公共団体の職員(非常勤の者を除く。)


 (役員の解任)

第十四条 内閣総理大臣又は総裁は、それぞれその任命に係る役員が前条各号の一に該当するに至つたときは、その役員を解任しなければならない。

2 内閣総理大臣又は総裁は、それぞれその任命に係る役員が次の各号の一に該当するとき、その他役員たるに適しないと認めるときは、その役員を解任することができる。

 一 心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき。

 二 職務上の義務違反があるとき。


 (役員の兼職禁止)

第十五条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。ただし、経済企画庁長官が、役員としての職務の執行に支障がないものと認めて承認したときは、この限りでない。


 (代表権の制限)

第十六条 基金と総裁との利益が相反する事項については、総裁は、代表権を有しない。この場合においては、監事が基金を代表する。


 (運営協議会)

第十七条 基金に、運営協議会を置く。

2 運営協議会は、総裁の諮問に応じ、基金の業務の運営に関する重要事項で関係行政機関の所掌事務と密接な関係があるものについて審議する。

3 運営協議会は、前項に規定する事項について、総裁に意見を述べることができる。

4 運営協義会は、関係行政機関の職員のうちから内閣総理大臣が任命する委員十五人以内で組織する。

5 前各項に定めるもののほか、運営協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。


 (職員の任命)

第十八条 基金の職員は、総裁が任命する。


 (役員及び職員の地位)

第十九条 基金の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

   第三章 業務


 (業務の範囲)

第二十条 基金は、第一条に掲げる目的を達成するため、次の業務を行なう。

 一 東南アジア等の地域の産業の開発に寄与し、かつ、本邦との経済交流を促進するため緊要と認められる事業(以下「開発事業」という。)のために必要な資金を貸し付けること。

 二 開発事業の遂行のため特に必要がある場合において、前号の規定による資金の貸付けに代えて出資をすること。

 三 開発事業の準備のための調査又は開発事業の試験的実施のために必要な資金を貸し付けること。

 四 前三号の業務に関連して必要な開発事業に関する調査を行なうこと。

第二十一条 基金は、次の各号に該当する場合に限り、前条第一号若しくは第三号の資金の貸付け又は同条第二号の出資をすることができる。

 一 その開発事業につき日本輸出入銀行及び一般の金融機関から通常の条件により資金の貸付けを受けること又は基金以外の者から出資を受けることが困難であると認められる場合

 二 その開発事業に係る事業計画の内容が適切であり、その達成が確実であると認められる場合


 (業務方法書)

第二十二条 基金は、業務の開始の際、業務方法書を作成し、経済企画庁長官の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

2 前項の業務方法書には、資金の貸付けの方法、利率及び期限、出資の方法、元利金の回収の方法並びに事務の委託の要領等を記載しなければならない。


 (事務の委託)

第二十三条 基金は、業務方法書の定めるところにより、その事務の一部を日本輸出入銀行に委託することができる。

2 日本輸出入銀行は、日本輸出入銀行法(昭和二十五年法律第二百六十八号)第十八条の規定にかかわらず、前項の規定による委託に係る事務を行なうことができる。


 (金融機関との競争禁止等)

第二十四条 基金は、第一条に掲げる目的にかんがみ、その行なう業務について、日本輸出入銀行の業務との調整に努めるとともに、一般の金融機関と競争してはならない。

   第四章 財務及び会計


 (事業年度)

第二十五条 基金の事業年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。


 (収入及び支出の予算等の認可)

第二十六条 基金は、毎事業年度開始前に、その事業年度の収入及び支出の予算、事業計画並びに資金計画を作成し、経済企画庁長官の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。


 (決算)

第二十七条 基金は、毎事業年度の決算を翌事業年度の六月三十日までに完結しなければならない。


 (財務諸表)

第二十八条 基金は、毎事業年度、財産目録、貸借対照表及び損益計算書(以下次項において「財務諸表」という。)を作成し、決算完結後一月以内に、これを経済企画庁長官に提出してその承認を受けなければならない。

2 基金は、前項の規定により、財務諸表を経済企画庁長官に提出するときは、これに予算の区分に従い作成した当該事業年度の決算報告書を添え、並びに財務諸表及び決算報告書に関する監事の意見をつけなければならない。


 (利益及び損失の処理)

第二十九条 基金は、毎事業年度、損益計算上利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめ、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならない。

2 基金は、毎事業年度、損益計算上損失を生じたときは、前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならない。


 (余裕金の運用)

第三十条 基金は、次の方法によるほか、業務上の余裕金を運用してはならない。

 一 国債の保有

 二 資金運用部への預託

 三 日本銀行への預金


 (給与及び退職手当の支給の基準)

第三十一条 基金は、その役員及び職員に対する給与及び退職手当の支給の基準を定め、又は変更しようとするときは、経済企画庁長官の承認を受けなければならない。


 (総理府令への委任)

第三十二条 この法律に規定するもののほか、基金の財務及び会計に関し必要な事項は、総理府令で定める。

2 内閣総理大臣は、前項の総理府令を定めようとするときは、大蔵大臣に協議しなければならない。

   第五章 監督


 (監督)

第三十三条 基金は、経済企画庁長官が監督する。

2 経済企画庁長官は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、基金に対して、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。


 (報告及び検査)

第三十四条 経済企画庁長官は、必要があると認めるときは、基金に対して報告をさせ、又はその職員に基金の事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を検査させることができる。

2 前項の規定により職員が立入検査をする場合には、その身分を示す証票を携帯し、関係人に提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

   第六章 雑則


 (解散)

第三十五条 基金の解散については、別に法律で定める。


 (協議)

第三十六条 経済企画庁長官は、この法律の規定により認可又は承認をしようとするときは、外務大臣、大蔵大臣及び通商産業大臣に協議しなければならない。

   第七章 罰則

第三十七条 第三十四条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その違反行為をした基金の役員又は職員は、三万円以下の罰金に処する。

第三十八条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした基金の役員又は職員は、三万円以下の過料に処する。

 一 この法律の規定により経済企画庁長官の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。

 二 第六条第一項の規定による政令に違反して登記することを怠つたとき。

 三 第二十条各号に掲げる業務以外の業務を行なつたとき。

 四 第三十条の規定に違反して業務上の余裕金を運用したとき。

 五 第三十三条第二項の規定による命令に違反したとき。

第三十九条 第七条の規定に違反して海外経済協力基金という名称を用いた者は、一万円以下の過料に処する。


   附 則


 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して三十日をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、附則第十八条から第二十条までの規定は、同日から起算して六十日をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。


 (基金の設立)

第二条 内閣総理大臣は、基金の総裁又は監事となるべき者を指名する。

2 前項の規定により指名された総裁又は監事となるベき者は、基金の成立の時において、この法律の規定によりそれぞれ総裁又は監事に任命されたものとする。

第三条 経済企画庁長官は、設立委員を命じて、基金の設立に関する事務を処理させる。

第四条 設立委員は、定款を作成し、これを経済企画庁長官に提出して設立の認可を受けなければならない。

2 設立委員は、前項の認可を受けたときは、遅滞なく、その事務を附則第二条第一項の規定により指名された総裁となるべき者に引き継がなければならない。

第五条 附則第二条第一項の規定により指名された総裁となるべき者は、前条第二項の事務の引継ぎを受けたときは、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。

第六条 基金は、設立の登記をすることによつて成立する。


 (日本輸出入銀行からの資産の承継等)

第七条 基金は、その成立の時において、政令で定めるところにより、経済基盤強化のための資金及び特別の法人の基金に関する法律(昭和三十三年法律第百六十九号)第十条第三号の規定により政府から日本輸出入銀行に対し出資されていた五十億円の金額に相当する資産を日本輸出入銀行から承継するものとし、その承継された金額は、政府から基金に対し出資されたものとする。

第八条 日本輸出入銀行は、昭和三十五年四月一日から前条の規定により資産が承継される日の前日までの期間において、東南アジア開発協力基金の勘定において損益計算上利益を生じたときは、経済基盤強化のための資金及び特別の法人の基金に関する法律第十四条第一項並びに日本輸出入銀行法第三十八条第一項及び第三項の規定にかかわらず、前条の規定により資産が承継される日の前日において当該利益を積立金として積み立てなければならない。

2 基金は、その成立の時において、政令で定めるところにより、経済基盤強化のための資金及び特別の法人の基金に関する法律第十四条第一項の規定による積立金及び前項の規定による積立金の合計額に相当する資産を日本輸出入銀行から承継するものとし、その承継された金額は、政府から基金に対し出資されたものとする。


 (経過規定)

第九条 この法律の施行の際現に海外経済協力基金という名称を使用している者については、第七条の規定は、この法律の施行後六月間は、適用しない。

第十条 基金の最初の事業年度は、第二十五条の規定にかかわらず、その成立の日に始まり、昭和三十六年三月三十一日に終わる。

第十一条 基金の最初の事業年度の収入及び支出の予算、事業計画並びに資金計画については、第二十六条中「毎事業年度開始前に」とあるのは、「基金の成立後遅滞なく」とする。


 (登録税法の一部改正)

第十二条 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。

  第十九条第七号中「日本開発銀行」の下に「、海外経済協力基金」を、「日本開発銀行法」の下に「、海外経済協力基金法」を加える。


 (印紙税法の一部改正)

第十三条 印紙税法(明治三十二年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。

  第五条第六号ノ二ノ二の次に次の一号を加える。

  六ノ二ノ三 海外経済協力基金ノ発スル証書、帳簿


 (所得税法の一部改正)

第十四条 所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。

  第三条第一項第十二号中「奄美群島復興信用基金」の下に「、海外経済協力基金」を加える。


 (法人税法の一部改正)

第十五条 法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)の一部を次のように改正する。

  第四条第二号中「奄美群島復興信用基金」の下に「、海外経済協力基金」を加える。


 (地方税法の一部改正)

第十六条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。

  第七十二条の四第一項第二号中「奄美群島復興信用基金」の下に「、海外経済協力基金」を加える。


 (経済企画庁設置法の一部改正)

第十七条 経済企画庁設置法(昭和二十七年法律第二百六十三号)の一部を次のように改正する。

  第七条第五号の三の次に次の一号を加える。

  五の四 海外経済協力基金に関すること。


 (経済基盤強化のための資金及び特別の法人の基金に関する法律の一部改正)

第十八条 経済基盤強化のための資金及び特別の法人の基金に関する法律の一部を次のように改正する。

  第一条中「、日本輸出入銀行」を削る。

  第十条第三号を次のように改める。

  三 削除

  第十一条第一項第三号を次のように改め、同条第三項を削る。

  三 削除

  第十二条第一項中「(日本輸出入銀行にあつては、東南アジア開発協力基金の勘定)」を削り、同項第三号を次のように改める。

  三 削除

  第十二条第三項から第五項までを削る。

  第十四条を次のように改める。

 第十四条 削除


 (日本輸出入銀行法の一部改正)

第十九条 日本輸出入銀行法の一部を次のように改正する。

  第四条第二項及び第三項を削る。

  第十八条の三中「第四条第一項」を「第四条」に改める。


 (経過規定)

第二十条 附則第十八条の規定による改正前の経済基盤強化のための資金及び特別の法人の基金に関する法律の規定による日本輸出入銀行の東南アジア開発協力基金の勘定の昭和三十五年度の決算及び損益の処理に関しては、附則第八条に規定するものを除き、なお従前の例による。

(内閣総理・法務・外務・大蔵・通商産業大臣署名) 

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