公営企業金融公庫法

法律第八十三号(昭三二・四・二七)

目次

 第一章 総則(第一条―第八条)

 第二章 役員及び職員(第九条―第十八条)

 第三章 業務(第十九条―第二十二条)

 第四章 公営企業債券(第二十三条―第二十七条)

 第五章 会計(第二十八条―第三十四条)

 第六章 監督(第三十五条―第三十七条)

 第七章 補則(第三十八条・第三十九条)

 第八章 罰則(第四十条・第四十一条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 公営企業金融公庫は、公営企業の健全な運営に資するため、特に低利、かつ、安定した資金を必要とする地方公共団体の公営企業の地方債につき、当該地方公共団体に対し、その資金を融通し、もつて地方公共団体の公営企業を推進し、住民の福祉の増進に寄与することを目的とする。

 (用語の意義)

第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 一 公営企業 地方公共団体が行う事業のうち、主としてその経費を当該事業の経営に伴う収入をもつて充てるもので政令で定めるものをいう。

 二 地方債 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十条の規定によつて許可を受けた公営企業に係る地方債で、政府資金による引受が行われないものをいう。

 (法人格)

第三条 公営企業金融公庫(以下「公庫」という。)は、法人とする。

 (事務所)

第四条 公庫は、事務所を東京都に置く。

 (資本金)

第五条 公庫の資本金は、五億円とし、政府が産業投資特別会計からその全額を出資する。

 (登記)

第六条 公庫は、政令で定めるところにより、登記をしなければならない。

2 前項の規定により登記を必要とする事項は、登記後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。

 (名称の使用制限)

第七条 公庫でない者は、公営企業金融公庫という名称又はこれに類する名称を用いてはならない。

 (民法の準用)

第八条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)及び第五十条(法人の住所)の規定は、公庫について準用する。

   第二章 役員及び職員

 (役員)

第九条 公庫に、役員として、理事長一人、理事三人以内及び監事一人を置く。

 (役員の職務及び権限)

第十条 理事長は、公庫を代表し、その業務を総理する。

2 理事は、理事長の定めるところにより、公庫を代表し、理事長を補佐して公庫の業務を掌理し、理事長に事故があるときは、その職務を代理し、理事長が欠員のときは、その職務を行う。

3 監事は、公庫の業務を監査する。

 (役員の任命)

第十一条 理事長及び監事は、主務大臣が任命する。

2 理事は、理事長が主務大臣の認可を受けて任命する。

 (役員の任期)

第十二条 役員の任期は、四年とする。

2 役員は、再任されることができる。

3 役員が欠員となつたときは、遅滞なく、補欠の役員を任命しなければならない。補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。

 (役員の欠格条項)

第十三条 次の各号の一に該当する者は、役員となることができない。

 一 国務大臣、国会議員、政府職員(人事院が指定する非常勤の者を除く。)、地方公共団体の議会の議員又は地方公共団体の長若しくは常勤の職員

 二 政党の役員

 (役員の兼職禁止)

第十四条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。

 (代表権の制限)

第十五条 公庫と理事長又は理事との利益が相反する事項については、これらの者は、代表権を有しない。この場合においては、監事が公庫を代表する。

 (職員の任命)

第十六条 公庫の職員は、理事長が任命する。

 (役員及び職員の公務員たる性質)

第十七条 役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

 (退職手当の支給の基準)

第十八条 公庫は、役員及び職員に対する退職手当の支給の基準を設けようとするときは、あらかじめ、主務大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

   第三章 業務

 (業務の範囲)

第十九条 公庫は、第一条に掲げる目的を達成するため、次の業務を行う。

 一 地方債の資金の貸付又は証券発行の方法による地方債の応募

 二 前号に掲げる業務に附帯する業務

2 公庫は、前項第一号の場合において、当該地方債について地方自治法第二百五十条の規定による許可があるまでの間において特別の必要があり、かつ、当該許可があることの見込が確実であるときに限り、当該許可に係る地方債の額を限度として、資金の貸付をすることができる。

 (業務方法書)

第二十条 公庫は、業務の開始の際、業務方法書を作成し、主務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

2 前項の業務方法書に記載すべき事項は、政令で定める。

 (業務の委託)

第二十一条 公庫は、特別の必要がある場合においては、地方公共団体に対し、資金の貸付に関する調査事務の一部を委託することができる。

2 公庫は、主務大臣の認可を受けて、金融機関に対し、資金の貸付、元利金の回収その他貸付及び回収に関する業務を委託することができる。ただし、資金の貸付の決定については、この限りでない。

 (事業計画及び資金計画)

第二十二条 公庫は、四半期ごとの事業計画及び資金計画を作成し、主務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

   第四章 公営企業債券

 (債券の発行)

第二十三条 公庫は、公営企業債券(以下「債券」という。)を発行することができる。

2 公庫は、前項の規定により債券を発行しようとするときは、主務大臣の認可を受けなければならない。

 (一般担保)

第二十四条 債券の債権者は、公庫の財産について他の債権者に先だつて自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

2 前項の先取特権の順位は、民法の規定による一般の先取特権に次ぐものとする。

 (発行事務の委託)

第二十五条 公庫は、主務大臣の認可を受けて、債券の発行に関する事務の全部又は一部を銀行又は信託会社に委託することができる。

2 商法(明治三十二年法律第四十八号)第三百九条から第三百十一条まで(受託会社の権限及び義務)の規定は、前項の規定により委託を受けた銀行又は信託会社について準用する。

 (政府保証)

第二十六条 政府は、法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律(昭和二十一年法律第二十四号)第三条の規定にかかわらず、国会の議決を経た金額の範囲内において、債券の元本の償還及び利息の支払について保証することができる。

 (政令への委任)

第二十七条 前四条に規定するもののほか、債券に関し必要な事項は、政令で定める。

   第五章 会計

 (予算及び決算)

第二十八条 公庫の予算及び決算に関しては、公庫の予算及び決算に関する法律(昭和二十六年法律第九十九号)の定めるところによる。

 (国庫納付金)

第二十九条 公庫は、毎事業年度の損益計算上利益金を生じたときは、これを翌事業年度の五月三十一日までに国庫に納付しなければならない。

2 前項の規定による国庫納付金は、同項に規定する日の属する会計年度の前年度の政府の歳入とする。

3 第一項の利益金の計算の方法並びに同項の規定による国庫納付金の納付の手続及びその帰属する会計については、政令で定める。

 (短期借入金)

第三十条 公庫は、第二十三条の規定により、債券を発行して資金の調達をしようとする場合において、発行までの間の資金繰上必要があるときは、当該債券の引受契約が成立し、又はその引受契約の成立の見込が確実である場合に限り、かつ、発行しようとする当該債券の金額の限度において必要な金額を限り、当該債券の発行により調達する資金の前借として、主務大臣の認可を受けて、金融機関から短期借入をすることができる。

2 前項の規定による短期借入金は、当該短期借入金に係る債券の発行があつたときは、その発行により調達した資金をもつて直ちに償還しなければならない。

3 公庫は、第一項に規定する場合のほか、資金の借入をしてはならない。

 (余裕金の運用)

第三十一条 公庫は、次の方法による場合のほか、業務上の余裕金を運用してはならない。

 一 国債の保有

 二 資金運用部への預託

 三 銀行への預金

 (資金の交付)

第三十二条 公庫は、業務を行うため必要があるときは、第二十一条第二項の規定により業務の委託を受けた金融機関(以下「受託者」という。)に対し、資金の貸付に必要な資金を交付することができる。

 (会計帳簿)

第三十三条 公庫は、主務大臣の定めるところにより、業務の性質及び内容並びに業務の運営及び経理の状況を適切に示すため必要な帳簿を備えなければならない。

 (会計検査院の検査)

第三十四条 会計検査院は、必要があると認めるときは、受託者につき、当該委託業務に係る会計を検査することができる。

   第六章 監督

 (監督)

第三十五条 公庫は、主務大臣が監督する。ただし、公庫を当事者又は参加人とする訴訟については、法務大臣が監督する。

2 主務大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、公庫に対して、業務に関し監督上必要な命令をすることができる。

 (役員の解任)

第三十六条 主務大臣は、公庫の役員が第十三条各号の一に該当するに至つたときは、これを解任しなければならない。

2 主務大臣は、公庫の役員が次の各号の一に該当するに至つたときは、これを解任することができる。

 一 この法律又はこの法律に基く命令に違反したとき。

 二 刑事事件により有罪の言渡を受けたとき。

 三 破産の宣告を受けたとき。

 四 心身の故障により職務を執ることができないとき。

 (報告及び検査)

第三十七条 主務大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、公庫若しくは受託者に対して報告をさせ、又はその職員に公庫若しくは受託者の事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を検査させることができる。ただし、受託者に対しては、当該委託業務の範囲内に限る。

2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

   第七章 補則

 (主務大臣)

第三十八条 この法律における主務大臣は、内閣総理大臣及び大蔵大臣とする。

 (恩給)

第三十九条 恩給法(大正十二年法律第四十八号)第十九条に規定する公務員(以下本条において「公務員」という。)又は同条に規定する公務員とみなされるもの(以下本条において「公務員とみなされる者」という。)が引き続いて公庫の職員になつたときは、恩給法の一部を改正する法律(昭和二十二年法律第七十七号。以下「法律第七十七号」という。)附則第十条の規定の適用については、法律第七十七号附則第十条第一項中「引き続いて公務員又は公務員とみなされる者として在職し」とあるのは、「引き続いて公務員又は公務員とみなされる者若しくは公営企業金融公庫の職員として在職し」と読み替えるものとする。

2 他の法律の規定において法律第七十七号附則第十条の規定を準用するときは、前項の規定により読み替えられた同条第一項の規定を準用するものとする。

3 公庫の設立の際現に公務員又は公務員とみなされる者として在職する者が、引き続いて公庫の職員となり、更に引き続いて公務員又は公務員とみなされる者となつたとき(公庫の設立の際現に公務員又は公務員とみなされる者として在職する者が引き続いて公務員又は公務員とみなされる者として在職し、更に引き続いて公庫の職員となり、更に引き続いて公務員又は公務員とみなされる者となつたときを含む。)は、その公務員又は公務員とみなされる者に給すべき普通恩給については、当該公庫の職員としての在職年月数を公務員又は公務員とみなされる者としての在職年月数に通算する。

4 第一項(他の法律の規定において同項の規定により読み替えられた法律第七十七号附則第十条第一項の規定を準用するときを含む。)及び前項の規定は、公庫の職員となるまでの公務員又は公務員とみなされる者としての在職年が普通恩給についての最短恩給年限に達する者については、適用しないものとする。

5 第三項の規定の適用を受ける者についての恩給法第六十四条ノ二の規定の適用又は準用については、公庫の職員としての就職を再就職とみなす。

6 公庫は、第一項(他の法律の規定において同項の規定により読み替えられた法律第七十七号附則第十条第一項の規定を準用するときを含む。)及び第三項の規定の適用を受ける公庫の職員であつた者又はその遺族の恩給の支払に充てる金額を、政令で定めるところにより、国庫又は地方公共団体に納付するものとする。

   第八章 罰則

 (罰則)

第四十条 次の各号の一に該当する場合においては、その違反行為をした公庫の役員は、三万円以下の過料に処する。

 一 この法律により主務大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。

 二 第六条第一項の規定による政令に違反して登記することを怠つたとき。

 三 第十九条に規定する業務以外の業務を行つたとき。

 四 第三十一条の規定に違反して業務上の余裕金を運用したとき。

 五 第三十五条第二項の規定による主務大臣の命令に違反したとき。

第四十一条 第七条の規定に違反して公営企業金融公庫という名称又はこれに類する名称を用いた者は、一万円以下の過料に処する。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から施行する。

 (設立の手続)

2 主務大臣は、第十一条第一項の例により、公庫の理事長又は監事となるべき者を指名する。

3 前項の規定により指名された理事長又は監事となるべき者は、公庫の設立の時において、この法律の規定により、それぞれ理事長又は監事に任命されたものとする。

4 主務大臣は、設立委員を命じて、公庫の設立に関する事務を処理させる。

5 設立委員は、設立の準備を完了した上、遅滞なく、政府に対して出資金の払込の請求をしなければならない。

6 設立委員は、出資金の払込があつた日(出資金が分割して払い込まれる場合においては、第一回の払込があつた日)において、その事務を附則第二項の規定により指名された理事長となるべき者に引き継がなければならない。

7 附則第二項の規定により指名された理事長となるべき者は、前項の引継を受けた後、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。

8 公庫は、前項の規定による設立の登記をすることによつて成立する。

 (登録税法の一部改正)

9 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。

  第十九条各号列記以外の部分中「第二号ノ七」を「第二号ノ八」に改め、同条中第二号ノ八を第二号ノ九とし、第二号ノ七を第二号ノ八とし、第二号ノ六の次に次の一号を加える。

  二ノ七 公営企業金融公庫自己ノ為ニスル登記又ハ登録

 (印紙税法の一部改正)

10 印紙税法(明治三十二年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。

  第五条第五号ノ四ノ二の次に次の一号を加える。

  五ノ四ノ三 公営企業金融公庫ノ発スル証書、帳簿

 (所得税法の一部改正)

11 所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。

  第三条第一項第五号中「及び北海道東北開発公庫」を「、北海道東北開発公庫及び公営企業金融公庫」に改める。

 (法人税法の一部改正)

12 法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)の一部を次のように改正する。

  第四条第二号中「北海道東北開発公庫」の下に「、公営企業金融公庫」を加える。

 (大蔵省設置法の一部改正)

13 大蔵省設置法(昭和二十四年法律第百四十四号)の一部を次のように改正する。

  第十二条第一項中第六号の三を第六号の四とし、第六号の二の次に次の一号を加える。

  六の三 公営企業金融公庫を監督すること。

 (国庫出納金等端数計算法の一部改正)

14 国庫出納金等端数計算法(昭和二十五年法律第六十一号)の一部を次のように改正する。

  第一条第一項中「北海道東北開発公庫」の下に「、公営企業金融公庫」を加える。

 (予算執行職員等の責任に関する法律の一部改正)

15 予算執行職員等の責任に関する法律(昭和二十五年法律第百七十二号)の一部を次のように改正する。

  第九条第一項中「北海道東北開発公庫」の下に「、公営企業金融公庫」を加える。

 (地方税法の一部改正)

16 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。

  第七十二条の四第一項第二号中「北海道東北開発公庫」の下に「、公営企業金融公庫」を加える。

 (公庫の予算及び決算に関する法律の一部改正)

17 公庫の予算及び決算に関する法律(昭和二十六年法律第九十九号)の一部を次のように改正する。

  第一条中「及び北海道東北開発公庫」を「、北海道東北開発公庫及び公営企業金融公庫」に改める。

  第五条第二項第二号中「長期借入金の限度額」を「長期借入金の限度額とし、公営企業金融公庫法(昭和三十二年法律第八十三号)第三十条の規定による短期借入金を除く。」に改め、同項第三号中「北海道東北開発債券」の下に「及び公営企業債券」を加え、同条第三項中「北海道東北開発債券」の下に「、公営企業金融公庫にあつては公営企業債券」を加える。

 (自治庁設置法の一部改正)

18 自治庁設置法(昭和二十七年法律第二百六十一号)の一部を次のように改正する。

  第四条第二十六号の次に次の一号を加える。

  二十六の二 公営企業金融公庫を監督すること。

  第十二条中第九号を第十号とし、第八号を第九号とし、第七号を第八号とし、第六号の次に次の一号を加える。

  七 公営企業金融公庫を監督すること。

(内閣総理・大蔵大臣署名) 

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