公衆衛生修学資金貸与法

法律第六十五号(昭三二・四・一五)

 (この法律の目的)

第一条 この法律は、保健所において行う公衆衛生業務の重要性にかんがみ、医師又は歯科医師たる保健所の職員の充実に資するため、医学又は歯学を専攻する者で将来保健所に勤務しようとするものに対し、修学資金を貸与することを目的とする。

 (公衆衛生修学資金)

第二条 政府は、次の各号に掲げる者であつて将来保健所に勤務しようとするものの申請により、その者に無利息で公衆衛生修学資金(以下「修学資金」という。)を貸与する旨の契約を結ぶことができる。

 一 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に規定する大学(以下単に「大学」という。)の医学部又は歯学部の学生であつて、医学又は歯学を専攻するもの

 二 大学を卒業して、医師法(昭和二十三年法律第二百一号)第十一条に規定する実地修練(以下単に「実地修練」という。)を行つている者

 (貸与方法)

第三条 修学資金は、貸与の契約に定められた月から、次の各号の区分に従いそれぞれ当該各号に定める日の属する月までの間、毎月、政令で定める額を貸与するものとする。ただし、帰省その他特別の理由があるときは、あらかじめ、二月分又は三月分をあわせて貸与することができる。

 一 契約の相手方が大学において医学を専攻する者又は実地修練を行つている者であるとき。

               実地修練を終了する日

 二 契約の相手方が大学において歯学を専攻する者であるとき。

               大学を卒業する日

 (修学資金の総額)

第四条 政府は、第二条の規定により修学資金を貸与する旨の契約を結ぶ場合には、当該年度において結ばれる契約に基いて貸与すべき修学資金の総額が予算で定める金額をこえることとならないようにしなければならない。

 (保証人)

第五条 修学資金の貸与を受けようとする者は、政令で定めるところにより、保証人を立てなければならない。

2 前項の保証人は、修学資金の貸与を受けた者と連帯して債務を負担するものとする。

 (貸与契約の解除並びに貸与の休止及び保留)

第六条 政府は、第二条の規定による契約の相手方(以下「公衆衛生修学生」という。)が次の各号の一に該当するに至つたときは、その契約を解除するものとする。

 一 退学し、医学を専攻して大学を卒業した後引き続き実地修練を行わず、又は実地修練をやめたとき。

 二 心身の故障のため修学の見込がなくなつたと認められるとき。

 三 学業成績が著しく不良となつたと認められるとき。

 四 修学資金の貸与を受けることを辞退したとき。

 五 死亡したとき。

 六 その他修学資金の貸与の目的を達成する見込がなくなつたと認められるとき。

2 政府は、公衆衛生修学生が休学し、又は停学の処分を受けたときは、休学し、又は停学の処分を受けた日の属する月の翌月分から復学した日の属する月の分まで修学資金の貸与を行わないものとする。この場合において、これらの月の分としてすでに貸与された修学資金があるときは、その修学資金は、当該公衆衛生修学生が復学した日の属する月の翌月以後の分として貸与されたものとみなす。

3 政府は、公衆衛生修学生が正当の理由がなくて第十二条に規定する学業成績表の提出を行わず、又は同条に規定する健康診断を受けない場合には、修学資金の貸与を一時保留することができる。

 (返還の債務の当然免除)

第七条 修学資金の貸与を受けた者は、次の各号の一に該当するに至つたときは、返還の債務の免除を受けることができる。

 一 医学を専攻した者にあつては実地修練を終了した後、歯学を専攻した者にあつては大学を卒業した後、直ちに保健所の職員となり、かつ、引き続き保健所又は公衆衛生行政を所管する政令で定めるその他の機関に在職した場合において、その引き続く在職期間のうち医師又は歯科医師となつた後の期間が、修学資金の貸与を受けた期間(前条第二項の規定により貸与されなかつた修学資金に係る期間を除く。)の二分の三に相当する期間(この期間が三年に満たないときは、三年とする。)に達したとき。ただし、保健所の職員となつた日から起算して二年以内に医師又は歯科医師となつた場合に限る。

 二 前号に規定する在職期間中に公務により死亡し、又は公務に起因する心身の故障のため免職されたとき。

2 前項第一号に規定する在職期間を計算する場合においては、月数によるものとし、その計算に必要な事項は、政令で定める。

 (返還)

第八条 修学資金は、次の各号に規定する場合には、政令の定めるところにより、当該各号に規定する事由が生じた日の属する月の翌月から起算して、貸与を受けた期間(第六条第二項の規定により貸与されなかつた修学資金に係る期間を除く。)の二分の一に相当する期間(第十条の規定により返還の債務の履行が猶予されたときは、この期間と当該猶予された期間とを合算した期間)内に、返還しなければならない。

 一 第六条第一項の規定により、修学資金を貸与する旨の契約が解除されたとき。

 二 貸与を受けた者が医学を専攻した者であるときは実地修練を終了した後、歯学を専攻した者であるときは大学を卒業した後、直ちに保健所の職員とならなかつたとき。

 三 貸与を受けた者が、保健所の職員となつた後に死亡し、又は保健所若しくは前条第一項第一号に規定する機関の職員でなくなつたとき(同条同項第二号に該当するときを除く。)。

 四 貸与を受けた者が、保健所の職員となつた日から起算して二年以内に医師又は歯科医師とならなかつたとき。

 (返還の債務の裁量免除)

第九条 政府は、修学資金の貸与を受けた者が、医師又は歯科医師となつた後、保健所又は第七条第一項第一号に規定する機関に、通算して修学資金の貸与を受けた期間(第六条第二項の規定により貸与されなかつた修学資金に係る期間を除く。)の二分の三に相当する期間(この期間が三年に満たないときは、三年とする。)以上在職したときは、修学資金の返還の債務(履行期が到来していないものに限る。以下同じ。)の全部を免除することができる。

2 政府は、修学資金の貸与を受けた者が、医師又は歯科医師となつた後、保健所又は第七条第一項第一号に規定する機関に、通算して三年以上在職したときは、政令の定めるところにより、修学資金の返還の債務の一部を免除することができる。

3 政府は、修学資金の貸与を受けた者が、保健所又は第七条第一項第一号に規定する機関に在職中に公務により死亡し、又は公務に起因する心身の故障のため免職されたときは、修学資金の返還の債務の全部又は一部を免除することができる。

4 第七条第二項の規定は、第一項及び第二項に規定する在職期間の計算について準用する。

 (返還の猶予)

第十条 政府は、修学資金の貸与を受けた者が、医師若しくは歯科医師となつた後保健所若しくは第七条第一項第一号に規定する機関に在職する場合又は災害、疾病その他やむを得ない理由により修学資金を返還することが困難であると認める場合には、その在職する期間又はその理由が継続する期間、修学資金の返還の債務の履行を猶予することができる。

2 前項の規定により修学資金の返還の債務を猶予する場合には、国の債権の管理等に関する法律(昭和三十一年法律第百十四号)第二十六条の規定は、適用しない。

 (延滞利息)

第十一条 修学資金の貸与を受けた者は、正当の理由がなくて修学資金を返還すべき日までにこれを返還しなかつたときは、当該返還すべき日の翌日から返還の日までの期間に応じ、返還すべき額百円につき一日四銭の割合で計算した延滞利息を支払わなければならない。

 (学業成績表の提出等)

第十二条 公衆衛生修学生は、厚生省令で定めるところにより、毎年学業成績表を厚生大臣に提出し、及び健康診断を受けなければならない。

 (省令への委任)

第十三条 この法律で政令に委任するものを除くほか、この法律の実施のための手続その他その執行について必要な細則は、厚生省令で定める。

   附 則

1 この法律は、公布の日から施行する。

2 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。

  第五条第二十二号の次に次の一号を加える。

  二十二の二 公衆衛生修学資金貸与法(昭和三十二年法律第六十五号)の定めるところにより、公衆衛生修学資金を貸与すること。

  第九条第一項第六号の次に次の一号を加える。

  六の二 公衆衛生修学資金貸与法を施行すること。

3 印紙税法(明治三十二年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。

  第五条第六号ノ七の次に次の一号を加える。

  六ノ七ノ二 公衆衛生修学資金貸与法ニ依ル公衆衛生修学資金ニ付テノ消費貸借ニ関スル証書

4 昭和三十二年度においては、第四条中「予算で定める金額」とあるのは、「四千四百七十三万円」と読み替えるものとする。

(大蔵・厚生・内閣総理大臣署名) 

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