住宅融資保険法

法律第六十三号(昭三〇・七・一一)

 (目的)

第一条 この法律は、住宅の建設等に必要な資金の融通を円滑にするため、金融機関の住宅の建設等に必要な資金の貸付につき保険を行う制度を確立し、もつて健康で文化的な生活を営むに足りる住宅の建設を促進することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

 一 住宅 主として人の居住の用に供する家屋をいう。

 二 住宅の建設 住宅の新築(住宅以外の家屋の新築で人の居住の用に供する部分に係るもの及び新築された住宅でまだ人の居住の用に供したことのないものの購入を含む。)若しくは住宅の移転又は家屋の増築、改築、修繕若しくは模様替で、人の居住の用に供するため若しくは居住性を良好にするために行うものをいう。

 三 金融機関 銀行(日本銀行を除く。)、保険会社、無尽会社、信用金庫、労働金庫及び信用協同組合をいう。

 四 給付 相互銀行法(昭和二十六年法律第百九十九号)第二条第一項第一号の契約に基く給付及び無尽業法(昭和六年法律第四十二号)第一条の無尽による給付をいう。

 (保険契約)

第三条 住宅金融公庫(以下「公庫」という。)は、事業年度又はその半期ごとに、金融機関を相手方として、当該金融機関が貸付(給付を含む。以下同じ。)を行つたことを公庫に通知することにより、貸付金の額(給付の場合は、当該給付に係る契約に基いて給付後において受け入れるべき掛金の額。以下同じ。)の総額が一定の金額に達するまで、その貸付につき、公庫と当該金融機関との間に保険関係が成立する旨を定める契約を結ぶことができる。

2 公庫は、前項の契約を結ぶときは、第十三条の規定による承認を受けた保険約款に基かなければならない。

 (保険関係が成立する貸付)

第四条 前条第一項の保険関係(以下「保険関係」という。)が成立する貸付は、次の各号に掲げる要件を備えていなければならない。

 一 住宅の建設、住宅の建設に伴い通常必要とされる施設(以下「施設」という。)の建設、住宅若しくは施設の建設に必要な土地若しくは借地権の取得又は住宅若しくは施設の建設に必要な土地の造成のための貸付であること。

 二 貸付期間(給付の場合は、給付の時から当該給付に係る契約の期間の満了の時までの期間)が六月以上であること。

 (保険価額、保険事故及び保険金額)

第五条 保険関係においては、貸付金の額を保険価額とし、弁済期(給付の場合は、当該給付に係る契約の期間の満了の時)における債務の不履行による貸付金の回収未済(給付の場合は、掛金の受入未済。以下同じ。)又は会社更生法(昭和二十七年法律第百七十二号)の規定による更生手続開始の決定若しくは商法(明治三十二年法律第四十八号)第三百八十一条の規定による整理開始の命令若しくは同法第四百三十一条第一項の規定による特別清算開始の命令のあつた時における貸付金の回収未済を保険事故とし、保険価額に百分の八十を乗じて得た金額を保険金額とする。

 (保険価額の総額の限度)

第六条 公庫は、保険関係における保険価額の総額の金融機関を通ずる合計額が、事業年度ごとに国会の議決を経た金額をこえない範囲内でなければ、第三条第一項の契約を結ぶことができない。

 (保険料)

第七条 保険料の額は、保険金額に年百分の三以内において政令で定める率を乗じて得た額以内とする。

 (保険金)

第八条 公庫が保険関係に基いて支払うべき保険金の額は、保険価額から金融機関がその支払の請求をする時までに貸付金の回収(給付の場合は、掛金の受入。以下同じ。)をした額を控除した残額に、百分の八十を乗じて得た額とする。

第九条 金融機関は、保険事故の発生の日から三月を経過した後でなければ、保険金の支払の請求をすることができない。

2 金融機関は、保険事故の発生の日から一年六月を経過した後は、前項の請求をすることができない。

 (回収金の納付)

第十条 保険金の支払を受けた金融機関は、その支払の請求をした後貸付金の回収をした額と保険金の支払を受けた日の翌日以後の利息の受領した額との合計額に支払を受けた保険金の額の第八条に規定する残額に対する割合を乗じて得た額を公庫に納付しなければならない。

 (貸付金の回収)

第十一条 金融機関は、保険関係が成立した貸付について、貸付金の回収に努めなければならない。

 (契約の解除等)

第十二条 公庫は、金融機関がこの法律の規定又は第三条第一項の契約の条項に違反したときは、保険関係に基く保険金の全部若しくは一部を支払わず、保険金の全部若しくは一部を返還させ、又は将来にわたつて同条同項の契約を解除することができる。

 (保険約款)

第十三条 公庫は、この法律に基く業務開始の際、保険約款を定め、これを主務大臣に堤出し、その承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、また同様とする。

 (主務大臣)

第十四条 この法律における主務大臣は、建設大臣及び大蔵大臣とする。

 (過料)

第十五条 公庫が、第十三条の規定による承認を受けた保険約款に基かないで第三条第一項の契約を結んだときは、その違反行為をした公庫の役員又は職員を三万円以下の過料に処する。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から施行する。

 (住宅金融公庫法の一部改正)

2 住宅金融公庫法(昭和二十五年法律第百五十六号)の一部を次のように改正する。

  第一条第二項中「基き、」を「基き」に改め、「融通すること」の下に「、及び住宅融資保険法(昭和三十年法律第六十三号)に基き金融機関の住宅建設等に必要な資金の貸付につき保険を行うこと」を加える。

  第五条第三項に後段として次のように加える。

   この場合において、政府は、当該出資した金額の全部又は一部が住宅融資保険法(以下「保険法」という。)による保険の基金に充てるべきものであるときは、その金額を示すものとする。

  第十七条第六項を次のように改める。

 6 公庫は、人の居住の用に供する相当の部分を有し、かつ、主要構造部が耐火構造である家屋で、地上階数三以上のもの又は基礎及び主要構造部を地上第三階以上の部分の建築を予定した構造とした二階建のものが建設される場合において、特別の理由によりやむを得ないと認められるとき、又は当該家屋が耐火建築促進法(昭和二十七年法律第百六十号)第四条第一項の規定により指定された防火建築帯の区域内に建設されるときは、当該家屋の人の居住の用に供する部分以外の部分を建設する者に対し、当該部分のうち当該家屋の人の居住の用に供する部分の床面積の合計の二分の一以下に相当する床面積を有する部分の主要構造部を建設するために必要な資金を貸し付けることができる。

  第十七条第七項中「資金貸付の業務」の下に「及び保険法による保険の業務」を加える。

  第二十三条第一項中「回収に関する業務」の下に「並びに貸付金の回収に関連して取得した動産、不動産又は所有権以外の財産権の管理及び処分」を、「土地に係る造成工事」の下に「並びに保険法による保険の業務のうち同法第十三条に規定する保険約款で定めた場合における金融機関の貸付についての調査」を加える。

  第二十四条第二項中「処理に関する準則」の下に「並びに保険法による保険の業務の処理に関する準則」を加える。

  第二十六条の次に次の一条を加える。

  (特別勘定)

 第二十六条の二 公庫は、保険法による保険については、特別勘定を設けて経理しなければならない。

 2 前項の特別勘定においては、第五条第三項後段の規定により政府が示した金額に相当する金額をもつて基金としなければならない。

 3 第一項の特別勘定において、毎事業年度の損益計算上利益を生じたときは、これを積立金として積み立てなければならない。

 4 第一項の特別勘定において、毎事業年度の損益計算上損失を生じたときは、前項の積立金を取りくずして整理するものとし、なお、損失がうめられないときは、その額を損失の繰越として整理するものとする。

 5 前項の規定により損失をうめる場合を除いては、第三項の積立金を取りくずしてはならない。

  第二十七条第三項中「第一項の」の下に「利益金を納付する場合における損益計算は、前条第一項の特別勘定の損益を控除して行うものとするほか、同項の」を加える。

  第三十一条第二項中「及び融通法」を「、融通法及び保険法」に改める。

  第三十二条第一項第一号中「若しくは融通法」を「、融通法若しくは保険法」に改める。

 (公庫の予算及び決算に関する法律の一部改正)

3 公庫の予算及び決算に関する法律(昭和二十六年法律第九十九号)の一部を次のように改正する。

  第五条第三項中「資産の運用に係る収入」の下に「、収入保険料(住宅金融公庫の場合に限る。)」を、「利子、」の下に「支払保険金(住宅金融公庫の場合に限る。)、」を加える。

 (建設省設置法の一部改正)

4 建設省設置法(昭和二十三年法律第百十三号)の一部を次のように改正する。

  第三条第二十三号の二中「及び産業労働者住宅資金融通法(昭和二十八年法律第六十三号)」を「、産業労働者住宅資金融通法(昭和二十八年法律第六十三号)及び住宅融資保険法(昭和三十年法律第六十三号)」に改める。

 (大蔵省設置法の一部改正)

5 大蔵省設置法(昭和二十四年法律第百四十四号)の一部を次のように改正する。

  第十二条第六号の二中「融通」の下に「及び住宅融資保険」を加える。

(大蔵・建設・内閣総理大臣署名) 

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