社会福祉事業振興会法

法律第二百四十号(昭二八・八・一九)

目次

 第一章 総則(第一条―第九条)

 第二章 役員及び職員(第十条―第十七条)

 第三章 評議員会(第十八条―第二十二条)

 第四章 業務(第二十三条―第二十五条)

 第五章 会計(第二十六条―第三十一条)

 第六章 監督及び補則(第三十二条―第三十四条)

 第七章 罰則(第三十五条―第三十七条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 社会福祉事業振興会は、社会福祉法人に対し社会福祉事業施設の経営に必要な資金を融通し、その他社会福祉事業に関し必要な助成を行い、もつて社会福祉事業の振興を図ることを目的とする。

 (法人格)

第二条 社会福祉事業振興会(以下「振興会」という。)は、法人とする。

 (事務所)

第三条 振興会は、主たる事務所を東京都に置く。

2 振興会は、必要な地に従たる事務所を置くことができる。

 (資本金)

第四条 振興会の資本金は、政府がその全額を出資する。

2 政府は、予算に定める金額の範囲内で振興会に出資するものとする。

 (定款)

第五条 振興会は、定款をもつて左の事項を規定しなければならない。

 一 目的

 二 名称

 三 事務所の所在地

 四 資本金及び資産に関する事項

 五 役員に関する事項

 六 評議員会及び評議員に関する事項

 七 業務及びその執行に関する事項

 八 会計に関する事項

2 定款の変更は、厚生大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。

 (登記)

第六条 振興会は、政令の定めるところにより、登記しなければならない。

2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければこれをもつて第三者に対抗することができない。

3 登記した事項は、登記所において、遅滞なく、公告しなければならない。

 (名称の使用制限)

第七条 振興会でない者は、社会福祉事業振興会という名称又はこれに類似する名称を用いてはならない。

 (解散)

第八条 振興会の解散及びその解散した場合における残余財産の処置については、別に法律で定める。

 (法人に関する規定の準用)

第九条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)、第五十条(法人の住所)及び第五十四条(理事の代表権の制限)の規定は、振興会に準用する。

   第二章 役員及び職員

 (役員)

第十条 振興会に、役員として、会長一人、理事五人以内及び監事二人以内を置く。

 (役員の職務及び権限)

第十一条 会長は、振興会を代表し、その業務を総理する。

2 理事は、会長の定めるところにより、振興会を代表し、会長を補佐して振興会の業務を掌理し、会長に事故があるときにはその職務を代理し、会長が欠員のときにはその職務を行う。

3 監事は、振興会の業務を監査する。

 (役員の任命)

第十二条 会長及び監事は、厚生大臣が任命する。

2 理事は、会長が厚生大臣の認可を受けて任命する。

 (役員の任期)

第十三条 役員の任期は、四年とする。

2 役員は、再任されることができる。

3 役員が欠員となつたときは、遅滞なく、補欠の役員を任命しなければならない。補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。

 (役員の欠格事由)

第十四条 左の各号の一に該当する者は、役員となることができない。

 一 禁治産者若しくは準禁治産者又は破産者で復権を得ない者

 二 第三十五条の規定により刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなるまでの者

 三 社会福祉事業法(昭和二十六年法律第四十五号)第三十四条第四項各号(役員の欠格)の一に該当する者

 (役員の兼職禁止)

第十五条 会長及び理事は、他の職業に従事してはならない。但し、会長又は理事としての職務の執行に支障がないものと認めて厚生大臣が許可した場合は、この限りでない。

 (代表権の制限)

第十六条 振興会と会長又は理事との利益が相反する事項については、これらの者は、代表権を有しない。この場合においては、監事が振興会を代表する。

 (役員及び職員の地位)

第十七条 振興会の役員及び職員(常時勤務して一定の報酬を受ける職員であつて、二箇月以内の期間を定めて雇用される者以外の者をいう。以下同じ。)は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

   第三章 評議員会

 (評議員会)

第十八条 振興会に評議員会を置く。

2 評議員会は、十人以上二十人以内の評議員をもつて組織する。

 (評議員会の権限)

第十九条 左に掲げる事項については、会長において、あらかじめ評議員会の意見を聞かなければならない。

 一 定款の変更

 二 予算及び第三十一条の規定により厚生大臣の認可を受けることを必要とする借入金の借入

 三 第二十四条第一項の規定による業務方法書の決定及び変更

 四 その他業務に関する重要事項で定款をもつて定めるもの

第二十条 評議員会は、振興会の業務若しくは資産の状況又は役員の業務執行の状況について、会長に対して意見を述べ、若しくはその諮問に答え、又は会長から報告を徴することができる。

 (評議員の任命、任期及び欠格事由)

第二十一条 評議員は、振興会の目的を達成するために必要な学識経験を有する者及び社会福祉事業関係者の中から、厚生大臣が任命する。

2 第十三条及び第十四条の規定は、評議員に準用する。

 (評議員会の会議)

第二十二条 評議員会は、会長が招集する。

2 評議員会に議長を置き、評議員の互選で定める。

3 会長は、評議員の三分の一以上から会議に付議すべき事項を示して評議員会の招集を請求された場合には、その請求のあつた日から三十日以内にこれを招集しなければならない。

4 評議員会は、評議員の過半数の出席がなければ、その議事を開き、議決することができない。

5 評議員会の議事は、出席評議員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

6 前項の場合において、議長は、評議員として議決に加わることができない。

   第四章 業務

 (業務の範囲)

第二十三条 振興会は、第一条の目的を達成するため、左の業務を行う。

 一 社会福祉法人に対し、社会福祉事業施設の修理、改造、拡張、整備若しくは災害復旧に要する資金又は社会福祉事業施設の経営に必要なその他の資金を貸し付けること。

 二 社会福祉事業施設の職員等社会福祉事業に関する事務に従事する者の研修、福利厚生その他社会福祉事業の振興上必要と認められる事業を行う者に対し、必要な資金を貸し付け、又は助成を行うこと。

 三 前二号に掲げる業務に附帯する業務

2 振興会は、前事業年度における損益計算上の利益金から、繰越欠損の補てんに充てた金額及び当該事業年度において第二十九条第一項の規定による積立金として積み立てられた金額を控除した金額に相当する金額の範囲内においてのみ、前項第二号の規定による助成を行うことができる。

 (業務方法書)

第二十四条 振興会は、業務開始の際、業務方法書を定め、厚生大臣に提出してその認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、また同様とする。

2 前項の業務方法書には、資金の貸付の限度、利率及び期限、担保に関する事項、元利金の回収に関する事項等貸付に関する業務の方法、助成の限度及び目的並びに第二十五条第二項の規定による代理業務に関する準則を記載しなければならない。

 (貸付業務の代理等)

第二十五条 振興会は、厚生大臣の認可を受けて、その貸付業務の一部を他の法人に代理させることができる。

2 振興会は、前項の規定によりその貸付業務の一部を代理させようとするときは、その法人に対して代理業務に関する準則を示さなければならない。

3 前二項の規定により貸付業務の代理をする法人の役員又は職員であつて当該代理業務に従事する者は、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

   第五章 会計

 (事業年度)

第二十六条 振興会の事業年度は、毎年四月一日に始まり翌年三月三十一日に終る。

2 振興会は、毎事業年度の決算を翌年度の五月三十一日までに完結しなければならない。

 (事業計画及び予算)

第二十七条 振興会は、毎事業年度、事業計画並びに収入及び支出の予算を作成し、事業年度開始前に厚生大臣の認可を受けなければならない。これに重要な変更を加えようとするときも、また同様とする。

 (財務諸表)

第二十八条 振興会は、毎事業年度、財産目録、貸借対照表及び損益計算書(以下「財務諸表」という。)を作成し、これに予算の区分に従い作成した当該事業年度の決算報告書を添附し、監事の意見をつけて、決算完結後二箇月以内に厚生大臣に提出し、その承認を受けなければならない。

2 会長は、前項の財務諸表及び決算報告書を、監事の意見をつけて、決算完結後一箇月以内に評議員会に報告しなければならない。

3 振興会は、第一項の規定による厚生大臣の承認を受けたときは、遅滞なく、同項の財務諸表を官報に公告し、且つ、各事務所に備え置かなければならない。

 (利益金の処分)

第二十九条 振興会は、毎事業年度の損益計算上利益金を生じたときは、繰越欠損がある場合においては、まずこれを繰越欠損の補てんに充て、なお残余があるときは、繰越欠損以外の損失の補てんに充てるため、当該利益金の一部を積立金として積み立てなければならない。

2 前項の積立金は、同項の繰越欠損以外の損失の補てんに充てる場合を除くほか、これを取りくずしてはならない。

 (余裕金の運用)

第三十条 振興会は、左の方法によるほか、業務上の余裕金を運用してはならない。

 一 国債又は地方債の取得

 二 銀行への預金又は郵便貯金

 三 信託会社又は信託業務を行う銀行への金銭信託

 (借入金)

第三十一条 振興会は、厚生大臣の定める場合を除くほか、借入金をするについては、厚生大臣の認可を受けなければならない。

   第六章 監督及び補則

 (監督)

第三十二条 振興会は、厚生大臣が監督する。

2 厚生大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、振興会に対して、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。

 (報告及び検査)

第三十三条 厚生大臣は、必要があると認めるときは、振興会若しくはその貸付業務を代理する法人に報告をさせ、又は当該職員をして振興会若しくはその貸付業務を代理する法人の事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿書類その他必要な物件を検査させることができる。但し、貸付業務を代理する者に対しては、当該代理業務の範囲内に限る。

2 前項の規定により職員が立入検査をする場合においては、その身分を示す証票を携帯し、関係人にこれを呈示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

 (役員の解任)

第三十四条 厚生大臣は、振興会の役員が第十四条各号の一に該当するに至つたときは、これを解任しなければならない。

2 厚生大臣は、振興会の役員が左の各号の一に該当するに至つたときは、これを解任することができる。

 一 この法律、この法律に基く命令若しくはこれらの法令に基いてする厚生大臣の命令又は定款に違反したとき。

 二 前項の規定の適用がある場合を除くのほか、刑事事件により有罪の宣告を受けたとき。

 三 心身の故障により職務をとることができないとき、その他前二号に掲げるもののほか、役員として不適当であると認められるとき。

   第七章 罰則

第三十五条 振興会の役員若しくは職員又はその貸付業務の代理をする法人の役員若しくは職員が、第三十三条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したときは、一年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。

第三十六条 左の場合においては、その違反行為をした振興会の役員又は職員を三万円以下の過料に処する。

 一 この法律により厚生大臣の認可、許可又は承認を受けなければならない場合において、その認可、許可又は承認を受けなかつたとき。

 二 第六条第一項の規定に違反して登記をすることを怠り、又は不実の登記をしたとき。

 三 第二十三条第一項に規定する業務以外の業務を行つたとき。

 四 第三十条の規定に違反して業務上の余裕金を運用したとき。

 五 第三十二条第二項の規定による厚生大臣の命令に違反したとき。

第三十七条 第七条の規定に違反して社会福祉事業振興会という名称又はこれに類似する名称を用いた者は、一万円以下の過料に処する。

   附 則

1 この法律は、昭和二十九年四月一日から施行する。但し、附則第二項及び第三項の規定は、公布の日から施行する。

2 厚生大臣は、設立委員を命じて、振興会の設立に関する事務を処理させる。

3 設立委員は、定款を作成し、厚生大臣の認可を受けなければならない。

4 前項の認可があつたときは、設立委員は、遅滞なく、政府に対し出資金の払込を請求をしなければならない。

5 出資金の払込があつた日(出資金が分割して払い込まれる場合においては、第一回の払込があつた日)において、設立委員は、その事務を振興会の会長に引き継がなければならない。

6 振興会の会長が前項の事務の引き継を受けたときは、その引き継を受けた日において、役員の全員は、政令の定めるところにより、設立の登記をしなければならない。

7 振興会は、前項の規定による設立の登記をすることによつて成立する。

8 この法律中社会福祉法人には、当分の間、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)に規定する児童福祉施設又は身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)に規定する身体障害者更生援護施設を設置する民法第三十四条(公益法人)の法人及び更生緊急保護法(昭和二十五年法律第二百三号)の規定により更生保護事業を営む民法第三十四条の法人を含むものとする。

9 第七条の規定は、この法律の施行(附則第一項本文の規定による施行をいう。以下同じ。)の際現に社会福祉事業振興会という名称又はこれに類似する名称を用いている者については、この法律の施行後六箇月を限り適用しない。

10 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。

  第五条中第五十二号の二を第五十二号の三とし、第五十二号の三を第五十二号の四とし、第五十二号の次に次の一号を加える。

  五十二の二 社会福祉事業振興会法(昭和二十八年法律第二百四十号)の定めるところにより、社会福祉事業振興会につき、認可を与え、その他監督等を行うこと。

11 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。

  第十九条第七号中「社会福祉法人」の下に「、社会福祉事業振興会」を、「社会福祉事業法」の下に「、社会福祉事業振興会法」を加え、同条第十八号中「私立学校振興会」の下に「、社会福祉事業振興会」を加え、同条に次の一号を加える。

  二十三 社会福祉事業振興会ガ社会福祉事業振興会法ノ規定ニ依リ為ス貸付業務ノ為ニスル建物又ハ土地ノ抵当権ノ取得ノ登記

12 印紙税法(明治三十二年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。

  第五条中第六号ノ十ノ二の次に次の一号を加える。

  六ノ十ノ三 社会福祉事業振興会ノ発スル証書、帳簿

13 所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。

  第三条第九号中「社会福祉法人」の下に「、社会福祉事業振興会」を加える。

14 法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)の一部を次のように改正する。

  第四条第四号中「私立学校振興会」の下に「、社会福祉事業振興会」を加える。

15 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。

  第二十四条第三号、第二百九十六条及び第七百四十三条第三号中「私立学校振興会」の下に「、社会福祉事業振興会」を加え、第三百四十八条第二項に次の一号を加える。

  十五 社会福祉事業振興会が直接その事業の用に供する固定資産

16  日本赤十字社法(昭和二十七年法律第三百五号)の一部を次のように改正する。

  第三十五条第二項中「罰則」の下に「並びに社会福祉事業振興会法(昭和二十八年法律第二百四十号)」を加える。

17 社会福祉事業法の一部を次のように改正する。

  第五十六条第一項中「社会福祉法人の経営する社会福祉事業施設が災害によつて破損した場合において、緊急にこれを復旧する」を削る。

(内閣総理、法務・大蔵・厚生大臣署名) 

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