外航船舶建造融資利子補給法の一部を改正する法律
法律第二百十五号(昭二八・八・一五)
外航船舶建造融資利子補給法(昭和二十八年法律第一号)の一部を次のように改正する。
題名を次のように改める。
外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法
第一条中「利子補給金を支給することにより、外航船舶の建造を促進すること」を「利子補給金を支給し、及び損失補償を行うことにより、外航船舶の建造を促進するとともにわが国海運の健全な振興を図ること」に改める。
第二条の見出しを「(利子補給金の支給及び損失補償)」に改める。
第二条中「日本船舶を所有することができる者が、」を「日本船舶を所有することができる会社の申請により、その会社が」に、「政令で定める範囲の金融機関」を「日本開発銀行以外の金融機関で政令で定める範囲のもの」に、「利子補給金を支給する」を「利子補給金を支給し、又は当該融資によつて受けた損失を補償する」に改める。
第三条中「前条の規定による契約」を「前条の規定による利子補給金を支給する旨の契約」に改める。
第四条中「第二条の規定による契約」を「第二条の規定による利子補給金を支給する旨の契約」に、「国会の議決を経た金額」を「予算で定める金額」に改める。
第五条第一項中「第二条の規定による契約」を「第二条の規定による利子補給金を支給する旨の契約」に、「年七分五厘」を「年五分」に改め、同条第二項中「五年間半年賦均等償還」を「十年間半年賦均等償還」に改める。
第六条中「第二条に規定する契約」を「第二条の規定による利子補給金を支給する旨の契約」に改める。
第七条から第九条までを次のように改める。
(補償金の総額)
第七条 政府は、第二条の規定による損失を補償する旨の契約を結ぶ場合には、補償金の総額が予算で定める金額をこえることとならないようにしなければならない。
(損失の範囲)
第八条 第二条の損失は、金融機関が当該融資に係るすべての担保権を実行し、且つ、当該融資について保証人があるときはすべての保証人に対し債務の履行を請求し、当該担保権に基く競売の申立若しくは委任若しくは差押命令の申請又は保証人に対する履行の請求のうち最後に行われたものが行われた日から一年を経過してもなお取り立てることができなかつた元本、利子(政令で定める遅延利子を含む。)及び債権行使のために要した費用であつて政令で定める範囲のものに相当する金額とする。但し、金融機関が当該融資に係る担保権を実行し、及び保証人に対し債権を行使してもこれに要する費用を償うことができない場合その他当該融資に係る担保権を実行し、及び保証人に対し債権を行使することが著しく不利である場合において、債権金額から政府と当該金融機関とが協議により定める担保物の評価額及び保証人に対する債権行使による取立見込額を控除した金額をもつて第二条の損失とすることについて政府と当該金融機関との協議が成立したときは、その額とする。
(損失補償の限度)
第九条 政府は、前条に規定する損失のうち当該融資の融資総額の百分の三十に相当する金額をこえる部分については、補償しない。
第九条の次に次の十四条を加える。
(債権の保全及び取立)
第十条 金融機関は、第二条の規定による損失を補償する旨の契約に係る融資については、善良な管理者の注意をもつて、当該融資に係る債権を保全し、且つ、その取立に努めなければならない。
2 金融機関が、第二条の規定による損失を補償する旨の契約に係る融資について当該契約による損失補償を受けた場合において、当該融資に係る債権を取り立てたときは、取り立てた金額を債権行使のために要した費用であつて政令で定める範囲のもの及び当該融資について損失補償を受けない第八条に規定する損失のてん補に充当し、なお残額があるときは、これを政府に納付しなければならない。但し、当該契約により政府から受けた補償金の額を限度とする。
3 金融機関は、前項の規定により残額を政府に納付する場合において、次条第一項の規定により交付された国債証券(当該国債の借換のため発行された国債証券を含む。)を有するときは、当該国債証券をもつて納付することができる。
(補償金の国債証券による交付)
第十一条 第二条の規定による損失を補償する旨の契約により政府が支払うべき補償金は、国債証券をもつて交付することができる。
2 政府は、前項の規定による交付のため、必要な額を限度として、国債証券を発行することができる。
3 第一項の国債証券の交付価格その他前二項の国債証券に関し必要な事項は、大蔵省令で定める。
(利益を計上した場合の納付金)
第十二条 第二条の規定による利子補給金を支給する旨の契約に係る融資を受けている会社は、その決算において計上した利益(政令で定める範囲のものをいう。以下同じ。)の額が当該会社の資本(発行済額面株式の株金総額及び発行済無額面株式の発行価額の総額をいう。以下同じ。)に政令で定める率を乗じて算出した金額をこえるときは、当該利益に係る決算期に属する期間について金融機関が支給を受ける利子補給金の額に相当する金額を国庫に納付しなければならない。
第十三条 第二条の規定による利子補給金を支給する旨の契約に係る融資を受けた会社は、当該契約が結ばれた日から十五年以内に、その決算において計上した利益の額が当該会社の資本に政令で定める率を乗じて算出した金額をこえるときは、当該利益の額から資本に政令で定める率を乗じて算出した当該金額に相当する金額を控除した金額の二分の一に相当する金額を国庫に納付しなければならない。但し、当該決算までに当該融資について金融機関が支給を受けた利子補給金に相当する金額から当該決算までに、前条の規定により国庫に納付し、又は納付すべき金額、当該決算までに第十五条の規定により国庫に納付し、又は納付すべき金額及び本条の規定により当該決算以前の決算に計上した利益に関して国庫に納付し、又は納付すべき金額に相当する金額を控除した金額を限度とする。
(会社に対する勧告等)
第十四条 運輸大臣は、第二条の規定による契約に係る融資を受けた会社に対し左の各号に掲げる勧告又は監査をすることができる。但し、利子補給金を支給する旨の契約に係る融資を受けた会社に対しては当該契約が結ばれた日から十五年以内であり、且つ、当該会社がこの法律の規定により国庫に納付した金額が当該融資に関し金融機関が支給を受けた利子補給金の総額に達するまでの期間に、損失を補償する旨の契約に係る融資を受けた会社に対しては当該契約の存続する期間に限る。
一 不当な経理の是正その他経理の改善に関する勧告
二 不当な競争の排除についての必要な勧告
三 業務又は経理の監査
2 運輸大臣は、第二条の申請をした会社に対し船価の低減を図るため、当該申請に係る外航船舶の仕様について必要な勧告をすることができる。
(勧告に従わなかつた場合等における納付金)
第十五条 運輸大臣は、第二条の規定による契約に係る融資を受けた者が左の各号の一に該当することとなつた場合においては、その者につき当該事実が生じた日までに当該融資に関し支給を受け、又は受けるべき利子補給金に相当する金額の全部又は一部を国庫に納付することを命ずることができる。但し、当該事実が生じた日までに第十二条の規定により国庫に納付し、又は納付すべき金額、当該事実が生じた日までに第十三条の規定により国庫に納付し、又は納付すべき金額及び当該事実が生じた日の前日までに本条の規定により国庫に納付し、又は納付すべき金額に相当する金額の合計額を、当該金融機関が当該事実が生じた日までに当該契約に関し支給を受け、又は受けるべき利子補給金に相当する金額から控除した金額を限度とする。
一 前条第一項第一号又は第二号の規定による勧告に従わなかつたとき
二 第二条の規定による契約に係る融資により、同条の申請に係る船舶の仕様と異つた仕様によつて船舶の建造を請け負わせたとき
(強制徴収)
第十六条 運輸大臣は、第十二条、第十三条又は前条の規定による納付金を納付しない者があるときは、期限を指定して、その納付を督促しなければならない。
2 運輸大臣は、前項の規定により督促するときは、督促状を発する。この場合において、督促状により指定すべき期限は、その到来の日が督促状を発する日から起算して十日以上経過した日でなければならない。
3 運輸大臣は、前二項の規定による督促を受けた者がその指定の期限にその督促に係る納付金及び次条の延滞金を納付しないときは、国税滞納処分の例によりこれを処分する。
(延滞金)
第十七条 運輸大臣は、前条第一項の規定により督促したときは、その督促に係る納付金の金額百円につき一日八銭の割合で、納期限の翌日からその納付の日の前日までの日数により計算した延滞金を徴収する。
(監査の実施)
第十八条 運輸大臣は、第十四条第一項第三号の規定による監査を行うため必要があると認めるときは、当該会社からその業務若しくは経理の状況に関する報告を徴し、又はその職員に、当該会社の営業所若しくは事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係人に呈示しなければならない。
(日本開発銀行に対する利子補給金の支給)
第十九条 政府は、当分の間、第二条の会社の申請によりその会社が同条の外航船舶の建造を同条の造船事業者に請け負わせる場合において、日本開発銀行がその資金を融通するときは、政令で定めるところにより、当該融資につき利子補給金を支給する旨の契約を同行と結ぶことができる。
第二十条 第三条から第五条までの規定は、前条の規定による契約について準用する。この場合において第三条中「会計年度以降八箇年度以内」とあるのは「会計年度以降十七箇年度以内」と、第五条第一項中「当該金融機関が通常それと同種類の融資を行う場合における利率と年五分との差の範囲内」とあるのは「日本開発銀行が当該契約に係る融資を行う場合における利率と年三分五厘との差の範囲内」と、同条第二項中「十年間半年賦均等償還」とあるのは「当該融資契約が結ばれた日以後、貨物船に係る融資にあつては元本三年間据置十二年間半年賦均等償還、油槽船に係る融資にあつては元本三年間据置十年間半年賦均等償還」と読み替えるものとする。
2 第十二条から第十八条までの規定は、前条の規定による利子補給金を支給する旨の契約に係る融資を受けた会社について準用する。この場合において第十四条第一項中「十五年以内」とあるのは「二十年以内」と読み替えるものとする。
3 第二十二条の規定は、日本開発銀行が前条の規定による利子補給金を支給する旨の契約に係る融資をした場合について準用する。
第二十一条 日本開発銀行は、第十九条の規定による契約により政府から利子補給金の支給を受けるときは、当該融資契約により受ける利子額を当該融資の契約上の利子額から利子補給金に相当する額だけ差し引いたものとしなければならない。
(金融機関の法令等の違反に対する措置)
第二十二条 政府は、金融機関が、この法律又は第二条の規定による契約に違反したときは、当該金融機関に対し、支給すべき利子補給金の全部若しくは一部を支給せず、補償すべき損失の全部若しくは一部を補償せず、又は支給した利子補給金若しくは補償金の全部若しくは一部の返還を求めることができる。
(罰則)
第二十三条 第十八条第一項の規定(第二十条第二項において準用する場合を含む。)による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その行為をした会社の代表者、代理人、使用人その他の従業者は、三万円以下の罰金に処する。
2 会社の代表者、代理人、使用人その他の従業者が、その会社の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、その行為者を罰する外、その会社に対して同項の刑を科する。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行し、貨物船にあつては昭和二十五年十二月一日以降の請負に係るものの融資について、油槽船にあつては昭和二十六年十二月一日以降の請負に係るものの融資について適用する。但し、損失補償に関しては、この法律の施行前になされた融資については、適用しない。
2 この法律施行前の請負に係る外航船舶の建造のための融資についての改正後の外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法の適用については、同法第五条第二項中「予定しゆん工日」とあるのは「予定しゆん工日(既にしゆん工した船舶についてはしゆん工日)」と読み替えるものとする。
3 改正前の第二条の規定により結ばれた利子補給金を支給する旨の契約に係る融資を受けた会社については、当該契約に係る利子補給金に関する限り、改正後の第十二条から第十五条までの規定は、適用しない。
4 改正前の第七条及び第八条の規定は、改正前の第二条の規定により結ばれた利子補給金を支給する旨の契約に係る融資を受けている会社については、なおその効力を有する。
5 政府は、昭和二十八年度において改正後の外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法第二条の規定による損失を補償する旨の契約を結ぶ場合には、改正後の同法第七条の規定にかかわらず、補償金の総額が五十九億七千万円をこえることとならないようにしなければならない。
6 政府は、昭和二十八年度において改正後の外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法第十九条の規定による利子補給金を支給する旨の契約を日本開発銀行と結ぶ場合には、同法第二十条において準用する同法第四条の規定にかかわらず利子補給金の総額が八十五億四百七十三万円をこえることとならないようにしなければならない。
7 臨時船質等改善助成利子補給法(昭和二十八年法律第百五十号)の一部を次のように改正する。
第六条中「外航船舶建造融資利子補給法」を「外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法」に改める。
(大蔵・運輸・内閣総理大臣署名)