高等学校の定時制教育及び通信教育振興法
法律第二百三十八号(昭二八・八・一八)
(この法律の目的)
第一条 この法律は、勤労青年教育の重要性にかんがみ、教育基本法(昭和二十二年法律第二十五号)の精神にのつとり、働きながら学ぶ青年に対し、教育の機会均等を保障し、勤労と修学に対する正しい信念を確立させ、もつて国民の教育水準と生産能力の向上に寄与するため、高等学校の定時制教育及び通信教育の振興を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律で、「定時制教育」とは、高等学校が学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第四十四条(定時制の課程)に規定する定時制の課程で行う教育をいい、「通信教育」とは、高等学校が同法第四十五条(通信教育)の規定により行う通信による教育をいう。
(国及び地方公共団体の任務)
第三条 国は、この法律及び他の法令の定めるところにより、定時制教育及び通信教育の振興を図るとともに、地方公共団体が第二項各号に掲げるような方法によつて定時制教育及び通信教育の振興を図ることを奨励し、及びこれについて指導と助言とを与えなければならない。
2 地方公共団体は、左に掲げるような方法によつて定時制教育及び通信教育の振興を図り、できるだけ多数の勤労青年が高等学校教育を受ける機会を持ちうるように努めなければならない。
一 その地方の実情に基き、定時制教育及び通信教育の適正な実施及び運営に関する総合計画を樹立すること。
二 定時制教育及び通信教育に関する施設又は設備を整備し、及びその充実を図ること。
三 定時制教育及び通信教育の内容及び方法の改善を図ること。
四 定時制教育及び通信教育に従事する教員の現職教育について、勤労青年教育の特殊性を考慮して、その計画を樹立し、及びその実施を図ること。
(教科用図書の編修、検定及び発行に関する特別措置)
第四条 通信教育に関する教科用図書の編修、検定及び発行に関しては、その特殊性にかんがみ、特別の措置が講ぜられなければならない。
2 国は、政令で定めるところにより、通信教育に関する教科用図書で政令で定めるものを発行する者に対し、予算の範囲内において、その編修及び発行に要する経費の一部を補助することができる。
(公立学校についての国の補助)
第五条 国は、公立の高等学校の設置者が定時制教育又は通信教育の設備について、政令で定める基準にまで高めようとする場合においては、これに要する経費の全部又は一部を、当該設置者に対し、予算の範囲内において補助する。但し、産業教育振興法(昭和二十六年法律第二百二十八号)第十五条(国の負担)又は第十六条(短期の産業教育)の規定により国が負担するものを除く。
2 国は、公立の高等学校の通信教育の運営に要する経費で政令で定めるものの全部又は一部を、当該高等学校の設置者に対し、予算の範囲内において補助する。
(私立学校についての国の補助)
第六条 国は、私立の高等学校の設置者が定時制教育の設備について、政令で定める基準にまで高めようとする場合においては、これに要する経費の全部又は一部を、当該学校の設置者に対し、予算の範囲内において補助する。但し、産業教育振興法第十九条(私立学校に関する補助)において準用する同法第十五条又は第十六条の規定により国が補助するものを除く。
2 前項の規定により国が高等学校の設置者である学校法人に対し補助をする場合においては、私立学校法(昭和二十四年法律第二百七十号)第五十九条第二項から第六項まで(助成)の規定の適用があるものとする。
(補助金の返還等)
第七条 文部大臣は、第四条第二項、第五条又は前条の規定により補助金の交付を受けた者が左の各号の一に該当するときは、当該年度におけるその後の補助金の交付をやめるとともに、すでに交付した当該年度の補助金を返還させるものとする。
一 この法律又はこの法律に基く政令の規定に違反したとき。
二 補助金の交付の条件に違反したとき。
三 虚偽の方法によつて補助金の受けたことが明らかになつたとき。
(政令への委任)
第八条 第四条から前条までに規定するもののほか、補助金の交付に関し必要な事項は、政令で定める。
附 則
この法律は、公布の日から施行する。但し、第四条第二項、第五条第一項中通信教育に関する部分及び第六条の規定は、昭和二十九年四月一日から施行する。