輸出取引法
法律第二百九十九号(昭二七・八・五)
目次
第一章 総則(第一条・第二条)
第二章 輸出取引の公正(第三条・第四条)
第三章 輸出業者の協定(第五条―第七条)
第四章 輸出組合(第八条―第十九条)
第五章 雑則(第二十条―第三十二条)
第六章 罰則(第三十三条―第三十七条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、不公正な輸出取引を防止し、及び輸出取引の秩序を確立し、もつて輸出貿易の健全な発展を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「不公正な輸出取引」とは、左に掲げるものをいう。
一 仕向国の法令により保護される工業所有権又は著作権を侵害すべき貨物の輸出取引
二 虚偽の原産地の表示をした貨物の輸出取引
三 輸出契約において定める要件を著しく欠く貨物の輸出
四 前各号に掲げるものの外、国際取引における公正な商慣習にもとる輸出取引であつて、政令で定めるもの
第二章 輸出取引の公正
(不公正な輸出取引の禁止)
第三条 輸出業者は、不公正な輸出取引をしてはならない。
(制裁)
第四条 通商産業大臣は、前条の規定に違反した輸出業者に対し、戒告することができる。
2 通商産業大臣は、輸出業者が前項の規定による戒告を受けた後一年以内に前条の規定に違反したときは、その輸出業者が当該違反行為が故意又は過失によるものでないことを証明した場合を除き、その輸出業者に対し、一年以内の期間を限り、品目又は仕向地を定めて貨物の輸出を停止すべきことを命ずることができる。
第三章 輸出業者の協定
(協定)
第五条 輸出業者は、左の各号の一に掲げる事由がある場合において、それぞれ各号に掲げる事由を除去するため必要があるときは、通商産業大臣の認可を受けて、当該仕向地に輸出する当該貨物と同種又は類似の貨物の輸出取引における価格、品質その他の取引条件又は数量について協定を締結することができる。
一 輸出貨物の価格が仕向地におけるその貨物と同種又は類似の貨物の価格に比して著しく低いため、仕向地における関係産業の利益を著しく害し、又は害するおそれがあること。
二 輸出貨物の価格が著しく変動し、仕向地の輸入業者が著しい損失を受け、又は受けるおそれがあるため、その貨物の輸出取引の成立が困難となること。
三 輸出貨物に係る仕向地の輸入取引における競争が実質的に制限されているため、その貨物の輸出業者の利益を著しく害し、又は害するおそれがあること。
2 輸出業者は、前項の認可を受けて締結した協定を変更しようとするときは、通商産業大臣の認可を受けなければならない。
3 通商産業大臣は、前二項の認可の申請があつた場合において、申請に係る協定又はその変更が左の各号に適合していると認めるときは、認可をしなければならない。
一 その内容が第一項各号の一に掲げる事由を除去するため必要な最少限度のものであること。
二 その内容が不当に差別的でないこと。
三 輸出取引の秩序の確立を著しく害するものでないこと。
(認可の取消等)
第六条 通商産業大臣は、前条第一項の認可をした協定(同条第二項の変更の認可をしたときは、その変更後のもの)が前条第三項各号に適合するものでなくなつたと認めるときは、その協定を締結している者に対し、その変更を命じ、又は認可を取り消さなければならない。
(協定の廃止の届出)
第七条 輸出業者は、第五条第一項の協定を廃止しようとするときは、その旨を通商産業大臣に届け出なければならない。
第四章 輸出組合
(法人格)
第八条 輸出組合は、法人とする。
(原則)
第九条 輸出組合は、左の要件を備えなければならない。
一 営利を目的としないこと。
二 組合員が任意に加入し、又は脱退することができること。
三 組合員の議決権及び選挙権は、平等であること。
(名称)
第十条 輸出組合は、その名称中に輸出組合という文字を用いなければならない。
2 輸出組合でない者は、その名称中に輸出組合という文字を用いてはならない。
(事業)
第十一条 輸出組合は、左に掲げる事業を行うことができる。
一 輸出業者の不公正な輸出取引の防止
二 輸出業者の共通の利益を増進するための施設
2 輸出組合は、前項に定めるものの外、第五条第一項各号の一に掲げる事由がある場合において、それぞれ各号に掲げる事由を除去するため必要があるときは、通商産業大臣の認可を受けて、当該仕向地に輸出する当該貨物と同種又は類似の貨物の輸出取引における価格、品質その他の取引条件又は数量について、定款で定めるところにより、組合員の遵守すべき事項を定めることができる。
3 第五条第二項及び第三項、第六条並びに第七条の規定は、前項の組合員の遵守すべき事項に準用する。
(組合員の資格)
第十二条 輸出組合の組合員たる資格を有する者は、左に掲げる者であつて、定款で定めるものとする。
一 輸出業者
二 輸出組合
(発起人)
第十三条 輸出業者をもつて組織する輸出組合を設立するには、その組合員となろうとする三十人以上の輸出業者が、その他の輸出組合を設立するには、その組合員となろうとする二以上の輸出組合又は十人以上の輸出業者及び一以上の輸出組合が発起人となることを要する。
(設立の認可)
第十四条 発起人は、創立総会の終了後遅滞なく、定款及び事業計画書を提出して、通商産業大臣に、設立の認可を申請しなければならない。
2 通商産業大臣は、前項の認可の申請があつた場合において、設立しようとする輸出組合が左の各号に適合していると認めるときは、認可をしなければならない。
一 第九条各号の要件を備えていること。
二 設立手続並びに定款及び事業計画の内容が法令に違反しないこと。
三 その設立が輸出取引の秩序の確立に寄与するものであること。
(定款)
第十五条 輸出組合の定款には、少くとも左に掲げる事項を定めなければならない。
一 事業
二 名称
三 事務所の所在地
四 組合員たる資格に関する規定
五 組合員の加入及び脱退に関する規定
六 組合員の権利義務に関する規定
七 事業の執行に関する規定
八 役員に関する規定
九 会議に関する規定
十 会計に関する規定
十一 公告の方法
2 輸出組合の定款には、前項の事項の外、輸出組合の存立時期又は解散の事由を定めたときは、その時期又は事由を記載しなければならない。
(定款の変更)
第十六条 定款の変更は、通商産業大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
2 第十四条第二項の規定は、前項の認可に準用する。
(合併)
第十七条 輸出組合の合併は、通商産業大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
2 第十四条第二項の規定は、前項の認可に準用する。
(解散)
第十八条 通商産業大臣は、輸出組合が左の各号の一に該当すると認めるときは、その輸出組合の解散を命ずることができる。
一 第十四条第二項各号に適合するものでなくなつたとき。
二 定款に定める事業以外の事業を行つたとき。
2 通商産業大臣が輸出組合の解散を命じた場合における次条において準用する中小企業等協同組合法(昭和二十四年法律第百八十一号)第八十八条の規定による解散の登記は、通商産業大臣の嘱託によつてする。
(準用)
第十九条 中小企業等協同組合法第三条第二項(住所)、第八条(登記)、第十一条から第十四条まで、第十九条(組合員)、第二十七条、第二十八条、第三十条から第三十二条まで(設立)、第三十五条から第三十六条の三まで、第三十八条から第四十二条まで(役員)、第四十六条から第五十条まで、第五十一条第一項、第五十二条から第五十五条まで(総会及び総代会)、第六十二条から第六十六条まで、第六十八条、第六十九条(解散及び清算)、第八十三条(第二項第三号及び第五号を除く。)、第八十四条、第八十五条、第八十六条第一項、第八十八条から第九十五条まで、第九十七条第一項及び第二項、第九十八条から第百三条まで(登記)並びに第百十五条第二号から第六号の二まで、第八号から第十二号まで及び第十五号から第十七号まで(罰則)の規定は、輸出組合に準用する。この場合において、第二十八条中「前条第一項の認証」とあるのは「輸出取引法第十四条第一項の認可」と、第三十一条、第四十八条及び第六十二条第二項中「行政庁」とあるのは「通商産業大臣」と、第五十一条第一項第二号中「規約」とあるのは「輸出取引法第十一条第二項の組合員の遵守すべき事項」と、第五十三条第四号中「事業の全部の譲渡」とあるのは「輸出取引法第十一条第二項の組合員の遵守すべき事項の設定、変更又は廃止」と、第六十二条第一項中
「 |
五 事業の全部の譲渡 |
」 |
六 解散を命ずる裁判 |
とあるのは「五 輸出取引法第十八条の規定による解散の命令」と、第六十三条第一項中「合併し、又はその事業の全部を譲渡する」とあるのは「合併する」と、同条第二項中「合併又は事業の全部の譲渡」とあるのは「合併」と、第八十三条第一項中「第二十九条の規定による出資の払込」とあるのは「輸出取引法第十四条第一項の認可」と、第九十二条第二項中「事業協同組合登記簿、信用協同組合登記簿、中小企業等協同組合連合会登記簿及び企業組合登記簿」とあるのは「輸出組合登記簿」と、第九十三条第二項中「書面並びに出資の総口数及び第二十九条の規定による出資の払込のあつたことを証する書面」とあるのは「書面」と、第九十七条第一項中「第三項」とあるのは「輸出取引法第十八条第二項」と読み替えるものとする。
第五章 雑則
(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律等の適用除外)
第二十条 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)及び事業者団体法(昭和二十三年法律第百九十一号)の規定は、第五条第一項若しくは第二項(第十一条第三項において準用する場合を含む。以下この章において同じ。)又は第十一条第二項の認可を受けてする正当な行為には、適用しない。但し、左に掲げる場合は、この限りでない。
一 不公正な競争方法を用いるとき。
二 国内取引の一定分野における競争を実質的に制限することとなるとき。
三 次条第四項の規定による請求があつた後一月を経過したとき。(同項の請求に応じ、通商産業大臣が第六条(第十一条第三項において準用する場合を含む。以下この章において同じ。)の規定による処分をした場合を除く。)
(公正取引委員会等との関係)
第二十一条 通商産業大臣は、第五条第一項若しくは第二項又は第十一条第二項の認可をしようとするときは、公正取引委員会の同意を得なければならない。
2 通商産業大臣は、第六条の規定による処分をしたときは、遅滞なく、公正取引委員会にその旨を通知しなければならない。
3 公正取引委員会は、第二十条但書第一号又は第二号に該当すると認める場合において、勧告し、又は審判開始決定書を発送しようとするときは、通商産業大臣の意見をきかなければならない。
4 公正取引委員会は、第五条第一項の認可を受けて締結した協定(同条第二項の認可を受けて変更したときは、その変更後のもの)又は第十一条第二項の認可を受けて定めた組合員の遵守すべき事項(同条第三項において準用する第五条第二項の認可を受けて変更したときは、その変更後のもの)が第五条第三項第一号又は第二号(これらの各規定を第十一条第三項において準用する場合を含む。)に適合しなくなつたと認めるときは、通商産業大臣に対し、第六条の規定による処分をすべき旨を請求することができる。
第二十二条 通商産業大臣は、第五条第一項若しくは第二項、第十一条第二項、第十四条第一項、第十六条第一項若しくは第十七条第一項の認可をし、又は第六条若しくは第十八条第一項の規定による処分をしようとするときは、当該処分に係る貨物(第十四条第一項、第十六条第一項又は第十七条第一項の認可の場合にあつては、認可に係る輸出組合の所属員たる輸出業者の取扱に係る貨物)についての主務大臣の同意を得なければならない。
(輸出取引審議会)
第二十三条 通商産業省に、輸出取引審議会(以下「審議会」という。)を置く。
第二十四条 通商産業大臣は、第二条第四号の政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、審議会に諮問しなければならない。
2 審議会は、前項に掲げるものの外、この法律の運用に関する重要な事項について、通商産業大臣の諮問に応じて答申し、又は通商産業大臣に建議する。
第二十五条 審議会は、会長一人及び委員五十人以内で組織する。
2 会長及び委員は、関係行政機関の職員及び輸出貿易に関し学識経験のある者のうちから、通商産業大臣が任命する。
第二十六条 学識経験のある者のうちから任命された会長及び委員の任期は、一年とする。但し、再任を妨げない。
第二十七条 会長及び委員は、非常勤とする。
第二十八条 会長は、審議会の会務を総理する。
第二十九条 第二十三条から前条までに定めるものの外、議事の手続その他審議会の運営に関し必要な事項は、通商産業省令で定める。
(聴聞)
第三十条 通商産業大臣は、第四条第二項、第六条又は第十八条第一項の規定による処分をしようとするときは、当該処分に係る者に対し、相当な期間を置いて予告した上、公開による聴聞を行わなければならない。
2 前項の予告においては、期日、場所及び事案の内容を示さなければならない。
3 聴聞に際しては、当該処分に係る者及び利害関係人に対し、当該事案について証拠を提示し、意見を述べる機会を与えなければならない。
(不服の申立)
第三十一条 この法律の規定による通商産業大臣の処分に対して不服のある者は、その旨を記載した書面をもつて、通商産業大臣に不服の申立をすることができる。
2 通商産業大臣は、前項の不服の申立があつたときは、前条の例により公開の聴聞をした後、文書をもつて決定をし、その写を不服の申立をした者に送付しなければならない。
(報告)
第三十二条 通商産業大臣は、この法律の施行に必要な限度において、政令で定めるところにより、輸出業者又は輸出組合から報告を徴することができる。
第六章 罰則
第三十三条 第四条第二項の規定による命令に違反した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
第三十四条 左の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
一 第五条第一項の規定による認可を受けないで同項に規定する協定を締結した者
二 第五条第二項の規定に違反した者
三 第六条の規定による命令に違反した者
第三十五条 左の場合には、輸出組合の理事は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
一 第十一条第二項の規定による認可を受けないで、同項に規定する組合員の遵守すべき事項を定めたとき。
二 第十一条第三項において準用する第五条第二項の規定に違反したとき。
三 第十一条第三項において準用する第六条の規定による命令に違反したとき。
四 第十八条第一項の規定による命令に違反したとき。
第三十六条 左の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。
一 第七条(第十一条第三項において準用する場合を含む。)の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
二 第十条第二項の規定に違反した者
三 第三十二条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
第三十七条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前四条の違反行為をしたときは、その行為者を罰する外、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため、当該業務に対し相当の注意及び監督が尽されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。
附 則
1 この法律の施行期日は、公布の日から起算して二月をこえない期間内において政令で定める。
2 輸出品取締法(昭和二十三年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。
第九条を次のように改める。
第九条 削除
3 外国為替及び外国貿易管理法(昭和二十四年法律第二百二十八号)の一部を次のように改正する。
第五十条を次のように改める。
第五十条 削除
(内閣総理・法務・大蔵・厚生・農林・通商産業・運輸大臣署名)