耕土培養法

法律第二百三十五号(昭二七・七・一六)

 (目的)

第一条 この法律は、食糧その他の農産物の生産の増進及び農業経営の安定を図るため、耕土培養を行うことを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律で「農地」とは、耕作の目的に供される土地をいう。

2 この法律で「耕土培養」とは、土じようの化学的性質が不良な農地につき、その性質を改善するため、石灰、鉄等を含有する物であつて農林大臣の指定するものを施用することをいい、「耕土培養事業」とは、この法律の定めるところにより行う耕土培養のための事業をいう。

 (耕土培養地域の指定)

第三条 都道府県知事は、毎年度、当該都道府県の区域内における農地の土じようの化学的性質及びその不良の程度、土じようの化学的性質が不良であると認められる農地(以下この条において「不良農地」という。)の分布状況等に関し、省令で定めるところにより都道府県が行う調査の結果に基き、都道府県農業委員会の意見を聞いて、左に掲げる基準に適合すると認められる地域を耕土培養地域として指定する。

 一 その地域内の不良農地についての耕土培養の実施が技術的及び経済的に可能であること。

 二 その地域がおおむね密集する不良農地から成り、且つ、その地域の面積が農林大臣の定める面積以上であること。

2 都道府県知事は、前項の規定による指定をするには、あらかじめ農林大臣の承認を受けなければならない。

3 都道府県知事は、第一項の規定による指定をしたときは、遅滞なくその旨を公示しなければならない。

4 第一項の規定による指定は、当該年度に限り、効力を有する。

 (対策調査)

第四条 前条第一項の規定による指定があつた地域(以下「耕土培養地域」という。)の全部又は一部をその区域内に含む市町村の長は、市町村農業委員会(市町村農業委員会が二以上あるときは、耕土培養地域の全部又は一部をその区域内に含む市町村農業委員会)の意見を聞いて、当該区域に属する耕土培養地域の部分内にある農地について対策調査を実施すべきことを都道府県に求めることができる。

2 耕土培養地域内にある農地につき所有権その他の権原に基き耕作の業務を営む者又は農業者の組織する団体(以下「農業団体」という。)でこれらの者のために耕土培養事業を行おうとするものから当該農地につき都道府県による対策調査を求めるべき旨を市町村長に対し請求した場合において、その請求に係る農地の総面積が省令で定める面積以上であるときは、当該市町村長は、その請求に係る農地について対策調査を実施すべきことを都道府県に求めなければならない。

3 前二項の対策調査は、省令で定めるところにより、農地について耕土培養の実施の要否及びその具体的な方法を明らかにするために行う土じようの化学的性質及びその不良の程度等に関する細密な調査とする。

4 都道府県は、第一項又は第二項の規定により対策調査の実施を求められたときは、正当な理由がなければ、これを拒んではならない。

5 第一項又は第二項の対策調査が終了したときは、都道府県知事は、当該市町村長に対し、遅滞なく、当該調査の結果に基き決定した当該農地についての耕土培養の実施の要否を指示するとともに、耕土培養の実施を必要とする旨の指示をする場合にあつては、耕土培養の実施に関し必要な事項を勧告しなければならない。

6 市町村長は、前項の規定による指示を受けたときは、遅滞なくその旨を公示しなければならない。

 (耕土培養事業計画)

第五条 市町村長は、前条第五項の規定により耕土培養の実施を必要とする旨の指示を受けたときは、その指示に係る農地(以下「耕土培養地」という。)につき、同項の勧告に基き当該市町村の耕土培養事業計画を定めて、都道府県知事の承認を受けなければならない。

2 前項の耕土培養事業計画には、左に掲げる事項を定めるものとする。

 一 耕土培養地

 二 耕土培養事業の施行者

 三 耕土培養事業の施行の方法

 四 その他省令で定める耕土培養事業に関し必要な事項

3 前項第二号の耕土培養事業の施行者は、市町村、耕土培養地につき所有権その他の権原に基き耕作の業務を営む者(以下「耕作者」という。)又は農業団体とする。

4 市町村長は、第一項の耕土培養事業計画を定めるには、あらかじめ、市町村農業委員会(市町村農業委員会が二以上あるときは、耕土培養地をその区域内に含む市町村農業委員会)の意見を聞き、且つ、耕作者が耕土培養事業を行う場合又は耕作者のために市町村が耕土培養事業を行う場合にあつてはその耕作者からそのことに関する同意を、農業団体が耕作者のために耕土培養事業を行う場合にあつてはその農業団体及び耕作者からそのことに関する同意を得なければならない。

5 都道府県知事は、第一項の承認の申請を受けたときは、その申請に係る耕土培養事業計画の内容がこの法律(これに基く命令を含む。)の規定に違反せず、且つ、省令で定める基準に適合すると認めるときは、その承認をしなければならない。

6 市町村長は、第一項の承認を受けたときは、遅滞なくその旨を公示し、且つ、第四項に規定する同意をした者に通知するとともに、その承認を受けた耕土培養事業計画を公表しなければならない。

7 第一項の承認を受けた耕土培養事業計画の変更については、前六項の規定を準用する。

8 耕土培養事業は、第一項(前項において準用する場合を含む。)の承認を受けた耕土培養事業計画に準拠して行わなければならない。

 (指導及び監督)

第六条 都道府県は、市町村、耕作者又は農業団体に対し、耕土培養事業の施行に関し必要な指導を行うものとする。

2 農林大臣又は都道府県知事は、それぞれ、都道府県知事又は市町村長若しくは耕土培養事業の施行者に対し、耕土培養に関し必要な報告を求めることができる。

 (立入調査等)

第七条 都道府県知事は、この法律施行のため必要があると認めるときは、その職員をして、あらかじめ当該農地の占有者に通知させた上で、農地に立ち入つて調査させ、又は調査のため必要な最少量に限り土じよう若しくは農作物を集取させることができる。

2 前項の場合には、当該職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係者の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。

 (補助)

第八条 国は、毎年度予算の範囲内において、都道府県に対し、左の各号に定めるところにより、補助する。

 一 第三条第一項に規定する調査、第四条第一項及び第二項の対策調査並びに第六条第一項の規定による指導に要する経費について、その一部

 二 耕土培養事業において施用する物の購入に要する経費につき都道府県が耕土培養事業の施行者に補助する経費について、その全部又は一部

2 前項の規定による補助に関し必要な事項は、政令で定める。

 (奨励措置)

第九条 国は、耕土培養事業の施行を円滑にするため、耕土培養事業の施行者及び耕土培養のために施用する物又は耕土培養の効果を確保するため施用を必要とする肥料の供給を行う者に対し、資金の融通又はあつ旋その他必要な奨励措置を講ずる。

 (開拓地についての特例)

第十条 農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)第六十一条各号の一に該当し、又はしていた土地であつて農地となつたもののうち同法第七十四条に規定する三年の期間を経過するまでのものについては、政令で、第三条から第七条までの規定の特例を定めることができる。

2 自作農創設特別措置法(昭和二十一年法律第四十三号)第四十一条第一項第一号、第三号又は第四号に該当する土地であつて農地となつたもののうち同条の規定、同条第四項で準用する同法第二十八条の規定又は農地法施行法(昭和二十七年法律第二百三十号)第三条の規定による売渡の時期から起算して八年を経過するまでのものについても、前項と同様とする。

 (特別地方公共団体に関する特例)

第十一条 この法律の規定中市町村又は市町村長に関する規定は、都の特別区の存する区域にあつては特別区又は特別区の長に、町村組合で町村の事務の全部又は役場事務を共同処理するものがある場合においては、当該町村組合又はその管理者に適用する。

   附 則

1 この法律の施行の期日は、公布の日から起算して六箇月をこえない期間内において、政令で定める。但し、第十条第一項の規定及び同条第二項中農地法施行法第三条に係る部分の規定は、本文の規定による施行期日又は農地法施行の日のいずれか遅い日から施行する。

2 この法律施行前に都道府県が行つた第三条第一項に規定する調査に相当する調査であつて農林大臣が指定するものは、同項の規定の適用については、同項に規定する調査とみなす。

3 農林漁業資金融通法(昭和二十六年法律第百五号)の一部を次のように改正する。

  第二条第一号及び第三条第一項の表の貸付金の種類の欄の第一号中「農地又は牧野の改良、造成又は復旧」を「農地若しくは牧野の改良、造成若しくは復旧又は農地についての耕土培養」に改める。

  第三条第一項の表の貸付金の種類の欄の第一号イ中「公共事業費による補助事業に係るもの」の下に「及び耕土培養法(昭和二十七年法律第二百三十五号)による耕土培養事業に係るもの」を、同条第二項中「公共事業費による補助事業に係るもの」の下に「、耕土培養法による耕土培養事業に係るもの」を加える。

4 地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)の一部を次のように改正する。

  第十条中第十三号の次に次の一号を加える。

  十三の二 耕土培養に要する経費

(農林・内閣総理大臣署名) 

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