納税貯蓄組合法
法律第百四十五号(昭二六・四・一〇)
(目的)
第一条 この法律は、納税資金の貯蓄を目的として組織される組合について必要な規制を設けるとともに助成の措置を講ずることにより、その健全な発達を図り、もつて租税の容易且つ確実な納付に資せしめることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「納税貯蓄組合」とは、個人又は法人が一定の地域又は勤務先を単位として任意に組織した組合で、組合員の納税資金の貯蓄のあつ旋その他当該貯蓄に関する事務を行うことを目的とし、且つ、政令で定める手続によりその規約を税務署長及び地方公共団体の長に届け出たものをいう。
2 この法律において「納税貯蓄組合預金」とは、納税貯蓄組合の組合員が納税資金の貯蓄のため組合を通じてする預金又は貯金で、銀行(日本銀行を除く。)、無尽会社、信用協同組合、農業協同組合、漁業協同組合又は水産加工業協同組合(以下「指定金融機関」という。)に対して預入したものをいう。
3 この法律において「租税」とは、国税及び地方税(地方税にあわせ又は加算して納付し、又は徴収される地方公共団体の徴収金を含む。)をいう。
(組合の加入脱退の自由及び監督の排除)
第三条 納税貯蓄組合は、組合への加入及び組合からの脱退を制限し、若しくは強制し、又は組合員に対してその事業活動その他の事項に関する報告の提出を強要し、その他これらの事項について監督を加えてはならない。
(納税資金の貯蓄方法)
第四条 納税貯蓄組合は、組合員が納税資金の貯蓄のため組合を通じて預金又は貯金をする場合には、組合員別の口座により、納税貯蓄組合預金又は郵便貯金をもつてしなければならない。
(納税貯蓄組合預金の受入)
第五条 指定金融機関は、他の法令又は定款の規定にかかわらず、納税貯蓄組合預金を受け入れることができる。
(租税納付の委託)
第六条 納税貯蓄組合の組合員は、納税貯蓄組合預金をもつて租税の納付に充てようとするときは、納付書、納税告知書その他租税の納付に必要な書類を当該預金の預入先の指定金融機関に提出し、その納付を委託することができる。
2 指定金融機関は、前項の規定による納付の委託を受けた場合においては、正当な事由がある場合を除く外、その委託を拒んではならない。
(課税関与の禁止)
第七条 納税貯蓄組合又はその組合員は、その地位を利用して、その組合員又は自己以外の組合員がなすべき課税標準の申告又は当該組合員に対してなされるべき租税の賦課に関与してはならない。
(所得税の非課税)
第八条 納税貯蓄組合預金の利子については、所得税を課さない。但し、第六条第一項の規定により指定金融機関に委託して租税の納付に充てる場合以外の場合において引き出された部分の金額に対する利子については、この限りでない。
2 納税貯蓄組合預金の利子のうち前項但書の規定により所得税を課する部分の金額の計算の方法については、政令で定める。
(印紙税の非課税)
第九条 納税貯蓄組合の業務及び納税貯蓄組合預金に関する書類については、印紙税を課さない。
(補助金の交付)
第十条 国又は地方公共団体は、納税貯蓄組合に対し、組合の事務に必要な使用人の給料、帳簿書類の購入費、事務所の使用料その他欠くことができない事務費を補うため、予算の範囲内において、補助金を交付することができる。但し、国及び地方公共団体が交付する補助金の合計額は、組合が使用した当該費用の金額をこえてはならない。
2 国又は地方公共団体は、納税貯蓄組合に対し、組合の役員又は組合員の報酬の支払に充てるため、補助金を交付してはならない。
3 第一項の規定による補助金の交付の手続については、政令で定める。
(質問検査)
第十一条 納税貯蓄組合の規約の届出を受けた税務署長及び地方公共団体の長は、この法律の適正な実施を確保するため必要があるときは、当該組合又はその組合員に対して、質問し、若しくは前条第一項の規定による補助金の交付に関して当該組合の帳簿書類を検査し、又は所属の職員をしてこれらの質問又は検査をさせることができる。
2 当該職員は、前項の規定により質問又は検査をするときは、その身分を示す証票を携帯し、利害関係人の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。
3 第一項の規定による質問又は検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(名称使用の制限)
第十二条 納税貯蓄組合でない者は、納税貯蓄組合又はこれに類似する名称を用いてはならない。
2 前項の規定は、納税貯蓄組合でない者が他の法律の規定により認められた名称を用いることを妨げるものと解してはならない。
(解散の届出)
第十三条 納税貯蓄組合が解散したときは、組合の代表者であつた者その他これに準ずる者は、遅滞なく、規約の届出をした税務署長及び地方公共団体の長にその旨を届け出なければならない。
(過料)
第十四条 左の各号の一に該当する者は、五万円以下の過料に処する。
一 第三条、第四条、第七条又は第十二条第一項の規定に違反した者
二 不正の方法により第十条第一項の規定による補助金の交付を受け、又は受けようとした者
三 第十一条第一項の規定による質問に答弁せず、若しくは虚偽の答弁をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 この法律施行の際納税貯蓄組合又はこれに類似する名称を用いている組合は、この法律施行後一月間に限り、第十二条第一項の規定にかかわらず、第二条第一項に規定する届出をしないで、納税貯蓄組合又はこれに類似する名称を用いることができる。
(内閣総理・大蔵大臣署名)