農産物検査法
法律第百四十四号(昭二六・四・一〇)
(この法律の目的)
第一条 この法律は、農産物について国が検査を行うことによつて、農産物の公正且つ円滑な取引とその品質の改善とを助長し、あわせて農家経済の発展と農産物消費の合理化とに寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「農産物」とは、もみ、玄米、精米、大麦、はだか麦、小麦、精大麦、精はだか麦、精小麦、小麦粉、大豆、小豆、えんどう、いんげん、緑豆、とうもろこし、なたね、甘しよ、馬鈴しよ及び甘しよ生切干をいう。
(検査)
第三条 もみ、玄米、大麦、はだか麦又は小麦(以下「米麦」という。)の生産者は、その生産した米麦又は精米を売り渡す場合には、その売渡前に国の検査を受けなければならない。
2 米麦(輸入に係るものを除く。)の所有者は、その所有する米麦(みずから生産したものを除く。)であつて検査を受けていないものを売り渡す場合には、その売渡前に国の検査を受けなければならない。
3 左に掲げる場合には、前二項の規定は、適用しない。
一 第八条の規定により定められた量目に満たないものを売り渡す場合
二 災害の場合において、食糧事務所長が指定した区域内にあるものをその指定した期間内に売り渡す場合
三 学術研究の用に供するものとして、省令の定めるところにより食糧事務所長の承認を受けて売り渡す場合
四 都道府県が経営し、又は経営を委託しているほ場であつて食糧事務所長が指定したものにおいて生産された米麦で、省令で定めるものを売り渡す場合
第四条 輸入される米麦の所有者(政府を除く。)は、その米麦を輸入後において売り渡す場合には、その売渡前に国の検査を受けなければならない。但し、その輸入量が十トンに満たない場合は、この限りでない。
第五条 農産物の所有者又は占有者は、その所有し、又は占有する農産物について国の検査を受けることができる。
(検査規格)
第六条 農林大臣は、農産物の種類及び銘柄ごとに、その量目、包装及び品位についての規格を定める。
2 農林大臣は、前項の規格を設定し、変更し、又は廃止しようとするときは、その施行期日を定め、その期日の三十日前までにこれを公示しなければならない。
(検査方法)
第七条 第三条第一項若しくは第二項、第四条又は第五条の規定による検査(以下単に「検査」という。)は、省令の定めるところにより、農産物の種類、銘柄、量目、包装及び品位につき、前条第一項の規格に基いて、各個に、又は抽出して、行う。
(検査受付の条件)
第八条 検査は、輸入に係る農産物にあつては十トンに満たないもの、その他の農産物にあつてはその種類ごとに省令で定める包装及び量目の条件を欠くものについては行わない。但し、政府に売り渡し、又は引き渡すため検査を受ける場合は、この限りでない。
(検査を実施する者)
第九条 検査は、農産物検査官が行う。
2 農産物検査官は、食糧事務所の職員の中から食糧事務所長が任命する。
3 農産物検査官は、自己に利害関係がある農産物については、検査を行つてはならない。但し、食糧事務所長がやむをえないと認めて承認した場合は、この限りでない。
4 農産物検査官は、この法律の規定により権限を行う場合には、その身分を示す証票を携帯し、関係者の要求があつたときは、これを呈示しなければならない。
(検査の請求)
第十条 検査は、検査を受けようとする者の請求により行う。
2 前項の請求は、省令で定める手続に従い、食糧事務所長に検査請求書を提出してするものとする。
(検査手数料)
第十一条 前条第一項の者は、輸入に係る農産物にあつては一トンにつき三百円を、その他の農産物にあつては一包装につき二十円を、こえない範囲内において政令で定める額の手数料を納付しなければならない。但し、政府に売り渡し、又は引き渡すため検査を受ける場合は、この限りでない。
(受検のための準備)
第十二条 検査を受けようとする農産物(輸入に係るものを除く。)には、省令の定めるところにより、あらかじめ、票せん、標識その他の表示を附さなければならない。
(検査の期日)
第十三条 検査は、検査請求書の提出があつた日から十日以内において食糧事務所長が指定する日に実施する。
2 災害その他やむをえない事由により前項の期日に検査を行うことができないときは、食糧事務所長は、その事由の消滅した日から十日以内において更に検査の期日を指定する。
(検査の実施)
第十四条 検査は、あらかじめ食糧事務所長が定めて公示した場所のうち、その指定する場所において行う。
2 第十条第一項の請求をした者(以下「受検者」という。)は、みずから検査の実施に立ち会い、又はその代理人をしてこれに立ち会わせなければならない。
(検査の中止)
第十五条 正当な事由がないのに、受検者又はその代理人が検査の実施に立ち会わないときは、農産物検査官は、その検査を中止することができる。
2 前項の規定により検査が中止されたときは、その検査の請求は、効力を失う。
3 第十一条の規定により納付した手数料は、第一項の規定により検査が中止された場合においても、返還しない。
(検査証明)
第十六条 農産物検査官は、品位の格付を行つたときは、省令の定めるところにより、その農産物の包装若しくは票せんに検査年月日、検査の結果その他必要な事項を表示し、又は受検者に検査証明書を交付しなければならない。
2 何人も、農産物の包装又は票せんに、前項の表示にまぎらわしい表示を附してはならない。
3 第一項の規定による表示の附してある包装は、その表示を消した後でなければ、再び農産物の包装として使用してはならない。
(検査の失効)
第十七条 検査を受けた米麦は、左の各号の一に該当する場合には、その該当するに至つた時以後、検査を受けていないものとみなす。但し、第十九条第三項の規定による訂正のため第二号又は第三号に該当する場合は、この限りでない。
一 前条第一項の規定により表示された検査年月日後、米麦の種類及び検査の時期ごとに省令で定める一定期間を経過した場合
二 前条第一項の規定による表示が失われ、消され、除かれ、改められ、又は不明となつた場合
三 前条第一項の規定により交付された検査証明書が失われ、又はその記載が改められ、若しくは不明となつた場合
(不正受検に対する処置)
第十八条 食糧事務所長は、不正な手段により検査を受けた事実が明らかとなつたときは、農産物検査官に、その農産物につき、第十六条第一項の規定による表示を消させ、若しくは除かせ、又は検査証明書の返還を求めさせることができる。
(異議の申立)
第十九条 検査の結果に異議のある者は、その検査の完了の日から十日以内に、省令で定める手続に従い、食糧事務所長に文書をもつて異議の申立をすることができる。但し、その検査につき直接の利害関係のない者は、この限りでない。
2 食糧事務所長は、前項の申立を受けた日から十日以内に、その決定をしなければならない。
3 前項の決定の結果、その農産物についての第十六条第一項の規定による表示又は検査証明書の記載を変更すべき場合には、農産物検査官は、その決定に従い、その表示又は記載を訂正しなければならない。
(費用の負担)
第二十条 検査を行うために必要な農産物の積替、運搬、開装又は改装に要する費用は、受検者の負担とする。
(条例による受検命令)
第二十一条 都道府県は、条例で、米麦以外の農産物であつて当該都道府県で生産されたものについて、その所有者又は占有者に対し、第五条の規定により国の検査を受けるべきことを命ずることができる。
(罰則)
第二十二条 左の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。
一 第三条第一項若しくは第二項又は第四条の規定に違反した者
二 第十六条第二項又は第三項の規定に違反した者
三 不正な手段により検査を受け、又は検査を受けようとした者
四 第十八条の規定による処分を拒み、妨げ、又は忌避した者
第二十三条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても同条の罰金刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため、当該業務に対し相当の注意及び監督が尽されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。
附 則
1 この法律は、公布の日から起算して四十日を経過した日から施行する。但し、第六条の規定は、公布の日から施行する。
2 食糧管理法(昭和十七年法律第四十号)の一部を次のように改正する。
第八条を次のように改める。
第八条 削除
第三十五条を次のように改める。
第三十五条 削除
第三十七条中「、第三十四条ノ二又ハ第三十五条」を「又ハ第三十四条ノ二」に改める。
3 改正前の食糧管理法第八条又はこれに基く命令の規定によつてした検査の請求及び検査並びにその結果附された表示又は交付された証明書は、この法律又はこれに基く命令中の相当規定によつてしたものとみなす。
4 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお、従前の例による。
(農林・内閣総理大臣署名)