農漁業協同組合再建整備法

法律第百四十号(昭二六・四・七)

 (この法律の目的)

第一条 この法律は、農業及び漁業を振興して自立経済の基盤の確立に資するため、農漁業協同組合の再建整備を図ることを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「農漁業協同組合」とは、農業協同組合、農業協同組合連合会、漁業協同組合及び漁業協同組合連合会をいう。

2 この法律において「自己資本」とは、払込済出資金(農漁業協同組合の受け入れた貯金で将来当該農漁業協同組合への出資に充てるべき旨の契約のあるものを含む。以下同じ。)及び準備金(準備金、積立金その他名称のいかんを問わず、剰余金のうちから積み立てられたものであつて資本勘定に属するものをいう。)の合計額をいう。

3 この法律において「欠損金」とは、貸借対照表に計上された欠損金及び繰越欠損金の合計額をいう。

 (再建整備計画の樹立)

第三条 事業の継続に著しい支障をきたすことなしにはその債務を弁済することができない農漁業協同組合でこの法律によつて再建整備を行おうとするものは、農林大臣の指定する日(以下「指定日」という。)現在により貸借対照表を作製し、これに基いて再建整備計画をたてなければならない。

2 農漁業協同組合は、前項の規定により貸借対照表を作製するに当つては、その債権及び在庫品につき命令の定めるところにより適正な評価を行い、その評価によつて損失を生ずる場合には、その損失金額を欠損金に算入しなければならない。

3 第一項の規定により再建整備計画をたてる場合には、その組合員又は会員(准組合員又は准会員を除く。)の半数以上が出席する総会において、その議決権の三分の二以上の多数による議決を経なければならない。これを変更する場合もまた同様とする。

 (再建整備の目標)

第四条 前条第一項の農漁業協同組合は、指定日以後に開始する事業年度の開始の日から五年以内に左に掲げる条件を満すように再建整備を行わなければならない。

 一 第十条第二項の固定化債権又は固定化在庫品を資金化すること。

 二 自己資本から欠損金を控除した金額を固定資産の価額以上にすることその他財務の状況を政令で定める基準に適合させること。

 (再建整備計画の内容)

第五条 再建整備計画においては、左の各号に掲げる事項を定めるものとする。

 一 再建整備計画の方針

 二 組合員又は会員の協力の強化及び役職員の事業執行の改善に関する措置

 三 事業、収支及び資金に関する計画

 四 第十条第二項の固定化債権及び固定化在庫品の資金化並びに不要固定資産の処分

 五 欠損金の補てん

 六 出資金の増加

 七 債務の更改及び弁済

 (行政庁の援助)

第六条 農漁業協同組合は、行政庁に対し再建整備計画に関する助言を求めることができる。

第七条 行政庁は、農漁業協同組合が再建整備のため債権者と債務の要素を変更する契約をする必要がある場合には、当該農漁業協同組合の申出により、そのあつ旋をすることができる。

第八条 行政庁は、農漁業協同組合の請求に応じ、特別指導員を派遣してその再建整備につき指導することができる。

 (奨励金の交付)

第九条 政府から奨励金の交付を受けなければ第四条の期間内に同条に規定する再建整備の目標を達成することができない農漁業協同組合は、命令で定める手続に従い、再建整備計画書を添えて、農林大臣に奨励金の交付を申請することができる。

2 農林大臣は、前項の申請をした農漁業協同組合であつて左に掲げる条件に適合しているものに対し、命令の定めるところにより、毎年、予算の範囲内において奨励金を交付することができる。

 一 奨励金の交付を受けることにより第四条の期間内に同条に規定する再建整備の目標を達成することができると認められること。

 二 指定日から昭和二十七年三月三十一日までの間に指定日における固定資産と欠損金との合計額から自己資本を控除した額の三分の一(農業協同組合連合会及び漁業協同組合連合会(以下「連合会」という。)にあつては五分の一)以上に相当する額の自己資本を増加することが確実であると認められること。

 三 第三条第二項の規定による債権及び在庫品の評価が適正に行われていると認められること。

 四 故意又は重大な過失によつてその農漁業協同組合に損失を与えた役職員がある場合には、その者に対し、損失補てんのために必要な措置をとつていること。

3 都道府県の区域をこえない区域を地区とする農漁業協同組合が第一項の申請をしようとするときは、都道府県知事を経由しなければならない。

第十条 前条第二項の規定により交付する奨励金は、増資奨励金及び固定化資金利子補給金とする。

2 増資奨励金は、農漁業協同組合の指定日以後の払込済出資金の増加額(他の農漁業協同組合を合併した場合に、その合併により直接生じた払込済出資金の増加額を除く。)に対し交付するものとし、固定化資金利子補給金は、農漁業協同組合の第三条第二項の規定による適正な評価を経た債権のうち弁済期到来後一年以上を経過したもの(当初の契約で定められた弁済期がその後延長された債権その他の債権であつて命令で定めるものを含む。以下「固定化債権」という。)の金額及び同項の規定による適正な評価を経た在庫品のうち仕入後一年以上を経過したもの(以下「固定化在庫品」という。)の評価額の合計額を基準として交付するものとする。

第十一条 政府が第九条第二項の規定により奨励金を交付することができる期間は、昭和三十会計年度までとし、毎年交付する奨励金の額は、農漁業協同組合ごとに左表により奨励金算出基礎額に補給率を乗じた額とする。

奨励金の種類

会計年度

奨励金算出基礎額

補給率

増資奨励金

昭和二十六会計年度

指定日から昭和二十七年三月三十一日までの政令で定める方法により算出した払込済出資金の増加の実績(以下「払込済出資金増加額」という。)

百分の八(連合会にあつては百分の十二)

昭和二十七会計年度

指定日から昭和二十八年三月三十一日までの払込済出資金増加額

百分の六(連合会にあつては百分の十)

昭和二十八会計年度

指定日から昭和二十九年三月三十一日までの払込済出資金増加額

百分の三(連合会にあつては百分の六)

昭和二十九会計年度

指定日から昭和三十年三月三十一日までの払込済出資金増加額

百分の二(連合会にあつては百分の四)

昭和三十会計年度

指定日から昭和三十一年三月三十一日までの払込済出資金増加額

百分の一(連合会にあつては百分の二)

固定化資金利子補給金

昭和二十六会計年度

指定日における固定化債権の金額の六分の五と固定化在庫品の評価額の四分の三との合計額

百分の四(連合会にあつては百分の六)

昭和二十七会計年度

指定日における固定化債権の金額の六分の三と固定化在庫品の評価額の四分の一との合計額

百分の四(連合会にあつては百分の六)

昭和二十八会計年度

指定日における固定化債権の金額の六分の一

百分の四(連合会にあつては百分の六)

 (奨励金の打切及び還付)

第十二条 農林大臣は、奨励金の交付を受ける農漁業協同組合が左の各号の一に該当する場合には、当該農漁業協同組合に対する奨励金の交付を打ち切ることができる。

 一 第四条に規定する再建整備の目標を達成したと認められる場合

 二 第三条に規定する再建整備計画を誠実に実行せず、又は第四条の期間内に同条に規定する再建整備の目標を達成することができないと認められる場合

 三 第九条第一項の規定により農林大臣に提出した再建整備計画書に虚偽の記載があつた場合

 四 第十六条の規定による報告を怠り、又は虚偽の報告をした場合

第十三条 農林大臣は、奨励金の交付を受けた農漁業協同組合が左の各号の一に該当する場合には、当該農漁業協同組合に対し、交付した奨励金の還付を命ずることができる。

 一 前条第二号から第四号までの事由により奨励金の交付を打ち切られた場合

 二 第四条の期間が満了しても同条に規定する再建整備の目標を達成することができなかつた場合

 (奨励金の償還)

第十四条 奨励金の交付を受けた農漁業協同組合は、第四条各号に掲げる再建整備の条件を満すに至つてから一年を経過した後、政令の定めるところにより、交付された奨励金に相当する金額に利子に相当する金額を加算した金額を政府に納付しなければならない。

 (再建整備計画の変更)

第十五条 奨励金の交付を受ける農漁業協同組合がその再建整備計画を変更しようとするときは、農林大臣の承認を受けなければならない。

2 前項の場合には、第九条第三項の規定を準用する。

 (報告)

第十六条 奨励金の交付を受けた農漁業協同組合は、命令の定めるところにより、毎事業年度末現在により再建整備の実績及び翌事業年度の再建整備の実施計画を行政庁に報告しなければならない。

 (検査)

第十七条 行政庁は、奨励金の交付を受ける農漁業協同組合の業務及び会計の状況につき毎年一回以上検査しなければならない。

 (農漁業協同組合の合併の場合の特例)

第十八条 奨励金の交付を受ける農漁業協同組合が合併によつて解散した場合において、合併によつて成立した農漁業協同組合又は合併後存続する農漁業協同組合が引き続き政府から奨励金の交付を受けなければ指定日から五年を経過した日の属する事業年度の終了の日までに第四条に規定する目標を達成することができないときは、当該農漁業協同組合は、命令で定める手続に従い、再建整備計画書を添えて、農林大臣に奨励金の交付を申請することができる。

2 前項の場合には、第九条第二項及び第三項、第十条並びに第十一条の規定を準用する。この場合において、第十条第二項中「農漁業協同組合の指定日以後の払込済出資金の増加額」とあるのは「合併によつて解散した農漁業協同組合の指定日以後の払込済出資金の増加額と合併によつて成立した農漁業協同組合の払込済出資金の増加額又は合併後存続する農漁業協同組合の合併後の払込済出資金の増加額(当該農漁業協同組合が合併前に奨励金の交付を受けるものであつた場合には、指定日以後の時までの払込済出資金の増加額を含む。)との合計額」と、「固定化資金利子補給金は、農漁業協同組合の」とあるのは「固定化資金利子補給金は、奨励金の交付を受ける合併前の農漁業協同組合の」と読み替えるものとする。

第十九条 奨励金の交付を受けた農漁業協同組合が合併によつて解散した場合には、合併によつて成立した農漁業協同組合又は合併後存続する農漁業協同組合を合併によつて解散した組合とみなして第十三条、第十四条及び第十六条の規定を適用する。

 (所管行政庁)

第二十条 この法律中「行政庁」とあるのは、都道府県の区域又はその区域をこえる区域を地区とする農漁業協同組合については農林大臣、その他の農漁業協同組合については都道府県知事とする。

 (農林大臣と大蔵大臣との協議)

第二十一条 農林大臣は、第三条第一項の指定、第九条の奨励金の交付、第十二条の打切、第十三条の還付の命令又は第十五条の承認をしようとするときは、大蔵大臣と協議しなければならない。

   附 則

1 この法律は、公布の日から施行する。

2 この法律の施行に関し昭和二十六会計年度において必要な経費は、六億五千万円以内において昭和二十六会計年度一般会計予備費のうちからこれを支出するものとする。

(内閣総理・大蔵・農林大臣署名) 

法令一覧(年度別)に戻る