外国為替管理委員会設置法
法律第二百二十九号(昭二四・一二・一)
(この法律の目的)
第一条 この法律は、外国為替管理委員会の事務の範囲及び権限を明確に定めるとともに、その所掌する行政事務を能率的に遂行するに足る組織を定めることを目的とする。
(設置)
第二条 国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項の規定に基いて、総理府の外局として、外国為替管理委員会(以下委員会という。)を設置する。
(所掌事務)
第三条 委員会は、国民経済の進歩とその健全な発展を助長するために、本邦の外国為替資金の適切且つ正当な使用を確保することを目的として、左に掲げる事務をつかさどる。
一 外国為替特別会計を運営すること。
二 外国為替予算について、その定められた限度及び条件が守られるようにすること。
三 関係行政機関の用に供するため、外国為替及び外国貿易に関する取引について完全な記録を保持すること。
四 外国為替取引の数量及び内容並びに国民経済の復興に及ぼす効果に関する報告を、定期的(少くとも毎四半期)に、内閣総理大臣に提出すること。
五 外国為替に関する政策について、内閣総理大臣及び関係行政機関に勧告すること。
(権限)
第四条 委員会は、この法律に規定する所掌事務を遂行するため、左に掲げる権限を有する。但し、その権限の行使は、法律(これに基く命令を含む。)に従つてなされなければならない。
一 予算の範囲内で所掌事務の遂行に必要な支出負担行為をすること。
二 収入金を徴収し、所掌事務の遂行に必要な支払をすること。
三 職員の任免及び賞罰を行い、その他職員の人事を管理すること。
四 所掌事務に関する統計及び調査資料を頒布し、又は刊行すること。
五 所掌事務の周知宣伝を行うこと。
六 委員会の公印を制定すること。
七 所掌事務に関し、報告を徴すること。
八 外国為替取引の手続を定め、及びその所掌に属する事項について外国貿易取引の手続に関し同意を与えること。
九 外貨資金の外国為替特別会計への集中制度に関する手続を定め、当該制度を運営し、及び外国為替特別会計の資金を運用すること。
十 外国為替予算に定められた制限及び条件の範囲内で、外貨資金の取得及び使用に関して、外国為替銀行を監督すること。
十一 対外取引の決裁条件を定めること。
十二 前各号に掲げるものの外、法律(これに基く命令を含む。)に基き委員会に属させられた権限。
(組織並びに委員長及委員の任命)
第五条 委員会は、委員長及び委員四人をもつて組織する。
2 委員長及び委員は、外国為替及び外国貿易に関し優れた経験と識見を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が命ずる。
3 委員長又は委員の任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、前項の規定にかかわらず、外国為替及び外国貿易に関し優れた経験と識見を有する者のうちから、委員長又は委員を任命することができる。
4 前項の場合においては、任命後最初の国会で両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認を得られないときは、内閣総理大臣は、その委員長又は委員を罷免しなければならない。
(委員長及び委員の任期)
第六条 委員長及び委員の任期は、三年とする。但し、補欠の委員長又は委員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 委員長及び委員は、再任されることができる。
(委員長及び委員の身分保障)
第七条 委員長及び委員は、左の各号の一に該当する場合を除いては、在任中、その意に反して罷免されることがない。
一 禁治産、準禁治産又は破産の宣告を受けたとき。
二 この法律の規定に違反して刑に処せられたとき。
三 禁こ以上の刑に処せられたとき。
四 心身の故障のため職務の遂行に堪えないと内閣総理大臣が認めたとき。
五 職務上の義務に違反し、その他委員長又は委員に適しない非行があると内閣総理大臣が認めたとき。
2 前項各号の一に該当する場合には、内閣総理大臣は、その委員長又は委員を罷免しなければならない。
(委員長)
第八条 委員長は、委員会の会務を総理し、委員会を代表する。
2 委員会は、あらかじめ委員のうちから、委員長が故障のある場合に委員長を代理する者を定めておかなければならない。
(議事)
第九条 委員会の議事は、出席者の過半数をもつて決する。可否同数のときは、委員長の決するところによる。
(委員長及び委員の給与)
第十条 委員長及び委員の給与は、別に法律で定める。
(委員長及び委員の特定行為の禁止)
第十一条 委員長及び委員は、在任中、左の各号の一に該当する行為をしてはならない。
一 国会若しくは地方公共団体の議員その他公選による公職の候補者となり、又は積極的に政治活動をすること。
二 内閣総理大臣の許可のある場合を除く外、報酬のある他の職務に従事すること。
三 商業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行うこと。
(規則の制定)
第十二条 委員会は、その所掌に属する事務について、法律若しくは政令を実施するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基いて、外国為替管理委員会規則を制定することができる。
(事務局)
第十三条 委員会の事務局は、委員会の事務を処理する。
(管理部)
第十四条 事務局に管理部を置く。
2 管理部においては、事務局の所掌事務のうち、外国為替特別会計の運営に関する事務をつかさどる。
(関西事務所)
第十五条 事務局に関西事務所を置く。
2 関西事務所は、大阪市に置く。
3 関西事務所は、事務局の所掌事務について、関西地方における所要の連絡事務をつかさどる。
4 関西事務所の内部組織は、外国為替管理委員会規則で定める。
(法律顧問)
第十六条 委員会に法律顧問を置く。
2 法律顧問は、委員会の所掌に属する事項に関する法律問題を処理する。
3 法律顧問は、非常勤とし、その給与その他必要な事項は、政令で定める。
(事務所の位置)
第十七条 委員会は、その事務所を日本銀行の本店又は支店に置く。
(日本銀行による事務の取扱)
第十八条 委員会は、日本銀行をして、委員会の指示するところに従い、その事務の一部を取り扱わせることができる。
2 前項の場合において、当該事務の取扱に要する経費は、日本銀行の負担とすることができる。
(秘密を守る義務)
第十九条 委員長、委員、前条第一項の規定により事務を取り扱う日本銀行の職員及びこれらの職にあつた者は、その職務の執行に関し知り得た秘密を他に漏らし、又は窃用してはならない。
(事務局の職員)
第二十条 事務局に置かれる職員の任免、昇任、懲戒その他人事管理に関する事項については、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)の定めるところによる。
2 事務局に置かれる職員のうち会計及び統計に関する専門家は、事務局局員として、非常勤の職員とすることができる。
(定員)
第二十一条 事務局に置かれる職員の定員は、別に法律で定める。
(罰則)
第二十二条 第十九条の規定に違反して秘密を漏らし、又は窃用した者は、一年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 外国為替管理委員会令(昭和二十四年政令第五十三号)及び外国為替管理委員会の委員の任期満了等の場合の措置に関する政令(昭和二十四年政令第三百三十三号)は、廃止する。
3 この法律施行前にした行為に対する罰則の適用については、旧外国為替管理委員会令は、なおその効力を有する。
4 旧外国為替管理委員会令に基く機関及び職員は、第二項の規定にかかわらず、この法律に基く相当の機関及び職員となり、同一性をもつて存続する。この場合において、この法律施行の際現に委員長又は委員である者の任期は、第六条第一項の規定にかかわらず、旧外国為替管理委員会令の規定により残存する任期とする。
5 総理府設置法(昭和二十四年法律第百二十七号)の一部を次のように改正する。
第十八条の外国為替管理委員会の項中「外国為替管理委員会令(昭和二十四年政令第五十三号)」を「外国為替管理委員会設置法(昭和二十四年法律第二百二十九号)」に改める。
(内閣総理大臣署名)