外国為替及び外国貿易管理法

法律第二百二十八号(昭二四・一二・一)

目次

 第一章 総則(第一条−第九条)

 第二章 外国為替銀行及び両替商(第十条−第十五条)

 第三章 外国為替予算(第十六条−第二十条)

 第四章 外国為替の集中(第二十一条−第二十六条)

 第五章 制限及び禁止

  第一節 支払(第二十七条−第二十九条)

  第二節 債権(第三十条)

  第三節 証券(第三十一条−第三十五条)

  第四節 不動産(第三十六条−第四十一条)

  第五節 その他(第四十二条−第四十六条)

 第六章 外国貿易(第四十七条−第五十五条)

 第七章 不服の申立及び訴訟(第五十六条−第六十四条)

 第八章 雑則(第六十五条−第六十九条)

 第九章 罰則(第七十条−第七十三条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、外国貿易の正常な発展を図り、国際収支の均衡、通貨の安定及び外貨資金の最も有効な利用を確保するために必要な外国為替、外国貿易及びその他の対外取引の管理を行い、もつて国民経済の復興と発展とに寄与することを目的とする。

 (再検討)

第二条 この法律及びこの法律に基く命令の規定は、これらの規定による制限を、その必要の減少に伴い逐次緩和又は廃止する目的をもつて再検討するものとする。

 (閣僚審議会)

第三条 内閣に閣僚審議会を設置し、外国為替予算を作成する責任を負う機関とする。

2 閣僚審議会の組織及び運営は、政令で定める。

 (外国為替管理委員会)

第四条 別に法律で定めるところにより、外国為替管理委員会を設置する。

 (適用範囲)

第五条 この法律は、本邦内に主たる事務所を有する法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者が、外国においてその法人の財産又は業務についてした行為にも適用する。本邦内に住所を有する人又はその代理人、使用人その他の従業者が、外国においてその人の財産又は業務についてした行為についても、同様とする。

 (定義)

第六条 この法律又はこの法律に基く命令の適用を斎一にするため、左に掲げる用語は、左の定義に従うものとする。

 一 「本邦」とは、本州、北海道、四国、九州及び命令で定めるその附属の島をいう。

 二 「外国」とは、本邦以外の地域をいう。

 三 「本邦通貨」とは、日本円を単位とする通貨をいう。

 四 「外国通貨」とは、本邦通貨以外の通貨をいう。

 五 「居住者」とは、本邦内に住所又は居住を有する自然人及び本邦内に主たる事務所を有する法人をいう。非居住者の本邦内の支店、出張所その他の事務所は、法律上代理権があると否とにかかわらず、その主たる事務所が外国にある場合においても居住者とみなす。

 六 「非居住者」とは、居住者以外の自然人及び法人をいう。

 七 「支払手段」とは、銀行券、政府紙幣、小額紙幣、硬貨、小切手、為替手形、郵便為替、信用状その他の支払指図をいう。

 八 「対外支払手段」とは、外国通貨その他通貨の単位のいかんにかかわらず、外国通貨をもつて表示され、又は外国において支払手段として使用することのできる支払手段をいう。

 九 「内国支払手段」とは、対外支払手段以外の支払手段をいう。

 十 「貴金属」とは、金、銀、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及びイリドスミンの地金、これらのものの合金の地金並びに金貨及び銀貨(流通していないものに限る。)、取引の対象又は記念品たる硬貨、金メタルその他これらの金属を主たる材料とする物をいう。

 十一 「証券」とは、登録されていると否とを問わず、公債、社債、株式、出資の持分、公債又は株式に関する権利を与える証書、債券、国庫証券、抵当証券、利潤証券及び類似の証券、利札、配当金受領証並びに利札引換券をいう。

 十二 「外貨証券」とは、外国において支払を受けることができる証券又は外国通貨をもつて表示される証券をいう。

 十三 「債権」とは、定期預金、当座預金、特別当座預金、通知預金、保険証券及び当座勘定残高並びに貸借、入札その他に因り生ずる金銭債権で前各号に掲げられていないものをいう。

 十四 「外貨債権」とは、外国において又は外貨をもつて支払を受けることができる債権をいう。

 十五 「貨物」とは、貴金属、支払手段及び証券その他債権を化体する証書以外の動産をいう。

 十六 「財産」とは、第七号、第十号、第十一号、第十三号及び前号に規定するものを含む財産をいう。

2 居住者又は非居住者の区別が明白でない場合については、大蔵大臣の定めるところによる。

 (外国為替相場)

第七条 本邦通貨の基準外国為替相場は、すべての取引を通じ単一とし、内閣の承認を得て、大蔵大臣が定める。

2 大蔵大臣は、各外国通貨について正しい裁定外国為替相場を決定し、維持しなければならない。

3 外国為替管理委員会は、大蔵大臣の承認を得て、外国為替管理委員会が外国為替を売買する相場を定めなければならない。

4 外国為替管理委員会は、大蔵大臣の承認を得て、正当な外国為替取引における外国為替の売相場及び買相場並びに取扱手数料を定めることができる。

5 外国為替の直物(電信又は一覧払のものに限る。以下同じ。)取引における売相場及び買相場は、第一項の基準外国為替相場又は第二項の裁定外国為替相場から百分の一以上の開きがあつてはならない。

6 大蔵大臣又は外国為替管理委員会が第一項から第四項までの規定により基準外国為替相場、裁定外国為替相場並びに外国為替の売相場、買相場及び取扱手数料を定めたときは、何人も、これによらないで取引してはならない。

 (通貨の指定)

第八条 この法律により認められる取引は、大蔵大臣の指定する通貨により行わなければならない。

 (取引の非常停止)

第九条 主務大臣は、国際経済の事情に急激な変化があつた場合において、緊急の必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、政令で定める期間内において、この法律の適用を受ける取引を停止することができる。

2 前項の規定による停止は、その停止の時までにこの法律により認められている支払を不可能とするものではなく、その停止に因る支払の遅延は、政令で定める期間内に限られるものとする。

   第二章 外国為替銀行及び両替商

 (外国為替銀行)

第十条 外国為替業務を営もうとする銀行は、その営もうとする営業所(本邦法人である銀行の外国にある営業所を含む。以下同じ。)並びに業務の内容を定めて、大蔵大臣の認可を受けなければならない。

2 大蔵大臣は、当該銀行が十分な国際的信用を得ることが困難であると認める場合又は外国為替取引を行うに足りる職員を有していないと認める場合には、前項の認可をしてはならない。

3 外国為替銀行(第一項の認可を受けた銀行をいう。以下同じ。)は、外国為替業務を営む営業所を新設し、外国為替業務を営む営業所の名称若しくは位置を変更し、又は外国為替業務の内容を変更しようとするときは、大蔵大臣の許可を受けなければならない。

4 外国為替銀行は、外国為替業務を営む営業所の全部又は一部における外国為替業務を廃止しようとするときは、あらかじめ大蔵大臣に届け出なければならない。

 (業務上の取極)

第十一条 外国為替銀行は、外国にある銀行その他の金融機関とこの法律の適用を受ける業務を行うための取極を結ぼうとするときは、外国為替管理委員会の承認を受けなければならない。

 (外国為替銀行の確認義務)

第十二条 外国為替銀行は、この法律の適用を受ける業務について顧客と取引をしようとするときは、当該取引について、その顧客がこの法律の規定により承認等を受けていること又は承認等を受けることを要しないことを確認した後でなければ、その取引をしてはならない。

 (制裁)

第十三条 大蔵大臣は、外国為替銀行が、この法律、この法律に基く命令若しくは処分に違反し、又は違反しようとしたときは、第十条第一項の認可を取り消し、又は一年以内の期間を限り、その違反に係る営業所におけるこの法律の適用を受ける業務を停止し、若しくは当該業務の内容を制限することができる。

 (両替商)

第十四条 両替業務を営もうとする者は、その営もうとする営業所及び業務の内容を定めて、大蔵大臣の認可を受けなければならない。

2 第十条第三項及び第四項、第十二条並びに前条の規定は、両替商(前項の認可を受けた者をいう。以下同じ。)に準用する。

 (報告義務)

第十五条 外国為替銀行又は両替商は、政令で定めるところにより、この法律の適用を受ける業務について、政府機関に報告しなければならない。

   第三章 外国為替予算

 (外国為替予算の作成)

第十六条 外国為替予算は、外国為替の使用可能量の慎重な予測に基いて、不足の発生に因り債務不履行又は予備費の望ましくない減少に陥ることのないように作成されなければならない。

第十七条 外国為替予算は、左の各号に掲げる事項を考慮して作成されなければならない。

 一 通貨の交換又は振替の可能性

 二 外国貿易その他の取引において通常生ずることのあるべき不特定の需要に即応し得るように十分な通常予備費を設けること。

第十八条 外国為替予算を作成する場合には、計算若しくは評価の過誤又は予測できない緊急な需要に基く不足を補充するため、通貨別に一定の外国為替使用可能量を非常予備費として設けなければならない。

 (外国為替予算の変更)

第十九条 外国為替予算の変更は、閣僚審議会により例外的な場合に限つて行われる。

 (外国為替予算の効力)

第二十条 閣僚審議会により外国為替予算に計上された資金の使用を認める権限を有する政府機関は、閣僚審議会の承認を得ないで、その権限内の外国為替予算の金額をこえてその使用を認めてはならない。

   第四章 外国為替等の集中

 (対外支払手段等の集中)

第二十一条 居住者たると非居住者たるとを問わず本邦にある者は、政令で定めるところにより、左に掲げる財産を、特定の場所に若しくは特定の方式により保管若しくは登録し、又は外国為替特別会計、日本銀行、外国為替銀行その他の者に公定価格(公定価格がないときは、時価)を参しやくして大蔵大臣が定める価格で本邦通貨を対価として売却する義務を課せられることがある。

 一 本邦内にある対外支払手段

 二 本邦内にある貴金属

第二十二条 居住者は、政令で定めるところにより、左に掲げる財産を、特定の場所に若しくは特定の方式により保管若しくは登録し、又は外国為替特別会計、日本銀行、外国為替銀行その他の者に公定価格(公定価格がないときは、時価)を参しやくして大蔵大臣が定める価格で本邦通貨を対価として売却する義務を課せられることがある。

 一 対外支払手段

 二 貴金属

 三 外貨債権

 四 外貨証券

第二十三条 非居住者は、政令で定めるところにより、左に掲げる財産を特定の場所に又は特定の方式により保管又は登録する義務を課せられることがある。

 一 内国支払手段

 二 本邦通貨をもつて表示される債権

 三 本邦通貨をもつて表示される証券

 (集中の特例)

第二十四条 前三条に基く政令においては、外国為替銀行、両替商等に対するこれらの規定の適用の方法及び程度を定めなければならない。

第二十五条 第二十二条の規定は、本邦人以外の居住者については、同条各号に掲げる財産のうちその者がこの法律又はこの法律に基く命令の規定の適用を受ける取引に因り取得したものに限り、適用があるものとする。

 (債権の回収義務)

第二十六条 政令で定める場合を除いては、非居住者に対する債権を取得した者は、当該債権の期限の到来又は条件の成就後遅滞なく、これを取り立てなければならない。

2 何人も、当該債権について、その全部若しくは一部を免除し、額面以下の弁済を受け、又は弁済の遅延を黙認することに因り、これを減損してはならない。

   第五章 制限及び禁止

    第一節 支払

 (支払の制限及び禁止)

第二十七条 この法律の他の規定又は政令で定める場合を除いては、何人も、本邦において左に掲げる行為をしてはならない。

 一 外国へ向けた支払

 二 非居住者に対する支払又は非居住者からの支払の受領

 三 非居住者のためにする居住者に対する支払又は当該支払の受領

 四 非居住者との勘定の貸記又は借記

2 前項第二号から第四号までの規定は、左に掲げる行為については適用しない。

 一 非居住者の本邦における滞在に伴う生活費又は通常の物品若しくは役務の購入費等の費用を支弁するための本邦通貨による支払

 二 非居住者の本邦において認められた内国事業を遂行するための本邦通貨による支払

第二十八条 この法律の他の規定又は政令で定める場合を除いては、何人も、外国にある者に対する支払若しくは利益の提供又は外国にある財産の取得の代償として又はこれらに関連して、本邦において、居住者に対して又は居住者のために支払をしてはならない。居住者が、外国においてこれらの行為をする場合も、同様とする。

第二十九条 この法律の他の規定又は政令で定める場合を除いては、何人も、外国にある財産の譲渡の代償として又はこれに関連して、本邦において、居住者から又は居住者のために支払を受けてはならない。居住者が、外国においてこれらの行為をする場合も、同様とする。

    第二節 債権

 (債権に関する制限及び禁止)

第三十条 政令で定める場合を除いては、何人も、左に掲げる債権の発生、変更、弁済、消滅、直接又は間接の移転その他の処分の当事者となつてはならない。

一 非居住者間の本邦通貨をもつて表示される債権

二 居住者間の外貨債権

三 居住者と非居住者間の債権

    第三節 証券

 (本邦内にある証券)

第三十一条 大蔵省令で定めるところにより認められ、又は許可を受けた場合を除いては、何人も、本邦内にある証券について売買、贈与、交換、貸借、寄託、質入若しくは移転をし、又は当該証券に係る権利を移転してはならない。

2 前項の規定は、本邦証券の居住者間の取引については適用しない。

 (外国にある証券)

第三十二条 大蔵省令で定めるところにより認められ、又は許可を受けた場合を除いては、居住者は、外国にある証券について売買、贈与、交換、貸借、寄託、質入若しくは移転をし、又は当該証券に係る権利を移転してはならない。

2 前項の規定は、本邦人以外の居住者については、その者がこの法律又はこの法律に基く命令の規定の適用を受ける取引に因り取得した証券に限り、適用があるものとする。

 (証券の保管)

第三十三条 居住者のために本邦において本邦証券を保管する場合又は非居住者間の取極により非居住者のために外国において外貨証券を保管する場合を除いては、何人も、証券の保管に関する取極の当事者となつてはならない。但し、大蔵省令で定めるところにより許可を受けた場合は、この限りでない。

 (証券の発行又は募集)

第三十四条 大蔵省令で定めるところにより認められ、又は許可を受けた場合を除いては、左に掲げる行為をしてはならない。

 一 居住者たると非居住者たるとを問わず、本邦通貨で支払われる証券を外国で発行又は募集すること。

 二 居住者が外国で証券を発行又は募集すること。

 三 非居住者が本邦で外貨証券を発行又は募集すること。

 (証券の応募)

第三十五条 政令で定めるところにより認められ、又は許可を受けた場合を除いては、左に掲げる行為をしてはならない。

 一 居住者が外貨証券に応募すること。

 二 非居住者が本邦証券に応募すること。

    第四節 不動産

 (外国にある不動産)

第三十六条 大蔵省令で定める場合を除いては、居住者は、外国にある不動産又はこれに関する権利を取得してはならない。

第三十七条 大蔵省令で定める場合を除いては、居住者は、外国にある自己の不動産を処分し、又はこれに関する権利を放棄し、若しくは他に提供してはならない。

 (本邦内にある不動産)

第三十八条 政令で定める場合を除いては、居住者は、非居住者のために本邦内にある不動産又はこれに関する権利を処分してはならない。

第三十九条 政令で定める場合を除いては、非居住者は、他の非居住者から本邦内にある不動産又はこれに関する権利を取得してはならない。

第四十条 政令で定める場合を除いては、非居住者は、本邦内にある不動産を処分し、又はこれに関する権利を放棄し、若しくは他に提供してはならない。

 (特例)

第四十一条 第三十六条及び第三十七条の規定は、本邦人以外の居住者については、これらの規定に定める不動産のうちその者がこの法律又はこの法律に基く命令の規定の適用を受ける取引に因り取得したものに限り、適用があるものとする。

    第五節 その他

 (役務)

第四十二条 政令で定める場合を除いては、何人も、この法律の適用を受ける支払、決済その他の取引を伴う役務に関する契約をしてはならない。

第四十三条 政令で定める場合を除いては、居住者は、この法律の規定に従つて相当の対価の支払を受けないで、非居住者に役務を提供してはならない。

第四十四条 前二条の規定の適用を受ける者は、政令で定めるところにより、主務の政府機関の事前の承認を受け、又は当該政府機関に対して相当の対価の支払を受けることを立証する義務を課せられることがある。

 (支払手段等の輸出入)

第四十五条 政令で定める場合を除いては、何人も、支払手段、貴金属、証券又は債権を化体する書類を輸出又は輸入してはならない。

第四十六条 前条に基く政令においては、本邦に入国し、又は本邦から出国する者に対する同条の規定の適用の方法及び程度を定めなければならない。

   第六章 外国貿易

 (輸出の原則)

第四十七条 貨物の輸出は、この法律の目的に合致する限り、最少限度の制限の下に、許容されるものとする。

 (輸出の承認)

第四十八条 特定の種類の貨物を輸出しようとする者又は特定の取引若しくは支払の方法により貨物を輸出しようとする者は、政令で定めるところにより、通商産業大臣の承認を受ける義務を課せられることがある。

2 前項の政令による制限は、国際収支の均衡の維持並びに外国貿易及び国民経済の健全な発展に必要な範囲をこえてはならない。

 (支払方法の証明)

第四十九条 通商産業大臣は、命令で定めるところにより、貨物を輸出しようとする者に対して、貨物の代金の支払が政令で定める方法によつて行われる旨の十分な証明を求めることができる。

 (輸出取引の公正)

第五十条 貨物を輸出する者は、当該貨物の最終仕向国における不公正な競争の禁止に関する法令を十分考慮した上で輸出しなければならない。

 (船積の非常差止)

第五十一条 通商産業大臣は、特に緊急の必要があると認めるときは、命令で定めるところにより、一月以内の期限を限り、品目又は仕向地を指定し、貨物の船積を差し止めることができる。

 (輸入の承認)

第五十二条 外国為替予算の範囲内で最も有利且つ有効な貨物の輸入を図るため、貨物を輸入しようとする者は、政令で定めるところにより、輸入の承認を受ける義務を課せられることがある。

 (制裁)

第五十三条 通商産業大臣は、貨物の輸出又は輸入に関し、この法律、この法律に基く命令又はこれらに基く処分に違反した者に対して、一年以内の期間を限り、輸出又は輸入を行うことを禁止することができる。

 (税関長に対する指揮監督等)

第五十四条 通商産業大臣は、政令で定めるところにより、その所掌に属する貨物の輸出又は輸入に関し、税関長を指揮監督する。

2 通商産業大臣は、政令で定めるところにより、この法律に基く権限の一部を税関長に委任することができる。

 (担保の提供)

第五十五条 貨物を輸入しようとする者は、政令で定めるところにより、当該輸入の実行を保証するために、保証金、証券その他の担保を提供する義務を課せられることがある。

2 貨物の輸入の承認を受けた者が当該貨物を輸入しなかつたときは、政令で定めるところにより、前項の保証金、証券その他の担保物を国庫に帰属させることができる。

   第七章 不服の申立及び訴訟

 (不服の申立)

第五十六条 この法律又はこの法律に基く命令の規定による政府機関の処分に対して不服のある者は、その旨を記載した書面をもつて、当該政府機関に不服の申立をすることができる。

 (聴聞)

第五十七条 政府機関は、前条の規定による不服の申立を受理したときは、当該申立をした者に対して、相当な期間を置いて予告をした上、公開による聴聞を行わなければならない。

2 前項の予告においては、期日、場所及び事案の内容を示さなければならない。

3 聴聞に際しては、不服の申立をした者及び利害関係人に対して、当該事案について、証拠を呈示し、意見を述べる機会を与えなければならない。

 (決定)

第五十八条 当該政府機関は、当該事案について、文書をもつて決定をし、その写を不服の申立をした者及び利害関係人に送付しなければならない。

 (手続規定)

第五十九条 不服の申立、予告、聴聞及び決定の手続について必要な事項は、政令で定める。

 (訴訟)

第六十条 この章の規定による政府機関の決定に不服のある者は、次条で定めるところにより裁判所に出訴することができる。

第六十一条 この法律の規定による当該政府機関の決定に係る訴訟は、被告である政府機関の所在地の地方裁判所の管轄とする。

2 訴の提起は、政府機関の決定があつた後三十日以内に裁判所に対してしなければならない。

3 訴を提起した者は、訴状の写を、当該政府機関及び当該聴聞に参与した利害関係人に送付するものとする。

第六十二条 当該政府機関は、訴状の送達があつた時から三十日(裁判所が期間の延長を認めたときは、その期間)以内に当該訴に係る聴聞及び決定の一切の記録の正本又は証明のある複本を当該裁判所に送付しなければならない。その記録は、訴を提起した者、第五十八条の規定により決定の送付を受けた者及び政府機関の合意があつたときは、簡略にすることができる。

第六十三条 審理は、記録に記載された事実の範囲に限定されなければならない。但し、裁判所は、記録に記載されない当該政府機関の手続の違法を立証する証拠を採用することができる。

第六十四条 裁判所は、当該政府機関の決定を容認し、若しくは更に聴聞を行わせるため事件を政府機関に差し戻し、又は当該政府機関の決定が左の各号に掲げる場合の一に該当するため原告の実質的権利が侵害されたと認める場合においてその決定を取り消し、若しくは変更することができる。

 一 憲法の条項に違反しているとき。

 二 政府機関の法令による権限をこえているとき。

 三 手続に違法があるとき。

 四 前各号の外法令の適用に誤があるとき。

 五 適法且つ実質的な証拠がないとき。

 六 裁判所による新たな審理の結果、決定の理由となつた事実が著しく不当であるとき。

   第八章 雑則

 (公正取引委員会の権限)

第六十五条 この法律のいかなる条項も、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)及び事業者団体法(昭和二十三年法律第百九十一号)の適用又はこれらの法律に基き公正取引委員会がいかなる立場において行使する権限をも排除し、変更し、又はこれらに影響を及ぼすものと解釈してはならない。

 (政府機関の行為)

第六十六条 この法律又はこの法律に基く命令の規定中政府機関又は外国為替銀行の許可、承認その他の処分を要する旨を定めるものは、政府機関が当該許可、承認その他の処分を要する行為をする場合については、政令で定めるところにより、これを適用しない。

 (報告義務)

第六十七条 この法律に規定するものの外、主務の政府機関は、この法律の施行に必要な限度において、政令で定めるところにより、この法律の適用を受ける取引を行う者又は関係人から報告を徴することができる。

 (立入検査)

第六十八条 主務の政府機関は、この法律の施行に必要な限度において、当該職員をして、外国為替銀行又は両替商の営業所又は事務所にその営業時間中に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させ、又は関係人に質問させることができる。

2 前項の規定により当該職員が立ち入るときは、その身分を示す証票を携帯し、関係人に呈示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査又は質問の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

 (事務の一部委任)

第六十九条 主務の政府機関は、政令で定めるところにより、この法律の施行に関する事務の一部を日本銀行又は外国為替銀行をして取り扱わせることができる。

2 前項の規定により事務の一部を日本銀行をして取り扱わせる場合においては、その事務の取扱に要する経費は、日本銀行の負担とすることができる。

3 第一項の場合において、その事務に従事する日本銀行及び外国為替銀行の職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

   第九章 罰則

第七十条 左の各号の一に該当する者は、三年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。但し、当該違反行為の目的物の価格の三倍が三十万円をこえるときは、罰金は、当該価格の三倍以下とする。

 一 外国為替の直物取引における売相場又は買相場を定めない場合において、第七条第五項の規定に違反し、外国為替の直物取引をした者

 二 第七条第六項の規定に違反した者

 三 第八条の規定に違反した者

 四 第十条第一項の規定による認可を受けないで外国為替業務を営んだ者

 五 第十三条(第十四条第二項において準用する場合を含む。)の規定による停止又は制限に違反した者

 六 第十四条第一項の規定による認可を受けないで両替業務を営んだ者(外国為替銀行を除く。)

 七 第二十六条第一項又は第二項の規定に違反した者

 八 第二十七条第一項の規定に違反した者

 九 第二十八条の規定に違反した者

 十 第二十九条の規定に違反した者

 十一 第三十条の規定に違反した者

 十二 第三十一条第一項の規定に違反した者

 十三 第三十二条第一項の規定に違反した者

 十四 第三十六条の規定に違反した者

 十五 第三十七条の規定に違反した者

 十六 第三十八条の規定に違反した者

 十七 第三十九条の規定に違反した者

 十八 第四十条の規定に違反した者

 十九 第四十五条の規定に違反した者

 二十 第五十一条の規定に違反した者

 二十一 第五十三条の規定による輸出又は輸入の禁止に違反した者

 二十二 第九条、第二十一条から第二十三条まで、第四十八条又は第五十二条の規定に基く命令の規定に違反した者

第七十一条 左の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役若しくは十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

 一 第十条第三項又は第十四条第二項において準用する第十条第三項の規定による許可を受けないで、外国為替業務若しくは両替業務を営む営業所を新設し、外国為替業務若しくは両替業務を営む営業所の名称若しくは位置を変更し、又は外国為替業務若しくは両替業務の内容を変更した者

 二 第三十三条の規定に違反した者

 三 第三十四条の規定に違反した者

 四 第三十五条の規定に違反した者

 五 第四十二条の規定に違反した者

 六 第四十三条の規定に違反した者

 七 第四十四条の規定に基く政令の規定に違反して事前の承認を受けなかつた者

第七十二条 左の各号の一に該当する者は、六月以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。

 一 第十条第四項又は第十四条第二項において準用する第十条第四項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をして、外国為替業務又は両替業務を廃止した者

 二 第十一条の規定による承認を受けないで、同条に規定する取極を結んだ者

 三 第十二条又は第十四条第二項において準用する第十二条の規定に違反した者

 四 第十五条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者

 五 第四十四条の規定に基く命令の規定に違反して立証をせず、又は虚偽の立証をした者

 六 第四十九条の規定に基く命令に違反して十分証明をせず、又は虚偽の証明をした者

 七 第六十七条の規定に基く命令の規定に違反して報告をせず、又は虚偽の報告をした者

 八 第六十八条の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者

 九 第六十八条の規定による質問に対して答弁をせず、又は虚偽の答弁をした者

第七十三条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

   附 則

1 この法律の施行期日は、各規定につき政令で定める。但し、その期日は、昭和二十五年三月三十一日後であつてはならない。

2 左に掲げる法令は、廃止する。

  外国為替管理法(昭和十六年法律第八十三号)

  金、銀又は白金の地金又は合金の輸入の制限又は禁止等に関する件(昭和二十年勅令第五百七十八号)

  外国為替管理法の罰則の特例に関する件(昭和二十年勅令第六百十五号)

  貿易等臨時措置令(昭和二十一年勅令第三百二十八号)

  財産及び貨物の輸出入の取締に関する政令(昭和二十四年政令第百九十九号)

  外国為替銀行の臨時措置等に関する政令(昭和二十四年政令第三百五十三号)

3 この法律施行前にした行為に対する罰則の適用については、前項に掲げる法令は、この法律施行後でも、なおその効力を有する。

4 第二項に掲げる法令の廃止に関し必要な事項については、政令で定める。

(内閣総理大臣・法務総裁・外務・大蔵・文部・厚生・農林・通商産業・運輸・郵政・電気通信・労働・建設大臣・経済安定本部総裁署名) 

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