薬事法

法律第百九十七号(昭二三・七・二九)

第一章 総則

 (法律の目的)

第一条 この法律は、薬事を規整し、これが適正を図ることを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律で「薬事」とは、医薬品、用具又は化粧品の製造、調剤、販売又は授与及びこれらに関連する事項をいう。

2 この法律で「薬剤師」とは、主として医薬品の調製、鑑定、保存、調剤及び交付に関する実務を行う者であつて、厚生大臣の免許を受けたものをいう。

3 この法律で「薬局」とは、薬剤師が調剤する場所であつて、都道府県知事により登録されているものをいう。

4 この法律で「医薬品」とは、左の各号に掲げる物をいう。但し、用具を除く。

一 公定書に収められたもの

二 人又は動物の疾病の診断、治ゆ、軽減、処置又は予防に使用することが目的とされているもの

三 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を与えることが目的とされているもの(食品を除く。)

四 前各号に掲げるものの構成の一部として使用されているもの

5 この法律で「新医薬品」とは、その化学構造式、組成又は適応が一般には知られていない医薬品をいう。

6 この法律で「用具」とは、左の各号に掲げる物をいう。

一 人又は動物の疾病の診断、治ゆ、軽減、処置又は予防に使用することが目的とされている器具、器械又は装置

二 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を与えることが目的とされている器具、器械又は装置

7 この法律で「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し魅力を増し、又は容ぼうを変えるために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用することが目的とされている物又はその構成の一部として使用されている物をいう。

8 この法律で「公定書」とは、薬局方、医薬品集又はこれらの追補をいう。

9 この法律で「薬局方」又は「医薬品集」とは、日本薬局方又は国民医薬品集の最新版をいう。

10 この法律で「標示」とは、医薬品、用具又は化粧品の直接の容器又は直接の被包(内袋を含まない。)に記載される文字、図形その他の表示をいう。(直接の容器又は直接の被包が小売のために包装されている場合には、この法律又はこの法律に基く省令により標示中に記載すべき表示と同様の表示を外部容器又は外部被包に記載するか、又は標示が外部容器又は外部被包を透して容易に読み得なければ、これを標示ということができない。)

11 この法律で「表示書」とは、医薬品、用具若しくは化粧品又はこれらの容器若しくは被包に記載される文字、図形その他の物又は医薬品、用具若しくは化粧品に添付する文書若しくは図画をいう。

12 この法律で「毒薬」又は「劇薬」とは、人又は動物の身体に、これが摂取され、吸入され、又は外用された場合に、極量が致死量に近いため、蓄積作用が強いため、又は薬理作用が激しいため、人又は動物の機能に危害を与え、又は危害を与える虞がある医薬品であつて、厚生大臣の指定したものをいう。

第二章 薬剤師

 (免許)

第三条 薬剤師にならうとする者は、省令の定めるところにより、手数料を納めて、厚生大臣の免許を受けなければならない。

2 薬剤師免許は、左の各号の一に該当する者でなければ、これを与えない。

一 薬剤師国家試験に合格した者

二 厚生大臣の指定した外国の薬剤師免許を受けた者で、厚生大臣が適当と認めたもの

3 薬剤師免許を受けていない者は、薬剤師の名称を用いてはならない。

第四条 薬剤師免許は、左の各号の一に該当する者には、これを与えない。

一 年齢二十年末満の者、禁治産者又は準禁治産者

二 精神病者

三 おし、つんぼ又は盲の者

第五条 薬剤師免許は、左の各号の一に該当する者には、これを与えないことができる。

一 罰金以上の刑に処せられた者

二 この法律又はこの法律に基く命令の規定に違反した者

 (免許証の交付)

第六条 厚生大臣は、薬剤師免許を与えたときは、薬剤師名簿に登録し、薬剤師免許証を交付しなければならない。

2 前項の免許証は、省令の定めるところにより、毎年十二月三十一日までに免許を受けた薬剤師の住所地を管轄する都道府県知事を経て、厚生大臣の登録による更新を受けなければ、その効力を失う。

第三章 薬事委員会

 (委員会)

第七条 薬事委員会は、公定書の改訂又は追補に関して、その原案を厚生大臣に提出し、薬剤師国家試験を執行し、及び新医薬品その他薬事に関し厚生大臣に建議することを目的とする。

第八条 委員会は大学の長及び教職員、関係各庁の官吏及び吏員並びに薬事、医事若しくは獣医事に従事する者につき、厚生大臣が任命した五十一名以上の委員で、これを組織する。

2 薬事委員会の建議は、委員のうちから選任された常任委員の多数決をもつて、これを行うものとする。

3 委員の任期は、二年とし、補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。但し、委員が精神若しくは身体に欠陥を生じ、その職務を行うことができなくなつたとき、又は委員会の利益を害したときは、厚生大臣は、委員会の同意を得て、当該委員を罷免することができる。

第九条 委員の報酬及び旅費については、省令でこれを定める。

 (小委員会等)

第十条 薬事委員会に、左の小委員会を置く。

一 薬剤師国家試験小委員会

二 公定書小委員会

三 新医薬品小委員会

2 委員会は、必要と認めたときは特別小委員会を置くことができる。

3 委員会は、厚生大臣に建議し、その他薬事委員会の事務を執行するために委員の中から常任委員を選任しなければならない。

 (薬剤師国家試験)

第十一条 委員会は、省令の定めるところにより、厚生大臣の監督のもとに毎年少くとも一回、薬剤師国家試験を執行しなければならない。

第十二条 厚生大臣は、薬剤師国家試験を行う場所、日時及び受験願書の提出期限を定めて、少くとも試験を行う三月前までに、これを公告しなければならない。

第十三条 薬剤師国家試験を分けて、学説試験及び実地試験とする。

2 薬剤師国家試験は、省令の定めるところにより、薬剤師として具有すべき知識及び技能について、これを行う。

3 学説試験に合格したものでなければ、実地試験を受けることができない。

第十四条 薬剤師国家試験は、左の各号の一に該当する者でなければ、これを受けることができない。

一 大学において、薬学の正規の課程を修めて卒業した者

二 厚生大臣の指定した外国の薬剤師免許を受けた者で、第三条第二項第二号に該当しないもの

三 外国の薬学校を卒業し、又は厚生大臣の指定した外国以外の外国の薬剤師免許を受けた者

第十五条 薬剤師国家試験を受けようとする者は、省令の定めるところにより、手数料を納めなければならない。

2 委員会は、厚生大臣に薬剤師国家試験に合格した者の名簿を提出しなければならない。

3 厚生大臣は、薬剤師国家試験に合格した者に対して、薬剤師免許証を交付するときは、前項の名簿に基いて、これをしなければならない。

 (薬局方の改訂等)

第十六条 委員会は、少くとも十年ごとに、薬局方の改訂の原案を、少くとも二年半ごとに、その追補の原案を、厚生大臣に提出しなければならない。

 (医薬品集の改訂等)

第十七条 委員会は、必要があると認めるときは、医薬品集の改訂又は追捕に関して、その原案を厚生大臣に提出しなければならない。

第十八条 委員会は、公務所又は薬事に従事する者に対して、報告又は資料の提出を求めることができる。

2 委員会は、特に必要があると認めるときは、公務所又は薬事に従事する者その他の者に対し、必要な調査を嘱託することができる。

 (施行規定)

第十九条 この法律及び省令で定めるものを除く外、薬事委員会の組織その他必要な事項は、薬事委員会がこれを定める。

第四章 薬局及び調剤

 (薬局の登録)

第二十条 薬局を開設しようとする者は、省令の定めるところにより、手数料を納めて、その薬局の所在地を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならない。

2 前項の登録は、厚生大臣の定める手数料を納めて、毎年十二月三十一日までに、その更新を受けなければ、その効力を失う。

 (薬局の管理)

第二十一条 薬局開設者は、自ら薬剤師であつて、その薬局を管理する場合の外、その薬局を管理させるために専任の薬剤師を置かなければならない。

2 薬局を管理する薬剤師は、業として、当該薬局以外の場所で、薬局の管理その他薬事に関する実務に従事してはならない。

 (調剤)

第二十二条 薬剤師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはならない。但し、医師、歯科医師又は獣医師が自己の処方せんにより自ら調剤し、又は薬剤師に調剤させる場合は、この限りでない。

第二十三条 薬剤師は、薬局以外の場所で、販売又は授与の目的で調剤してはならない。但し、省令をもつて別段の定をしたときは、この限りでない。

第二十四条 薬剤師は、処方せん中疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師の承諾がなければ、処方を変更し、又は修正してはならない。

第二十五条 薬局開設者は、当該薬局で調剤した処方せんを、調剤した日から二年間、保存しなければならない。

第五章 医薬品、用具及び化粧品

 (医薬品等の製造業)

第二十六条 医薬品、用具又は化粧品の製造業を営もうとする者は、省令の定めるところにより、手数料を納めて製造所ごとに、厚生大臣の登録を受けなければならない。

2 前項の登録は、厚生大臣の定める手数料を納めて、毎年十二月三十一日までに、その更新を受けなければ、その効力を失う。

3 医薬品の製造業者が、公定書に収められていない医薬品を製造しようとするとき、又は用具の製造業者が用具を製造しようとするときは、品目ごとに、その製造について、厚生大臣の許可を受けなければならない。

4 厚生大臣が、新医薬品その他公定書に収められていない医薬品について前項の許可を与えるには、薬事委員会の建議に基いて、これをしなければならない。

第二十七条 医薬品の製造業者は、医薬品の製造を管理させるために、製造所ごとに、厚生大臣の登録を受けた専任の薬剤師を置かなければならない。但し、その本質が専任の薬剤師の管理を必要としない医薬品については、厚生大臣の承認を受けて、専任の技術者をもつて、これに代えることができる。

2 前項の規定にかかわらず生物学的製剤その他厚生大臣の指定した製剤の製造業者は、その製造を管理させるために、その製造所ごとに、厚生大臣の承認を受けて、専任の医師その他細菌学的知識を有する者を置かなければならない。

 (医薬品等の輸入販売業)

第二十八条 医薬品、用具又は化粧品の製造業に関する規定は、夫々医薬品、用具又は化粧品の輸入販売業に、これを準用する。

 (医薬品の販売業)

第二十九条 医薬品の販売業を営もうとする者は、省令の定めるところにより、手数料を納めて、店舗を有する販売業者にあつては、その店舗ごとに、配置販売業者にあつては、その営業区域ごとに、当該店舗の所在地又は営業区域を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならない。但し、医薬品の製造業者又は輸入販売業者が、その製造し、又は輸入した医薬品を医薬品の製造業者又は販売業者に販売しようとするとき、又は薬局開設者が医薬品の販売業を営もうとするときは、この限りでない。

2 前項の登録は、厚生大臣の定める手数料を納めて、毎年十二月三十一日までに、その更新を受けなければ、その効力を失う。

 (医薬品の取扱等に関する規整)

第三十条 厚生大臣は、医薬品の強度、品質及び純度の適正を図るために、薬事委員会の提出する原案に基いて、日本薬局方、国民医薬品集又はこれらの追補を発行し、これを公布しなければならない。

2 公定書に収められた医薬品は、その強度、品質及び純度が公定書で定める基準に適合するものでなければ、これを販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で製造し、輸入し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。

第三十一条 公定書に収められていない医薬品は、第二十六条第三項の規定により厚生大臣の許可を受けた基準に適合したものでなければ、これを販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で製造し、輸入し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。

第三十二条 アミノフエニルスルフアミド若しくはその誘導体、ペニシリン、ストレプトマイシン並びにその他の抗菌性物質又はこれらの製剤、生物学的製剤その他厚生大臣の指定する製剤は、厚生大臣の定める最小含量若しくは最小包装単位に関する基準又は厚生大臣の定めるその他の基準に適合するものでなければ、これを販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で製造し、輸入し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。

2 厚生大臣は必要があると認めたときは、前項の医薬品の製造その他必要な事項について、省令で、これを定めることができる。

第三十三条 厚生大臣の指定した医薬品は、厚生大臣の指定した者の検査を受け、且つ、合格したものでなければ、これを販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列してはならない。

 (誇大広告等)

第三十四条 何人も、この法律に基いて製造する医薬品、用具又は化粧品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。

2 医薬品、用具又は化粧品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解される虞がある記事は、前項に該当するものとする。

3 暗示的な記事、写真、図画その他暗示的な方法は、第一項に違反して、これを用いてはならない。

4 何人も、医薬品、用具又は化粧品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。

 (毒薬及び劇薬の取扱)

第三十五条 毒薬の標示には、黒地に白枠、白字をもつてその品名及び「毒」の字を記載しなければならない。

2 劇薬の標示には、白地に赤枠、赤字をもつてその品名及び「劇」の字を記載しなければならない。

第三十六条 医薬品の製造業者又は輸入販売業者は、毒薬又は劇薬を容器に収め、これに封かんを施さなければならない。

2 毒薬又は劇薬は、薬剤師である医薬品の製造業者、輸入販売業者若しくは販売業者又は医薬品の製造業者、輸入販売業者若しくは販売業者であつて薬剤師を使用する者でなければ、その封かん又は容器を開いて、これを販売し、又は授与してはならない。

第三十七条 医薬品の製造業者、輸入販売業者又は販売業者は、毒薬又は劇薬を販売し、又は授与するときは、その文書にその品名、数量、使用の目的、譲渡の年月日並びに譲受人の氏名、職業及び住所を記載し、且つ、譲受人をして、これに印を押させなければならない。但し、薬剤師、薬局開設者、医薬品の製造業者若しくは販売業者又は医師、歯科医師若しくは獣医師に対して、各々その身分に関する公務所の証明によつて、これを販売し、又は授与する場合においては、この限りでない。

2 第三十五条及び前項の規定は、医師、歯科医師又は獣医師の処方せんによつて販売し、又は授与する毒薬又は劇薬に関しては、これを適用しない。

3 第一項の文書は、その日付の日から二年間、これを保存しなければならない。

第三十八条 毒薬又は劇薬は、年齢十四年未満の者には、これを交付してはならない。

第三十九条 業務上毒薬又は劇薬を取り扱う者は、これを他の物と区別して、貯蔵し、又は陳列しなければならない。

2 前項の場合において、毒薬を貯蔵し、又は陳列する場所には、鍵を施さなければならない。

 (不良医薬品及び不良用具)

第四十条 左の各号の一に該当する医薬品又は用具は、これを不良医薬品又は不良用具とする。

一 左のいづれかに該当する医薬品又は用具

イ その全部又は一部が、不潔な物質又は変質若しくは変敗した物質からなるもの

ロ 汚染されるか、又は保健上危険なものにされる虞がある非衛生的条件のもとで、製造、調剤、包装又は取扱をされたもの

ハ 医薬品であつて、その容器の全部又は一部が、有毒又は有害な物質からなつているために、その医薬品を保健上危険なものにする虞があるもの

ニ 医薬品であつて、その着色のみを目的としてタール色素が使用されている場合に、省令の定めるところにより証明されたタール色素以外のタール色素が含有されているもの

ホ 用具であつて、その使用が保健上危険を生ずる虞があるもの

二 公定書に収められた名称を表示している医薬品であつて、その強度が公定書で定められた基準と異るか、又はその品質若しくは純度が公定書で定められた基準に及ばないもの

三 前号に掲げる医薬品以外の医薬品であつて、その強度が当該医薬品の表示書の表示と異るか、又はその品質若しくは純度が、これに及ばないもの

四 医薬品であつて、その品質若しくは強度を減ずるために、不当に他の物を混ぜ、若しくは他の物で包まれているか、又はその全部若しくは一部が他の物で代用されているもの

 (不正表示医薬品及び不正表示用具)

第四十一条 左の各号の一に該当する医薬品又は用具は、これを不正表示医薬品又は不正表示用具とする。

一 その表示書に、虚偽の事項又は誤解を招く虞がある事項の記載されているもの

二 その標示に、製造業者の氏名若しくは名称及び住所(法人にあつては、主たる事務所の所在地)が記載されていないもの又は重量、容量若しくは個数等の内容量が正確に表示されていないもの、但し、省令で別段の定をしたときは、この限りでない。

三 公定書に収められた医薬品であつて、公定書で定める容器又は被包に収められていないもの(厚生大臣の同意を得た場合を除く。)又は公定書で定める表示のなされていないもの

四 公定書に収められていない医薬品であつて、その標示に左に掲げる事項の記載のないもの

イ 一般的名称のあるときは、その名称

口 二以上の成分から成る場合において、有効成分を含有するときは、その含有する有効成分の名称(その一般的名称あるときは、その名称)及びアルコールを含有しているときは、その分量、種類並びに割合及び臭化物、エーテル、クロロホルム、アセトアニリド、フエナセチン、アミノピリン、アンチピリン、アトロピン、ヒヨスチン、ヒヨスチアミン、比素、ヂキタリス葉、ヂキタリス配糖体、水銀、ウアバイン、ストロフアンチン、ストリキニーネ、甲状せん又はこれらの誘導体若しくは製剤を含有しているときは、その効力の有無にかかわらず、それらの名称及び分量又は割合、但し、省令で別段の定をしたときは、この限りでない。

五 その標示又は表示書に、この法律により表示するように定められた文字その他の事項が、他の文字、記事、図画又は図案に比較して見易い場所に明記されていないもの、又は一般に購入し、又は使用する者が読み易く、理解し易いような用語をもつて記載されていないもの

六 人に使用する医薬品であつて、アルフア並びにベタオイカイン、バルビタール、ブロムヂエチルアセチル尿素、トリブロムアセトアルデヒド、スルホナール、コカ葉、コカイン、コデイン、モルヒネ、阿片又はこれらの誘導体若しくは代用合成品であつて、習慣性があるとして厚生大臣が指定する物質を含有しているにもかかわらず、その標示にこれらの名称、分量及び含量並びに「注意―習慣性あり」の記載がないもの

七 厚生大臣の指定するアミノフエニルスルフアミド若しくはその誘導体、ペニシリン、ストレプトマイシン又はこれらの製剤その他の医薬品であつて、その標示に医師、歯科医師又は、獣医師の処方せん又はその指示によつて使用すべきである旨の注意が記載されていないもの

八 表示書に左に掲げる事項が記載されていないもの、但し、厚生大臣が保健上の見地から必要でないと認めた医薬品又は用具について別段の定をした場合は、この限りでない。

イ 使用上の適当な注意

ロ 疾病の状況により、又は幼児にとり、保健上危険を生ずる虞がある場合の使用に関し、又は危険な使用の分量、方法若しくは使用期間に関し、公衆保健の保護のために必要な注意

九 医薬品であつて、厚生大臣により、変質若しくは変敗し易いものと認められたもので、保健上の必要により省令の定めるところに従つて包装されず、貯蔵されず、又は注意事項の表示のないもの

十 医薬品であつて、他の医薬品等と誤解され易い容器に収められているもの若しくは誤解され易い方法で容器に収められているもの又は模造若しくは詐称のもの

十一 表示書に記載されている用法、用量又は使用期間が保険上危険であるもの

 (不良化粧品)

第四十二条 左の各号の一に該当する化粧品は、これを不良化粧品とする。

一 表示書に記載されている使用条件のもとにおいては、使用者に有害であるか、又は習慣となり、若しくは常用となる虞がある有毒若しくは有害な物質を含有しているもの

二 その全部又は一部が、不潔な物質又は変質若しくは変敗した物質からなるもの

三 保健上危険なものにされる虞がある非衛生的条件のもとで製造、包装又は取扱をされたもの

四 容器の全部又は一部が、有毒又は有害な物質からなつているために、その化粧品を保健上危険なものにする虞があるもの

五 省令の定めるところにより証明されたタール色素以外のタール色素を含有しているものであつて、染毛剤以外のもの

 (不正表示化粧品)

第四十三条 左の各号の一に該当する化粧品は、これを不正表示化粧品とする。

一 その表示書に、虚偽の事項又は誤解を招く虞がある事項の記載されているもの

二 その標示に、製造業者の氏名若しくは名称及び住所(法人にあつては、主たる事務所の所在地)が記載されていないもの又は重量、容量若しくは個数等の内容量が正確に表示されていないもの、但し、省令をもつて、別段の定をしたときは、この限りでない

三 この法律により表示するように定められた文字その他の事項が他の文字、記事、図画又は図案に比較して見易い場所に明記されていないもの又は一般に購入し、又は使用する者が、読み易く、理解し易いような用語をもつて、記載されていないもの

四 他の化粧品等と誤解され易い容器に収められ、又は誤解され易い方法で容器に収められているもの

 (禁止行為)

第四十四条 左に掲げる行為は、これをしてはならない。

一 販売又は授与の目的で、医薬品、用具又は化粧品を不良若しくは不正表示医薬品、不良若しくは不正表示用具又は不良若しくは不正表示化粧品とすること

二 販売又は授与の目的で、不良若しくは不正表示医薬品、不良若しくは不正表示用具又は不良若しくは不正表示化粧品を製造すること

三 不良若しくは不正表示医薬品、不良若しくは不正表示用具又は不良若しくは不正表示化粧品を販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列すること

四 この法律に基いて得た他人の業務上の秘密を自己の利益のために使用し、又は故なく、権限を有する当該官吏及び吏員以外の者に漏らすこと、但し、他の法律の規定に基き訴訟手続中において漏らす場合は、この限りでない

五 薬剤師でない医薬品の販売業者であつて、薬剤師を使用していないものが、厚生大臣の指定する医薬品を販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列すること

六 医薬品の標示、表示書又は広告中に、「新医薬品」という文字を使用すること

七 第四十一条第六号及び第七号に掲げる医薬品を医師、歯科医師又は獣医師の処方せんに基かず、又はこれらの者の指示によらずに、この法律に基いて登録されている薬局開設者、医薬品の販売業者、医師、歯科医師及び獣医師以外の者に販売し、又は授与すること、及び省令の定めるところにより、これらの医薬品の販売又は授与に関する記録を保存しないこと

八 第二十九条に規定する店舗を有する販売業及び配置販売業以外の方法により医薬品の販売業を営むこと

第六章 監督

 (検査)

第四十五条 厚生大臣又は都道府県知事は、必要があると認めるときは、薬局開設者、病院若しくは診療所の開設者、医薬品、用具若しくは化粧品の製造業者若しくは輸入販売業者又は医薬品の販売業者に対して、その製造し、調剤し、若しくは販売する医薬品、用具又は化粧品について、厚生大臣又は都道府県知事の指定する者の検査を受けることを命ずることができる。

 (免許の取消等)

第四十六条 厚生大臣は、薬剤師が第四条各号の一に該当するにいたつたときは、その免許を取り消さなければならない。

2 厚生大臣は、薬剤師が第五条各号の一に該当するにいたつたときは、その免許を取り消し、又はその業務の停止を命ずることができる。

3 厚生大臣は、医薬品、用具若しくは化粧品の製造業者若しくは輸入販売業者について、都道府県知事は、薬局開設者又は医薬品の販売業者について、これらの者が、この法律又はこの法律に基く省令に違反したときは、その登録を取り消し、又はその業務の停止を命ずることができる。

4 前二項に規定する取消又は業務の停止は、その取消又は業務の停止の日から三十日以内に開かれる当該取消又は停止に関する公開の常任委員会において、常任委員が、多数決によつて、これを適当と認めない旨の決定をした場合には、三十日を経た日から、その効力を失う。

5 前項の規定により取消又は業務の停止の確定した者は、行政事件訴訟特例法により訴を提起することができる。

 (設備の修繕等)

第四十七条 厚生大臣又は都道府県知事は、薬局開設者、医薬品、用具若しくは化粧品の製造業者若しくは輸入販売業者又は医薬品の販売業者に対して、その設備若しくは家屋が非衛生的であり、又は医薬品、用具若しくは化粧品を、不良医薬品、不良用具若しくは不良化粧品とする虞がある場合においては、その修繕若しくは改造を命じ、又は使用の制限若しくは停止を命ずることができる。

 (不良医薬品の廃棄等)

第四十八条 厚生大臣又は都道府県知事は、不良若しくは不正表示医薬品、不良若しくは不正表示用具又は不良若しくは不正表示化粧品について、その所有者に廃棄させ、所有者若しくは所持者に公衆衛生上危険を生ずる虞のない方法により処置させ、又は自らこれを廃棄し、その他必要な処分をなすことができる。

 (立入検査等)

第四十九条 厚生大臣又は都道府県知事は、必要があると認める場合においては、薬局開設者、病院若しくは診療所の開設者、医薬品、用具若しくは化粧品の製造業者若しくは輸入販売業者又は医薬品の販売業者について、必要な報告を徴し、又は当該官吏若しくは吏員をして薬局、病院、診療所、工場、店舗、事務所、医薬品、用具又は化粧品を販売又は授与の目的で取り扱い、又は貯蔵する場所に立ち入り、その構造、設備、原料、材料、医薬品、用具又は化粧品を販売又は授与の目的で取り扱い、又は貯蔵するために使用する物件を検査させ、又は不良若しくは不正表示の疑のある医薬品、用具若しくは化粧品又は不良の疑のある原料、材料を試験のため必要な最小分量に限り、無償で収去させることができる。

2 当該官吏又は吏員は、前項の規定による立入、検査又は収去をする場合には、その身分を示す証票を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。

 (薬事監視員)

第五十条 医薬品、用具及び化粧品に関する前条第一項に規定する当該官吏又は吏員の職権を行わしめるために、国及び都道府県に薬事監視員を置く。

2 薬事監視員は、官吏又は都道府県の吏員のうちから、厚生大臣又は都道府県知事が、これを命ずる。

3 前二項に定めるものの外、薬事監視員に関し必要な事項は、省令でこれを定める。

第七章 雑則

 (施行規定)

第五十一条 この法律の実施に関して必要な事項は、厚生大臣が、これを定める。

 (登録の基準)

第五十二条 厚生大臣は、保健衛生上特に必要があると認めるときは、薬局開設者、医薬品、用具若しくは化粧品の製造業者若しくは輸入販売業者又は医薬品の販売業者の登録について、薬事委員会の建議に基き、これらの者が有すべき設備、施設、資格等の基準を定めることができる。

 (公聴会)

第五十三条 厚生大臣は、必要と認めるとき、又は薬事に関係のある者から要求があつた場合において、その要求が正当であると認めるときは、この法律の規定に基いて発する命令の制定又は改廃について公聴会を開かなければならない。

第五十四条 医薬品又は用具であつて、もつぱら動物の疾病の診断、治ゆ、軽減、処置又は予防に使用することが目的とされているもの及びもつぱら動物の身体の構造又は機能に影響を与えることが目的とされているものに関しては、これを農林大臣の所管とする。

 (適用除外)

第五十五条 厚生大臣は、特定の用具については、省令をもつてこの法律の適用を除外することができる。

第八章 罰則

第五十六条 第二十二条、第二十六条第一項若しくは第三項(第二十八条において準用する場合を含む。)第二十九条第一項、第三十条第二項、第三十一条、第三十二条第一項、第三十三条から第三十六条まで、第三十八条又は第四十四条の規定に違反した者は、これを三年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。

2 前項の刑は、これを併科することができる。

第五十七条 第三条第三項、第二十条第一項、第二十一条、第二十三条から第二十五条まで、第二十七条(第二十八条において準用する場合を含む。)第三十七条第一項若しくは第三項又は第三十九条の規定に違反した者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。

2 前項の刑は、これを併科することができる。

第五十八条 左の各号の一に該当する者は、これを五千円以下の罰金に処する。

一 第四十五条、第四十六条第二項若しくは第三項 第四十七条又は第四十八条の規定による命令に違反した者

二 第四十九条第一項の規定による立入、検査若しくは収去を拒み、妨げ、又は忌避した者

三 第四十九条第一項の規定による厚生大臣又は都道府県知事の要求があつた場合において、報告をせず、又は虚偽の報告をした者

第五十九条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、第五十六条から前条までの違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても各本条の罰金刑を科する。

附 則

第六十条 この法律は、公布の日から、これを施行する。

第六十一条 左に掲げる法令は、これを廃止する。

薬事法(昭和十八年法律第四十八号、以下旧法という。)

医薬部外品等取締法(昭和二十二年法律第二百三十二号)

日本薬局方調査会官制(昭和十年勅令第二百七十四号)

家畜に応用する細菌学的予防治療品及診断品取締規則(昭和十五年農林省令第八十八号)

医薬品等の封緘及検査証明の取締に関する件(昭和十八年厚生省令第四十二号)

有害避妊用器具取締規則(昭和五年内務省令第四十号)

第六十二条 日本薬局方調査会は、前条の規定にかかわらず薬事委員会の成立するに至るまでは、なお存続するものとみなす。

第六十三条 この法律の規定による薬事委員会の権限は、薬事委員会の成立するに至るまでは、この法律の規定にかかわらず、厚生大臣が、これを行う。

第六十四条 旧法第三章の規定により設立された日本薬剤師会及び都道府県薬剤師会(以下単に薬剤師会という。)は、これを解散する。但し、清算の目的の範囲内においては、なお存続するものとみなす。

2 前項の規定により解散した薬剤師会の清算人は、会長、副会長、専務理事又は理事のうちから、総会において、これを選任しなければならない。但し、補欠の清算人を選任し、又は清算人を増員しようとする場合には、他の者のうちから、これを選任することができる。

3 厚生大臣又は都道府県知事は、公益上必要があると認めたときは、清算人を解任することができる。

4 清算人は、清算方法及び財産処分について、総会の議決を経た後、監督庁の認可を受けなければならない。

5 厚生大臣又は都道府県知事は、薬剤師会の清算の監督上必要があると認めるときは、清算の事務及び財産の状況について、清算人に報告を命じ、又は当該官吏若しくは吏員に検査させることができる。

6 当該官吏又は吏員は、前項の規定により検査をする場合には、その身分を示す証票を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。

第六十五条 この法律施行の際、現に旧法の規定による薬剤師免許を受けている者は、この法律により薬剤師の免許を受けたものとみなす。

2 前項に該当する者は、この法律施行の日から三月以内にその住所地を管轄する都道府県知事を経て、厚生大臣にその氏名、住所及び登録番号を届け出なければならない。

第六十六条 旧法の規定により薬局開設の許可、医薬品の製造業、輸入販売業若しくは販売業の許可又は医薬部外品等取締法の規定により医薬部外品の製造業の許可を受けた者で、この法律施行の際、現に当該事業を営んでいるものについては、この法律施行の日から六月を限り、なお従前の例による。

第六十七条 この法律施行前に旧法によりなした薬剤師免許、薬局開設の許可若しくは医薬品の製造業、輸入販薬業若しくは販売業の許可の取消の処分又はこれらの業務の停止の処分は、なおその効力を有する。

2 前項の取消又は業務の停止の処分については、第四十六条第四項の規定は、これを適用しない。

第六十八条 この法律施行の際、現に医薬部外品等取締法の規定による届出をして化粧品の製造業を営んでいる者又は用具の製造業若しくは医薬部外品の販売業を営んでいる者は、この法律施行の日から六月を限り、これを夫々この法律の規定による登録又は許可を受けたものとみなす。

第六十九条 この法律施行の際、現に家畜に応用する細菌学的予防治療品及診断品取締規則の規定により、血清類の製造の許可を受けている者については、この法律施行の日から六月を限り、なお従前の例による。

2 この法律施行の際、現に血清類の販売業を営んでいる者は、この法律施行の日から六月を限り、これをこの法律の規定による登録を受けたものとみなす。

第七十条 薬事法施行規則(昭和十八年厚生省令第四十号)第四十六条第一項の規定による調剤録又は同令第百七条第一項の規定による文書は、第二十五条又は第三十七条第三項の適用については、夫々これを第二十五条の処方せん又は第三十七条第一項の文書とみなす。

第七十一条 この法律施行の際、現に存する医薬品、用具及び化粧品の標示又は表示書については、この法律の規定にかかわらず、この法律施行の日から六月を限り、なお従前の例による。

第七十二条 この法律施行前になした旧法、医薬部外品等取締法、家畜に応用する細菌学的予防治療品及び診断品取締規則、医薬品等の封緘及び検査証明の取締に関する件又は有害避妊用器具取締規則の違反行為の処罰については、なお従前の例による。

第七十三条 薬剤師国家試験は、第十一条の規定にかかわらず、昭和二十四年から、これを行う。

第七十四条 大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による大学又は専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)による専門学校は、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第九十八条第一項の規定により、その存続を認められた間、これを第八条第一項の大学とみなす。

2 前項に規定する大学又は専門学校の卒業者は、これを第十四条第一号の大学の卒業者とみなす。

第七十五条 第五改正日本薬局方(昭和七年内務省令第二十一号)は、第三十条の規定により厚生大臣が日本薬局方を公布するときまで、これを同条に規定する日本薬局方とみなす。

第七十六条 旧法の規定により薬剤師免許を受けることができるものであつて、やむを得ない理由により、この法律施行の日までに、免許を受けることができなかつたもの、又は旧法の規定により単に未成年であるの故をもつて、薬剤師免許を受けることができなかつたもので、この法律施行の後、成年に達したものに対しては、第三条第二項の規定にかかわらず、厚生大臣は、薬剤師免許を与えることができる。

(厚生・農林・内閣総理大臣署名)

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