恩給法臨時特例
法律第百九十号(昭二三・七・二九)
(この法律の目的)
第一条 公務員の給与の変更等に伴う恩給法(大正十二年法律第四十八号)の臨時の特例については、この法律の定めるところによる。
2 国会は、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号。同法の改正規定並びに同法に基く政令及び人事委員会規則を含む。以下同じ。)の規定がこの法律の規定と矛盾する場合においては、その国家公務員法の規定が優先するものであることを、ここに宣言する。
(若年による恩給停止の特例)
第二条 普通恩給については、恩給法(以下法という。)第五十八条第一項第三号の規定にかかわらず、これを受ける者が四十歳に満ちる月までは、その全額を、四十歳に満ちる月の翌月から四十五歳に満ちる月までは、その十分の五を四十五歳に満ちる月の翌月から五十歳に満ちる月までは、その十分の三を停止する。
2 前項に規定する普通恩給の停止は、普通恩給と増加恩給又は傷病年金とが併給される場合には、これを行わない。
3 第一項に規定する普通恩給の停止は、公務に起因しない傷い又は疾病が法第四十九条の二又は第四十九条の三に規定する程度に達してこれがため退職した場合には、退職後五年間は、これを行わない。
4 前項の期間満了の六月前までに、傷い又は疾病が回復しない者は、裁定庁に対し、前項の期間の延長を請求することができる。この場合においてその者の傷い又は疾病が、なお前項に規定する程度に達しているときは、第一項に規定する普通恩給の停止は、引き続きこれを行わない。
(多額所得による恩給停止の特例)
第三条 法第五十八条第一項第四号及び同条第二項の規定による普通恩給の停止については、これらの規定にかかわらず、恩給年額が一万五千円以上で、前年における恩給外の所得の年額が十五万円をこえる者について、左の区分によつて、これを行う。
一 恩給年額と恩給外の所得の年額との合計額が十八万円以下であるときは、十六万五千円をこえる金額の一割五分の金額に相当する金額。但し、恩給の支給額は、年額一万五千円を下ることはない。
二 恩給年額と恩給外の所得の年額との合計額が十八万円をこえ二十四万円以下であるときは、十六万五千円をこえ十八万円以下の金額の一割五分の金額と十八万円をこえる金額の二割の金額との合計額に相当する金額。但し、恩給の支給額は、年額一万五千円を下ることなく、その停止年額は、恩給年額の二割をこえることはない。
三 恩給年額と恩給外の所得の年額との合計額が二十四万円をこえ三十万円以下であるときは、十六万五千円をこえ十八万円以下の金額の一割五分の金額と十八万円をこえ二十四万円以下の金額の二割の金額と二十四万円をこえる金額の二割五分の金額との合計額に相当する金額。但し、恩給の支給額は、年額一万五千円を下ることなく、その停止年額は、恩給年額の二割五分をこえることはない。
四 恩給年額と恩給外の所得の年額との合計額が三十万円をこえるときは、十六万五千円をこえ十八万円以下の金額の一割五分の金額と十八万円をこえ二十四万円以下の金額の二割の金額と二十四万円をこえ三十万円以下の金額の二割五分の金額と三十万円をこえる金額の三割の金額との合計額に相当する金額。但し、恩給の支給額は、年額一万五千円を下ることなくその停止年額は、恩給年額の三割をこえることはない。
2 前項の恩給外の所得の計算については、所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)第九条及び第十条の規定を準用する。
3 第一項の恩給外の所得は、税務署長の調査により裁定庁が、これを決定する。
4 第一項に規定する恩給の停止は、前項の決定に基いて、その年の七月から翌年六月に至る期間分の恩給について、これを行う。但し、恩給を受ける事由の生じた月の翌月から翌年六月に至る期間分の恩給については、恩給の停止を行わない。
5 恩給の請求又は裁定の遅延に因り、前年以前の分の恩給について、第一項に規定する恩給の停止を行うべき場合においては、前項の規定にかかわらず、その停止額は、その停止を行うべき期間後の期間分の恩給支給額からも、これを控除することができる。
(個人納金の特例)
第四条 法第五十九条第二項但書及び第三項の規定の適用については、これらの規定中「百分の一」とあるのは「百分の二」と読み替えるものとする。
(増加恩給年額の待例)
第五条 公務員又は公務員に準ずる者の増加恩給の年額は、法第六十五条の規定にかかわらず、退職当時の俸給年額に傷病の原因及び不具はい疾の程度により定めた別表第一号表の率を乗じて得た金額とする。但し、傷いを受け、又は疾病にかかつた時から五年内に退職しなかつた場合においては、傷いを受け、又は疾病にかかつた時から五年を経過した日における俸給の額により計算した俸給年額を退職当時の俸給年額とみなす。
(傷病年金年額の特例)
第六条 公務員又は公務員に準ずる者の傷病年金の年額は、法第六十五条の二の規定にかかわらず、退職当時の俸給年額に傷病の原因及び傷病の程度により定めた別表第二号表の率を乗じて得た金額(普通恩給を併給される場合においては、その金額の十分の八・五に相当する金額)とする。
2 前条但書の規定は、傷病年金を給すべき者の退職当時の俸給年額について、これを準用する。
(増加恩給又は傷病年金の家族加給)
第七条 増加恩給又は傷病年金を受ける場合において、これを受ける者に扶養家族があるときは、二千四百円に扶養家族の員数を乗じて得た金額を、増加恩給又は傷病年金の年額に加給する。
2 前項の「扶養家族」とは、増加恩給又は傷病年金を受ける者の退職当時から引き続いてその者により生計を維持し、又はその者と生計を共にする祖父母、父母、妻及び未成年の子をいう。
(扶助料年額の特例)
第八条 法第七十五条第一項の規定の適用については、同項第二号中「退職当時の等級により定めたる別表第五号表の率」とあるのは「四十割」と、同項第三号中「退職当時の等級により定めたる別表第六号表の率」とあるのは「三十三割」と、同項第四号中「退職当時の等級により定めたる別表第七号表の率」とあるのは「二十四割」と読み替えるものとする。
2 法第七十五条第一項第二号から第四号までの規定による扶助料を受ける場合において、これを受ける者に扶養遺族あるときは、法第七十五条第二項から第四項までの規定にかかわらず、二千四百円に扶養遺族の員数を乗じて得た金額を、扶助料の年額に加給する。
3 前項の「扶養遺族」とは、扶助料を受ける者により生計を維持し、又はその者と生計を共にする遺族で扶助料を受ける要件を具えるものをいう。
(重複加給の禁止)
第九条 第七条第一項又は前条第二項の規定により加給を受けるべき場合において、一人の扶養家族又は扶養遺族が二以上の恩給について加給を受けるべき原因となるときは、当該扶養家族又は扶養遺族は、最初に給与事由の生じた恩給についてのみ加給の原因となるものとする。
(災害補償との関係)
第十条 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第七十七条の規定による障害補償又はこれに相当する給付であつて同法第八十四条第一項の規定に該当するものを受けた者については、当該補償又は給付を受ける事由の生じた月の翌月から六年間は、増加恩給又は傷病年金(第七条第一項の規定によりこれらの年額に加給される年額を含む。)は、これを停止する。
第十一条 労働基準法第七十九条の規定による遺族補償又はこれに相当する給付であつて同法第八十四条第一項の規定に該当するものを受けた者については、当該補償又は給付を受ける事由の生じた月の翌月から六年間は、左の区分によつて扶助料の一部を停止する。
一 法第七十五条第一項第二号の規定による扶助料については、その年額の四十分の三十に相当する金額に第八条第二項の規定による加給年額を加えた金額
二 法第七十五条第一項第三号の規定による扶助料については、その年額の三十三分の二十三に相当する金額に第八条第二項の規定による加給年額を加えた金額
三 法第七十五条第一項第四号の規定による扶助料については、その年額の二十四分の十四に相当する金額に第八条第二項の規定による加給年額を加えた金額
第十二条 前二条の規定による停止年額が、その者の受けた労働基準法第七十七条若しくは第七十九条の規定による補償又はこれに相当する給付であつて同法第八十四条の規定に該当するものの金額の六分の一に相当する金額をこえる者については、その停止年額は、当該補償又は給付の金額の六分の一に相当する金額とする。
(恩給の請求手続)
第十三条 この法律の規定による恩給の請求手続については、政令でこれを定める。
附 則
第十四条 この法律は、公布の日から、これを施行し、昭和二十三年七月一日から、これを適用する。
第十五条 恩給法臨時特例(昭和二十一年法律第三十六号)は、昭和二十三年六月三十日限り、これを廃止する。
第十六条 昭和二十三年六月三十日以前に給与事由の生じた一時恩給又は一時扶助料の金額及び同日以前に給与事由の生じた普通恩給、増加恩給、傷病年金又は扶助料の昭和二十三年九月分までの年額の計算については、なお従前の例による。
2 前項の場合においては、昭和二十三年一月一日から同年六月三十日までに退職し、又は死亡した者の退職又は死亡当時の俸給の額は、昭和二十二年十二月三十一日における給与に関する法令の規定による本俸の額とする。
第十七条 前条に規定する普通恩給、増加恩給、傷病年金又は扶助料については、昭和二十三年十月分以降、その年額を普通恩給年額計算の基礎となつた俸給年額(普通恩給を受けない者については、これを受けるものとした場合において、普通恩給の年額計算の基礎となるべき俸給年額を含む。)にそれぞれ対応する別表第三号表の仮定俸給年額を退職又は死亡当時の俸給年額とみなしてこの法律の規定を適用して算出した年額に改定する。
第十八条 前条の普通恩給を受ける者については、第二条第三項及び第四項の規定は、これを適用しない。
2 前項の普通恩給を受ける者に第二条第一項の規定を適用する場合において、その者に支給する額は、この法律の制定がなかつたならば受けるべきであつた額を下ることはない。
第十九条 この法律の適用を受ける恩給額の計算については、恩給の減額補給及び停止に関する法律(昭和七年法律第十三号)は、これを適用しない。
第二十条 昭和二十一年七月一日以後引き続いて内地外にある者が内地に帰還しないで退職し、又は死亡した場合に給する恩給の額の計算については、その者が昭和二十一年六月三十日において現に受けていた俸給の年額の百分の百三十(公務に因る傷い又は疾病のため退職し、又は死亡した者については、百分の百四十五)に相当する額にそれぞれ対応する別表第三号表の仮定俸給年額を退職又は死亡当時の俸給年額とみなしてこの法律の規定を適用する。
第二十一条 第十七条の規定により恩給年額を改定する場合においては、裁定庁は、受給者の請求を待たずに、これを行う。但し、第七条第一項又は第八条第二項の規定による加給については、受給者の請求を待つて、これを行う。
(別表)
第一号表
症状等差 |
特別項 |
第一項 |
第二項 |
第三項 |
第四項 |
第五項 |
第六項 |
第七項 |
|
傷病原因 |
|||||||||
甲号 |
特殊公務 |
104 150 |
88 150 |
71 150 |
58 150 |
46 150 |
38 150 |
27 150 |
|
乙号 |
普通公務 |
88 150 |
74 150 |
60 150 |
49 150 |
40 150 |
33 150 |
23 150 |
|
特別項は、各号第一項の率に其の十分の五以内の率を加えたるものとする。 |
第二号表
症状等差 |
第一款 |
第二款 |
第三款 |
第四款 |
|
傷病原因 |
|||||
甲号 |
特殊公務 |
30 150 |
24 150 |
21 150 |
18 150 |
乙号 |
普通公務 |
25 150 |
20 150 |
18 150 |
15 150 |
第三号表
普通恩給年額計算の基礎となつた俸給年額 |
仮定俸給年額 |
円 |
円 |
五四〇 |
一四、四〇〇 |
六〇〇 |
一五、八四〇 |
六六〇 |
一七、二八〇 |
七八〇 |
一八、七二〇 |
九〇〇 |
二〇、一六〇 |
一、〇二〇 |
二二、〇八〇 |
一、一四〇 |
二四、〇〇〇 |
一、二六〇 |
二五、九二〇 |
一、三八〇 |
二七、八四〇 |
一、五〇〇 |
二九、七六〇 |
一、六二〇 |
三一、六八〇 |
一、七四〇 |
三三、六〇〇 |
一、九二〇 |
三六、〇〇〇 |
二、一〇〇 |
三八、四〇〇 |
二、二八〇 |
四〇、八〇〇 |
二、四六〇 |
四三、二〇〇 |
二、六四〇 |
四五、六〇〇 |
二、八八〇 |
四八、〇〇〇 |
三、一二〇 |
五〇、四〇〇 |
三、三六〇 |
五二、八〇〇 |
三、六〇〇 |
五五、二〇〇 |
三、八四〇 |
五七、六〇〇 |
四、三二〇 |
六二、四〇〇 |
四、八〇〇 |
六七、二〇〇 |
五、二八〇 |
七二、〇〇〇 |
五、七六〇 |
七六、八〇〇 |
六、二四〇 |
八一、六〇〇 |
六、七二〇 |
八六、四〇〇 |
七、二〇〇 |
九一、二〇〇 |
七、八〇〇 |
九六、〇〇〇 |
八、四〇〇 |
一二〇、〇〇〇 |
一二、〇〇〇 |
一四四、〇〇〇 |
普通恩給年額計算の基礎となつた俸給年額五四〇円未満の者の仮定俸給年額は、その俸給年額の二六倍に相当する額とする。 普通恩給年額計算の基礎となつた俸給年額が、この表記載の額に合致しないものについては、その直近多額の俸給額に対する仮定俸給年額による。 |
(内閣総理大臣署名)