民事執行法の一部を改正する法律(衆法)
法律第百八号(平八・六・二六)
民事執行法(昭和五十四年法律第四号)の一部を次のように改正する。
第五十五条第一項中「債務者が、」を「債務者又は不動産の占有者が」に改め、「をするとき、」を削り、「おそれがある行為」の下に「(以下この項及び次項において「価格減少行為等」という。)」を加え、「次条において同じ。」を削り、「債務者に」を「その行為をする者に」に、「これらの行為」を「価格減少行為等」に改め、同条第二項中「債務者が」を「不動産を占有する債務者又は不動産の占有者でその占有の権原を差押債権者、仮差押債権者若しくは第五十九条第一項の規定により消滅する権利を有する者に対抗することができないものが、」に改め、「違反した」の下に「とき、又は価格減少行為等をする場合において同項の規定による命令によつては不動産の価格の著しい減少を防止することができないと認めるべき特別の事情がある」を加え、「同項の命令を申し立てた者」を「差押債権者(配当要求の終期後に強制競売又は競売の申立てをした差押債権者を除く。次条において同じ。)」に、「債務者に」を「その命令に違反した者又はその行為をする者に」に改め、同条中第八項を第九項とし、第七項を第八項とし、第六項を第七項とし、同条第五項中「第三項」を「第四項」に改め、同項を同条第六項とし、同条第四項中「前三項」を「第一項、第二項又は前項」に改め、同項を同条第五項とし、同条第三項中「前二項」を「第一項又は第二項」に改め、同項を同条第四項とし、同条第二項の次に次の一項を加える。
3 執行裁判所は、債務者以外の占有者に対し前二項の規定による決定をする場合において、必要があると認めるときは、その者を審尋しなければならない。
第五十六条第二項中「前条第八項」を「前条第九項」に改める。
第七十七条第一項中「債務者が」を「債務者又は不動産の占有者でその占有の権原を差押債権者、仮差押債権者若しくは第五十九条第一項の規定により消滅する権利を有する者に対抗することができないものが」に、「債務者に」を「その行為をし、又はその行為をするおそれがある者に」に改め、同条第二項中「及び第五項から第七項」を「、第四項及び第六項から第八項」に、「同条第四項」を「同条第五項」に、「第五十五条第三項の」を「第五十五条第四項の」に改める。
第八十三条第一項中「事件の記録上差押えの効力発生前から権原により占有している者でないと認められる」及び「差押えの効力発生後に占有した者で」を削り、「ものに」を「者に」に改め、同条第三項中「ただし、」の下に「事件の記録上その者が買受人に対抗することができる権原により占有しているものでないことが明らかであるとき、又は」を加える。
第百十五条第七項中「第五十五条第六項から第八項」を「第五十五条第七項から第九項」に改める。
第百二十一条中「第六項及び第七項」を「第七項及び第八項」に改める。
第百二十七条第四項中「第五十五条第六項から第八項」を「第五十五条第七項から第九項」に改める。
第百八十二条中「その権利者」の下に「。以下同じ。」を加える。
第百八十七条の次に次の一条を加える。
(不動産競売の開始決定前の保全処分)
第百八十七条の二 不動産競売の開始決定がされる前に、債務者又は担保権の目的である不動産の所有者若しくは占有者が不動産の価格を著しく減少する行為又はそのおそれがある行為(以下この項及び次項において「価格減少行為等」という。)をする場合において、特に必要があるときは、執行裁判所は、その不動産につき担保権を実行しようとする者(次項において「担保権実行者」という。)の申立てにより、担保を立てさせ、又は立てさせないで、その行為をする者に対し、その不動産についての民事執行の売却の手続において買受人が代金を納付するまでの間、価格減少行為等を禁止し、又は一定の行為を命ずることができる。
2 不動産競売の開始決定がされる前に、担保権の目的である不動産を占有する債務者若しくは所有者又はその不動産の占有者でその占有の権原を担保権実行者に対抗することができないものが、前項の規定による命令に違反したとき、又は価格減少行為等をする場合において同項の規定による命令によつては不動産の価格の著しい減少を防止することができないと認めるべき特別の事情があるときは、執行裁判所は、担保権実行者の申立てにより、担保を立てさせて、その命令に違反した者又はその行為をする者に対し、その不動産についての民事執行の売却の手続において買受人が代金を納付するまでの間、不動産に対する占有を解いて執行官に保管させるべきことを命ずることができる。
3 前二項の申立てをするには、第百八十一条第一項から第三項までに規定する文書を提示しなければならない。
4 申立人が、第一項又は第二項の規定による決定の告知を受けた日から三月以内に、当該担保権の実行としての不動産競売の申立てをしたことを証する文書を提出しないときは、執行裁判所は、相手方又は当該担保権の目的である不動産の所有者の申立てにより、その決定を取り消さなければならない。
5 第五十五条第三項、第四項及び第六項の規定は第一項又は第二項の規定による決定について、同条第五項の規定は第一項若しくは第二項の申立て又はこの項において準用する第五十五条第四項の申立てについての裁判について、同条第七項及び第八項の規定は第二項の規定による決定について、同条第九項の規定は第一項若しくは第二項の申立て又は同項の規定による決定の執行に要した費用について準用する。この場合において、同条第三項中「債務者以外の占有者」とあるのは、「債務者及び当該担保権の目的である不動産の所有者以外の占有者」と読み替えるものとする。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(経過措置)
2 この法律の施行前に申し立てられた民事執行の事件については、なお従前の例による。
(執行官法の一部改正)
3 執行官法(昭和四十一年法律第百十一号)の一部を次のように改正する。
第八条第一項第十七号中「又は第七十七条第一項」を「、第七十七条第一項又は第百八十七条の二第二項」に改める。
(民事訴訟費用等に関する法律の一部改正)
4 民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)の一部を次のように改正する。
別表第一の一七の項ロ中「同条第三項」を「同条第四項」に、「又は同法第百七十二条第二項の規定による」を「、同法第百七十二条第二項の規定による申立て又は同法第百八十七条の二第一項若しくは第二項の規定による不動産競売の開始決定前の保全処分若しくは同条第四項の規定によるその取消しの」に改める。
(検討)
5 政府は、この法律の施行後五年を目途として、この法律による改正後の民事執行法第五十五条、第七十七条、第八十三条及び第百八十七条の二の規定の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、これらの規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
(法務・内閣総理大臣臨時代理署名)