伝統的工芸品産業の振興に関する法律

法律第五十七号(昭四九・五・二五)

第一条 この法律は、一定の地域で主として伝統的な技術又は技法等を用いて製造される伝統的工芸品が、民衆の生活の中ではぐくまれ受け継がれてきたこと及び将来もそれが存在し続ける基盤があることにかんがみ、このような伝統的工芸品の産業の振興を図り、もつて国民の生活に豊かさと潤いを与えるとともに地域経済の発展に寄与し、国民経済の健全な発展に資することを目的とする。

 (伝統的工芸品の指定等)

第二条 通商産業大臣は、伝統的工芸品産業審議会の意見をきいて、工芸品であつて次の各号に掲げる要件に該当するものを伝統的工芸品として指定するものとする。

 一 主として日常生活の用に供されるものであること。

 二 その製造過程の主要部分が手工業的であること。

 三 伝統的な技術又は技法により製造されるものであること。

 四 伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるものであること。

 五 一定の地域において少なくない数の者がその製造を行ない、又はその製造に従事しているものであること。

2 前項の規定による伝統的工芸品の指定は、当該伝統的工芸品の製造に係る伝統的な技術又は技法及び伝統的に使用されてきた原材料並びに当該伝統的工芸品の製造される地域を定めて、行なうものとする。

3 事業協同組合、協同組合連合会、商工組合その他政令で定める法人で工芸品を製造する事業者を直接又は間接の構成員とするものは、当該工芸品が伝統的工芸品として指定されるよう都道府県知事(当該工芸品の製造される地域の全部が地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市(以下次条第一項において「指定都市」という。)の区域に属する場合にあつては、当該指定都市の長)を経由して通商産業大臣に申し出ることができる。

4 通商産業大臣は、伝統的工芸品の指定をしたときは、その旨を公示するものとする。

5 通商産業大臣は、伝統的工芸品が第一項各号に掲げる要件の一に該当しなくなつたときは、伝統的工芸品産業審議会の意見をきいて、その指定を解除することができる。

6 第四項の規定は、伝統的工芸品の指定の解除について準用する。

 (振興計画の作成等)

第三条 伝統的工芸品を製造する事業者を直接又は間接の構成員とする事業協同組合、協同組合連合会、商工組合その他政令で定める法人(以下「協同組合等」という。)は、伝統的工芸品産業に関する振興計画(以下「振興計画」という。)を作成し、これを都道府県知事(当該振興計画に係る伝統的工芸品の製造される地域の全部が指定都市の区域に属する場合にあつては、当該指定都市の長。以下同じ。)を経由して通商産業大臣に提出し、当該振興計画が適当である旨の認定を受けることができる。

2 都道府県知事は、前項の振興計画を受理したときは、これを検討し、意見を附して、通商産業大臣に送付するものとする。

3 前二項に規定するもののほか、振興計画の認定及びその取消しに関し必要な事項は、通商産業省令で定める。


 (振興計画の内容)

第四条 振興計画には、次の各号に掲げる事項について定めるものとする。

 一 従事者の後継者の確保及び育成並びに従事者の研修に関する事項

 二 技術又は技法の継承及び改善その他品質の維持及び改善に関する事項

 三 原材料の確保及び原材料についての研究に関する事項

 四 需要の開拓に関する事項

 五 作業場その他作業環境の改善に関する事項

 六 原材料の共同購入、製品の共同販売その他事業の共同化に関する事項

 七 品質の表示、消費者への適正な情報の提供等に関する事項

 八 老齢者である従事者、技術に熟練した従事者その他の従事者の福利厚生に関する事項

 九 その他伝統的工芸品産業の振興を図るために必要な事項


 (認定振興計画の実施に要する経費の補助)

第五条 国及び地方公共団体は、第三条第一項の認定を受けた振興計画(以下「認定振興計画」という。)に基づく事業を実施する協同組合等に対し、当該事業を実施するのに必要な経費の一部を補助することができる。


 (認定振興計画の実施に要する資金の確保等)

第六条 国及び地方公共団体は、認定振興計画に基づく事業を実施するのに必要な資金の確保又はその融通のあつせんに努めるものとする。


 (税制上の措置)

第七条 国及び地方公共団体は、認定振興計画に基づく事業の実施を円滑に推進するため税制上必要な措置を講ずるものとする。


 (表示)

第八条 協同組合等は、その直接又は間接の構成員である伝統的工芸品を製造する事業者の製造する伝統的工芸品について、伝統的工芸品として指定されているものであることの表示を附することができる。


 (指導及び助言)

第九条 通商産業大臣は、伝統的工芸品を製造する事業者に対し、伝統的工芸品産業の振興に関し必要な指導及び助言をすることができる。


 (報告の徴収)

第十条 通商産業大臣又は都道府県知事は、認定振興計画に基づく事業を実施している協同組合等に対し、その実施状況について報告を求めることができる。

2 通商産業大臣又は都道府県知事は、特に必要があると認めるときは、認定振興計画に基づく事業を実施している協同組合等の直接又は間接の構成員である伝統的工芸品を製造している事業者に対し、必要な報告を求めることができる。


 (伝統的工芸品産業審議会)

第十一条 通商産業省に、附属機関として、伝統的工芸品産業審議会(以下この条において「審議会」という。)を置く。

2 審議会は、この法律によりその権限に属させられた事項を調査審議するほか、通商産業大臣の諮問に応じ、伝統的工芸品産業に関する重要事項を調査審議する。

3 審議会は、前項に規定する事項に関し通商産業大臣に意見を述べることができる。

4 審議会は、委員二十五人以内で組織する。

5 委員は、伝統的工芸品産業に関し学織経験のある者のうちから、通商産業大臣が任命する。

6 委員の任期は、二年とする。

7 委員は、非常勤とする。

8 第四項から前項までに定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。


 (伝統的工芸品産業振興協会の設立)

第十二条 協同組合等は、伝統的工芸品産業の振興に資することを目的とする伝統的工芸品産業振興協会(以下「協会」という。)と称する全国を通じて一個の民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の規定による法人を設立することができる。


 (協会の業務)

第十三条 協会は、その目的を達成するため、次に掲げる業務を行なう。

 一 伝統的工芸品の製造の事業に関する経営の改善及び合理化その他当該事業の健全な経営に関し調査、研究及び指導を行なうこと。

 二 展示会の開催その他需要の開拓を行なうこと。

 三 会員に対し、伝統的工芸品に関する需要の状況、製造の技術又は技法、原材料等について情報の提供を行なうこと。

 四 振興計画の作成及びその実施について指導、助言等を行なうこと。

 五 伝統的工芸品の原材料、製造過程、品質等の改善に関する研究を行なうこと。

 六 伝統的工芸品の品質の表示について指導、助言等を行なうこと。

 七 伝統的工芸品に関する資料の収集及び調査を行なうこと。

 八 その他協会の目的を達成するため必要な業務を行なうこと。


 (名称の使用制限)

第十四条 協会でない者は、伝統的工芸品産業振興協会という名称を用いてはならない。


 (協会に対する補助)

第十五条 国及び地方公共団体は、協会に対し、第十三条の業務を行なうのに必要な経費の一部を補助することができる。


 (罰則)

第十六条 第十条第一項又は第二項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、三万円以下の罰金に処する。

2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同項の刑を科する。

第十七条 第十四条の規定に違反した者は、一万円以下の過料に処する。


   附 則


 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から施行する。


 (経過措置)

2 この法律の施行の際現にその名称中に伝統的工芸品産業振興協会という名称を用いている者については、第十四条の規定は、この法律の施行の日から六月間は、適用しない。


 (通商産業省設置法の一部改正)

3 通商産業省設置法(昭和二十七年法律第二百七十五号)の一部を次のように改正する。

  第二十五条第一項の表中繊維工業審議会の項の次に次のように加える。

伝統的工芸品産業審議会

伝統的工芸品産業に関する重要事項を調査審議すること。

(法務・通商産業・内閣総理大臣署名) 

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