金属鉱業等鉱害対策特別措置法

法律第二十六号(昭四八・五・一)

 (目的)

第一条 この法律は、金属鉱物等の採掘及びこれに附属する選鉱、製錬その他の事業(以下「金属鉱業等」という。)の用に供される坑道及び捨石又は鉱さいの集積場の使用の終了後における鉱害を防止するための事業の確実な実施を図るため、鉱害防止積立金の制度を設けるとともに、使用済みのこれらの施設について鉱害を防止するための事業を計画的に実施させるため必要な措置を講ずることにより、鉱山保安法(昭和二十四年法律第七十号)と相まつて、金属鉱業等による鉱害を防止し、もつて国民の健康の保護及び生活環境の保全に寄与することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「金属鉱物等」とは、銅鉱、鉛鉱、水銀鉱、亜鉛鉱、 砒鉱、いおうその他その採掘及びこれに附属する選鉱、製錬等の事業が終了した後においても坑水又は廃水による鉱害を生ずるおそれが多いものとして通商産業省令で定める鉱物をいう。

2 この法律において「採掘権」又は「租鉱権」とは、金属鉱物等を目的とする採掘権又は租鉱権をいい、「採掘権者」又は「租鉱権者」とは、金属鉱物等を目的とする採掘権又は租鉱権を有する者をいう。

3 この法律において「特定施設」とは、金属鉱業等の用に供される坑道及び捨石又は鉱さいの集積場(その使用の終了後に坑水又は廃水による鉱害を生ずるおそれがないものとして通商産業省令で定めるものを除く。)をいう。

4 この法律において「鉱害防止事業」とは、坑道の坑口の閉そく事業、捨石又は鉱さいの集積場の覆土、植栽等の事業その他特定施設の使用の終了後における坑水又は廃水による鉱害を防止するために行なわれる事業をいう。


 (処分等の効力)

第三条 この法律の規定によつてした処分及び採掘権者又は租鉱権者がこの法律の規定によつてした手続その他の行為は、これらの者の相続人その他の一般承継人に対しても、その効力を有する。

2 採掘権の譲渡又は租鉱権の消滅があつたときは、この法律の規定によつてした手続その他の行為は、当該採掘権の譲受人又は当該租鉱権の消滅に係る採掘鉱区の採掘権者に対しても、その効力を有する。

 (使用済特定施設に係る鉱害防止事業に関する基本方針)

第四条 通商産業大臣は、この法律の施行前に使用を終了している特定施設(以下「使用済特定施設」という。)に係る鉱害防止事業の実施に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。

2 基本方針においては、使用済特定施設に係る鉱害防止事業の実施の時期及び事業量その他使用済特定施設に係る鉱害防止事業の計画的な実施を図るため必要な事項を定めるものとする。

3 通商産業大臣は、基本方針を定めようとするときは、環境庁長官に協議し、かつ、中央鉱山保安協議会の意見をきかなければならない。

4 通商産業大臣は、基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

5 通商産業大臣は、第二条第一項の通商産業省令の改正により一の鉱物が金属鉱物等となつたときは、当該鉱物に係る特定施設であつて当該鉱物が金属鉱物等となつた日前に使用を終了しているものに係る鉱害防止事業の実施に関する部分を基本方針に追加するものとする。

6 第二項から第四項までの規定は、前項の場合について準用する。


 (使用済特定施設鉱害防止事業計画の届出等)

第五条 採掘権者又は租鉱権者は、鉱山保安法第四条の規定により措置を講じなければならないものとされる使用済特定施設(前条第五項に規定する特定施設を含む。以下同じ。)に係る鉱害防止事業について、通商産業省令で定めるところにより、使用済特定施設鉱害防止事業計画(以下「事業計画」という。)を作成し、これを鉱山保安監督局長又は鉱山保安監督部長に届け出なければならない。これを変更したときも、同様とする。

2 事業計画には、使用済特定施設ごとに、実施しようとする鉱害防止事業の内容、その実施の時期その他の通商産業省令で定める事項を記載するとともに、使用済特定施設の配置図その他の通商産業省令で定める書面を添附しなければならない。

3 鉱山保安監督局長又は鉱山保安監督部長は、第一項の規定による届出があつた場合において、届出に係る事業計画(同項の規定による変更の届出があつたときは、その変更後のもの。以下同じ。)が基本方針に照らし不適切であると認めるとき、又は当該使用済特定施設に係る坑水又は廃水による鉱害を防止するため必要があると認めるときは、その届出を受理した日から九十日以内に限り、当該採掘権者又は租鉱権者に対し、その事業計画の変更を命ずることができる。

4 鉱山保安監督局長又は鉱山保安監督部長は、採掘権者又は租鉱権者が第一項の規定による届出に係る事業計画に従つて鉱害防止事業を実施していないと認めるときは、鉱山保安法の規定による措置をとるものとする。


 (資金の確保)

第六条 国は、前条第一項の規定による届出に係る事業計画に従つて鉱害防止事業を実施するのに必要な資金の確保又はその融通のあつせんに努めるものとする。


 (鉱害防止積立金の積立て)

第七条 採掘権者又は租鉱権者は、毎年度、鉱山保安法第四条の規定により措置を講じなければならないものとされる特定施設(使用済特定施設を除く。第十四条第一項を除き、以下同じ。)ごとに、鉱山保安監督局長又は鉱山保安監督部長が第四項の規定により通知する額の金銭を鉱害防止積立金として積み立てなければならない。

2 鉱害防止積立金の積立ては、通商産業省令で定めるところにより、金属鉱業事業団にしなければならない。

3 鉱害防止積立金は、金属鉱業事業団が管理する。

4 鉱害防止積立金の額は、当該特定施設に係る鉱害防止事業に必要な費用の額及び当該特定施設の使用期間を基礎とし、通商産業省令で定める算定基準に従い、鉱山保安監督局長又は鉱山保安監督部長が算定して通知する額とする。


 (利息)

第八条 金属鉱業事業団は、通商産業省令で定めるところにより、鉱害防止積立金に利息を付さなければならない。


 (取りもどし)

第九条 採掘権者若しくは租鉱権者又は採掘権者若しくは租鉱権者であつた者は、鉱害防止積立金の積立てをしている特定施設について鉱害防止事業を実施するときその他当該特定施設に係る鉱害防止積立金を積み立てておく必要がないものとして通商産業省令で定める場合には、通商産業省令で定めるところにより、当該特定施設に係る鉱害防止積立金を取りもどすことができる。


 (承継等)

第十条 採掘権者又は租鉱権者について相続その他の一般承継があつたときは、これらの者が積み立てた鉱害防止積立金は、これらの者の相続人その他の一般承継人が積み立てたものとみなす。

2 採掘権の譲渡があつたときは、当該採掘権者が積み立てた鉱害防止積立金は、当該採掘権の譲受人が積み立てたものとみなす。

3 租鉱権の消滅があつたときは、当該租鉱権者が積み立てた鉱害防止積立金は、当該租鉱権の消滅に係る採掘鉱区の採掘権者が積み立てたものとみなす。


 (通商産業省令への委任)

第十一条 第七条から前条までに定めるもののほか、鉱害防止積立金の積立て及び取りもどしに関し必要な事項は、通商産業省令で定める。


 (鉱業の停止)

第十二条 鉱山保安監督局長又は鉱山保安監督部長は、採掘権者又は租鉱権者が次の各号の一に該当するときは、当該採掘権者又は租鉱権者に対し、一年以内の期間を定めて、その鉱業の停止を命ずることができる。

 一 第五条第一項の規定に違反したとき。

 二 第五条第三項の規定による命令に違反したとき。

 三 第七条第一項の規定による積立てをしなければならない場合においてその積立てをしていないとき。

2 鉱山保安法第二十四条の二第二項並びに第二十七条第一項本文及び第二項の規定は、前項の規定による命令をする場合について準用する。


 (鉱業権の取消し)

第十三条 通商産業局長は、採掘権者又は租鉱権者が前条第一項の規定による命令に違反したときは、採掘権又は租鉱権を取り消すことができる。

2 鉱業法(昭和二十五年法律第二百八十九号)第四十条の規定は、前項の規定による取消しについて準用する。


 (報告及び検査)

第十四条 通商産業局長又は鉱山保安監督局長若しくは鉱山保安監督部長は、この法律の施行に必要な限度において、採掘権者若しくは租鉱権者に対し、その業務に関し報告を求め、又はその職員に、これらの者の事業場若しくは事務所に立ち入り、特定施設、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。

2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。


 (審査請求等についての鉱業法の準用)

第十五条 鉱業法第百七十一条から第百七十七条までの規定は第十三条第一項の規定による通商産業局長の処分についての審査請求について、同法第百八十条の規定はその処分の取消しの訴えについて準用する。


 (罰則)

第十六条 第十二条第一項の規定による命令に違反した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

第十七条 次の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。

 一 第五条第一項の規定に違反して届出をせず、又は虚偽の届出をした者

 二 第五条第三項の規定による命令に違反した者

第十八条 第十四条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、五万円以下の罰金に処する。

第十九条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して、各本条の罰金刑を科する。


   附 則

1 この法律は、公布の日から起算して三月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。

2 金属鉱業事業団法(昭和三十八年法律第七十八号)の一部を次のように改正する。

  第十八条第一項中第十二号を第十三号とし、第十一号を第十二号とし、第十号を第十一号とし、第九号の次に次の一号を加える。

 十 金属鉱業等鉱害対策特別措置法(昭和四十八年法律第二十六号)第七条第三項の規定による鉱害防止積立金の管理

(法務・通商産業・内閣総理大臣署名) 

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