中小企業投資育成株式会社法

法律第百一号(昭三八・六・一〇)

 (会社の目的)

第一条 中小企業投資育成株式会社は、中小企業の自己資本の充実を促進し、その健全な成長発展を図るため、中小企業に対する投資等の事業を行なうことを目的とする株式会社とする。

 (会社の数及び事務所)

第二条 中小企業投資育成株式会社(以下「会社」という。)は、東京中小企業投資育成株式会社、名古屋中小企業投資育成株式会社及び大阪中小企業投資育成株式会社とし、それぞれ本店を東京都、名古屋市及び大阪市に置く。

 (株式)

第三条 会社の株式は、額面株式とする。

2 中小企業金融公庫(以下「公庫」という。)は、中小企業金融公庫法(昭和二十八年法律第百三十八号)第十九条の規定にかかわらず、会社の発行する議決権のない株式で利益の配当及び残余財産の分配について優先的内容を有し、かつ、利益をもつて消却することができるもの(以下「優先株式」という。)を引き受けることができる。

3 商法(明治三十二年法律第四十八号)第二百四十二条第二項の規定は、前項の規定により公庫が引き受ける優先株式の発行については、適用しない。

4 第二項の規定により公庫が引き受ける優先株式の発行価額の総額は、六億円をこえることができないものとし、その引き受ける優先株式の数は、会社ごとにその発行済み株式の総数の三分の一をこえることができないものとする。

5 第二項の規定により公庫が引き受けた優先株式は、何人も、これを譲り受けることができない。

6 第二項の規定による優先株式の引受けは、中小企業金融公庫法の適用については、同法第十九条の業務とみなし、当該優先株式に対する配当(第五条第三項又は第四項の規定により支払を受ける金額を含む。)は、公庫の予算及び決算に関する法律(昭和二十六年法律第九十九号)の適用については、同法第五条第三項に規定する収入とみなす。

7 会社は、新株を発行しようとするときは、通商産業大臣の認可を受けなければならない。

第四条 会社は、他の法令の規定にかかわらず、前条第二項の規定により公庫が引き受ける優先株式を発行する旨及び当該優先株式の数を定款に記載しなければならない。

2 会社は、前条第二項の規定により公庫が引き受ける優先株式を発行する前に、当該優先株式の消却及び当該優先株式に対する配当に関する優先株式消却計画を定め、通商産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

第五条 会社は、毎営業年度における利益のうちから、次の各号に定めるところにより、第三条第二項の規定により公庫が引き受けた優先株式の消却及び当該優先株式に対する配当をしなければならない。

 一 利益のうち、優先株式消却計画に定める金額の当該優先株式の消却への充当

 二 前号の金額を控除してなお利益があるときは、当該優先株式に対して優先株式消却計画に定める割合(以下「優先配当割合」という。)に達するまでの金額の配当への充当

2 第三条第二項の規定により公庫が引き受けた優先株式の消却は、額面金額により行なう。

3 第三条第二項の規定により公庫が引き受けた優先株式に対する配当金額が優先配当割合(優先株式消却計画において二以上の優先配当割合を定めたときは、その最も大きい割合)によつて計算した金額に達しない営業年度があつたときは、当該会社は、その不足額の合計額に相当する金額を、政令で定めるところにより、当該優先株式の総数の消却を終わつた営業年度以後の各営業年度における利益のうちから、公庫に対して支払わなければならない。

4 会社が前項の不足額の全部を支払う前に解散した場合において残余財産があるときは、まだ支払われない不足額は、残余財産の分配に先き立つて支払わなければならない。

5 公庫に対する残余財産の分配については、第三条第二項の規定により公庫が引き受けた優先株式以外の株式に優先して当該優先株式の額面金額を支払うものとする。


 (商号の使用制限)

第六条 会社以外の者は、その商号中に中小企業投資育成株式会社という文字を使用してはならない。


 (代表取締役等の選定等の決議)

第七条 会社の代表取締役の選定及び解職並びに監査役の選任及び解任の決議は、通商産業大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。


 (事業の範囲)

第八条 会社は、その目的を達成するため、次の事業を営むものとする。

 一 資本の額が五千万円以下の株式会社であつて、その業種に属する中小企業の健全な成長発展を図ることが産業構造の高度化又は産業の国際競争力の強化の促進に寄与すると認められる業種で政令で定めるものに属する事業を主たる事業として営むものの発行する新株の引受け及び当該引受けに係る株式の保有

 二 前号の規定により会社がその株式を保有している株式会社(同号に規定する株式会社を除く。)の発行する新株の引受け及び当該引受けに係る株式の保有

 三 前二号の規定により会社がその株式を保有している株式会社の依頼に応じて、経営又は技術の指導を行なう事業

 四 前三号の事業に附帯する事業

2 会社は、前項第一号又は第二号の規定により新株を引き受ける場合において、当該引受けに係る新株の発行後のその株式会社の資本の額が一億円をこえることとなるときは、その新株を引き受けてはならない。


 (事業に関する規程)

第九条 会社は、業務開始の際、その営む事業に関する規程を定め、通商産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

2 前項の規程には、次の事項を定めておかなければならない。

 一 新株の引受けの相手方の選定の基準、新株の引受けの際の評価の基準、新株の引受けの限度、株式の保有期間及び株式の処分の方法

 二 前条第一項第三号に掲げる事業に係る手数料


 (事業計画等)

第十条 会社は、毎営業年度の開始前に、その営業年度の事業計画、資金計画及び収支予算を定め、通商産業大臣の認可を受けなければならない。これらを変更しようとするときも、同様とする。


 (定款の変更等)

第十一条 会社の定款の変更、利益金の処分、合併及び解散の決議は、通商産業大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。


 (財産目録等の提出)

第十二条 会社は、毎営業年度経過後三月以内に、その営業年度の財産目録、貸借対照表及び損益計算書並びに営業報告書を通商産業大臣に提出しなければならない。


 (監督)

第十三条 会社は、通商産業大臣がこの法律の定めるところに従い監督する。

2 通商産業大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、会社に対し、業務に関し監督上必要な命令をすることができる。


 (協議)

第十四条 通商産業大臣は、第三条第七項、第四条第二項、第九条第一項、第十条又は第十一条(会社の定款の変更の決議に係るものについては、会社の発行する株式の総数を変更するものに限る。)の認可をしようとするときは、大蔵大臣に協議しなければならない。


 (報告及び検査)

第十五条 通商産業大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、会社からその業務に関し報告をさせ、又はその職員に、会社の営業所若しくは事務所に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。

2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。


 (公庫の貸付け)

第十六条 公庫は、中小企業金融公庫法第十九条の規定にかかわらず、会社に対し、その事業に必要な長期資金を貸し付けることができる。

2 前項の規定による貸付けは、中小企業金融公庫法の適用については、同法第十九条の業務とみなす。


 (罰則)

第十七条 会社の取締役、監査役又は職員が、その職務に関して、わいろを収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、三年以下の懲役に処する。これによつて不正の行為をし、又は相当の行為をしなかつたときは、五年以下の懲役に処する。

2 前項の場合において、犯人が収受したわいろは、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。

第十八条 前条第一項のわいろを供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

2 前項の罪を犯した者が自首したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。

第十九条 第十五条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その違反行為をした会社の役員又は職員は、五万円以下の罰金に処する。

第二十条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした会社の役員又は職員は、三十万円以下の過料に処する。

 一 第三条第七項の規定に違反して、新株を発行したとき。

 二 第八条第二項の規定に違反して、新株を引き受けたとき。

 三 第九条第一項の規定に違反して、事業に関する規程の認可を受けなかつたとき。

 四 第十条の規定に違反して、事業計画、資金計画又は収支予算の認可を受けなかつたとき。

 五 第十二条の規定に違反して、財産目録、貸借対照表、損益計算書若しくは営業報告書を提出せず、又は不実の記載をしたこれらの書類を提出したとき。

 六 第十三条第二項の規定による命令に違反したとき。

第二十一条 第六条の規定に違反した者は、五万円以下の過料に処する。


   附 則


 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から施行する。


 (会社の設立)

2 通商産業大臣は、設立委員を命じ、会社の設立に関して発起人の職務を行なわせる。

3 設立委員は、定款及び会社の発行する優先株式に係る優先株式消却計画を作成して、通商産業大臣の認可を受けなければならない。

4 通商産業大臣は、前項の認可をしようとするときは、大蔵大臣に協議しなければならない。

5 設立委員は、附則第三項の認可を受けたときは、遅滞なく、会社の設立に際し発行する株式につき、株主を募集しなければならない。

6 株式申込証には、定款の認可の年月日を記載しなければならない。

7 設立委員は、株式の申込みをした者に対し株式を割り当てる場合において、当該株式の申込みをした者のうちに地方公共団体があるときは、当該会社につき公庫が引き受ける優先株式の数に相当する数に達するまでの株式を当該地方公共団体に対し優先して割り当てなければならない。

8 商法第百六十七条、第百八十一条及び第百八十五条の規定は、会社の設立については、適用しない。


 (商号についての経過規定)

9 第六条の規定は、この法律の施行の際現にその商号中に中小企業投資育成株式会社という文字を使用している者については、この法律の施行の日から起算して六月間は、適用しない。

 (事業計画等についての経過規定)

10 会社の成立の日の属する営業年度の事業計画、資金計画及び収支予算については、第十条中「毎営業年度の開始前に」とあるのは、「会社の成立後遅滞なく」とする。

 (中小企業庁設置法の一部改正)

11 中小企業庁設置法(昭和二十三年法律第八十三号)の一部を次のように改正する。

  第三条第一項第四号の四の次に次の一号を加える。

  四の五 中小企業投資育成株式会社に関すること。

 (中小企業金融公庫法の一部改正)

12 中小企業金融公庫法の一部を次のように改正する。

  第五条中「百六十億円と」を「百六十億円、政府の産業投資特別会計からの出資金六億円並びに」に、「金額との」を「金額の」に改める。

 (租税特別措置法の一部改正)

13 租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)の一部を次のように改正する。

  第六十八条中「第十三条第一項又は」を「第十三条第一項若しくは」に改め、「配当をしたとき」の下に「、又は中小企業投資育成株式会社が中小企業投資育成株式会社法(昭和三十八年法律第百一号)第五条第一項の規定により利益から優先株式(中小企業金融公庫が同法第三条第二項の規定により昭和三十八年四月一日から昭和三十九年三月三十一日までの間に引き受けたものに限る。)に対する配当をしたとき」を加える。

(大蔵・通商産業・内閣総理大臣署名) 

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