薬剤師法

法律第百四十六号(昭三五・八・一〇)

目次

 第一章 総則(第一条)

 第二章 免許(第二条―第十条)

 第三章 試験(第十一条―第十八条)

 第四章 業務(第十九条―第二十八条)

 第五章 罰則(第二十九条―第三十三条)

 附則

   第一章 総則

 (薬剤師の任務)

第一条 薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。

   第二章 免許

 (免許)

第二条 薬剤師になろうとする者は、厚生大臣の免許を受けなければならない。

 (免許の要件)

第三条 薬剤師の免許(以下「免許」という。)は、薬剤師国家試験(以下「試験」という。)に合格した者に対して与える。

 (絶対的欠格条項)

第四条 次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えない。

 一 未成年者、禁治産者又は準禁治産者

 二 目が見えない者、耳がきこえない者又は口がきけない者


 (相対的欠格条項)

第五条 次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。

 一 精神病者又は麻薬、大麻若しくはあへんの中毒者

 二 罰金以上の刑に処せられた者

 三 前号に該当する者を除くほか、薬事に関し犯罪又は不正の行為があつた者


 (薬剤師名簿)

第六条 厚生省に薬剤師名簿を備え、免許に関する事項を登録する。

 (登録及び免許証の交付)

第七条 免許は、薬剤師名簿に登録することによつて行なう。

2 厚生大臣は、免許を与えたときは、薬剤師免許証を交付する。

 (免許の取消し等)

第八条 薬剤師が、第四条各号のいずれかに該当するに至つたときは、厚生大臣は、その免許を取り消す。

2 薬剤師が、第五条各号のいずれかに該当するに至つたときは、厚生大臣は、その免許を取り消し、又は期間を定めてその業務の停止を命ずることができる。

3 都道府県知事は、薬剤師について前二項の処分が行なわれる必要があると認めるときは、その旨を厚生大臣に具申しなければならない。

4 第一項又は第二項の規定により免許を取り消された者であつても、その者がその取消しの理由となつた事項に該当しなくなつたとき、その他その後の事情により再び免許を与えるのが適当であると認められるに至つたときは、再免許を与えることができる。この場合においては、前条の規定を準用する。

5 厚生大臣は、第二項に規定する処分をしようとするときは、あらかじめ、その相手方にその処分の理由を通知し、弁明及び有利な証拠の提出の機会を与えなければならない。

 (届出)

第九条 薬剤師は、厚生省令の定めるところにより、毎年十二月三十一日現在において、その氏名、住所その他厚生省令で定める事項を、翌年一月十五日までに、その住所地の都道府県知事を経由して厚生大臣に届け出なければならない。

 (政令への委任)

第十条 この章に規定するもののほか、免許の申請、薬剤師名簿の登録、訂正及び消除並びに免許証の交付、書換え交付、再交付及び返納に関し必要な事項は、政令で定める。

   第三章 試験

 (試験の目的)

第十一条 試験は、薬剤師として必要な知識及び技能について行なう。

 (試験の実施)

第十二条 試験は、毎年少なくとも一回、厚生大臣が行なう。

 (薬剤師試験審議会)

第十三条 厚生大臣の諮問に応じ、試験に関する重要事項を調査審議させ、及び試験に関する事務をつかさどらせるため、厚生省に、附属機関として薬剤師試験審議会(以下「審議会」という。)を置く。

2 審議会の組織、運営その他審議会に関し必要な事項は、政令で定める。

 (試験事務担当者の不正行為の禁止)

第十四条 審議会の委員その他試験に関する事務をつかさどる者は、その事務の施行に当たつて厳正を保持し、不正の行為がないようにしなければならない。


 (受験資格)

第十五条 試験は、次の各号のいずれかに該当する者でなければ、受けることができない。

 一 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に基づく大学(短期大学を除く。)において、薬学の正規の課程を修めて卒業した者

 二 外国の薬学校を卒業し、又は外国の薬剤師免許を受けた者で、厚生大臣が前号に掲げる者と同等以上の学力及び技能を有すると認定したもの


 (受験手数料)

第十六条 試験を受けようとする者は、二千円をこえない範囲内において厚生省令で定める額の手数料を納めなければならない。

2 前項の規定により納めた手数料は、試験を受けなかつた場合においても、返還しない。


 (不正行為の禁止)

第十七条 試験に関して不正の行為があつた場合には、その不正行為に関係のある者について、その受験を停止させ、又はその試験を無効とすることができる。この場合においては、なお、その者について、期間を定めて試験を受けることを許さないことができる。


 (省令への委任)

第十八条 この章に規定するもののほか、試験の科目、受験手続その他試験に関し必要な事項は、厚生省令で定める。

   第四章 業務


 (調剤)

第十九条 薬剤師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはならない。ただし、医師若しくは歯科医師が次に掲げる場合において自己の処方せんにより自ら調剤するとき、又は獣医師が自己の処方せんにより自ら調剤するときは、この限りでない。

 一 患者又は現にその看護に当たつている者が特にその医師又は歯科医師から薬剤の交付を受けることを希望する旨を申し出た場合

 二 医師法(昭和二十三年法律第二百一号)第二十二条各号の場合又は歯科医師法(昭和二十三年法律第二百二号)第二十一条各号の場合


 (名称の使用制限)

第二十条 薬剤師でなければ、薬剤師又はこれにまぎらわしい名称を用いてはならない。


 (調剤の求めに応ずる義務)

第二十一条 調剤に従事する薬剤師は、調剤の求めがあつた場合には、正当な理由がなければ、これを拒んではならない。


 (調剤の場所)

第二十二条 薬剤師は、薬局以外の場所で、販売又は授与の目的で調剤してはならない。ただし、病院若しくは診療所又は家畜診療施設の調剤所において、その病院若しくは診療所又は家畜診療施設で診療に従事する医師若しくは歯科医師又は獣医師の処方せんによつて調剤する場合及び厚生省令で別段の定めをした場合は、この限りでない。


 (処方せんによる調剤)

第二十三条 薬剤師は、医師、歯科医師又は獣医師の処方せんによらなければ、販売又は授与の目的で調剤してはならない。

2 薬剤師は、処方せんに記載された医薬品につき、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師の同意を得た場合を除くほか、これを変更して調剤してはならない。


 (処方せん中の疑義)

第二十四条 薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによつて調剤してはならない。


 (調剤された薬剤の表示)

第二十五条 薬剤師は、販売又は授与の目的で調剤した薬剤の容器又は被包に、処方せんに記載された患者の氏名、用法、用量その他厚生省令で定める事項を記載しなければならない。


 (処方せんへの記入等)

第二十六条 薬剤師は、調剤したときは、その処方せんに、調剤済みの旨(その調剤によつて、当該処方せんが調剤済みとならなかつたときは、調剤量)、調剤年月日その他厚生省令で定める事項を記入し、かつ、記名押印し、又は署名しなければならない。


 (処方せんの保存)

第二十七条 薬局開設者は、当該薬局で調剤済みとなつた処方せんを、調剤済みとなつた日から三年間、保存しなければならない。


 (調剤録)

第二十八条 薬局開設者は、薬局に調剤録を備えなければならない。

2 薬剤師は、薬局で調剤したときは、調剤録に厚生省令で定める事項を記入しなければならない。ただし、その調剤により当該処方せんが調剤済みとなつたときは、この限りでない。

3 薬局開設者は、第一項の調剤録を、最終の記入の日から三年間、保存しなければならない。

   第五章 罰則

第二十九条 第十九条の規定に違反した者(医師、歯科医師及び獣医師を除く。)は、三年以下の懲役若しくは十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

第三十条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役若しくは五万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

 一 第八条第二項の規定による業務停止の命令に違反した者

 二 第二十二条、第二十三条又は第二十五条の規定に違反した者

第三十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、三万円以下の罰金に処する。

 一 第十四条の規定に違反して、故意若しくは重大な過失により事前に試験問題をもらし、又は故意に不正の採点をした者

 二 第十九条の規定に違反した医師、歯科医師又は獣医師

 三 第二十四条又は第二十六条から第二十八条までの規定に違反した者

第三十二条 第九条又は第二十条の規定に違反した者は、一万円以下の罰金に処する。

第三十三条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、第二十七条又は第二十八条第一項若しくは第三項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、第三十一条の罰金刑を科する。


   附 則


 (施行期日)

1 この法律は、薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)の施行の日から施行する。


 (旧法の規定による免許を受けた者)

2 この法律の施行の際現に薬事法(昭和二十三年法律第百九十七号。以下「旧法」という。)の規定による薬剤師免許を受けている者は、この法律の規定による免許を受けた者とみなす。


 (旧法の規定による薬剤師名簿への登録)

3 旧法の規定によつてなされた薬剤師名簿への登録は、この法律の規定によつてなされた薬剤師名簿への登録とみなす。


 (旧法の規定による薬剤師免許証)

4 旧法の規定によつて交付された薬剤師免許証は、この法律の規定によつて交付された薬剤師免許証とみなす。


 (旧法の規定による免許の取消し等)

5 旧法の規定によつてなされた免許の取消し又は業務の停止の処分は、この法律の相当規定によつてなされたものとみなす。この場合において、業務の停止の期間は、なお従前の例による。


 (旧法第七十六条の規定に該当する者)

6 旧法第七十六条の規定に該当する者に対しては、第三条の規定にかかわらず、厚生大臣は、免許を与えることができる。


 (旧法の規定による試験)

7 旧法の規定によつて行なわれた薬剤師国家試験は、この法律の規定によつて行なわれた試験とみなす。

8 旧法第七条の規定による薬剤師国家試験のうち学説試験に合格した者に対しては、厚生省令の定めるところにより、第十一条の規定による試験のうちこれに相当する部分を免除する。


 (薬剤師試験審議会)

9 旧法第十四条の規定による薬剤師試験審議会は、第十三条の規定による審議会として、同一性をもつて存続するものとする。


 (受験資格の特例)

10 旧法第七十四条第二項の規定に該当する者は、第十一条の規定による試験の受験資格については、第十五条第一号の大学の卒業者とみなす。


 (処方せんの保存)

11 第二十七条の規定は、この法律の施行前に当該薬局で調剤された処方せんについても適用する。ただし、その保存期間は、調剤の日から二年間とする。

(厚生・内閣総理大臣署名) 

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