商標法

法律第百二十七号(昭三四・四・一三)

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 商標登録及び商標登録出願(第三条―第十三条)

 第三章 審査(第十四条―第十七条)

 第四章 商標権

  第一節 商標権(第十八条―第三十五条)

  第二節 権利侵害(第三十六条―第三十九条)

  第三節 登録料(第四十条―第四十三条)

 第五章 審判(第四十四条―第五十六条)

 第六章 再審、訴願及び訴訟(第五十七条―第六十三条)

 第七章 防護標章(第六十四条―第六十八条)

 第八章 雑則(第六十九条―第七十七条)

 第九章 罰則(第七十八条―第八十五条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律で「商標」とは、文字、図形若しくは記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合(以下「標章」という。)であつて、業として商品を生産し加工し証明し又は譲渡する者がその商品について使用をするものをいう。

2 この法律で「登録商標」とは、商標登録を受けている商標をいう。

3 この法律で標章について「使用」とは、次に掲げる行為をいう。

 一 商品又は商品の包装に標章を附する行為

 二 商品又は商品の包装に標章を附したものを譲渡し引き渡し譲渡若しくは引渡のために展示し又は輸入する行為

 三 商品に関する広告、定価表又は取引書類に標章を附して展示し又は頒布する行為

   第二章 商標登録及び商標登録出願


 (商標登録の要件)

第三条 自己の業務に係る商品について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。

 一 その商品の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標

 二 その商品について慣用されている商標

 三 その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状、価格又は生産、加工若しくは使用の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標

 四 ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標

 五 きわめて簡単でかつありふれた標章のみからなる商標

 六 前五号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標

2 前項第三号から第五号までに該当する商標であつても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる。


 (商標登録を受けることができない商標)

第四条 次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。

 一 国旗、菊花紋章、勲章、褒章又は外国の国旗と同一又は類似の商標

 二 同盟条約(千九百年十二月十四日にブラッセルで、千九百十一年六月二日にワシントンで、及び千九百二十五年十一月六日にへーグで改正された工業所有権保護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ同盟条約並びに千九百年十二月十四日にブラッセルで、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にへーグで、及び千九百三十四年六月二日にロンドンで改正された工業所有権保護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ同盟条約をいう。以下この条において同じ。)の同盟国の国の紋章その他の記章(同盟条約の同盟国の国旗を除く。)であつて、通商産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標

 三 国際連合その他の国際機関を表示する標章であつて通商産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標

 四 白地赤十字の標章又は赤十字若しくはジュネーブ十字の名称と同一又は類似の商標

 五 日本国若しくは同盟条約の同盟国の政府若しくは地方公共団体の監督用又は証明用の印章又は記号のうち通商産業大臣が指定するものと同一又は類似の標章を有する商標であつて、その印章又は記号が用いられている商品と同一又は類似の商品について使用をするもの

 六 国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを表示する標章であつて著名なものと同一又は類似の商標

 七 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標

 八 他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)

 九 政府若しくは地方公共団体(以下「政府等」という。)が開設する博覧会又は外国でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会の賞と同一又は類似の標章を有する商標(その賞を受けた者が商標の一部としてその標章の使用をするものを除く。)

 十 他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて、その商品又はこれに類似する商品について使用をするもの

 十一 当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であつて、その商標登録に係る指定商品(第六条第一項(第六十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定により指定した商品をいう。以下同じ。)又はこれに類似する商品について使用をするもの

 十二 他人の登録防護標章(防護標章登録を受けている標章をいう。以下同じ。)と同一の商標であつて、その防護標章登録に係る指定商品について使用をするもの

 十三 商標権が消滅した日(商標登録を無効にすべき旨の審決があつたときは、その確定の日。以下同じ。)から一年を経過していない他人の商標(他人が商標権が消滅した日前一年以上使用をしなかつたものを除く。)又はこれに類似する商標であつて、その商標権に係る指定商品又はこれに類似する商品について使用をするもの

 十四 農産種苗法(昭和二十二年法律第百十五号)第七条第一項の規定による登録を受けた名称と同一又は類似の商標であつて、その種苗又はこれに類似する商品について使用をするもの

 十五 他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標(第十号から前号までに掲げるものを除く。)

 十六 商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標

2 国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを行つている者が前項第六号の商標について商標登録出願をするときは、同号の規定は、適用しない。

3 第一項第八号、第十号又は第十五号に該当する商標であつても、商標登録出願の時にそれぞれ同項第八号、第十号又は第十五号に該当しないものについては、これらの規定は、適用しない。


 (商標登録出願)

第五条 商標登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書に商標登録を受けようとする商標を表示した書面及び必要な説明書を添附して特許庁長官に提出しなければならない。

 一 商標登録出願人の氏名又は名称及び住所又は居所並びに法人にあつては代表者の氏名

 二 提出の年月日

 三 指定商品及び次条第一項の政令で定める商品の区分

2 自己の登録商標若しくは商標登録出願をしている商標に類似する商標であつてその登録商標若しくは商標登録出願をしている商標に係る指定商品について使用をするもの又は自己の登録商標若しくは商標登録出願をしている商標若しくはこれに類似する商標であつてその登録商標若しくは商標登録出願をしている商標に係る指定商品に類似する商品について使用をするものについて商標登録を受けようとするときは、その商標登録又は商標登録出願の番号を願書に記載しなければならない。

3 第一項に規定する書面の商標を表示した部分のうちその書面の用紙の色彩と同一の色彩である部分は、その商標の一部でないものとみなす。ただし、色彩を附すべき範囲を明らかにしてその用紙の色彩と同一の色彩を附すべき旨をその書面に記載した部分については、この限りでない。


 (一商標一出願)

第六条 商標登録出願は、政令で定める商品の区分内において、商標の使用をする一又は二以上の商品を指定して、商標ごとにしなければならない。

2 前項の商品の区分は、商品の類似の範囲を定めるものではない。


 (連合商標)

第七条 商標権者は、自己の登録商標に類似する商標であつてその登録商標に係る指定商品について使用をするもの又は自己の登録商標若しくはこれに類似する商標であつてその登録商標に係る指定商品に類似する商品について使用をするものについては、連合商標の商標登録出願をした場合を除き、商標登録を受けることができない。

2 連合商標の商標登録出願について商標権の設定の登録があつたときは、その商標とその商標に係る登録商標とは、相互に連合商標となる。

3 商標権者は、自己の登録商標に類似する商標であつてその登録商標に係る指定商品について使用をするもの及び自己の登録商標又はこれに類似する商標であつてその登録商標に係る指定商品に類似する商品について使用をするもの以外の商標については、連合商標の商標登録を受けることができない。


 (先願)

第八条 同一又は類似の商品について使用をする同一又は類似の商標について異なつた日に二以上の商標登録出願があつたときは、最先の商標登録出願人のみがその商標について商標登録を受けることができる。

2 同一又は類似の商品について使用をする同一又は類似の商標について同日に二以上の商標登録出願があつたときは、商標登録出願人の協議により定めた一の商標登録出願人のみがその商標について商標登録を受けることができる。

3 商標登録出願が放棄され取り下げられ若しくは無効にされたとき、又は商標登録出願について査定若しくは審決が確定したときは、その商標登録出願は、前二項の規定の適用については、初めからなかつたものとみなす。

4 特許庁長官は、第二項の場合は、相当の期間を指定して、同項の協議をしてその結果を届け出るべき旨を商標登録出願人に命じなければならない。

5 第二項の協議が成立せず、又は前項の規定により指定した期間内に同項の規定による届出がないときは、特許庁長官が行う公正な方法によるくじにより定めた一の商標登録出願人のみが商標登録を受けることができる。


 (出願時の特例)

第九条 政府等が開設する博覧会に、同盟条約(千九百年十二月十四日にブラッセルで、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にへーグで、及び千九百三十四年六月二日にロンドンで改正された工業所有権保護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ同盟条約をいう。以下同じ。)の同盟国の領域内でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会に、又は同盟条約の同盟国以外の国の領域内でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会であつて特許庁長官が指定するものに出品した商品について使用をした商標について、その商標の使用をした商品を出品した者がその出品の日から六月以内にその商品を指定商品として商標登録出願をしたときは、その商標登録出願は、その出品の時にしたものとみなす。

2 商標登録出願に係る商標について前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を商標登録出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、その商標登録出願に係る商標及び商品が同項に規定する商標及び商品であることを証明する書面を商標登録出願の日から三十日以内に特許庁長官に提出しなければならない。


 (商標登録出願の分割)

第十条 商標登録出願人は、二以上の商品を指定商品とする商標登録出願の一部を一又は二以上の新たな商標登録出願とすることができる。

2 前項の規定による商標登録出願の分割は、商標登録出願について査定又は審決が確定した後は、することができない。

3 第一項の場合は、新たな商標登録出願は、もとの商標登録出願の時にしたものとみなす。ただし、前条第二項並びに第十三条第一項において準用する特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第四十三条第一項及び第二項の規定の適用については、この限りでない。


 (出願の変更)

第十一条 商標登録出願人は、連合商標の商標登録出願を独立の商標登録出願(連合商標の商標登録出願以外の商標登録出願をいう。以下同じ。)に変更することができる。この場合は、独立の商標登録出願は、連合商標の商標登録出願の時にしたものとみなす。

2 商標登録出願人は、独立の商標登録出願を連合商標の商標登録出願に変更することができる。この場合は、連合商標の商標登録出願は、独立の商標登録出願の時にしたものとみなす。

3 前二項の規定による商標登録出願の変更は、商標登録出願について査定又は審決が確定した後は、することができない。

4 第一項又は第二項の規定による商標登録出願の変更があつたときは、もとの商標登録出願は、取り下げたものとみなす。

第十二条 防護標章登録出願人は、その防護標章登録出願を商標登録出願に変更することができる。この場合は、商標登録出願は、防護標章登録出願の時にしたものとみなす。

2 前項の規定による出願の変更は、防護標章登録出願について査定又は審決が確定した後は、することができない。

3 第一項の規定による出願の変更があつたときは、その防護標章登録出願は、取り下げたものとみなす。


 (特許法の準用)

第十三条 特許法第四十条、第四十二条(明細書等の補正と要旨変更)及び第四十三条(優先権主張の手続)の規定は、商標登録出願に準用する。

2 特許法第三十三条及び第三十四条第四項から第七項まで(特許を受ける権利)の規定は、商標登録出願により生じた権利に準用する。

   第三章 審査


 (審査官による審査)

第十四条 特許庁長官は、審査官に商標登録出願及び異議の申立を審査させなければならない。


 (拒絶の査定)

第十五条 審査官は、商標登録出願が次の各号の一に該当するときは、その商標登録出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。

 一 その商標登録出願に係る商標が第三条、第四条第一項、第七条第一項若しくは第三項、第八条第二項若しくは第五項、第五十一条第二項、第五十三条第二項又は第七十七条第三項において準用する特許法第二十五条の規定により商標登録をすることができないものであるとき。

 二 その商標登録出願に係る商標が条約の規定により商標登録をすることができないものであるとき。

 三 その商標登録出願が第六条第一項に規定する要件をみたしていないとき。


 (出願公告)

第十六条 審査官は、商標登録出願について拒絶の理由を発見しないときは、出願公告をすベき旨の決定をしなければならない。

2 特許庁長官は、出願公告をすべき旨の決定があつたときは、決定の謄本を商標登録出願人に送達した後、出願公告をしなければならない。

3 出願公告は、次に掲げる事項を商標公報に掲載することにより行う。

 一 商標登録出願人の氏名又は名称及び住所又は居所並びに法人にあつては代表者の氏名

 二 商標登録出願の番号及び年月日

 三 願書に添附した商標登録を受けようとする商標を表示した書面の内容

 四 指定商品

 五 出願公告の番号及び年月日

 六 前各号に掲げるもののほか、必要な事項

4 特許法第五十一条第四項(出願書類等の縦覧)の規定は、出願公告をした場合に準用する。


 (特許法の準用)

第十七条 特許法第四十七条第二項(審査官の資格)、第四十八条(審査官の除斥)、第五十条(拒絶理由の通知)及び第五十三条から第六十五条まで(補正の却下、異議の申立、査定の方式、出願公告決定後の補正及び訴訟との関係)の規定は、商標登録出願の審査に準用する。

   第四章 商標権

    第一節 商標権


 (商標権の設定の登録)

第十八条 商標権は、設定の登録により発生する。

2 第四十条第一項の規定による登録料の納付があつたときは、商標権の設定の登録をする。

3 前項の登録があつたときは、商標権者の氏名又は名称及び住所又は居所、登録番号並びに設定の登録の年月日を商標公報に掲載しなければならない。


 (存続期間)

第十九条 商標権の存続期間は、設定の登録の日から十年をもつて終了する。

2 商標権の存続期間は、更新登録の出願により更新することができる。ただし、その登録商標が第四条第一項第一号から第三号まで、第五号、第七号又は第十六号に掲げる商標に該当するものとなつているときは、この限りでない。


 (存続期間の更新登録)

第二十条 商標権の存続期間の更新登録の出願をする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。

 一 出願人の氏名又は名称及び住所又は居所並びに法人にあつては代表者の氏名  、

 二 商標登録の登録番号

2 更新登録の出願は、商標権の存続期間の満了前六月から三月までの間にしなければならない。

3 更新登録の出願をする者がその責に帰することができない理由により前項に規定する期間内にその出願をすることができないときは、同項の規定にかかわらず、その理由がなくなつた日から十四日以内でその期間の経過後二月以内にその出願をすることができる。

4 商標権の存続期間の更新登録の出願があつたときは、存続期間は、更新されたものとみなす。ただし、その出願について拒絶をすべき旨の査定が確定し、又は商標権の存続期間を更新した旨の登録があつたときは、この限りでない。

第二十一条 審査官は、商標権の存続期間の更新登録の出願が次の各号の一に該当するときは、その出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。

 一 その出願に係る登録商標が第十九条第二項ただし書の規定に該当するとき。

 二 その出願をした者が当該商標権者でないとき。

2 審査官は、商標権の存続期間の更新登録の出願について拒絶の理由を発見しないときは、更新登録をすべき旨の査定をしなければならない。

第二十二条 第十四条並びに特許法第四十八条(審査官の除斥)、第五十条(拒絶理由の通知)及び第六十三条(査定の方式)の規定は、商標権の存続期間の更新登録の出願の審査に準用する。


 (存続期間の更新の登録)

第二十三条 第四十条第二項の規定による登録料の納付があつたときは、商標権の存続期間を更新した旨の登録をする。

2 第十八条第三項の規定は、前項の登録があつた場合に準用する。


 (商標権の移転)

第二十四条 商標権の移転は、その指定商品が二以上あるときは、指定商品ごとに分割してすることができる。ただし、分割しようとする指定商品がその分割しようとする指定商品以外の指定商品のいずれかに類似しているときは、この限りでない。

2 連合商標に係る商標権は、分離して移転することができない。

3 商標権を譲り受けるには、通商産業省令で定めるところにより、その旨を日刊新聞紙に公告しなければならない。

4 商標権の移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)の登録は、前項の規定による公告があつた日から三十日を経過した後でなければ、することができない。

5 国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関又は公益に関する団体であつて営利を目的としないものの商標登録出願であつて、第四条第二項に規定するものに係る商標権は、譲渡することができない。

6 公益に関する事業であつて営利を目的としないものを行つている者の商標登録出願であつて、第四条第二項に規定するものに係る商標権は、その事業とともにする場合を除き、移転することができない。


 (商標権の効力)

第二十五条 商標権者は、指定商品について登録商標の使用をする権利を専有する。ただし、その商標権について専用使用権を設定したときは、専用使用権者がその登録商標の使用をする権利を専有する範囲については、この限りでない。


 (商標権の効力が及ばない範囲)

第二十六条 商標権の効力は、次に掲げる商標には、及ばない。

 一 自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標

 二 当該指定商品又はこれに類似する商品の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状、価格又は生産、加工若しくは使用の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する商標

 三 当該指定商品又はこれに類似する商品について慣用されている商標

2 前項第一号の規定は、商標権の設定の登録があつた後、不正競争の目的で、自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を用いた場合は、適用しない。


 (登録商標等の範囲)

第二十七条 登録商標の範囲は、願書に添附した書面に表示した商標に基いて定めなければならない。

2 指定商品の範囲は、願書の記載に基いて定めなければならない。

第二十八条 商標権の効力については、特許庁に対し、判定を求めることができる。

2 特許庁長官は、前項の規定による求があつたときは、三名の審判官を指定して、その判定をさせなければならない。

3 前項に規定するもののほか、判定に関する手続は、政令で定める。


 (他人の意匠権等との関係)

第二十九条 商標権者、専用使用権者又は通常使用権者は、指定商品についての登録商標の使用がその使用の態様によりその商標登録出願の日前の意匠登録出願に係る他人の意匠権又はその商標登録出願の日前に生じた他人の著作権と抵触するときは、指定商品のうち抵触する部分についてその態様により登録商標の使用をすることができない。


 (専用使用権)

第三十条 商標権者は、その商標権について専用使用権を設定することができる。ただし、第四条第二項に規定する商標登録出願に係る商標権については、この限りでない。

2 専用使用権者は、設定行為で定めた範囲内において、指定商品について登録商標の使用をする権利を専有する。

3 専用使用権は、商標権者の承諾を得た場合及び相続その他の一般承継の場合に限り、移転することができる。

4 特許法第七十七条第四項及び第五項(質権の設定等)、第九十七条第二項(放棄)並びに第九十八条第一項第二号及び第二項(登録の効果)の規定は、専用使用権に準用する。


 (通常使用権)

第三十一条 商標権者は、その商標権について他人に通常使用権を許諾することができる。ただし、第四条第二項に規定する商標登録出願に係る商標権については、この限りでない。

2 通常使用権者は、設定行為で定めた範囲内において、指定商品について登録商標の使用をする権利を有する。

3 通常使用権は、商標権者(専用使用権についての通常使用権にあつては、商標権者及び専用使用権者)の承諾を得た場合及び相続その他の一般承継の場合に限り、移転することができる。

4 特許法第七十三条第一項(共有)、第九十四条第二項(質権の設定)、第九十七条第三項(放棄)並びに第九十九条第一項及び第三項(登録の効果)の規定は、通常使用権に準用する。


 (先使用による商標の使用をする権利)

第三十二条 他人の商標登録出願前から日本国内において不正競争の目的でなくその商標登録出願に係る指定商品又はこれに類似する商品についてその商標又はこれに類似する商標の使用をしていた結果、その商標登録出願の際(第十三条第一項において準用する特許法第四十条の規定により、又は第十七条において、若しくは第五十六条第一項において準用する特許法第百五十九条第一項において、若しくは第六十一条において準用する特許法第百七十四条第一項において準用する同法第百五十九条第一項において、それぞれ準用する同法第五十三条第四項の規定により、その商標登録出願が手続補正書を提出した時にしたものとみなされたときは、もとの商標登録出願の際又は手続補正書を提出した際)現にその商標が自己の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、その者は、継続してその商品についてその商標の使用をする場合は、その商品についてその商標の使用をする権利を有する。当該業務を承継した者についても、同様とする。

2 当該商標権者又は専用使用権者は、前項の規定により商標の使用をする権利を有する者に対し、その者の業務に係る商品と自己の業務に係る商品との混同を防ぐのに適当な表示を附すべきことを請求することができる。


 (無効審判の請求登録前の使用による商標の使用をする権利)

第三十三条 次の各号の一に該当する者が第四十六条第一項の審判の請求の登録前に商標登録が同項各号の一に該当することを知らないで日本国内において指定商品又はこれに類似する商品について当該登録商標又はこれに類似する商標の使用をし、その商標が自己の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたときは、その者は、継続してその商品についてその商標の使用をする場合は、その商品についてその商標の使用をする権利を有する。当該業務を承継した者についても、同様とする。

 一 同一又は類似の指定商品について使用をする同一又は類似の商標についての二以上の商標登録のぅち、その一を無効にした場合における原商標権者

 二 商標登録を無効にして同一又は類似の指定商品について使用をする同一又は類似の商標について正当権利者に商標登録をした場合における原商標権者

 三 前二号に掲げる場合において、第四十六条第一項の審判の請求の登録の際現にその無効にした商標登録に係る商標権についての専用使用権又はその商標権若しくは専用使用権についての第三十一条第四項において準用する特許法第九十九条第一項の効力を有する通常使用権を有する者

2 当該商標権者又は専用使用権者は、前項の規定により商標の使用をする権利を有する者から相当の対価を受ける権利を有する。

3 前条第二項の規定は、第一項の場合に準用する。


 (質権)

第三十四条 商標権、専用使用権又は通常使用権を目的として質権を設定したときは、質権者は、契約で別段の定をした場合を除き、当該指定商品について当該登録商標の使用をすることができない。

2 特許法第九十六条(物上代位)の規定は、商標権、専用使用権又は通常使用権を目的とする質権に準用する。

3 特許法第九十八条第一項第三号及び第二項(登録の効果)の規定は、商標権又は専用使用権を目的とする質権に準用する。

4 特許法第九十九条第三項(登録の効果)の規定は、通常使用権を目的とする質権に準用する。


 (特許法の準用)

第三十五条 特許法第七十三条(共有)、第七十六条(相続人がない場合の特許権の消滅)、第九十七条第一項(放棄)並びに第九十八条第一項第一号及び第二項(登録の効果)の規定は、商標権に準用する。

    第二節 権利侵害


 (差止請求権)

第三十六条 商標権者又は専用使用権者は、自己の商標権又は専用使用権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

2 商標権者又は専用使用権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。


 (侵害とみなす行為)

第三十七条 次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。

 一 指定商品についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品に類似する商品についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用

 二 指定商品又はこれに類似する商品であつて、その商品又はその商品の包装に登録商標又はこれに類似する商標を附したものを譲渡又は引渡のために所持する行為

 三 指定商品又はこれに類似する商品について登録商標又はこれに類似する商標の使用をするために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を所持する行為

 四 指定商品又はこれに類似する商品について登録商標又はこれに類似する商標の使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を譲渡し引き渡し又は譲渡若しくは引渡のために所持する行為

 五 指定商品又はこれに類似する商品について登録商標又はこれに類似する商標の使用をし又は使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造し又は輸入する行為

 六 登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造するためにのみ用いる物を業として製造し譲渡し引き渡し又は輸入する行為


 (損害の額の推定等)

第三十八条 商標権者又は専用使用権者が故意又は過失により自己の商標権又は専用使用権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、商標権者又は専用使用権者が受けた損害の額と推定する。

2 商標権者又は専用使用権者は、故意又は過失により自己の商標権又は専用使用権を侵害した者に対し、その登録商標の使用に対し通常受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。

3 前項の規定は、同項に規定する金額をこえる損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、商標権又は専用使用権を侵害した者に故意又は重大な過失がなかつたときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。


 (特許法の準用)

第三十九条 特許法第百三条(過失の推定)、第百五条(書類の提出)及び第百六条 (信用回復の措置)の規定は、商標権又は専用使用権の侵害に準用する。

    第三節 登録料


 (登録料)

第四十条 商標権の設定の登録を受ける者は、登録料として、一件ごとに、八千円を納付しなければならない。

2 商標権の存続期間を更新した旨の登録を受ける者は、登録料として、一件ごとに、一万五千円を納付しなければならない。

3 前二項の規定は、国に属する商標権には、適用しない。


 (登録料の納付期限)

第四十一条 前条第一項の規定による登録料は、商標登録をすべき旨の査定又は審決の謄本の送達があつた日から三十日以内に納付しなければならない。

2 前条第二項の規定による登録料は、商標権の存続期間の更新登録をすべき旨の査定又は審決の謄本の送達があつた日(商標権の存続期間の満了前にその送達があつたときは、存続期間の満了の日)から三十日以内に納付しなければならない。

3 特許庁長官は、登録料を納付すべき者の請求により、三十日以内を限り、前二項に規定する期間を延長することができる。


 (過誤納の登録料の返還)

第四十二条 過誤納の登録料は、納付した者の請求により返還する。

2 前項の規定による登録料の返還は、納付した日から一年を経過した後は、請求することができない。


 (特許法の準用)

第四十三条 特許法第百十条(利害関係人による特許料の納付)の規定は、登録料の納付に準用する。

   第五章 審判


 (拒絶査定に対する審判)

第四十四条 拒絶をすべき旨の査定を受けた者は、その査定に不服があるときは、その査定の謄本の送達があつた日から三十日以内に審判を請求することができる。

2 前項の審判を請求する者がその責に帰することができない理由により同項に規定する期間内にその請求をすることができないときは、同項の規定にかかわらず、その理由がなくなつた日から十四日以内でその期間の経過後六月以内にその請求をすることができる。


 (補正の却下の決定に対する審判)

第四十五条 第十七条において準用する特許法第五十三条第一項の規定による却下の決定を受けた者は、その決定に不服があるときは、その決定の謄本の送達があつた日から三十日以内に審判を請求することができる。ただし、第十七条において準用する特許法第五十三条第四項に規定する新たな商標登録出願をしたときは、この限りでない。

2 前条第二項の規定は、前項の審判の請求に準用する。


 (商標登録の無効の審判)

第四十六条 商標登録が次の各号の一に該当するときは、その商標登録を無効にすることについて審判を請求することができる。この場合において、商標登録に係る指定商品が二以上のものについては、指定商品ごとに請求することができる。

 一 その商標登録が第三条、第四条第一項、第七条第一項若しくは第三項、第八条第一項、第二項若しくは第五項、第五十一条第二項、第五十三条第二項又は第七十七条第三項において準用する特許法第二十五条の規定に違反してされたとき。

 二 その商標登録が条約に違反してされたとき。

 三 その商標登録がその商標登録出願により生じた権利を承継しない者の商標登録出願に対してされたとき。

 四 商標登録がされた後において、その商標権者が第七十七条第三項において準用する特許法第二十五条の規定により商標権を享有することができない者になつたとき、又はその商標登録が条約に違反することとなつたとき。

2 前項の審判は、商標権の消滅後においても、請求することができる。

3 審判長は、第一項の審判の請求があつたときは、その旨を当該商標権についての専用使用権者その他その商標登録に関し登録した権利を有する者に通知しなければならない。

第四十七条 商標登録が第三条、第四条第一項第八号若しくは第十一号から第十五号まで、第七条第一項若しくは第三項若しくは第八条第一項、第二項若しくは第五項の規定に違反してされたとき、商標登録が第四条第一項第十号の規定に違反してされたとき(不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除く。)、又は商標登録が前条第一項第三号に該当するときは、その商標登録についての同項の審判は、商標権の設定の登録の日から五年を経過した後は、請求することができない。


 (商標権の存続期間の更新登録の無効の審判)

第四十八条 商標権の存続期間の更新登録が次の各号の一に該当するときは、その更新登録を無効にすることについて審判を請求することができる。この場合において、更新登録に係る指定商品が二以上のものについては、指定商品ごとに請求することができる。

 一 その更新登録が第十九条第二項ただし書の規定に違反してされたとき。

 二 その更新登録が当該商標権者でない者の出願に対してされたとき。

2 第四十六条第二項の規定は、前項の審判の請求に準用する。

第四十九条 商標権の存続期間の更新登録が前条第一項第二号に該当するときは、その更新登録についての同項の審判は、商標権の存続期間を更新した旨の登録の日から五年を経過した後は、請求することができない。


 (商標登録の取消の審判)

第五十条 継続して三年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品についての登録商標の使用をしていないときは、その指定商品に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。ただし、その商品についてその商標の使用をしていないことについて正当な理由があるときは、この限りでない。

2 継続して三年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが指定商品について相互に連合商標となつている登録商標のうちの一の使用をしていないときでも、これらの者のうちのいずれかがその指定商品についてその登録商標と連合商標となつている他の登録商標の使用をしている場合は、その使用をしていない登録商標については、前項の規定にかかわらず、同項の審判を請求することができない。

3 商標権者、専用使用権者又は通常使用権者が次に掲げる地の属する市(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項に規定する指定都市にあつては、同法第二百五十二条の二十第一項の規定により設けられた区)、特別区、町又は村において各指定商品についてその登録商標の使用をしていないときは、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者は、その商品についてその商標の使用をしていないものと推定する。

 一 商標原簿に登録されている商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の営業所又は事務所の所在地が日本国内にあるときは、その所在地

 二 商標原簿に登録されている商標権者、専用使用権者若しくは通常使用権者の営業所若しくは事務所の所在地が日本国内にない場合又は商標権者、専用使用権者若しくは通常使用権者の営業所若しくは事務所の所在地が商標原簿に登録されていない場合において、商標原簿に登録されている商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の住所又は居所が日本国内にあるときは、その住所又は居所

 三 商標原簿に登録されている商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の営業所若しくは事務所の所在地又は住所若しくは居所が日本国内にない場合において、その者の商標登録に関する代理人であつて日本国内に住所若しくは居所を有するものがあるときはその住所若しくは居所、その代理人がないときは特許庁の所在地

4 第一項の審判の請求の登録後に商標権者、専用使用権者又は通常使用権者が同項の規定による請求に係る指定商品について登録商標の使用をしている場合における第一項又は前項の規定の適用については、その者がその商品についてその商標の使用をしていないものとみなす。

第五十一条 商標権者が故意に指定商品についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品に類似する商品についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用であつて商品の品質の誤認又は他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたときは、何人も、その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。

2 商標権者であつた者は、前項の規定により商標登録を取り消すべき旨の審決が確定した日から五年を経過した後でなければ、その商標登録に係る指定商品又はこれに類似する商品について、その登録商標又はこれに類似する商標についての商標登録を受けることができない。

第五十二条 前条第一項の審判は、商標権者の同項に規定する商標の使用の事実がなくなつた日から五年を経過した後は、請求することができない。

第五十三条 専用使用権者又は通常使用権者が指定商品又はこれに類似する商品についての登録商標又はこれに類似する商標の使用であつて商品の品質の誤認又は他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたときは、何人も、当該商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。ただし、当該商標権者がその事実を知らなかつた場合において、相当の注意をしていたときは、この限りでない。

2 当該商標権者であつた者又は専用使用権者若しくは通常使用権者であつた者であつて前項に規定する使用をしたものは、同項の規定により商標登録を取り消すべき旨の審決が確定した日から五年を経過した後でなければ、その商標登録に係る指定商品又はこれに類似する商品について、その登録商標又はこれに類似する商標についての商標登録を受けることができない。

3 前条の規定は、第一項の審判に準用する。

第五十四条 商標登録を取り消すべき旨の審決が確定したときは、商標権は、その後消滅する。

第五十五条 第四十六条第三項の規定は、第四十八条第一項、第五十条第一項、第五十一条第一項又は第五十三条第一項の審判の請求があつた場合に準用する。


 (特許法の準用)

第五十六条 特許法第百二十五条、第百三十一条第一項及び第二項、第百三十二条から第百五十四条まで、第百五十五条第一項及び第二項、第百五十六条から第百六十三条まで並びに第百六十七条から第百七十条まで(審決の効果、審判の請求、審判官、審判の手続、訴訟との関係及び審判における費用)の規定は、審判に準用する。この場合において、同法第百三十二条第一項、第百四十五条第一項、第百六十七条及び第百六十九条第一項中「第百二十三条第一項又は第百二十九条第一項」とあるのは、「商標法第四十六条第一項、第四十八条第一項、第五十条第一項、第五十一条第一項又は第五十三条第一項」と読み替えるものとする。

2 特許法第百五十五条第三項(審判の請求の取下)の規定は、第四十六条第一項、第四十八条第一項又は第五十条第一項の審判に準用する。

   第六章 再審、訴願及び訴訟


 (再審の請求)

第五十七条 確定審決に対しては、その当事者は、再審を請求することができる。

2 民事訴訟法(明治二十三年法律第二十九号)第四百二十条第一項及び第二項並びに第四百二十一条(再審の理由)の規定は、前項の再審の請求に準用する。

第五十八条 審判の請求人及び被請求人が共謀して第三者の権利又は利益を害する目的をもつて審決をさせたときは、その第三者は、その確定審決に対し再審を請求することができる。

2 前項の再審は、その請求人及び被請求人を共同被請求人として請求しなければならない。


 (再審により回復した商標権の効力の制限)

第五十九条 無効にし若しくは取り消した商標登録又は無効にした存続期間の更新登録に係る商標権が再審により回復したときは、商標権の効力は、次に掲げる行為には、及ばない。

 一 当該審決が確定した後再審の請求の登録前における当該指定商品についての当該登録商標の善意の使用

 二 当該審決が確定した後再審の請求の登録前に善意にした第三十七条各号に掲げる行為

第六十条 無効にし若しくは取り消した商標登録若しくは無効にした存続期間の更新登録に係る商標権が再審により回復した場合、又は拒絶をすべき旨の審決があつた商標登録出願若しくは商標権の存続期間の更新登録の出願について再審により商標権の設定の登録若しくは商標権の存続期間を更新した旨の登録があつた場合において、当該審決が確定した後再審の請求の登録前に善意に日本国内において当該指定商品又はこれに類似する商品について当該登録商標又はこれに類似する商標の使用をした結果、再審の請求の登録の際現にその商標が自己の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、その者は、継続してその商品についてその商標の使用をする場合は、その商品についてその商標の使用をする権利を有する。当該業務を承継した者についても、同様とする。

2 第三十二条第二項の規定は、前項の場合に準用する。


 (特許法の準用)

第六十一条 特許法第百七十三条(再審の請求期間)並びに第百七十四条第一項から第三項まで及び第五項(審判の規定等の準用)の規定は、再審に準用する。この場合において、同法第百七十四条第三項中「第百二十三条第一項又は第百二十九条第一項」とあるのは、「商標法第四十六条第一項、第四十八条第一項、第五十条第一項、第五十一条第一項又は第五十三条第一項」と読み替えるものとする。


 (訴願)

第六十二条 この法律又はこの法律に基く命令の規定により行政庁がした処分(補正の却下の決定、査定、審決及び審判又は再審の請求書の却下の決定を除く。)に不服がある者は、通商産業大臣に訴願することができる。ただし、この法律の規定により不服を申し立てることができないこととされているときは、この限りでない。


 (審決等に対する訴)

第六十三条 審決に対する訴、第五十六条第一項において、又は第六十一条において準用する特許法第百七十四条第一項において、それぞれ準用する同法第百五十九条第一項において準用する同法第五十三条第一項の規定による却下の決定に対する訴及び審判又は再審の請求書の却下の決定に対する訴は、東京高等裁判所の専属管轄とする。

2 特許法第百七十八条第二項から第六項まで(出訴期間等)及び第百七十九条から第百八十二条まで(被告適格、出訴の通知、審決又は決定の取消及び裁判の正本の送付)の規定は、前項の訴に準用する。この場合において、同法第百七十九条中「第百二十三条第一項又は第百二十九条第一項」とあるのは、「商標法第四十六条第一項、第四十八条第一項、第五十条第一項、第五十一条第一項又は第五十三条第一項」と読み替えるものとする。

   第七章 防護標章


 (防護標章登録の要件)

第六十四条 商標権者は、登録商標が自己の業務に係る指定商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている場合において、その登録商標に係る指定商品及びこれに類似する商品以外の商品について他人が登録商標の使用をすることによりその商品と自己の業務に係る指定商品とが混同を生ずるおそれがあるときは、そのおそれがある商品について、その登録商標と同一の標章についての防護標章登録を受けることができる。


 (出願の変更)

第六十五条 商標登録出願人は、その商標登録出願を防護標章登録出願に変更することができる。

2 前項の規定による出願の変更は、商標登録出願について出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達があつた後は、することができない。

3 第十二条第一項後段及び第三項の規定は、第一項の規定による出願の変更に準用する。


 (防護標章登録に基く権利の附随性)

第六十六条 防護標章登録に基く権利は、当該商標権を移転したときは、その商標権に従つて移転する。ただし、その商標権を分割して移転したときは、消滅する。

2 防護標章登録に基く権利は、当該商標権が消滅したときは、消滅する。


 (侵害とみなす行為)

第六十七条 次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。

 一 指定商品についての登録防護標章の使用

 二 指定商品であつて、その商品又はその商品の包装に登録防護標章を附したものを譲渡又は引渡のために所持する行為

 三 指定商品について登録防護標章の使用をするために登録防護標章を表示する物を所持する行為

 四 指定商品について登録防護標章の使用をさせるために登録防護標章を表示する物を譲渡し引き渡し又は譲渡若しくは引渡のために所持する行為

 五 指定商品について登録防護標章の使用をし又は使用をさせるために登録防護標章を表示する物を製造し又は輸入する行為


 (商標に関する規定の準用)

第六十八条 第五条第一項及び第三項、第六条第一項、第十条並びに第十三条第一項の規定は、防護標章登録出願に準用する。この場合において、第五条第一項中「三 指定商品及び次条第一項の政令で定める商品の区分」とあるのは、

三 指定商品及び次条第一項の政令で定める商品の区分

 

 

四 防護標章登録出願に係る商標登録の登録番号

 と読み替えるものとする。

2 第十四条から第十七条までの規定は、防護標章登録出願の審査に準用する。この場合において、第十五条第一号中「第三条、第四条第一項、第七条第一項若しくは第三項、第八条第二項若しくは第五項、第五十一条第二項、第五十三条第二項」とあるのは、「第六十四条」と読み替えるものとする。

3 第十八条から第二十三条まで、第二十六条から第二十八条まで、第三十二条、第三十三条、第三十五条、第四十条から第四十三条まで及び次条の規定は、防護標章登録に基く権利に準用する。この場合において、第十九条第二項ただし書中「第四条第一項第一号から第三号まで、第五号、第七号又は第十六号に掲げる商標に該当するものとなつているとき」とあり、第二十一条第一項第一号中「第十九条第二項ただし書の規定に該当するとき」とあるのは、「第六十四条の規定により防護標章登録を受けることができるものでなくなつたとき」と読み替えるものとする。

4 第四十四条から第四十六条まで及び第五十六条の規定は、防護標章登録に係る審判に準用する。この場合において、第四十六条第一項第一号中「第三条、第四条第一項、第七条第一項若しくは第三項、第八条第一項、第二項若しくは第五項、第五十一条第二項、第五十三条第二項」とあるのは「第六十四条」と、同項第四号中「条約」とあるのは「第六十四条の規定若しくは条約」と読み替えるものとする。

5 第五十七条から第六十三条までの規定は、防護標章登録に係る再審、訴願及び訴訟に準用する。この場合において、第五十九条第二号中「第三十七条各号」とあるのは、「第六十七条第二号から第五号まで」と読み替えるものとする。

   第八章 雑則


 (指定商品が二以上の商標権についての特則)

第六十九条 指定商品が二以上の商標登録又は商標権についての第三十三条第一項、第三十五条において準用する特許法第九十七条第一項若しくは第九十八条第一項第一号、第四十六条第二項(第四十八条第二項において準用する場合を含む。)、第五十四条、第五十六条第一項において準用する特許法第百二十五条、第五十六条第一項において若しくは第六十一条において準用する特許法第百七十四条第三項においてそれぞれ準用する同法第百三十二条第一項、第五十九条、第六十条、第七十一条第一項第一号又は第七十五条第二項において準用する特許法第百九十三条第二項第五号の規定の適用については、指定商品ごとに商標登録がされ、又は商標権があるものとみなす。

2 指定商品が二以上の商標登録又は商標権についての第五十九条又は第六十条の規定の適用については、指定商品ごとに商標権の存続期間の更新登録がされたものとみなす。


 (登録商標に類似する商標等についての特則)

第七十条 第二十五条、第二十九条、第三十条第二項、第三十一条第二項、第三十四条第一項、第三十八条第二項、第五十条、第五十九条第一号、第六十四条、第七十三条又は第七十四条における「登録商標」には、その登録商標に類似する商標であつて、色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるものを含むものとする。

2 第四条第一項第十二号又は第六十七条における「登録防護標章」には、その登録防護標章に類似する標章であつて、色彩を登録防護標章と同一にするものとすれば登録防護標章と同一の標章であると認められるものを含むものとする。

3 第三十七条第一号又は第五十一条第一項における「登録商標に類似する商標」には、その登録商標に類似する商標であつて、色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるものを含まないものとする。


 (商標原簿への登録)

第七十一条 次に掲げる事項は、特許庁に備える商標原簿に登録する。

 一 商標権の設定、存続期間の更新、移転、変更、消滅又は処分の制限

 二 防護標章登録に基く権利の設定、存続期間の更新、移転又は消滅

 三 専用使用権又は通常使用権の設定、保存、移転、変更、消滅又は処分の制限

 四 商標権、専用使用権又は通常使用権を目的とする質権の設定、移転、変更、消滅又は処分の制限

2 この法律に規定するもののほか、登録に関して必要な事項は、政令で定める。


 (証明等の請求)

第七十二条 何人も、特許庁長官に対し、商標登録又は防護標章登録に関し、証明、書類の謄本若しくは抄本の交付又は書類の閲覧若しくは謄写を請求することができる。ただし、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある書類については、この限りでない。


 (商標登録表示)

第七十三条 商標権者、専用使用権者又は通常使用権者は、通商産業省令で定めるところにより、指定商品又は指定商品の包装に登録商標を附するときは、その商標にその商標が登録商標である旨の表示(以下「商標登録表示」という。)を附するように努めなければならない。


 (虚偽表示の禁止)

第七十四条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。

 一 登録商標以外の商標の使用をする場合において、その商標に商標登録表示又はこれと紛らわしい表示を附する行為

 二 指定商品以外の商品について登録商標の使用をする場合において、その商標に商標登録表示又はこれと紛らわしい表示を附する行為

 三 商品若しくはその商品の包装に登録商標以外の商標を附したもの又は指定商品以外の商品若しくはその商品の包装に登録商標を附したものであつて、その商標に商標登録表示又はこれと紛らわしい表示を附したものを譲渡又は引渡のために所持する行為


 (商標公報)

第七十五条 特許庁は、商標公報を発行する。

2 特許法第百九十三条第二項第一号から第六号まで及び第八号(特許公報の掲載事項)の規定は、商標公報に準用する。


 (手数料)

第七十六条 別表の中欄に掲げる者は、それぞれ同表の下欄に掲げる金額の範囲内において政令で定める額の手数料を納付しなければならない。

2 前項の規定は、別表の中欄に掲げる者が国であるときは、適用しない。

3 過誤納の手数料は、納付した者の請求により返還する。

4 前項の規定による手数料の返還は、納付した日から一年を経過した後は、請求することができない。


 (特許法の準用)

第七十七条 特許法第三条から第五条まで(期間及び期日)の規定は、この法律に規定する期間及び期日に準用する。

2 特許法第六条から第二十四条まで及び第百九十四条(手続)の規定は、商標登録出願、防護標章登録出願、請求その他商標登録又は防護標章登録に関する手続に準用する。

3 特許法第二十五条(外国人の権利の享有)の規定は、商標権その他商標登録に関する権利に準用する。

4 特許法第二十六条(条約の効力)の規定は、商標登録及び防護標章登録に準用する。

5 特許法第百八十九条から第百九十二条まで(送達)の規定は、この法律の規定による送達に準用する。

   第九章 罰則


 (侵害の罪)

第七十八条 商標権又は専用使用権を侵害した者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。


 (詐欺の行為の罪)

第七十九条 詐欺の行為により商標登録、防護標章登録、商標権若しくは防護標章登録に基く権利の存続期間の更新登録又は審決を受けた者は、三年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。


 (虚偽表示の罪)

第八十条 第七十四条の規定に違反した者は、三年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。


 (偽証等の罪)

第八十一条 この法律の規定により宣誓した証人、鑑定人又は通訳人が特許庁又はその嘱託を受けた裁判所に対し虚偽の陳述、鑑定又は通訳をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処する。

2 前項の罪を犯した者が事件の査定又は審決が確定する前に自白したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。


 (両罰規定)

第八十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第七十八条から第八十条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対し、各本条の罰金刑を科する。


 (過料)

第八十三条 第五十六条第一項において、第十七条において準用する特許法第五十九条において、又は第六十一条において準用する特許法第百七十四条第一項から第三項までにおいて、それぞれ準用する同法第百五十一条において準用する民事訴訟法第二百六十七条第二項又は第三百三十六条の規定により宣誓した者が特許庁又はその嘱託を受けた裁判所に対し虚偽の陳述をしたときは、五千円以下の過料に処する。

第八十四条 この法律の規定により特許庁又はその嘱託を受けた裁判所から呼出を受けた者が正当な理由がないのに出頭せず、又は宣誓、陳述、証言、鑑定若しくは通訳を拒んだときは、五千円以下の過料に処する。

第八十五条 証拠調又は証拠保全に関し、この法律の規定により特許庁又はその嘱託を受けた裁判所から書類その他の物件の提出又は提示を命じられた者が正当な理由がないのにその命令に従わなかつたときは、五千円以下の過料に処する。


   附 則

 この法律の施行期日は、別に法律で定める。

別表

 

納付しなければならない者

金額

商標登録出願、防護標章登録出願又は商標権若しくは防護標章登録に基く権利の存続期間の更新登録の出願をする者

一件につき二千円(連合商標の商標登録出願にあつては、四千円)

第十三条第二項において準用する特許法第三十四条第四項の規定により承継の届出をする者

一件につき八百円

異議の申立をする者

一件につき八百円

第二十八条第一項(第六十八条第三項において準用する場合を含む。)の規定により判定を求める者

一件につき三千円

第四十一条第三項(第六十八条第三項において準用する場合を含む。)若しくは第七十七条第一項において準用する特許法第四条若しくは第五条第一項の規定による期間の延長又は第七十七条第一項において準用する特許法第五条第二項の規定による期日の変更を請求する者

一件につき三百円

審判又は再審を請求する者

一件につき四千円

審判又は再審への参加を申請する者

一件につき四千円

第七十二条の規定により証明を請求する者

一件につき二百円

第七十二条の規定により書類の謄本又は抄本の交付を請求する者

謄本又は抄本一枚につき八十円(外国文の書類は百語又は百語未満につき八十円、書類中に図面があるときは図面一枚につき三千円、写真によるときは一枚につき五百円、特許庁の発行に係る印刷物を謄本又は抄本とするときはその印刷物の価格に六十円を加えた額)

第七十二条の規定により書類の閲覧又は謄写を請求する者

一件につき八十円(商標原簿にあつては、四十円)

(法務・通商産業・内閣総理大臣署名) 

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