船員保険法の一部を改正する法律

法律第百二十三号(昭三四・四・一三)

  

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 実用新案登録及び実用新案登録出願(第三条―第九条)

 第三章 審査(第十条―第十三条)

 第四章 実用新案権

  第一節 実用新案権(第十四条―第二十六条)

  第二節 権利侵害(第二十七条―第三十条)

  第三節 登録料(第三十一条―第三十四条)

 第五章 審判(第三十五条―第四十一条)

 第六章 再審、訴願及び訴訟(第四十二条―第四十八条)

 第七章 雑則(第四十九条―第五十五条)

 第八章 罰則(第五十六条―第六十四条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、物品の形状、構造又は組合せに係る考案の保護及び利用を図ることにより、その考案を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律で「考案」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作をいう。

2 この法律で「登録実用新案」とは、実用新案登録を受けている考案をいう。

3 この法律で考案について「実施」とは、考案に係る物品を製造し使用し譲渡し貸し渡し譲渡若しくは貸渡のために展示し又は輸入する行為をいう。

   第二章 実用新案登録及び実用新案登録出願

 (実用新案登録の要件)

第三条 産業上利用することができる考案であつて物品の形状、構造又は組合せに係るものをした者は、次に掲げる考案を除き、その考案について実用新案登録を受けることができる。

 一 実用新案登録出願前に日本国内において公然知られた考案

 二 実用新案登録出願前に日本国内において公然実施をされた考案

 三 実用新案登録出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された考案

2 実用新案登録出願前にその考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる考案に基いてきわめて容易に考案をすることができたときは、その考案については、同項の規定にかかわらず、実用新案登録を受けることができない。


 (実用新案登録を受けることができない考案)

第四条 公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがある考案については、前条の規定にかかわらず、実用新案登録を受けることができない。

 (実用新案登録出願)

第五条 実用新案登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。

 一 実用新案登録出願人の氏名又は名称及び住所又は居所並びに法人にあつては代表者の氏名

 二 提出の年月日

 三 考案の名称

 四 考案者の氏名及び住所又は居所

2 願書には、次に掲げる事項を記載した明細書及び図面を添附しなければならない。

 一 考案の名称

 二 図面の簡単な説明

 三 考案の詳細な説明

 四 実用新案登録請求の範囲

3 前項第三号の考案の詳細な説明には、その考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、その考案の目的、構成及び効果を記載しなければならない。

4 第二項第四号の実用新案登録請求の範囲には、考案の詳細な説明に記載した考案の構成に欠くことができない事項のみを記載しなければならない。


 (一考案一出願)

第六条 実用新案登録出願は、考案ごとにしなければならない。


 (先願)

第七条 同一の考案について異なつた日に二以上の実用新案登録出願があつたときは、最先の実用新案登録出願人のみがその考案について実用新案登録を受けることができる。

2 同一の考案について同日に二以上の実用新案登録出願があつたときは、実用新案登録出願人の協議により定めた一の実用新案登録出願人のみがその考案について実用新案登録を受けることができる。協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、いずれも、その考案について実用新案登録を受けることができない。

3 実用新案登録出願に係る考案と特許出願に係る発明とが同一である場合において、その実用新案登録出願及び特許出願が異なつた日にされたものであるときは、実用新案登録出願人は、特許出願人より先に出願をした場合にのみその考案について実用新案登録を受けることができる。

4 実用新案登録出願又は特許出願が取り下げられ、又は無効にされたときは、その実用新案登録出願又は特許出願は、前三項の規定の適用については、初めからなかつたものとみなす。

5 考案者又は発明者でない者であつて実用新案登録を受ける権利又は特許を受ける権利を承継しないものがした実用新案登録出願又は特許出願は、第一項から第三項までの規定の適用については、実用新案登録出願又は特許出願でないものとみなす。

6 特許庁長官は、第二項の場合は、相当の期間を指定して、同項の協議をしてその結果を届け出るべき旨を実用新案登録出願人に命じなければならない。

7 特許庁長官は、前項の規定により指定した期間内に同項の規定による届出がないときは、第二項の協議が成立しなかつたものとみなすことができる。

8 特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第三十九条第四項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、実用新案登録出願人は、その考案について実用新案登録を受けることができない。


 (出願の変更)

第八条 特許出願人は、その特許出願を実用新案登録出願に変更することができる。ただし、その特許出願について拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三十日を経過した後は、この限りでない。

2 意匠登録出願人は、その意匠登録出願を実用新案登録出願に変更することができる。ただし、その意匠登録出願について拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三十日を経過した後は、この限りでない。

3 前二項の規定による出願の変更があつたときは、その実用新案登録出願は、その特許出願又は意匠登録出願の時にしたものとみなす。

4 第一項又は第二項の規定による出願の変更があつたときは、その特許出願又は意匠登録出願は、取り下げたものとみなす。

5 第一項ただし書に規定する期間は、特許法第四条第一項の規定により同法第百二十一条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。

6 第二項ただし書に規定する期間は、意匠法(昭和三十四年法律第百二十五号)第六十八条第一項において準用する特許法第四条第一項の規定により意匠法第四十六条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。


 (特許法の準用)

第九条 特許法第三十条(発明の新規性の喪失の例外)、第三十七条(共同出願)及び第四十条から第四十四条まで(明細書等の補正と要旨変更、優先権主張の手続及び特許出願の分割)の規定は、実用新案登録出願に準用する。

2 特許法第三十三条並びに第三十四条第一項、第二項及び第四項から第七項まで(特許を受ける権利)の規定は、実用新案登録を受ける権利に準用する。

3 特許法第三十五条(職務発明)の規定は、従業者、法人の役員又は国家公務員若しくは地方公務員がした考案に準用する。

   第三章 審査


 (審査官による審査)

第十条 特許庁長官は、審査官に実用新案登録出願及び異議の申立を審査させなければならない。


 (拒絶の査定)

第十一条 審査官は、実用新案登録出願が次の各号の一に該当するときは、その実用新案登録出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。

 一 その実用新案登録出願に係る考案が第三条、第四条、第七条第一項から第三項まで若しくは第八項、第九条第一項において準用する特許法第三十七条又は第五十五条第三項において準用する特許法第二十五条の規定により実用新案登録をすることができないものであるとき。

 二 その実用新案登録出願に係る考案が条約の規定により実用新案登録をすることができないものであるとき。

 三 その実用新案登録出願が第五条第三項若しくは第四項又は第六条に規定する要件をみたしていないとき。

 四 その実用新案登録出願人が考案者でない場合において、その考案について実用新案登録を受ける権利を承継していないとき。


 (出願公告の効果等)

第十二条 実用新案登録出願人は、次条において準用する特許法第五十一条第二項の規定により出願公告があつたときは、業としてその実用新案登録出願に係る考案の実施をする権利を専有する。

2 前項の権利に基く不当利得の返還又は損害の賠償の請求権は、当該実用新案権の設定の登録があつた後でなければ、行うことができない。

3 第二十八条から第三十条までの規定は、第一項の権利に基き損害の賠償の請求をする場合に準用する。

4 第一項の権利に基く損害の賠償の請求権を有する者が当該実用新案権の設定の登録前にその侵害の行為及びその行為をした者を知つた場合における民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百二十四条の規定の適用については、同条中「被害者又ハ其法定代理人ガ損害及ビ加害者ヲ知リタル時」とあるのは、「当該実用新案権ノ設定ノ登録ノ日」とする。

5 出願公告後に実用新案登録出願が放棄され取り下げられ若しくは無効にされたとき、実用新案登録出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したとき、第三十三条第四項の規定により実用新案権が初めから存在しなかつたものとみなされたとき、又は第四十一条において準用する特許法第百二十五条ただし書の場合を除き実用新案登録を無効にすべき旨の審決が確定したときは、第一項の権利は、初めから生じなかつたものとみなす。


 (特許法の準用)

第十三条 特許法第四十七条第二項(審査官の資格)、第四十八条(審査官の除斥)、第五十条(拒絶理由の通知)、第五十一条(出願公告)及び第五十三条から第六十五条まで(補正の却下、異議の申立、査定の方式、出願公告決定後の補正及び訴訟との関係)の規定は、実用新案登録出願の審査に準用する。

   第四章 実用新案権

    第一節 実用新案権


 (実用新案権の設定の登録)

第十四条 実用新案権は、設定の登録により発生する。

2 第三十一条第一項第一号の規定による第一年から第三年までの各年分の登録料の納付又はその納付の免除若しくは猶予があつたときは、実用新案権の設定の登録をする。

3 前項の登録があつたときは、実用新案権者の氏名又は名称及び住所又は居所、登録番号並びに設定の登録の年月日を実用新案公報に掲載しなければならない。


 (存続期間)

第十五条 実用新案権の存続期間は、出願公告の日から十年をもつて終了する。ただし、実用新案登録出願の日から十五年をこえることができない。

2 第九条第一項において準用する特許法第四十条の規定により、又は第十三条において、若しくは第四十一条において準用する特許法第百五十九条第一項において、若しくは第四十五条において準用する特許法第百七十四条第一項において準用する同法第百五十九条第一項において、それぞれ準用する同法第五十三条第四項の規定により、実用新案登録出願が手続補正書を提出した時にしたものとみなされたときは、前項ただし書の十五年は、同項ただし書の規定にかかわらず、もとの実用新案登録出願の日の翌日から起算する。


 (実用新案権の効力)

第十六条 実用新案権者は、業として登録実用新案の実施をする権利を専有する。ただし、その実用新案権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその登録実用新案の実施をする権利を専有する範囲については、この限りでない。


 (他人の登録実用新案等との関係)

第十七条 実用新案権者、専用実施権者又は通常実施権者は、その登録実用新案がその実用新案登録出願の日前の出願に係る他人の登録実用新案、特許発明若しくは登録意匠若しくはこれに類似する意匠を利用するものであるとき、又はその実用新案権がその実用新案登録出願の日前の意匠登録出願に係る他人の意匠権と抵触するときは、業としてその登録実用新案の実施をすることができない。


 (専用実施権)

第十八条 実用新案権者は、その実用新案権について専用実施権を設定することができる。

2 専用実施権者は、設定行為で定めた範囲内において、業としてその登録実用新案の実施をする権利を専有する。

3 特許法第七十七条第三項から第五項まで(移転等)、第九十七条第二項(放棄)並びに第九十八条第一項第二号及び第二項(登録の効果)の規定は、専用実施権に準用する。


 (通常実施権)

第十九条 実用新案権者は、その実用新案権について他人に通常実施権を許諾することができる。

2 通常実施権者は、この法律の規定により又は設定行為で定めた範囲内において、業としてその登録実用新案の実施をする権利を有する。

3 特許法第七十三条第一項(共有)、第九十七条第三項(放棄)及び第七十九条(登録の効果)の規定は、通常実施権に準用する。


 (無効審判の請求登録前の実施による通常実施権)

第二十条 次の各号の一に該当する者であつて、第三十七条第一項又は特許法第百二十三条第一項の審判の請求の登録前に、実用新案登録又は特許が第三十七条第一項各号の一又は特許法第百二十三条第一項各号の一に該当することを知らないで、日本国内において当該考案又は発明の実施である事業をしているもの又はその事業の準備をしているものは、その実施又は準備をしている考案又は発明及び事業の目的の範囲内において、当該実用新案権又はその実用新案登録若しくは特許を無効にした際現に存する専用実施権について通常実施権を有する。

 一 同一の考案についての二以上の実用新案登録のうち、その一を無効にした場合における原実用新案権者

 二 実用新案登録に係る考案と特許に係る発明とが同一である場合において、特許を無効にした場合における原特許権者

 三 実用新案登録を無効にして同一の考案について正当権利者に実用新案登録をした場合における原実用新案権者

 四 特許を無効にしてその発明と同一の考案について正当権利者に実用新案登録をした場合における原特許権者

 五 前四号に掲げる場合において、第三十七条第一項又は特許法第百二十三条第一項の審判の請求の登録の際現にその無効にした実用新案登録に係る実用新案権についての専用実施権若しくはその実用新案権若しくは専用実施権についての前条第三項において準用する特許法第九十九条第一項の効力を有する通常実施権又はその無効にした特許に係る特許権についての専用実施権若しくはその特許権若しくは専用実施権についての同項の効力を有する通常実施権を有する者

2 当該実用新案権者又は専用実施権者は、前項の規定により通常実施権を有する者から相当の対価を受ける権利を有する。


 (不実施の場合の通常実施権の設定の裁定)

第二十一条 登録実用新案の実施が継続して三年以上日本国内において適当にされていないときは、その登録実用新案の実施をしようとする者は、特許庁長官の許可を受けて、実用新案権者又は専用実施権者に対し通常実施権の許諾について協議を求めることができる。

2 前項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、その登録実用新案の実施をしようとする者は、特許庁長官の裁定を請求することができる。

3 特許法第八十四条から第九十一条まで(裁定の手続等)の規定は、前項の裁定に準用する。


 (自己の登録実用新案の実施をするための通常実施権の設定の裁定)

第二十二条 実用新案権者又は専用実施権者は、その登録実用新案が第十七条に規定する場合に該当するときは、特許庁長官の許可を受けて、同条の他人に対しその登録実用新案の実施をするための通常実施権又は特許権若しくは意匠権についての通常実施権の許諾について協議を求めることができる。

2 前項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、実用新案権者又は専用実施権者は、特許庁長官の裁定を請求することができる。

3 特許庁長官は、前項の場合において、当該通常実施権を設定することが第十七条の他人の利益を不当に害することとなるときは、当該通常実施権を設定すべき旨の裁定をすることができない。

4 特許法第八十四条、第八十五条第一項及び第八十六条から第九十一条まで(裁定の手続等)の規定は、第二項の裁定に準用する。


 (公共の利益のための通常実施権の設定の裁定)

第二十三条 登録実用新案の実施が公共の利益のため特に必要であるときは、その登録実用新案の実施をしようとする者は、通商産業大臣の許可を受けて、実用新案権者又は専用実施権者に対し通常実施権の許諾について協議を求めることができる。

2 前項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、その登録実用新案の実施をしようとする者は、通商産業大臣の裁定を請求することができる。

3 特許法第八十四条、第八十五条第一項及び第八十六条から第九十一条まで(裁定の手続等)の規定は、前項の裁定に準用する。


 (通常実施権の移転等)

第二十四条 通常実施権は、第二十二条第二項、特許法第九十二条第二項又は意匠法第三十三条第二項の裁定による通常実施権を除き、実施の事業とともにする場合、実用新案権者(専用実施権についての通常実施権にあつては、実用新案権者及び専用実施権者)の承諾を得た場合及び相続その他の一般承継の場合に限り、移転することができる。

2 通常実施権者は、第二十二条第二項、特許法第九十二条第二項又は意匠法第三十三条第二項の裁定による通常実施権を除き、実用新案権者(専用実施権についての通常実施権にあつては、実用新案権者及び専用実施権者)の承諾を得た場合に限り、その通常実施権について質権を設定することができる。

3 第二十二条第二項、特許法第九十二条第二項又は意匠法第三十三条第二項の裁定による通常実施権は、その通常実施権者の当該実用新案権、特許権又は意匠権に従つて移転し、その実用新案権、特許権又は意匠権が消滅したときは、消滅する。


 (質権)

第二十五条 実用新案権、専用実施権又は通常実施権を目的として質権を設定したときは、質権者は、契約で別段の定をした場合を除き、当該登録実用新案の実施をすることができない。

2 特許法第九十六条(物上代位)の規定は、実用新案権、専用実施権又は通常実施権を目的とする質権に準用する。

3 特許法第九十八条第一項第三号及び第二項(登録の効果)の規定は、実用新案権又は専用実施権を目的とする質権に準用する。

4 特許法第九十九条第三項(登録の効果)の規定は、通常実施権を目的とする質権に準用する。


 (特許法の準用)

第二十六条 特許法第六十九条から第七十一条まで(特許権の効力が及ばない範囲及び特許発明の技術的範囲)、第七十三条(共有)、第七十六条(相続人がない場合の特許権の消滅)、第七十九条(先使用による通常実施権)、第八十一条、第八十二条(意匠権の存続期間満了後の通常実施権)、第九十七条第一項(放棄)並びに第九十八条第一項第一号及び第二項(登録の効果)の規定は、実用新案権に準用する。

    第二節 権利侵害


 (差止請求権)

第二十七条 実用新案権者又は専用実施権者は、自己の実用新案権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

2 実用新案権者又は専用実施権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。


 (侵害とみなす行為)

第二十八条 登録実用新案に係る物品の製造にのみ使用する物を業として製造し譲渡し貸し渡し譲渡若しくは貸渡のために展示し又は輸入する行為は、当該実用新案権又は専用実施権を侵害するものとみなす。


 (損害の額の推定等)

第二十九条 実用新案権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の実用新案権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、実用新案権者又は専用実施権者が受けた損害の額と推定する。

2 実用新案権者又は専用実施権者は、故意又は過失により自己の実用新案権又は専用実施権を侵害した者に対し、その登録実用新案の実施に対し通常受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。

3 前項の規定は、同項に規定する金額をこえる損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、実用新案権又は専用実施権を侵害した者に故意又は重大な過失がなかつたときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。


 (特許法の準用)

第三十条 特許法第百三条(過失の推定)、第百五条(書類の提出)及び第百六条(信用回復の措置)の規定は、実用新案権又は専用実施権の侵害に準用する。

    第三節 登録料


 (登録料)

第三十一条 実用新案権の設定の登録を受ける者又は実用新案権者は、登録料として、第十五条第一項に規定する十年の各年について、一件ごとに、次に掲げる金額を納付しなければならない。

 一 第一年から第三年まで  毎年  六百円

 二 第四年から第六年まで  毎年 千二百円

 三 第七年から第十年まで  毎年二千四百円

2 前項の規定は、国に属する実用新案権には、適用しない。


 (登録料の納付期限)

第三十二条 前条第一項第一号の規定による第一年から第三年までの各年分の登録料は、実用新案登録をすべき旨の査定又は審決の謄本の送達があつた日から三十日以内に一時に納付しなければならない。

2 前条第一項第二号又は第三号の規定による第四年以後の各年分の登録料は、前年以前に納付しなければならない。ただし、出願公告の日から実用新案登録をすべき旨の査定又は審決の謄本の送達があつた日までに三年以上を経過したときは、第四年から査定又は審決の謄本の送達があつた日の属する年(査定又は審決の謄本の送達があつた日からその日の属する年の末日までの日数が三十日にみたないときは、査定又は審決の謄本の送達があつた日の属する年の次の年)までの各年分の登録料は、実用新案登録をすべき旨の査定又は審決の謄本の送達があつた日から三十日以内に一時に納付しなければならない。

3 特許庁長官は、登録料を納付すべき者の請求により、三十日以内を限り、第一項又は前項ただし書に規定する期間を延長することができる。


 (登録料の追納)

第三十三条 実用新案権者は、前条第二項本文に規定する期間又は次条において準用する特許法第百九条の規定による納付の猶予後の期間内に登録料を納付することができないときは、その期間が経過した後であつても、その期間の経過後六月以内にその登録料を追納することができる。

2 前項の規定により登録料を追納する実用新案権者は、第三十一条第一項の規定により納付すべき登録料のほか、その登録料と同額の割増登録料を納付しなければならない。

3 実用新案権者が第一項の規定により登録料を追納することができる期間内に第三十一条第一項第二号又は第三号の規定による第四年以後の各年分の登録料及び前項の割増登録料を納付しないときは、その実用新案権は、前条第二項本文に規定する期間の経過の時にさかのぼつて消滅したものとみなす。

4 実用新案権者が第一項の規定により登録料を追納することができる期間内に次条において準用する特許法第百九条の規定により納付が猶予された登録料及び第二項の割増登録料を納付しないときは、その実用新案権は、初めから存在しなかつたものとみなす。


 (特許法の準用)

第三十四条 特許法第百九条から第百十一条まで(特許料の減免又は猶予、利害関係人による特許料の納付及び既納の特許料の返還)の規定は、登録料に準用する。

   第五章 審判


 (拒絶査定に対する審判)

第三十五条 拒絶をすべき旨の査定を受けた者は、その査定に不服があるときは、その査定の謄本の送達があつた日から三十日以内に審判を請求することができる。

2 前項の審判を請求する者がその責に帰することができない理由により同項に規定する期間内にその請求をすることができないときは、同項の規定にかかわらず、その理由がなくなつた日から十四日以内でその期間の経過後六月以内にその請求をすることができる。


 (補正の却下の決定に対する審判)

第三十六条 第十三条において準用する特許法第五十三条第一項の規定による却下の決定を受けた者は、その決定に不服があるときは、その決定の謄本の送達があつた日から三十日以内に審判を請求することができる。ただし、第十三条において準用する特許法第五十三条第四項に規定する新たな実用新案登録出願をしたときは、この限りでない。

2 前条第二項の規定は、前項の審判の請求に準用する。


 (実用新案登録の無効の審判)

第三十七条 実用新案登録が次の各号の一に該当するときは、その実用新案登録を無効にすることについて審判を請求することができる。

 一 その実用新案登録が第三条、第四条、第七条第一項から第三項まで若しくは第八項、第九条第一項において準用する特許法第三十七条又は第五十五条第三項において準用する特許法第二十五条の規定に違反してされたとき。

 二 その実用新案登録が条約に違反してされたとき。

 三 その実用新案登録が第五条第三項又は第四項に規定する要件をみたしていない実用新案登録出願に対してされたとき。

 四 その実用新案登録が考案者でない者であつてその考案について実用新案登録を受ける権利を承継しないものの実用新案登録出願に対してされたとき。

 五 実用新案登録がされた後において、その実用新案権者が第五十五条第三項において準用する特許法第二十五条の規定により実用新案権を享有することができない者になつたとき、又はその実用新案登録が条約に違反することとなつたとき。

2 前項の審判は、実用新案権の消滅後においても、請求することができる。

3 審判長は、第一項の審判の請求があつたときは、その旨を当該実用新案権についての専用実施権者その他その実用新案登録に関し登録した権利を有する者に通知しなければならない。

第三十八条 実用新案登録が実用新案登録出願前に外国において頒布された刊行物に記載された考案又はその考案に基いてその考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者がきわめて容易に考案をすることができた場合における考案についてされたときは、その実用新案登録についての前条第一項の審判は、実用新案権の設定の登録の日から三年を経過した後は、請求することができない。


 (訂正の審判)

第三十九条 実用新案権者は、次に掲げる事項を目的とする場合に限り、願書に添附した明細書又は図面の訂正をすることについて審判を請求することができる。

 一 実用新案登録請求の範囲の減縮

 二 誤記の訂正

 三 明瞭でない記載の釈明

2 前項の明細書又は図面の訂正は、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものであつてはならない。

3 第一項第一号の場合は、訂正後における実用新案登録請求の範囲に記載されている事項により構成される考案が実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものでなければならない。

4 第一項の審判は、実用新案権の消滅後においても、請求することができる。ただし、第三十七条第一項の審判により無効にされた後は、この限りでない。


 (訂正の無効の審判)

第四十条 願書に添附した明細書又は図面の訂正が前条第一項から第三項までの規定に違反しているときは、その訂正を無効にすることについて審判を請求することができる。

2 第三十七条第二項及び第三項の規定は、前項の審判の請求に準用する。


 (特許法の準用)

第四十一条 特許法第百二十五条、第百二十七条、第百二十八条、第百三十条から第百五十四条まで、第百五十五条第一項及び第二項並びに第百五十六条から第百七十条まで(審決の効果、審判の請求、審判官、審判の手続、訴訟との関係及び審判における費用)の規定は、審判に準用する。

   第六章 再審、訴願及び訴訟


 (再審の請求)

第四十二条 確定審決に対しては、その当事者は、再審を請求することができる。

2 民事訴訟法(明治二十三年法律第二十九号)第四百二十条第一項及び第二項並びに第四百二十一条(再審の理由)の規定は、前項の再審の請求に準用する。

第四十三条 審判の請求人及び被請求人が共謀して第三者の権利又は利益を害する目的をもつて審決をさせたときは、その第三者は、その確定審決に対し再審を請求することができる。

2 前項の再審は、その請求人及び被請求人を共同被請求人として請求しなければならない。


 (再審により回復した実用新案権の効力の制限)

第四十四条 無効にした実用新案登録に係る実用新案権が再審により回復したとき、又は拒絶をすべき旨の審決があつた実用新案登録出願について再審により実用新案権の設定の登録があつたときは、実用新案権の効力は、当該審決が確定した後再審の請求の登録前に善意に輸入し又は日本国内において製造し若しくは取得した当該登録実用新案に係る物品には、及ばない。

2 無効にした実用新案登録に係る実用新案権が再審により回復したとき、又は拒絶をすべき旨の審決があつた実用新案登録出願について再審により実用新案権の設定の登録があつたときは、実用新案権の効力は、次に掲げる行為には、及ばない。

 一 当該審決が確定した後再審の請求の登録前における当該考案の善意の実施

 二 当該登録実用新案に係る物品の製造にのみ使用する物を当該審決が確定した後再審の請求の登録前に善意に製造し譲渡し貸し渡し譲渡若しくは貸渡のために展示し又は輸入した行為


 (特許法の準用)

第四十五条 特許法第百七十三条(再審の請求期間)、第百七十四条(審判の規定等の準用)及び第百七十六条(再審の請求登録前の実施による通常実施権)の規定は、再審に準用する。


 (訴願)

第四十六条 この法律又はこの法律に基く命令の規定により行政庁がした処分(補正の却下の決定、査定、審決及び審判又は再審の請求書の却下の決定を除く。)に不服がある者は、通商産業大臣に訴願することができる。ただし、この法律の規定により不服を申し立てることができないこととされているときは、この限りでない。


 (審決等に対する訴)

第四十七条 審決に対する訴、第四十一条において、又は第四十五条において準用する特許法第百七十四条第一項において、それぞれ準用する同法第百五十九条第一項において準用する同法第五十三条第一項の規定による却下の決定に対する訴及び審判又は再審の請求書の却下の決定に対する訴は、東京高等裁判所の専属管轄とする。

2 特許法第百七十八条第二項から第六項まで(出訴期間等)及び第百七十九条から第百八十二条まで(被告適格、出訴の通知、審決又は決定の取消及び裁判の正本の送付)の規定は、前項の訴に準用する。


 (対価の額についての訴)

第四十八条 第二十一条第二項、第二十二条第二項又は第二十三条第二項の裁定を受けた者は、その裁定で定める対価の額について不服があるときは、訴を提起してその額の増減を求めることができる。

2 特許法第百八十三条第二項から第四項まで(出訴期間)及び第百八十四条(被告適格)の規定は、前項の訴に準用する。

   第七章 雑則


 (実用新案原簿への登録)

第四十九条 次に掲げる事項は、特許庁に備える実用新案原簿に登録する。

 一 実用新案権の設定、移転、消滅又は処分の制限

 二 専用実施権又は通常実施権の設定、保存、移転、変更、消滅又は処分の制限

 三 実用新案権、専用実施権又は通常実施権を目的とする質権の設定、移転、変更、消滅又は処分の制限

2 この法律に規定するもののほか、登録に関して必要な事項は、政令で定める。


 (実用新案登録証の交付)

第五十条 特許庁長官は、実用新案権の設定の登録があつたとき、又は願書に添附した明細書若しくは図面の訂正をすべき旨の審決が確定した場合において、その登録があつたときは、実用新案権者に対し、実用新案登録証を交付する。

2 実用新案登録証の再交付については、通商産業省令で定める。


 (実用新案登録表示)

第五十一条 実用新案権者、専用実施権者又は通常実施権者は、通商産業省令で定めるところにより、登録実用新案に係る物品又はその物品の包装にその物品が登録実用新案に係る旨の表示(以下「実用新案登録表示」という。)を附するように努めなければならない。


 (虚偽表示の禁止)

第五十二条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。

 一 登録実用新案に係る物品以外の物品又はその物品の包装に実用新案登録表示又はこれと紛らわしい表示を附する行為

 二 登録実用新案に係る物品以外の物品であつて、その物品又はその物品の包装に実用新案登録表示又はこれと紛らわしい表示を附したものを譲渡し、貸し渡し、又は譲渡若しくは貸渡のために展示する行為

 三 登録実用新案に係る物品以外の物品を製造させ若しくは使用させるため、又は譲渡し若しくは貸し渡すため、広告にその物品が登録実用新案に係る旨を表示し、又はこれと紛らわしい表示をする行為


 (実用新案公報)

第五十三条 特許庁は、実用新案公報を発行する。

2 特許法第百九十三条第二項(特許公報の掲載事項)の規定は、実用新案公報に準用する。


 (手数料)

第五十四条 別表の中欄に掲げる者は、それぞれ同表の下欄に掲げる金額の範囲内において政令で定める額の手数料を納付しなければならない。

2 前項の規定は、別表の中欄に掲げる者が国であるときは、適用しない。

3 過誤納の手数料は、納付した者の請求により返還する。

4 前項の規定による手数料の返還は、納付した日から一年を経過した後は、請求することができない。


 (特許法の準用)

第五十五条 特許法第三条から第五条まで(期間及び期日)の規定は、この法律に規定する期間及び期日に準用する。

2 特許法第六条から第二十四条まで及び第百九十四条(手続)の規定は、実用新案登録出願、請求その他実用新案登録に関する手続に準用する。

3 特許法第二十五条(外国人の権利の享有)の規定は、実用新案権その他実用新案登録に関する権利に準用する。

4 特許法第二十六条(条約の効力)及び第百八十六条(証明等の請求)の規定は、実用新案登録に準用する。

5 特許法第百八十九条から第百九十二条まで(送達)の規定は、この法律の規定による送達に準用する。

   第八章 罰則


 (侵害の罪)

第五十六条 実用新案権又は専用実施権を侵害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

2 第十二条第一項の権利を侵害した者は、当該実用新案権の設定の登録があつたときは、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

3 前二項の罪は、告訴をまつて論ずる。


 (詐欺の行為の罪)

第五十七条 詐欺の行為により実用新案登録又は審決を受けた者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。


 (虚偽表示の罪)

第五十八条 第五十二条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。


 (偽証等の罪)

第五十九条 この法律の規定により宣誓した証人、鑑定人又は通訳人が特許庁又はその嘱託を受けた裁判所に対し虚偽の陳述、鑑定又は通訳をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処する。

2 前項の罪を犯した者が事件の査定又は審決が確定する前に自白したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。


 (秘密を漏らした罪)

第六十条 特許庁の職員又はその職にあつた者がその職務に関して知得した実用新案登録出願中の考案に関する秘密を漏らし、又は盗用したときは、一年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。


 (両罰規定)

第六十一条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第五十六条第一項若しくは第二項、第五十七条又は第五十八条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対し、各本条の罰金刑を科する。


 (過料)

第六十二条 第四十一条において、第十三条において準用する特許法第五十九条において、又は第四十五条において準用する特許法第百七十四条第一項から第四項までにおいて、それぞれ準用する同法第百五十一条において準用する民事訴訟法第二百六十七条第二項又は第三百三十六条の規定により宣誓した者が特許庁又はその嘱託を受けた裁判所に対し虚偽の陳述をしたときは、五千円以下の過料に処する。

第六十三条 この法律の規定により特許庁又はその嘱託を受けた裁判所から呼出を受けた者が、正当な理由がないのに出頭せず、又は宣誓、陳述、証言、鑑定若しくは通訳を拒んだときは、五千円以下の過料に処する。

第六十四条 証拠調又は証拠保全に関し、この法律の規定により特許庁又はその嘱託を受けた裁判所から書類その他の物件の提出又は提示を命じられた者が正当な理由がないのにその命令に従わなかつたときは、五千円以下の過料に処する。


   附 則

 この法律の施行期日は、別に法律で定める。

 

 

別表

 

納付しなければならない者

金額

 一

実用新案登録出願をする者

一件につき千五百円

 二

第九条第二項において準用する特許法第三十四条第四項の規定により承継の届出をする者

一件につき四百円

 三

異議の申立をする者

一件につき四百円

 四

第二十六条において準用する特許法第七十一条第一項の規定により判定を求める者

一件につき三千円

 五

裁定を請求する者

一件につき四千円

 六

裁定の取消を請求する者

一件につき二千円

 七

第三十二条第三項若しくは第五十五条第一項において準用する特許法第四条若しくは第五条第一項の規定による期間の延長又は第五十五条第一項において準用する特許法第五条第二項の規定による期日の変更を請求する者

一件につき三百円

 八

審判又は再審を請求する者

一件につき四千円

 九

審判又は再審への参加を申請する者

一件につき四千円

 十

実用新案登録証の再交付を請求する者

一件につき四百円

十一

第五十五条第四項において準用する特許法第百八十六条の規定により証明を請求する者

一件につき二百円

十二

第五十五条第四項において準用する特許法第百八十六条の規定により書類の謄本又は抄本の交付を請求する者

謄本又は抄本一枚につき八十円(外国文の書類は百語未満につき八十円、書類中に図面があるときは図面一枚につき三千円、写真によるときは一枚につき五百円、特許庁の発行に係る印刷物を謄本又は抄本とするときはその印刷物の価格に六十円を加えた額)

十三

第五十五条第四項において準用する特許法第百八十六条の規定により書類の閲覧又は謄写を請求する者

一件につき八十円(実用新案原簿にあつては、四十円)

(法務・通商産業・内閣総理大臣署名) 

昭和34年前半に戻る

昭和34年後半に戻る