昭和二十八年六月及び七月の大水害による災害地域内のたい積土砂の排除に関する特別措置法
法律第二百五十七号(昭二八・八・三一)
(目的)
第一条 この法律は、昭和二十八年六月及び七月の大水害による災害の復旧に重大な支障のある災害地域内のたい積土砂の排除事業をすみやかに遂行させるため、当該排除事業についての国の費用負担及び補助等の特別措置を定めることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において、「たい積土砂」とは、昭和二十八年六月及び七月の大水害(以下「水害」という。)により政令で定める地域(以下「災害地域」という。)内に流入してたい積し、又は水害により発生した土砂の崩壊等により災害地域内にたい積した政令で定める程度に達する異常に多量のでい土、砂れき、岩石、樹木等をいう。
(都道府県知事の施行するたい積土砂の排除事業)
第三条 都道府県知事は、災害地域内に存する河川、道路、上下水道、水利施設、学校、公園、官公署その他の公共用又は公用の施設で政令で定めるものの区域内にたい積しているたい積土砂の排除事業を施行するものとする。但し、これらの施設で都道府県又はその機関以外の者の管理に属するものの区域内にたい積しているたい積土砂の排除は、これらの施設を管理する者の意に反して行うことができない。
2 都道府県知事は、災害地域内に存する土地又は建物その他の工作物で前項に規定する施設並びに第九条第一項に規定する農地及び施設の区域外にあるものにたい積しているたい積土砂を放置することが公衆衛生上又は正常な社会活動を維持する上において著しく支障があると認めるときは、当該土地又は建物その他工作物を所有し、又は占有する者の承諾を得て、当該たい積土砂の排除事業を施行することができる。
3 前項に規定する土地又は建物その他の工作物を所有し、又は占有する者は、正当な理由がなければ同項の承諾を拒むことができない。
4 都道府県知事は、第一項及び第二項の規定によるたい積土砂の排除事業の一部の施行を関係市町村(市町村の組合を含む。)の長に委託することができる。
(国の負担)
第四条 国は、前条の規定によるたい積土砂の排除事業の事業費の全額を負担する。
(事業費の決定)
第五条 第三条の規定によるたい積土砂の排除事業の事業費の額は、都道府県知事の提出する資料、実地調査の結果等を勘案して建設大臣が決定するものとする。
(負担金の返還等)
第六条 都道府県知事がこの法律により国がその費用を負担するたい積土砂の排除事業を施行せず、又は負担金をその目的に反して使用したときは、建設大臣は、負担金のうちその施行しない当該排除事業に係る部分を交付せず、若しくは返還させ、又は交付の目的に反して使用した部分の負担金を返還させることができる。この場合においては、建設大臣は、あらかじめ、都道府県知事に対し、釈明のため意見を述べ、及び有利な証拠を提出する機会を与えなければならない。
2 前項の規定により負担金の返還を命ぜられた都道府県は、その返還を命ぜられた金額を、遅滞なく、国に返還しなければならない。
(剰余金の処分)
第七条 都道府県は、国の負担金の交付を受けたたい積土砂の排除事業の事業費に剰余を生じたときは、遅滞なく、当該剰余金を国に返還しなければならない。
(監督)
第八条 建設大臣は、この法律により国がその費用を負担するたい積土砂の排除事業を施行する都道府県知事に対して、当該排除事業を適正に実施させるため必要な検査を行い、報告を求め、又は事業の施行に関し必要な指示をすることができる。
(農地等にたい積しているたい積土砂の排除事業)
第九条 国は、災害地域内に存する農地並びに農業用施設、林業用施設、漁場、漁港及び港湾で政令で定めるものの区域内にたい積しているたい積土砂の排除事業について、当該排除事業を施行する者に対し、その事業費の全額を補助する。
2 第五条から前条までの規定は、前項の規定により補助する場合につき準用する。この場合において、これらの規定中「都道府県知事」又は「都道府県」とあるのは「当該排除事業を施行する者」と、第五条中「第三条の規定による」とあるのは「第九条第一項に規定する」と、同条及び第六条中「建設大臣」とあるのは、港湾については「運輸大臣」、その他のものについては「農林大臣」と、前条中「建設大臣」とあるのは、港湾については「運輸大臣」、その他のものについては「都道府県知事」と読み替えるものとする。
(他の法律との関係)
第十条 この法律により国がその費用を負担し、又は補助するたい積土砂の排除事業については、他の法律による国の費用負担又は補助は行わない。
(政令への委任)
第十一条 この法律に定めるものの外、この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 この法律施行前に都道府県又はその機関が施行した第三条第一項又は第二項に規定するたい積土砂の排除事業については、これを同条第一項又は第二項の規定により都道府県知事が施行したたい積土砂の排除事業とみなし、この法律施行前に市町村又はその機関が施行した同条第一項又は第二項に規定するたい積土砂の排除事業については、これを同条第四項の規定により都道府県知事の委託を受けて市町村の長が施行したたい積土砂の排除事業とみなして、この法律を適用する。
3 この法律は、この法律施行前に施行された第九条第一項に規定するたい積土砂の排除事業についても適用する。
(農林・運輸・建設・内閣総理大臣署名)