日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊の行為による特別損失の補償に関する法律
法律第二百四十六号(昭二八・八・二五)
(損失の補償)
第一条 日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約に基き日本国内及びその附近に配備されたアメリカ合衆国の陸軍、海軍又は空軍の左に掲げる行為により、従来適法に農業、林業、漁業又は政令で定めるその他の事業を営んでいた者がその事業の経営上損失をこうむつたときは、国がその損失を補償する。
一 防潜網その他の水中工作物の設置若しくは維持、水面の利用上必要な施設であつて政令で定めるものの除去、損壊若しくは変更又は水質の汚毒、障がい物の遺棄その他水面の利用を著しく阻害する行為であつて政令で定めるもの
二 防風施設、防砂施設、防災施設その他農地、牧野若しくは林野等の利用上必要な施設であつて政令で定めるものの除去、損壊若しくは変更又は農地、牧野若しくは林野等の利用を著しく阻害する行為であつて政令で定めるもの
三 その他政令で定める行為
2 前項の規定は、他の法律により国が損害賠償又は損失補償の責に任ずべき損失については、適用しない。
3 第一項の規定により補償する損失は、通常生ずべき損失とする。
(損失補償の申請)
第二条 前条の規定による損失の補償を受けようとする者は、総理府令の定めるところにより、その者の住所の所在地を管轄する都道府県知事を経由して、損失補償申請書を内閣総理大臣に提出しなければならない。
2 都道府県知事は、前項の申請書を受理したときは、その意見を記載した書面を当該申請書に添えて、これを内閣総理大臣に送付しなければならない。
3 内閣総理大臣は、前項の書類を受理したときは、補償すべき損失の有無及び損失を補償すべき場合には、補償の額を決定し、遅滞なくこれを都道府県知事を経由して当該申請者に通知しなければならない。
(異議の申立)
第三条 前条第三項の規定による決定に不服がある者は、同項の通知を受けた日から三十日以内に、総理府令で定める手続に従い、内閣総理大臣に対して異議の申立をすることができる。
2 内閣総理大臣は、前項の規定による申立があつたときは、その申立のあつた日から三十日以内にこれについて決定し、これを申立人に通知しなければならない。
(補償金の交付)
第四条 政府は、前条第一項の規定による異議の申立がないときは、同項の期間の満了の日から三十日以内に、同項の規定による異議の申立があつた場合において同条第二項の規定による決定があつたときは、同項の通知の日から三十日以内に、補償を受けるべき者に対し、当該補償金を交付する。
(増額請求の訴)
第五条 この法律により決定された補償金の額に不服がある者は、その決定の通知を受けた日から九十日以内に、訴をもつてその増額を請求することができる。
2 前項の訴においては、国を被告とする。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行し、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約の効力発生の日以降生じた損失について適用する。
2 前項の損失に関して見舞金その他の名目で国から支給を受けた金額のうちこの法律の規定による損失補償金に該当するものについては、この法律の規定による損失補償金の内払とみなす。
3 調達庁設置法(昭和二十四年法律第百二十九号)の一部を次のように改正する。
第八条に次の一号を加える。
六 日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊の行為による特別損失の補償に関する法律(昭和二十八年法律第二百四十六号)の施行に関すること。
第十二条第一項を次のように改め、同条第三項中「二十人」を「二十三人」に、同条第四項中「並びに不動産及びこれに附属する動産の評価」を「及び第一項各号に掲げる事項」に改める。
中央調達不動産審議会(以下「中央不動産審議会」という。)は、調達庁長官の諮問に応じ、左に掲げる事項についてその基準その他一般的事項を調査審議する機関とする。
一 調達不動産及びこれに附属する動産の評価
二 日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約に基き駐留する合衆国軍隊に水面を使用させるための漁船の操業制限等に関する法律による損失の補償
三 日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊の行為による特別損失の補償に関する法律による損失の補償
第十七条第二項中「管轄区域内にある調達不動産及びこれに附属する動産の評価」を「管轄区域内における第十二条第一項各号に掲げる事項」に改め、同条第四項中「並びに不動産及びこれに附属する動産」を「及び第十二条第一項各号に掲げる事項」に改める。
(内閣総理・大蔵・農林大臣署名)