長期信用銀行法

法律第百八十七号(昭二七・六・一二)

 (目的)

第一条 この法律は、長期金融の円滑を図るため、長期信用銀行の制度を確立し、その業務の公共性にかんがみ、監督の適正を期するとともに、銀行業務の分化により金融制度の整備に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「長期信用銀行」とは、第四条第一項の規定により大蔵大臣の免許を受けた者をいう。

 (資本の額)

第三条 長期信用銀行は、資本の額が五億円以上の株式会社でなければならない。

 (営業の免許)

第四条 預金の受入に代え債券を発行して設備資金又は長期運転資金に関する貸付をすることを主たる業務として営もうとする者は、大蔵大臣の免許を受けなければならない。

2 大蔵大臣は、免許を申請した者の人的構成及び事業収支の見込、経済金融の状況その他を勘案し長期信用銀行の業務を行うにつき十分な適格性を有するものと認めた場合に限り、前項の免許をすることができる。

 (商号)

第五条 長期信用銀行は、その商号中に銀行という文字を用いなければならない。

2 銀行法(昭和二年法律第二十一号)第四条第二項(商号)の規定は、長期信用銀行には適用しない。

 (長期信用銀行の業務)

第六条 長期信用銀行は、左に掲げる業務を営むことができる。

 一 設備資金又は長期運転資金に関する貸付、手形の割引、債務の保証又は手形の引受

 二 国債、地方債、社債その他の債券、株式又は出資証券の応募その他の方法による取得。但し、社債その他の債券(政府が元本の償還及び利息の支払について保証しているものを除く。)、株式又は出資証券については、売出の目的で取得する場合を除く。

 三 預金の受入。但し、国若しくは地方公共団体又は貸付先、社債募集の委託会社その他の取引先からの預金の受入に限る。

 四 為替取引

 五 地方債又は社債その他の債券の募集の受託

 六 前各号に掲げる業務に附随する業務

2 長期信用銀行は、前項に掲げる業務の外、同項の業務に妨げのない範囲において、設備資金及び長期運転資金以外の長期資金(資金需要の期間が六箇月をこえるものをいう。以下同じ。)に関する不動産を担保とする貸付をし、又はその受け入れた預金及びこれに準ずるものの合計金額に相当する金額を限度とする短期資金(資金需要の期間が六箇月以下のものをいう。)に関する貸付、手形の割引、債務の保証又は手形の引受をすることができる。

3 長期信用銀行は、担保附社債信託法(明治三十八年法律第五十二号)により、担保附社債に関する信託業を営むことができる。

4 長期信用銀行は、前各項に掲げる業務以外の業務を営むことができない。

 (債権の保全等)

第七条 長期信用銀行は、長期資金に関する貸付等に基く債権については、その特殊性にかんがみ、その保全及び回収の確保を図るため、確実な担保を徴し、又は分割して弁済させる方法をとる等特別の考慮をしなければならない。

 (債券の発行)

第八条 長期信用銀行は、資本及び準備金(利益準備金、資本準備金その他株主勘定に属する準備金をいう。以下同じ。)の合計金額の二十倍に相当する金額を限度として、債券を発行することができる。

 (債券の借換発行の場合の特例)

第九条 長期信用銀行は、その発行した債券の借換のため、一時前条に規定する限度をこえて債券を発行することができる。

2 前項の規定により債券を発行したときは、発行後一箇月以内にその発行券面額に相当する額の旧債券を償還しなければならない。

 (債券発行の届出)

第十条 長期信用銀行は、債券を発行しようとするときは、その都度、その金額及び条件をあらかじめ大蔵大臣に届け出でなければならない。

2 商法(明治三十二年法律第四十八号)第二百九十八条(既存の社債に未払込のある場合の社債発行の制限)の規定は、長期信用銀行が債券を発行する場合については適用しない。

 (債券の発行方法、登記等)

第十一条 長期信用銀行が債券を発行する場合において、応募総額が社債申込証に記載した債券の総額に達しないときでも債券を成立させる旨を社債申込証に記載したときは、その応募総額をもつて債券の総額とする。

2 長期信用銀行の発行する債券は、無記名とする。但し、応募者又は所有者の請求により記名式とすることができる。

3 長期信用銀行は、債券を発行する場合においては、売出の方法によることができる。この場合においては、売出期間を定めなければならない。

4 前項の場合においては、社債申込証を作ることを要しない。

5 第三項の規定により発行する債券には、左の事項を記載しなければならない。

 一 長期信用銀行の商号

 二 債券の券面金額

 三 債券の利率

 四 債券償還の方法及び期限

 五 債券の番号

6 商法第三百五条第一項(社債の登記)の期間は、債券の売出期間満了の日から起算する。

7 長期信用銀行は、売出の方法により債券を発行しようとするときは、左の事項を公告しなければならない。

 一 売出期間

 二 債券の総額

 三 数回に分けて債券の払込をさせるときは、その払込の金額及び時期

 四 債券発行の価額又はその最低価額

 五 第五項第一号から第四号までに掲げる事項

8 長期信用銀行は、債券を発行する場合においては、割引の方法によることができる。

9 長期信用銀行が発行する債券の登記については、その総額(総額を数回に分けて発行する場合においては、各回の発行金額とする。以下同じ。)を登記すれば足りる。

10 長期信用銀行が発行する債券については、変更の登記をすることを要しない。但し、その総額の償還があつたときはその登記をし、且つ、毎年三月末におけるその償還を終らない金額の合計金額を本店の所在地においては四週間以内、支店の所在地においては五週間以内に登記しなければならない。

11 売出の方法により発行する債券の登記の申請書には、非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第百九十一条第二項第二号(社債の引受を証する書面)の書面に代え、左の各号に掲げる書類を添附しなければならない。

 一 売出期間内における売上総額を証する書面

 二 第七項に規定する公告をしたことを証する書面

12 第九項及び第十項の規定は、長期信用銀行がその目的を変更して他の業務を営む会社として存続する場合又は長期信用銀行でない会社が合併若しくは営業の譲受により長期信用銀行の債券を承継した場合において、第九項の規定により登記した債券について準用する。

 (債券の消滅時効)

第十二条 長期信用銀行が発行する債券の消滅時効は、元本については十五年、利子については五年で完成する。

 (通貨及証券模造取締法の準用)

第十三条 通貨及証券模造取締法(明治二十八年法律第二十八号)は、長期信用銀行が発行する債券の模造について準用する。

 (合併異議の催告)

第十四条 長期信用銀行が合併の決議をした場合において、商法第百条第一項(合併異議の公告及び催告)の規定によつてしなければならない催告は、債券の権利者又は預金者に対してはすることを要しない。

 (銀行との合併等)

第十五条 長期信用銀行は、合併により銀行業又は貯蓄銀行業に属する契約に基く権利義務を承継した場合において、その契約が当該長期信用銀行の営むことができない業務に属するときは、その契約で期限の定のあるものは期限満了まで、期限の定のないものは承継の日から一年以内の期間に限り、その契約に関する業務を継続することができる。銀行(銀行法に規定する銀行をいう。以下同じ。)が長期信用銀行となつた場合において、従前の業務に属する契約のうち当該長期信用銀行の営むことができない業務に属するものがあるときも同様である。

2 貯蓄銀行法(大正十年法律第七十四号)第九条(供託)及び第十条(優先弁済)の規定は、前項の規定により貯蓄銀行の業務を継続する長期信用銀行について準用する。

 (他業会社への転移等)

第十六条 長期信用銀行がその目的を変更して他の業務を営む銀行以外の会社として存続する場合において、従前の債券及び預金の債務が残存するときは、大蔵大臣は、その債務を完済するまで、その債務の総額を限度として財産の供託を命じ、又は債券の権利者及び預金者の保護を図るため必要な範囲において、資産の管理若しくは運用につき命令をすることができる。合併により長期信用銀行及び銀行以外の会社が長期信用銀行の債券及び預金の債務を承継した場合も同様である。

2 銀行法第二十条(報告)及び第二十一条(検査)の規定は、前項に規定する場合において、長期信用銀行に係る債券及び預金の債務を完済するまで、長期信用銀行の業務を営んでいた会社並びに長期信用銀行の債券及び預金の債務を承継した会社について準用する。

 (銀行法の準用)

第十七条 銀行法の規定は、同法第一条から第三条まで(定義、営業の免許、資本の額)、第四条(商号)、第五条(他業の禁止)、第八条(準備金)、第十五条(合併異議の催告)、第十七条(貯蓄銀行との合併)、第二十六条(他業会社への転移)、第三十三条から第三十六条まで(罰則)及び附則の規定を除く外、長期信用銀行について準用する。この場合において、同法第三十二条第一項(外国銀行の支店等設置の免許)中「銀行ガ」とあるのは「長期信用銀行ノ業務ヲ営ム会社ガ」と、「第二条」とあるのは「長期信用銀行法第四条」と、同条第二項(外国銀行に関する特則)中「本法」とあるのは「長期信用銀行法」と、「第三条乃至第六条、第八条、第十二条乃至第十七条、第二十五条及第二十七条乃至前条」とあるのは「同法第三条、第五条、第六条第四項、第十四条及第十五条並ニ第六条、第十二条乃至第十四条、第十六条、第二十五条及第二十七条乃至前条」と読み替えるものとする。

 (銀行との関係)

第十八条 長期信用銀行は、銀行法にいう銀行ではない。但し、銀行法及びこれに基く命令以外の法令において「銀行」とあるのは、別段の定がない限り、長期信用銀行を含むものとする。

 (実施規定)

第十九条 この法律による免許又は認可に関する申請、届出及び業務報告書その他の書類の提出の手続その他この法律を実施するため必要な手続は、大蔵省令で定める。

 (罰則)

第二十条 左の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした長期信用銀行の取締役、監査役、支配人又は清算人(第十七条において準用する銀行法第三十二条第二項(外国銀行に関する特則)の規定により長期信用銀行とみなされる者については、その代表者又は残務の取扱者)を一年以下の懲役若しくは十万円以下の罰金に処する。

 一 第十七条において準用する銀行法第十条(業務報告書)の規定による業務報告書又は第十二条(監査書)の規定による監査書の不実の記載その他の方法により官庁又は公衆を欺もうしたとき。

 二 第十七条において準用する銀行法第二十一条(検査)の規定による検査に際し、帳簿書類の隠ぺい、不実の申立その他の方法により検査を妨げたとき。

第二十一条 長期信用銀行の取締役、監査役、支配人又は清算人(第十七条において準用する銀行法第三十二条第二項(外国銀行に関する特則)の規定により長期信用銀行とみなされる者については、その代表者又は残務の取扱者)が、その長期信用銀行の業務に関して前条の違反行為をしたときは、その行偽者を罰する外、その長期信用銀行に対しても同条の罰金刑を科する。

第二十二条 左の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした長期信用銀行の取締役、監査役、支配人又は清算人(第十七条において準用する銀行法第三十二条第二項(外国銀行に関する特則)の規定により長期信用銀行とみなされる者については、その代表者又は残務の取扱者)を一万円以下の過料に処する。

 一 第六条第四項の規定又は第十七条において準用する銀行法第三条の二(無額面株式の発行禁止)、第六条(業態変更)、第七条(代理店の出張所等設置の禁止)若しくは第十三条(役員の兼職制限)の規定に違反したとき。

 二 第十五条第二項において準用する貯蓄銀行法第九条(供託)の規定に違反したとき。

 三 この法律により長期信用銀行に備えて置くべき書類を備えて置かず、若しくは大蔵大臣に提出すべき書類の提出を怠り、又はこれに記載すべき事項を記載せず、若しくは不実の記載をしたとき。

 四 第十六条第一項の規定又は第十七条において準用する銀行法第二十二条(業務の停止等)、第二十三条(免許の取消等)若しくは第二十九条(清算の監督)の規定による大蔵大臣又は裁判所の命令に違反したとき。

   附 則

1 この法律中附則第二項の規定及び附則第十四項中農林中央金庫法(大正十二年法律第四十二号)第十三条の改正規定は、公布の日から、その他の規定は、公布の日から一年以内で政令で定める日から施行する。

2 この法律公布の日において、銀行等の債券発行等に関する法律(昭和二十五年法律第四十号)に基き現に債券を発行している銀行が、この法律施行(この項以外の規定の施行をいう。以下同じ。)の日までに、大蔵大臣に対し、書面をもつて長期信用銀行となることを希望する旨の届出をした場合に、その資本の額が、この法律施行の日において五億円以上であるときは、当該銀行は、同日において、第四条の免許を受けたものとみなす。

3 大蔵大臣は、前項の規定により第四条の免許を受けたものとみなされた銀行がある場合においては、その商号及び住所を、この法律施行後遅滞なく、官報で公告しなければならない。

4 銀行等の債券発行等に関する法律は、廃止する。

5 旧銀行等の債券発行等に関する法律(以下「旧債券発行法」という。)第十一条第四項から第七項まで(優先株式発行の手続)並びに同法第十二条第三項(法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律の適用除外)及び同法第十三条から第十五条まで(優先株式の消却及び準備金)の規定は、この法律施行の日から五年以内で政令で定める日までは、この法律施行後も、なお効力を有する。

6 旧債券発行法は、この法律施行前に旧債券発行法により発行した債券及び国が引き受けた優先出資に関しては、この法律施行後も、前二項の規定により旧債券発行法が効力を失う以前に同法又は第十項の規定により国が引き受けた優先株式に関しては、同法が前二項の規定により効力を失つた後も、なおその効力を有する。

7 当分の間、長期信用銀行(この法律公布の日において銀行であつた者で長期信用銀行となつたものを除く。)は、第四条の免許の受けた日から五年を経過した日を含む営業年度の末日までに限り、第八条の規定にかかわらず、資金及び準備金の合計金額の三十倍に相当する金額を限度として債券を発行することができる。

8 長期信用銀行が、この法律施行の日から一年以内に、旧債券発行法に基き現に債券を発行している銀行から当該銀行の債券を承継した場合においては、その債券を承継した日から十年を経過した日を含む営業年度の末日までの間、第八条又は前項に規定する債券の発行限度の計算については、その承継した債券の券面金額に相当する金額に大蔵大臣が定める割合を乗じて得た金額は、債券発行高に算入しない。

9 前項の割合は、毎営業年度、当該長期信用銀行の資本及び準備金の金額並びに債券発行高等を勘案して定めるものとする。

10 当分の間、国は、長期信用銀行が発行する議決権のない株式で利益の配当及び残余財産の分配について優先的内容を有し、且つ、利益をもつて消却することができるもの(以下「優先株式」という。)を引き受けることができる。

11 商法第二百四十二条第二項(無議決権株の総数)の規定は、前項の規定により国が引き受ける優先株式の発行については、適用しない。

12 第十項の規定により国が引き受けた優先株式は、何人も、これを譲り受けることができない。

13 第十項の規定により国が引き受ける優先株式の発行及び消却、当該優先株式に対する配当、当該優先株式の消却に伴い積み立てられる準備金並びに当該準備金と他の準備金との関係については、第五項の規定によりなお効力を有する旧債券発行法第十一条第四項から第七項まで(優先株式発行の手続)並びに同法第十二条第三項(法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律の適用除外)及び第十三条から第十五条まで(優先株式の消却及び準備金)の規定を準用する。この場合において、旧債券発行法第十一条第五項中「第一項」とあるのは「長期信用銀行法(昭和二十七年法律第百八十七号)附則第十項」と読み替えるものとする。

14 農林中央金庫法の一部を次のように改正する。

  第十三条中第四号を第五号とし、以下一号ずつ繰り下げ、第三号の次に次の一号を加える。

  四 所属団体ノ為ニ債務ノ保証ヲ為スコト

  同条に第九号として次の一号を加える。

  九 主務大臣ノ認可ヲ受ケ国、公共団体又ハ銀行其ノ他ノ金融機関ノ業務ノ一部ヲ代理スルコト

  第十七条第一項を次のように改める。

  農林中央金庫ハ払込資本金及出資者勘定ニ属スル準備金ノ額ノ二十倍ヲ限り農林債券ヲ発行スルコトヲ得

  第十八条に次の一項を加える。

  農林債券ハ割引ノ方法ヲ似テ之ヲ発行スルコトヲ得

  第十九条第一項中「低利ノ」を削る。

  第二十条中「主務大臣ノ認可ヲ受クベシ」を「其ノ都度其ノ金額及条件ヲ予メ主務大臣ニ届出ヅベシ」に改める。

15 商工組合中央金庫法(昭和十一年法律第十四号)の一部を次のように改正する。

  第三十一条を次のように改める。

 第三十一条 商工組合中央金庫ハ払込資本金及出資者勘定ニ属スル準備金ノ額ノ二十倍ヲ限リ商工債券ヲ発行スルコトヲ得

  第三十四条中「主務大臣ノ認可ヲ受クベシ」を「其ノ都度其ノ金額及条件ヲ予メ主務大臣ニ届出ヅベシ」に改める。

16 普通銀行等の貯蓄銀行業務又は信託業務の兼営等に関する法律(昭和十八年法律第四十三号)の一部を次のように改正する。

  第一条中「銀行法ニ依リ銀行業ノ免許ヲ受ケタル銀行」を「銀行法ニ依リ免許ヲ受ケタル銀行及長期信用銀行法ニ依リ免許ヲ受ケタル長期信用銀行」に改める。

17 日本輸出入銀行法(昭和二十五年法律第二百六十八号)の一部を次のように改正する。

  第十八条第一項第一号中「銀行法に規定する銀行」の下に「及び長期信用銀行法(昭和二十七年法律第百八十七号)に規定する長期信用銀行」を加える。

18 租税特別措置法(昭和二十一年法律第十五号)の一部を次のように改正する。

  第五条の十三中「銀行等の債券発行等に関する法律」を「旧銀行等の債券発行等に関する法律」に、「第十七条第二項」を「同法第十七条第二項又は長期信用銀行法附則第十三項」に改める。

19 資産再評価法(昭和二十五年法律第百十号)の一部を次のように改正する。

  第九十九条第一項中「、銀行等の債券発行等に関する法律(昭和二十五年法律第四十号)」を削る。

  第百十二条第二項中「(銀行等の債券発行等に関する法律を除く。)」を削る。

(大蔵・内閣総理大臣署名) 

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