公庫の予算及び決算に関する法律

法律第九十九号(昭二六・三・三一)

 (通則)

第一条 国民金融公庫及び住宅金融公庫(以下「公庫」という。)の予算の作成及び執行並びに決算の作成に関しては、この法律の定めるところによる。

 (事業年度)

第二条 公庫の事業年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終る。

 (予算の作成及び提出)

第三条 公庫は、毎事業年度の収入及び支出の予算を作成し、主務大臣を経由して、これを大蔵大臣に提出しなければならない。

2 前項の収入は、貸付金の利子その他資産の運用に係る収入及び附属雑収入とする。

3 第一項の支出は、国民金融公庫にあつては借入金及び恩給債券の利子、事務取扱費、業務委託費、国定資産の取得に要する経費並びに附属諸費とし、住宅金融公庫にあつては借入金の利子、事務取扱費、業務委託費、固定資産の取得に要する経費及び附属諸費とする。

4 第一項の予算には、左の書類を添附しなければならない。

 一 当該事業年度の事業計画及び資金計画に関する書類

 二 前前年度の損益計算書、貸借対照表及び財産目録

 三 前年度及び当該事業年度の予定損益計算書及び予定貸借対照表

 四 その他当該予算の参考となる書類

5 第一項の予算の作成及び提出の手続については、大蔵大臣が定める。

第四条 大蔵大臣は、前条第一項の規定により予算の提出を受けたときは、これを検討して必要な調整を行い、閣議の決定を経なければならない。

2 内閣は、前条第一項の予算について、前項の規定による閣議の決定があつたときは、その予算を国の予算とともに国会に提出しなければならない。

3 前項の規定により国会に提出する予算には、前条第四項各号に掲げる書類を添附しなければならない。

 (予算の形式及び内容)

第五条 公庫の予算は、予算総則及び収入支出予算とする。

2 公庫の収入支出予算は、収入の性質及び支出の目的に従つて、款及び項に区分する。

3 前二項に規定するものを除く外、公庫の予算の形式及び内容は、大蔵大臣が、主務大臣とはかつて定める。

 (予備費)

第六条 公庫は、予見し難い予算の不足に充てるため、公庫の予算に予備費に計上することができる。

 (予算の議決)

第七条 公庫の予算の国会の議決に関しては、国の予算の議決の例による。

 (予算の通知)

第八条 内閣は、公庫の予算が国会の議決を経たときは、国会の議決したところに従い、主務大臣を経由して、直ちにその旨を公庫に通知する。

2 公庫は、前項の規定による通知を受けた後でなければ、予算を執行することができない。

3 大蔵大臣は、第一項の規定による通知があつたときは、その旨を会計検査院に通知しなければならない。

 (目節の区分)

第九条 公庫は、前条第一項の規定による通知を受けたときは、その通知を受けたところに従い、収入にあつては項を目に、支出にあつては項(予備費の項を除く。)を目及び節に区分し、その予算を主務大臣を経由して大蔵大臣に提出し、その区分の承認を受けなければならない。

2 大蔵大臣は、前項の規定による承認をしたときは、その旨を会計検査院に通知しなければならない。

 (追加予算)

第十条 公庫は、予算の作成後に生じた避けることのできない事由により必要がある場合に限り、追加予算を作成し、これに追加予算の作成により変更した第三条第四項第一号、第三号及び第四号に掲げる書類(前年度の予定損益計算書及び予定貸借対照表を除く。)を添え、主務大臣を経由して大蔵大臣に提出することができる。

2 第三条第二項、第三項及び第五項並びに第四条の規定は、前項の追加予算について準用する。この場合において、第三条第二項又は第三項中「前項」又は「第一項」とあるのは、「第十条第一項の追加予算に計上すべき」と、第四条第三項中「前条第四項各号に掲げる」とあるのは「第十条第一項に規定する」と読み替えるものとする。

 (予算の修正)

第十一条 公庫は、前条第一項の場合を除く外、予算の成立後に生じた事由に基いて既に成立した予算に変更を加える必要があるときは、予算を修正して、これに予算の修正により変更した第三条第四項第一号、第三号及び第四号に掲げる書類(前年度の予定損益計算書及び予定貸借対照表を除く。)を添え、主務大臣を経由して大蔵大臣に提出することができる。

2 第三条第五項及び第四条の規定は、前項の規定による予算の修正について準用する。この場合において、第四条第三項中「前条第四項各号に掲げる」とあるのは「第十一条第一項に規定する」と読み替えるものとする。

 (暫定予算)

第十二条 公庫は、必要に応じて、一事業年度のうちの一定期間に係る暫定予算を作成し、これに当該期間の事業計画及び資金計画その他当該予算の参考となる事項に関する書類を添え、主務大臣を経由して大蔵大臣に提出することができる。

2 第三条第二項、第三項及び第五項並びに第四条の規定は、前項の規定による暫定予算について準用する。この場合において、第三条第二項又は第三項中「前項」又は「第一項」とあるのは「第十二条第一項の暫定予算に計上すべき」と、第四条第三項中「前条第四項各号に掲げる」とあるのは「第十二条第一項に規定する」と読み替えるものとする。

3 暫定予算は、当該事業年度の予算が成立したときは失効するものとし、この暫定予算に基く支出があるときは、これを当該事業年度の予算に基いてしたものとみなす。

 (予算の目的外使用の禁止)

第十三条 公庫は、支出予算については、当該予算の各項に定める目的の外に使用してはならない。

 (移用及び流用)

第十四条 公庫は、予算に定める各項の経費の金額については、各項の間において彼此移用することができない。但し、予算の執行上の必要に基きあらかじめ予算をもつて国会の議決を経た場合に限り、大蔵大臣の承認を受けて移用することができる。

2 公庫は、大蔵大臣の指定する各目又は各節の経費の金額については、大蔵大臣の承認を受けなければ、目の間又は節の間において彼此流用することができない。

3 公庫は、第二項の規定により大蔵大臣の指定する目又は節以外の目又は節の経費の金額については、同一項のうちで当該目又は節の間において彼此流用することができる。

4 公庫は、第一項但書又は第二項の規定により移用又は流用の承認を受けようとするときは、主務大臣を経由してしなければならない。

5 大蔵大臣は、第一項但書又は第二項の規定による移用又は流用について承認をしたときは、その旨を公庫及び会計検査院に通知しなければならない。

6 第一項但書、第二項又は第三項の規定により移用又は流用をした経費の金額については、収入支出の決算報告書において、これを明らかにするとともに、第一項但書又は第二項の規定により移用又は流用をした経費の金額については、その理由を記載しなければならない。

 (支出負担行為計画及び支払計画)

第十五条 公庫は、第八条第一項の規定による通知を受けた予算に基いて、その支払の原因となる契約その他の行為(以下「支出負担行為」という。)に因る所要額及び支払の所要額について、大蔵大臣の定めるところにより、支出負担行為又は支払の計画に関する書類を作成し、これを主務大臣を経由して大蔵大臣に提出し、その承認を受けなければならない。

2 大蔵大臣は、前項の支出負担行為又は支払の計画について承認したときは、公庫及び会計検査院にその旨を通知しなければならない。

3 公庫は、第八条第一項の規定による通知を受けた予算に基いて支出負担行為及び支払をするには、第一項の規定により承認された支出負担行為及び支払の計画に定める金額をこえてはならない。

 (予備費の使用)

第十六条 公庫は、予備費を使用しようとするときは、その理由、金額及び積算の基礎を明らかにした予備費使用書を作製し、これを主務大臣を経由して大蔵大臣に送付し、その承認を受けなければならない。

2 前項の規定による承認があつたときは、その承認に係る予備費使用書に掲げる経費については、第八条第一項の規定による予算の通知があつたものとみなす。

 (決算の完結)

第十七条 公庫は、毎事業年度の決算を翌年度の七月三十一日までに完結しなければならない。

 (財務諸表の作製、提出及び公告)

第十八条 公庫は、毎事業年度、損益計算書、貸借対照表及び財産目録(以下「財務諸表」という。)を作製し、決算完結後一月以内に主務大臣を経由して大蔵大臣に提出し、その承認を受けなければならない。

2 公庫は、前項の規定による大蔵大臣の承認を受けたときは、遅滞なくその財務諸表を公告しなければならない。

 (決算報告書の作製、提出及び送付)

第十九条 公庫は、決算完結後第五条第二項及び第九条第一項に規定する予算の区分に従い、毎事業年度の決算報告書を作製し、前条第一項の規定による大蔵大臣の承認を受けたときは、当該承認に係る当該事業年度の財務諸表を添え、遅滞なく主務大臣を経由して大蔵大臣に提出しなければならない。

2 大蔵大臣は、前項の規定により決算報告書の提出を受けたときは、これに同項の財務諸表を添え、内閣に送付しなければならない。

3 第一項に規定する決算報告書の形式及び内容については、大蔵大臣が定める。

 (決算報告書等の会計検査院への送付)

第二十条 内閣は、前条第二項の規定により公庫の決算報告書の送付を受けたときは、前条第一項の財務諸表を添え、翌年度の十一月三十日までに、会計検査院に送付しなければならない。

 (決算報告書等の国会への提出)

第二十一条 内閣は、会計検査院の検査を経た公庫の決算報告書に第十八条第一項の財務諸表を添え、国の歳入歳出決算とともに国会に提出しなければならない。

 (予算の繰越)

第二十二条 公庫の毎事業年度の支出予算は、翌年度において使用することができない。但し、年度内に支出負担行為をし、避け難い事由のため年度内に支払を終らなかつた支出金に係る支出予算は、翌年度に繰り越して使用することができる。

第二十三条 公庫は、前条但書の規定による繰越をしようとするときは、事項ごとにその事由及び金額を明らかにした繰越計算書を作製し、これを主務大臣を経由して大蔵大臣に送付し、その承認を受けなければならない。

2 前項の規定による承認があつたときは、その承認に係る繰越計算書に掲げる経費については、第八条第一項の規定による予算の通知があつたものとみなす。

 (大蔵大臣に対する報告等)

第二十四条 大蔵大臣は、公庫の予算の執行の適正を期するため必要があると認めるときは、公庫に対し収支の実績若しくは見込について報告を求め、又は公庫の予算の執行状況について実地監査を行うことができる。

 (実施規定)

第二十五条 この法律の実施のための手続その他その執行について必要な事項は、政令で定める。

   附 則

1 この法律は、昭和二十六年四月一日から施行し、本則の規定は、公庫の昭和二十六年度分の予算から適用する。

2 公庫の昭和二十四年度及び昭和二十五年度の決算については、なお従前の例による。

3 公団等の予算及び決算の暫定措置に関する法律(昭和二十四年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。

  第一条中「国民金融公庫、住宅金融公庫、」及び「船舶運営会、」を削る。

  附則中「 この法律」を「1 この法律」に改め、附則に第二項として次の一項を加える。

 2 価格調整公団、食糧配給公団、肥料配給公団、油糧砂糖配給公団、産業復興公団、鉱工品貿易公団及び繊維貿易公団は、大蔵大臣の定めるところにより、その業務に係る現金を国庫に預託しなければならない。

4 国民金融公庫法(昭和二十四年法律第四十九号)の一部を次のように改正する。

  第二十一条中「公団等の予算及び決算の暫定措置に関する法律(昭和二十四年法律第二十七号)」を「公庫の予算及び決算に関する法律(昭和二十六年法律第九十九号)」に改める。

  第二十二条を次のように改める。

 (国庫納付金)

 第二十二条 公庫は、毎事業年度の損益計算上利益金を生じたときは、これを翌事業年度の五月三十一日までに国庫に納付しなければならない。

 2 前項の規定による国庫納付金は、同項に規定する日の属する会計年度の前年度の政府の一般会計の歳入とする。

 3 第一項の利益金の計算の方法及び納付の手続については、政令でこれを定める。

5 改正後の国民金融公庫法第二十二条の規定は、国民金融公庫の昭和二十五年度分の国庫納付金から適用する。

6 住宅金融公庫法(昭和二十五年法律第百五十六号)の一部を次のように改正する。

  第二十五条に次の一項を加える。

 3 主務大臣は、第一項の規定により資金計画について認可をしようとするときは、大蔵大臣に協議しなければならない。

  第二十六条中「公団等の予算及び決算の暫定措置に関する法律(昭和二十四年法律第二十七号)」を「公庫の予算及び決算に関する法律(昭和二十六年法律第九十九号)」に改める。

  第二十七条を次のように改める。

  (国庫納付金)

 第二十七条 公庫は、毎事業年度の損益計算上利益金を生じたときは、これを翌事業年度の五月三十一日までに国庫に納付しなければならない。

 2 前項の規定による国庫納付金は、同項に規定する日の属する会計年度の前年度の政府の一般会計の歳入とする。

 3 第一項の利益金の計算の方法及び納付の手続については、政令で定める。

  (借入金)

 第二十七条の二 公庫は、主務大臣の認可を受けて、政府から公庫の予算に定められた金額の借入金をすることができる。公庫は、市中銀行その他民間から借入金をしてはならない。

 2 政府は、公庫に対して資金の貸付をすることができる。

7 改正後の住宅金融公庫法第二十七条の規定は、住宅金融公庫の昭和二十五年度分の国庫納付金から適用する。

8 国家公務員等に対する退職手当の臨時措置に関する法律(昭和二十五年法律第百四十二号)の一部を次のように改正する。

  第二条中「(昭和二十四年法律第二十七号)」の下に「又は公庫の予算及び決算に関する法律(昭和二十六年法律第九十九号)」を加える。

(大蔵・建設・内閣総理大臣署名) 

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