犯罪者予防更生法

法律第百四十二号(昭二四・五・三一)

目次

第一章 総則(第一条・第二条)

第二章 更生保護委員会

第一節 委員会の設置及び組織(第三条―第十五条)

 第二節 委員会の権限(第十六条―第十九条)

 第三節 事務部局及びその職員(第二十条―第二十七条)

第三章 更生の措置

 第一節 仮釈放(第二十八条―第三十二条)

 第二節 保護観察(第三十三条―第四十二条)

 第三節 保護観察の終了等(第四十三条―第四十八条)

 第四節 処分の審査(第四十九条―第五十一条)

 第五節 雑則(第五十二条―第六十条)

附則

第一章 総則

 (この法律の目的)

第一条 この法律は、犯罪をした者の改善及び更生を助け、恩赦の適正な運用を図り、仮釈放その他の関係事項の管理について公正妥当な制度を定め、犯罪予防の活動を助長し、もつて、社会を保護し、個人及び公共の福祉を増進することを、目的とする。

2 すべて国民は、前項の目的を達成するために、その地位と能力に応じ、それぞれ応分の寄与をするように努めなければならない。

 (定義)

第二条 この法律で「青少年」とは、十四歳以上で二十三歳に満たない者をいい、「成人」とは、二十三歳以上の者をいう。

第二章 更生保護委員会

第一節 委員会の設置及び組織

 (委員会の設置)

第三条 この法律の目的を達成するため、国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項の規定により、法務府の外局として、中央更生保護委員会(以下「中央委員会」という。)を置き、中央委員会の地方支分部局として、地方少年保護委員会及び地方成人保護委員会(以下それぞれ「地方少年委員会」又は「地方成人委員会」という。)を置く。

2 地方少年委員会及び地方成人委員会の名称、位置及び管轄区域は、別表による。

 (中央委員会の組織)

第四条 中央委員会は、委員五人で組織する。

2 前項の委員は、両議院の同意を経て、法務総裁が任命する。

3 中央委員会に、委員長一人を置く。委員長は、委員の中から法務総裁が命ずる。

 (委員の資格)

第五条 中央委員会の委員は、特にその職務を遂行するに適当な教養、経験、学識及び人格を有する者でなければならない。

2 日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体に加入している者は、中央委員会の委員となることができない。

3 中央委員会の委員は、その中の三人以上が、同一政党に属する者となることとなつてはならない。

 (委員の任期及び服務)

第六条 中央委員会の委員の任期は、五年とする。但し、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

2 委員は、再任することができる。

3 国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第三章第七節(服務)の規定は、中央委員会の委員に準用する。

 (委員の解任)

第七条 中央委員会の委員が、第五条第二項の規定に該当するに至つた場合には、法務総裁は、その委員を解任しなければならない。

2 中央委員会の委員の一人が、在任中に新たに政党に所属し、又は所属の政党を変更し、そのために、同一政党に三人以上の委員が属することとなつた場合には、法務総裁は、その委員を解任する。

3 中央委員会の委員の二人以上が、同時に新たに政党に所属し、又は所属の政党を変更し、そのために、同一政党に三人以上の委員が属することとなつた場合には、法務総裁は、その政党に属する委員が二人になるまで、新たにその政党に属するに至つた委員のうち相当と認める者を解任する。

4 中央委員会の委員が、心身の故障のため職務の執行ができないと認める場合又は職務上の義務に違反し、若しくは委員たるにふさわしくない非行をしたと認める場合においては、法務総裁は、これを解任することができる。

5 中央委員会の委員は、弁明の機会のある審問を受け、且つ、有利な証拠を提出するに足る期間を与えられた後でなければ、解任されることはない。その解任は、両議院の同意を経なければならない。

 (委員長の職務)

第八条 中央委員会の委員長は、会務を総理し、委員会を代表する。

2 委員長の職務は、委員長に事故があるときは、委員長があらかじめ定めておいた順序により、委員が代理する。

 (議決その他)

第九条 中央委員会は、その委員の半数以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。

2 議事は、出席委員の過半数で決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。

3 中央委員会がその権能として行うことのできる調査、審問又は審理は、委員会の指名により、いずれか一人の委員で行うことができる。

4 前項の指名を受け、調査、審問又は審理を行つた委員は、その調査、審問又は審理の結果を、意見をつけて、委員会に報告しなければならない。

 (地方委員会の組織)

第十条 各地方少年委員会及び各地方成人委員会は、委員三人で組織する。

2 前項の委員(以下「地方委員」という。)は、人事院の定めるところにより、法務総裁が選考し、且つ、任命する。

3 各地方少年委員会及び各地方成人委員会に、それぞれ委員長一人を置く。委員長は、地方委員の中から法務総裁が命ずる。

 (地方委員の資格)

第十一条 第五条第一項及び第二項の規定は、地方委員に準用する。

2 地方委員は、各委員会につき、二人以上が同一政党に属する者となることとなつてはならない。

 (地方委員の任期)

第十二条 第六条第一項及び第二項の規定は、地方委員に準用する。

 (地方委員の解任)

第十三条 法務総裁は、各地方少年委員会及び各地方成人委員会について、地方委員の一人が在任中に新たに政党に所属し、又は所属の政党を変更し、そのために、同一政党に二人以上の地方委員が属することとなつた場合には、その委員を解任する。

2 法務総裁は、各地方少年委員会及び各地方成人委員会について、二人以上の地方委員が、同時に新たに政党に所属し、又は所属の政党を変更し、そのために、同一政党に二人以上の地方委員が属することとなつた場合には、その政党に属する地方委員が一人になるまで、新たにその政党に属するに至つた地方委員のうち相当と認める者を解任する。

 (地方の委員長の職務)

第十四条 各地方少年委員会及び各地方成人委員会の委員長は、中央委員会の委員長の指揮監督を受けて会務を総理し、委員会を代表する。

2 前項の委員長の職務は、委員長に事故があるときは、中央委員会の委員長があらかじめ定めておいた順序により、各委員会の地方委員が代理する。

 (議決その他)

第十五条 第九条の規定は、地方少年委員会及び地方成人委員会に準用する。

第二節 委員会の権限

 (中央委員会の権限)

第十六条 中央委員会は、左の事項について権限を有し、その権限に属する事務をつかさどる。但し、第四号に掲げる事項は、この委員会の専権に属するものではない。

一 この法律で定める保護観察の制度を管理し、保護観察の実施に関する一般方針を策定し、保護観察制度の改善について調査研究を行うこと。

二 仮出獄、仮出場及び仮退院の制度を、この法律及び他の法律で定められた制限の範囲内で管理し、その実施に関する一般方針を策定し、これらの制度の改善について調査研究を行うこと。

三 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権の実施並びにこれらに関する制度の改善について、調査研究を行い、これらの事項について、法務総裁に報告し、申出をすること。

四 犯罪の予防に関する適当な計画を樹立し、犯罪の予防を目的とする諸活動の発達を促進し、援肋すること。

五 地方少年委員会及び地方成人委員会の運営を指導し、監督すること。

六 地方少年委員会及び地方成人委員会のなした処分につき、この法律の定めるところにより、審査を行い、決定をなすこと。

七 中央委員会、地方少年委員会及び地方成人委員会の人事、組織及び予算に関する事項を、この法律及び他の法律の制限の範囲内で管理すること。

八 犯罪者の素質、人格、行状、環境、教化、補導その他犯罪者の改善及び更生を図るため必要な事項について、科学的な調査研究を行うこと。

九 犯罪者の改善及び更生に関する業務に従事し、又は従事しようとする者を養成し、訓練すること。

十 その他この法律及び他の法律により中央委員会の権限に属せしめられた事項

2 中央委員会は、国家行政組織法第十三条の規定に従い、その委員会、地方少年委員会及び地方成人委員会の内部規律並びに保護観察、仮出獄、仮出場、仮退院、恩赦の申出及び処分の審査に関する事件の処理手続に関する事項について、規則を定めることができる。

3 中央委員会は、その委員会、地方少年委員会及び地方成人委員会の業績について、法務総裁を経て、内閣に年報を提出しなければならない。

4 中央委員会は、第一項第四号及び第八号に掲げる調査研究の成果及び樹立した計画については、これを関係行政官庁、地方公共団体、学校、病院その他公私の機関の利用に供さなければならない。

5 中央委員会は、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、法務総裁を経て関係各大臣に対し、又はその他の行政官庁及び地方公共団体に対し、意見を述べ、又は勧告をすることができる。

 (地方委員会の権限)

第十七条 地方少年委員会は、中央委員会の指揮監督を受けて、左の事務をつかさどる。

一 青少年について、この法律の定めるところにより、保護観察を実施すること。

二 青少年について、法令の定めるところにより、特赦、特定の者に対する減刑、刑の執行の免除及び特定の者に対する復権の実施に関する事務を行うこと。

三 その他この法律及び他の法律により地方少年委員会の権限に属せしめられた事項

2 地方成人委員会は、中央委員会の指揮監督を受けて、左の事務をつかさどる。

一 成人について、この法律の定めるところにより、保護観察を実施すること。

二 成人について、法令の定めるところにより、特赦、特定の者に対する減刑、刑の執行の免除及び特定の者に対する復権の実施に関する事務を行うこと。

三 その他この法律及び他の法律により地方成人委員会の権限に属せしめられた事項

3 地方少年委員会は青少年について、地方成人委員会は成人について、それぞれ、刑法(明治四十年法律第四十五号)第二十八条及び第三十条にいう行政官庁として、仮出獄及び仮退院を許し、及び仮出獄を取り消し、並びに仮出場を許す権限を有する。

4 地方少年委員会及び地方成人委員会は、それぞれ、犯罪者の更生を図るため、世論を啓発指導し、社会環境を改善し、犯罪の予防を目的とする地方の住民の活動を助長することに、努めなければならない。

 (協力の要請)

第十八条 中央委員会、地方少年委員会及び地方成人委員会は、それぞれ、その職務権限を完全に行うため、公務所、地方公共団体、学校、病院、公共の衛生福祉機関又はその他の団体に対して、必要な援助及び協力を求めることができる。

 (司法保護委員)

第十九条 地方少年委員会及び地方成人委員会は、保護観察官で充分でないときは、司法保護委員をして、それぞれ、その指揮監督のもとに、その委員会の権限に属する事項に関する事務に従事させることができる。

第三節 事務部局及びその職員

 (中央委員会の事務部局)

第二十条 中央委員会に、その所掌事務を遂行するため、国家行政組織法第七条第四項の規定に従い、事務局を置き、事務局に左の三部を置く。

総務部

少年部

成人部

2 総務部においては、左の各号に掲げる事務をつかさどる。

一 人事、会計及び庶務に関する事務

二 恩赦の実施並びに恩赦、仮出獄、仮退院、仮出場及び保護観察に関する制度の調査審議に関する事務

三 犯罪の予防及び犯罪者の改善更生に関する基礎資料及び方法の科学的な調査研究に関する事務

3 少年部においては、青少年の仮出獄、仮退院、仮出場及び保護観察の実施に関する事務をつかさどる。

4 成人部においては、成人の仮出獄、仮退院、仮出場及び保護観察の実施に関する事務をつかさどる。

5 第一項の各部には、課を置くことができる。課の設置及び所掌事務の範囲は、委員長が定める。

 (地方少年委員会の事務部局)

第二十一条 地方少年委員会の権限に属する事項に関する事務を処理させるため、各地方少年委員会に、その事務部局として地方少年保護事務局を置き、地方少年保護事務局の事務を分掌させるため、各家庭裁判所の所在地に少年保護観察所を置く。

2 地方少年保護事務局及び少年保護観察所の所掌事務の範囲及び内部組織は、中央委員会の規則で定める。

3 中央委員会は、必要があると認めるときは、家庭裁判所の支部の所在地に、少年保護観察所の支部を置くことができる。

 (地方成人委員会の事務部局)

第二十二条 地方成人委員会の権限に属する事項に関する事務を処理させるため、各地方成人委員会に、その事務部局として地方成人保護事務局を置き、地方成人保護事務局の事務を分掌させるため、各地方裁判所の所在地に成人保護観察所を置く。

2 地方成人保護事務局及び成人保護観察所の所掌事務の範囲及び内部組織は、中央委員会の規則で定める。

3 中央委員会は、必要があると認めるときは、地方裁判所の支部の所在地に、成人保護観察所の支部を置くことができる。

 (職員)

第二十三条 中央委員会、地方少年委員会及び地方成人委員会の事務部局に、事務官、調査官、保護観察官及びその他所要の補助職員を置く。

2 事務官は、上官の命を受けて、一般の事務に従事する。

3 調査官は、上官の命を受けて、科学的調査研究に従事する。

4 保護観察官は、上官の命を受けて、保護観察、人格考査及び地方少年委員会又は地方成人委員会の権限に属する事項に関するその他の事務に従事する。

5 第一項に掲げる職員の定員は、別に法律で定める。

 (職員の任用)

第二十四条 前条第一項の職員は、国家公務員法の規定により任用する。

2 人事院がその資格要件を定めるまでは、調査官は、刑事学、医学、心理学、社会学その他犯罪者の改善及び更生に関係のある科学について相当な専門的知識をもつ者の中から、保護観察官は、犯罪者の矯正及び更生に関する事務、社会事業若しくは教育について相当な経験をもつ者又は経験及び教養においてこれに相当する者の中から、任用しなければならない。

 (中央の事務部局の長)

第二十五条 中央委員会の事務局に事務局長を置く。事務局長は、委員長の指揮監督を受けて事務局の事務を掌理し、その職員の服務について、これを指揮監督する。

2 各部に部長を置く。部長は、事務局長の指揮監督を受けて、それぞれ部務を掌理する。

 (地方の少年事務部局の長)

第二十六条 各地方少年保護事務局に事務局長を置く。事務局長は、当該地方少年委員会の委員長の指揮監督を受けて、地方少年保護事務局の事務を掌理し、その職員の服務について、これを指揮監督する。

2 各少年保護観察所に所長を置く。所長は、地方少年保護事務局の事務局長の指揮監督を受けて、少年保護観察所の事務を掌理し、その職員の服務について、これを指揮監督する。

 (地方の成人事務部局の長)

第二十七条 各地方成人保護事務局に事務局長を置く。事務局長は、当該地方成人委員会の委員長の指揮監督を受けて、地方成人保護事務局の事務を掌理し、その職員の服務について、これを指揮監督する。

2 各成人保護観察所に所長を置く。所長は、地方成人保護事務局の事務局長の指揮監督を受けて、成人保護観察所の事務を掌理し、その職員の服務について、これを指揮監督する。

第三章 厚生の措置

第一節 仮釈放

 (施設の長の通告義務)

第二十八条 監獄の長は、受刑者が刑法第二十八条又は少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)第五十八条に掲げる期間を経過したときは、中央委員会の定める規則に従い、これを地方少年委員会又は地方成人委員会に通告しなければならない。少年院の在院者が在院六月に及んだとき、少年院の長についても、同様とする。

 (仮釈放の審理)

第二十九条 地方少年委員会及び地方成人委員会は、受刑者又は労役場に留置中の者について監獄の長から、在院者について少年院の長から、仮出獄、仮出場又は仮退院の申請があつた場合には、仮出獄、仮出場又は仮退院を許す旨又は許さない旨の決定をするため、委員を指名して、審理を行わせなければならない。但し、その申請が方式に違反し、又は法律上の要件を欠くときは、審理を行わせないで、決定をもつて、これを却下することができる。

2 地方少年委員会及び地方成人委員会は、前条の規定による通告があつた者については、前項の申請がない場合においても、仮出獄又は仮退院を許す旨又は許さない旨の決定をするため、委員を指名して、審理を行わせることができる。この場合には、あらかじめ、監獄の長又は少年院の長の意見を求めなければならない。

3 前二項の審理は、本人の人格、在監在院中の行状、職業の知識、入監入院前の生活方法、家族関係その他の関係事項を調査して、行うものとする。

 (面接)

第三十条 前条の規定により仮出獄又は仮退院の許可についての審理を行う委員は、みずから本人に面接し、本人の収容されている施設の長又はその他の職員をこれに立ち合わせ、その意見を聞かなければならない。但し、本人の重病、重傷又は危篤の場合には、この限りでない。

 (仮釈放の処分)

第三十一条 地方少年委員会及び地方成人委員会は、第二十九条第一項の審理の結果にもとずき、仮出獄、仮出場又は仮退院を不相当と認めるときは、決定をもつて、同項の申請を棄却しなければならない。

2 地方少年委員会及び地方成人委員会は、第二十九条第一項又は第二項の審理の結果にもとずき、仮出獄、仮出場又は仮退院を相当と認めるときは、決定をもつて、これを許さなければならない。

3 地方少年委員会及び地方成人委員会は、前項の規定により仮出獄又は仮退院を許すときは、同時に、中央委員会の規則の定める範囲内で、その者が仮出獄又は仮退院の期間中遵守すべき特別の事項を定めなければならない。但し、本人の重病、重傷又は危篤の場合には、この限りでない。

 (遵守事項の指示)

第三十二条 監獄又は少年院の長は、前条第二項の決定(仮出場を許す決定を除く。)により受刑者又は在院者を釈放するときは、本人に対し、書面で、仮出獄又は仮退院の期間及びその期間中遵守すべき事項を指示し、且つ、署名又は押印をもつて、その事項を遵守する旨を誓約させなければならない。

2 前条第三項但書の規定は、前項の場合に準用する。

第二節 保護観察

 (保護観察の対象及び期間)

第三十三条 左に掲げる者は、中央委員会の監督の下で、保護観察に付する。

一 少年法第二十四条第一項第一号の保護処分を受けた者

二 少年院からの仮退院を許されている者

三 仮出獄を許されている者

四 十八歳に満たないとき懲役又は禁こにつき刑の執行猶予の言渡を受け、猶予中の者

2 前項の規定は、保護観察の期間が、言い渡された期間、大赦、特赦若しくは刑の執行の免除の日、減刑により短縮された期間又は少年法第五十九条第一項、第二項若しくはこの法律の第四十八条第一項の規定によつて定められた刑の終期の経過後まで及ぶものと解してはならない。

3 第一項第一号に掲げる者の保護観察の期間は、本人が二十歳に達するまでとする。但し、本人が二十歳に達するまでに二年に満たない場合には、その者の保護観察の期間は、二年とする。

4 前項の保護観察は、その期間中であつても、必要がないと認められるときは、停止し、又は解除することができる。

 (保護観察の目的及び遵守事項)

第三十四条 保護観察は、保護観察に付されている者を、第二項に規定する事項を遵守するように指導監督し、及びその者に本来自助の責任があることを認めてこれを補導援護することによつて、その改善及び更生を図ることを目的とする。

2 保護観察に付されている者は、第三十一条第三項若しくは第三十八条第一項の規定により地方少年委員会若しくは地方成人委員会が定めた遵守事項のほか、左に掲げる事項を遵守しなければならない。

一 一定の住居に居住し、正業に従事すること。

二 善行を保持すること。

三 犯罪性のある者又は素行不良の者と交際しないこと。

四 住居を転じ、又は長期の旅行をするときは、あらかじめ、保護観察を行う者の許可を求めること。

 (指導監督の方法)

第三十五条 保護観察において行う指導監督は、左に掲げる方法による。

一 保護観察に付されている者と適当に接触を保ち、つねにその行状を見守ること。

二 保護観察に付されている者に対し、前条第二項に規定する事項を遵守させるため、必要且つ適切と認められる指示を与えること。

三 その他本人が社会の順良な一員となるように必要な措置を採ること。

 (補導援護の方法)

第三十六条 保護観察において行う補導援護は、左に掲げる方法による。

一 教養訓練の手段を助けること。

二 医療及び保養を得ることを助けること。

三 宿所を得ることを助けること。

四 職業を補導し、就職を助けること。

五 環境を改善し、調整すること。

六 更生を遂げるため適切と思われる所への帰住を助けること。

七 その他本人の更生を完成させるために必要な措置を採ること。

2 前項の補導援護は、保護観察の目的を達成するために必要と認められる程度を越えて行うことはできず、又、同項第五号の措置は、本人の家族に対しては、その承認がなければ行うことができない。

 (保護観察をつかさどる機関)

第三十七条 保護観察は、保護観察に付されている者の住居地(住居が定まらないときは、現在地とする。)を管轄する地方少年委員会又は地方成人委員会がつかさどる。

2 地方少年委員会は、保護観察に付されている者が二十三歳に達した場合において、その者の保護観察を地方成人委員会に移送することが保護観察の目的に適合しないと認めるときは、決定をもつて、一年を越えない期間を限り、その移送をしないことができる。この場合においては、第十七条第一項及び第二項の規定にかかわらず、その者の保護観察は、その期間、その地方少年委員会がつかさどるものとする。

 (遵守事項の特定及び指示)

第三十八条 少年法第二十四条第一項第一号の保護処分があつたときは、その処分を受けた者の保護観察をつかさどる地方少年委員会は、決定をもつて、中央委員会の規則の定める範囲内で、その者の保護観察の期間中遵守すベき特別の事項を定めなければならない。

2 地方少年委員会は、前項の決定をしたときは、本人に対し、書面で、保護観察の期間中遵守すベき事項を指示し、署名又は押印をもつて、その事項を遵守する旨を誓約させなければならない。

3 第三十一条第三項但書の規定は、前二項の場合に準用する。

 (実行機関)

第三十九条 保護観察において行う指導監督及び補導援護は、保護観察官又は司法保護委員をして行わせるものとする。

 (応急の救護)

第四十条 地方少年委員会及び地方成人委員会は、保護観察に付されている者が、負傷若しくは疾病のため又は適当な仮泊所、住居若しくは職業がないため、更生を妨げられる虞がある場合には、その者が公共の衛生福祉その他の施設から医療、食事、宿泊、職業その他必要な救護を得るように、これを援護しなければならない。これらの施設は、その施設について定められた規則及び責任の範囲内で、利用されなければならない。

2 必要と思われる応急の救護が、前項の規定により得られない場合には、地方少年委員会又は地方成人委員会は、その救護を行い、これに必要な費用を予算の範囲内で支払うものとする。

 (呼出、調査、質問)

第四十一条 地方少年委員会及び地方成人委員会は、いつでも、保護観察に付されている者を呼び出し、質問することができる。

2 地方少年委員会及び地方成人委員会は、保護観察のため必要と認めるときは、保護観察官又は司法保護委員をして、関係人について、必要な調査又は質問をさせることができる。

3 保護観察官又は司法保護委員が前項の規定により調査質問をする場合には、その身分を示す証票を携帯し、且つ、関係人の請求があるときは、これを呈示しなければならない。

 (家庭裁判所への通告等)

第四十二条 地方少年委員会は、少年法第二十四条第一項第一号の保護処分を受けた者について、新たに同法第三条第一項第三号に掲げる事由があると認めるときは、本人が二十歳以上である場合においても、家庭裁判所に通告することができる。

2 前項の規定により地方少年委員会の通告があつたときは、その通告された者は、少年法第二条第一項の規定にかかわらず同法の少年とみなして、同法第二章の規定を適用する。

3 家庭裁判所は、前項の少年に対して少年法第二十四条第一項第一号又は第三号の保護処分をするときは、保護処分の決定と同時に、本人が二十三歳を超えない期間内において、保護観察の期間又は少年院に収容する期間を定めなければならない。

4 前項の規定により保護観察の期間が定められた者については、第三十三条第三項の規定は適用しない。

第三節 保護観察の終了等

 (仮退院者に対する措置)

第四十三条 二十三歳に満たない仮退院中の者が、遵守すべき事項を遵守しなかつたとき、又は遵守しない虞があるときは、その者の保護観察をつかさどる地方少年委員会は、その者を送致した裁判所に対し、本人が二十三歳に達するまで、一定の期間、これを少年院に戻して収容すべき旨の決定の申請をすることができる。その裁判所のなす決定は、審理を経た後にするものとし、その審理については、少年院法(昭和二十三年法律第百六十九号)第十一条第三項の例による。

2 二十三歳以上の仮退院中の者について、少年院法第十一条第五項の事由があるときは、その者の保護観察をつかさどる地方成人委員会は、その者を送致した裁判所に対し、本人が二十六歳に達するまで、精神に著しい故障がある間、これを医療少年院に戻して収容すべき旨の決定の申請をすることができる。その裁判所のなす決定は、審理を経た後にするものとし、その審理については、少年院法第十一条第三項の例による。

 (仮出獄の取消)

第四十四条 仮出獄の取消は、本人の保護観察をつかさどる地方少年委員会又は地方成人委員会が、決定をもつて、するものとする。

2 遵守すべき事項を遵守しなかつたことを理由とする仮出獄の取消の決定は、審理を経た後にしなければならない。

3 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)中収監に関する規定は、仮出獄を取り消された者の収監について適用があるものとする。

 (仮出獄の停止)

第四十五条 仮出獄中の者が遵守すべき事項を遵守しなかつたことを疑うに足りる充分な理由があるときは、その者の保護観察をつかさどる地方少年委員会又は地方成人委員会は、仮出獄を停止する決定をすることができる。

2 前項の規定により仮出獄を停止する決定をした場合には、地方少年委員会又は地方成人委員会は、審理のため、裁判官のあらかじめ発する引致状により、その者を引致させることができる。

3 前項の引致状は、地方少年委員会又は地方成人委員会の請求によつて発する。

4 第二項の引致状による引致は、司法警察職員が行い、又は保護観察官が司法警察職員として行うものとする。

5 地方少年委員会又は地方成人委員会は、前項の規定により引致された者については、速かに審理を行い、引致後十日以内に、仮出獄を取り消す旨又は取り消さない旨の決定をしなければならない。

6 第二項の引致状により引致された者は、前項の期間中、監獄その他適当な施設に、留置することができる。但し、前項の期間中であつても留置の必要がないときは、直ちにこれを釈放しなければならない。

7 仮出獄の停止の処分は、仮出獄を取り消す旨若しくは取り消さない旨の決定があつたとき、又は引致後第五項の期間を経過したときは、その効力を失う。

8 仮出獄の停止の処分を受けて引致された者が、仮出獄を取り消されたときは、停止の処分から引致までの期間は、刑期に算入しない。

9 第六項の規定により留置された日数は、刑期に算入する。

10 第二項の引致状については、引致の性質に反しない限り、刑事訴訟法第二百条、第二百一条及び第二百三条第一項の規定を準用する。

 (猶予の違反)

第四十六条 地方少年委員会は、刑の執行猶予の言渡を受けて保護観察に付されている者について、猶予の言渡を取り消すべきものと認めるときは、その者の現在地又は最後の住所地を管轄する地方裁判所に対応する検察庁の検察官に、これを通告しなければならない。

 (退院の許可)

第四十七条 地方少年委員会及び地方成人委員会は、少年院の在院者については少年院の長から退院の申請があつた場合において、仮退院中の者についてはいつでも、在院中又は仮退院中の成績からみて、その退院を相当と認めるときは、決定をもつて、これを許さなければならない。

2 前項の規定により退院を許したときは、その証明書を本人に交付しなければならない。

 (不定期刑の終了)

第四十八条 少年法第五十二条第一項及び第二項の規定により刑の言渡を受けた者につき、仮出獄中にその刑の短期が経過した場合において、保護観察中の成績から見て相当と認めるときは、同法第五十九条第二項の規定にかかわらず、その者の保護観察をつかさどる地方少年委員会又は地方成人委員会は、決定をもつて、刑の執行を受け終つたものとすることができる。その者の刑の短期が、仮出獄前に経過した場合においても、同様とする。

2 少年法第五十二条第一項及び第二項の規定により刑の言渡を受け、その刑の短期が経過した在監者につき、監獄の長から刑の執行終了の申請があつた場合において、これを相当と認めるときは、青少年については地方少年委員会、成人については地方成人委員会は、決定をもつて、刑の執行を受け終つたものとしなければならない。

3 地方少年委員会及び地方成人委員会は、前項の規定による決定をしたときは、申請をした監獄の長に、書面で、その旨を通知しなければならない。

4 第二項の規定による決定を受けた者の刑期は、前項の通知が監獄に達した日に終了したものとみなす。

5 第一項又は第二項の規定により、刑の執行を受け終つたものとする決定をしたときは、その旨の証明書を本人に交付しなければならない。

第四節 処分の審査

 (審査の請求)

第四十九条 地方少年委員会又は地方成人委員会が決定をもつてなした処分について、不服のある者は、処分の日から三十日以内に、中央委員会に対し、審査を請求することができる。

2 審査の請求は、中央委員会の規則で定める方式に従い、文書をもつてしなければならない。

3 審査の請求は、処分の執行を停止する効力を有しない。

 (審査の手続)

第五十条 中央委員会は、審査の請求が、所定の方式に違反し、又は請求権の消滅後にされたものであるときは、決定をもつて、これを却下しなければならない。

2 中央委員会は、審査の請求を受けたときは、前項の場合を除くほか、速かに審査を開始しなければならない。

3 審査を開始したときは、中央委員会は、直ちにこれを、処分をした地方少年委員会又は地方成人委員会に通知し、且つ、関係の書類、記録及びこれに関する意見を、遅滞なく提出させなければならない。

4 中央委員会は、審査を行う場合において、必要があると認めるときは、決定をもつて、当該処分の執行の停止を命ずることができる。

 (審査にもとずく処分)

第五十一条 審査の請求が理由のないときは、中央委員会は、決定をもつて、これを棄却しなければならない。

2 審査の請求を相当とするときは、中央委員会は、決定をもつて、処分をした地方少年委員会又は地方成人委員会に対し、当該処分の取消又は変更を命じなければならない。

3 前二項の決定は、審査の請求を受理した日から六十日以内に行わなければならない。

第五節 雑則

 (在監者及び在院者の環境調整)

第五十二条 地方少年委員会及び地方成人委員会は、監獄又は少年院に収容されている者の社会復帰を円滑にするため、必要があると認めるときは、保護観察官又は司法保護委員に、その者の家族その他の関係者を訪問させ、その者の境遇その他環境の状態の調整について、相談させることができる。

 (刑執行停止中の者の保護)

第五十三条 地方少年委員会及び地方成人委員会は、刑事訴訟法第四百八十条又は第四百八十二条の規定により刑の執行を停止されている者について、検察官の請求があるときは、その者に対し、適当と認める指導監督及び補導援護の措置を採ることができる。

2 第三十七条第一項、第三十九条及び第四十条の規定は、前項の場合に準用する。

 (恩赦の申出)

第五十四条 中央委員会は、法務総裁に対し、特赦、特定の者に対する減刑、刑の執行の免除又は特定の者に対する復権の実施について申出をする場合には、あらかじめ、本人の性格、行状、違法の行為をする虞があるかどうか、本人に対する社会の感情その他関係のある事項について、調査をしなければならない。

2 在監中の者について、特赦、減刑又は刑の執行の免除の申出をする場合には、その者が、社会の安寧福祉をおびやかすことなく釈放されるに適するかどうかを、考慮しなければならない。

 (関係人の呼出)

第五十五条 中央委員会、地方少年委員会及び地方成人委員会は、それぞれ、その職務権限に属する事項の調査について必要があるときは、日時及び場所を指定して、関係人を呼び出し、審問をすることができる。

2 前項の呼出に応じない者に対しては、更にこれを呼び出すことができる。

3 前項の規定により再度の呼出を受けた者が、正当な理由がなくその呼出に応じないときは、五千円以下の過料に処する。

 (費用の支給)

第五十六条 前条の規定による呼出に応じた者に対しては、政令の定めるところにより、旅費、日当及び宿泊料を支給する。但し、正当の理由がなく証言を拒んだ者に対しては、この限りでない。

 (記録、意見書等の請求)

第五十七条 中央委員会、地方少年委員会及び地方成人委員会は、それぞれ、その職務権限に属する事項の調査について必要があると認めるときは、裁判所、検察官、監獄の長及び少年院の長に対し、記録、書類、意見書及び報告書の提出を求めることができる。

 (記録の保管)

第五十八条 中央委員会、地方少年委員会及び地方成人委員会は、大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権に関してなした申出、仮出獄、仮出場、仮退院、退院及び保護観察に関してなした決定並びに第四十八条の規定によりなした決定については、政令の定めるところにより、その記録を保存しなければならない。

2 前項の記録は、閲覧を求める者があるときは、その閲覧に供さなければならない。但し、本人の更生を妨げ、又は関係人の名誉を傷つける虞があるときは、閲覧を拒むことができる。

 (黙秘権)

第五十九条 中央委員会、地方少年委員会及び地方成人委員会の職員又は職員であつた者は、他の法律の規定により証人として尋問を受けた場合において、本人の更生を妨げる虞があると認めるときは、その職務上知り得た事実で他人の秘密に関するものに限り、証言を拒むことができる。但し、本人が承諾した場合、証言の拒絶が被告人のためのみにする権利の濫用と認められる場合(被告人が本人である場合を除く。)その他裁判所の規則で定める事由がある場合には、この限りでない。

 (費用の徴収)

第六十条 地方少年委員会及び地方成人委員会は、第四十条第二項(第五十三条第二項において準用する場合を含む。)の規定により支払つた費用を、期限を指定して、本人又はその扶養義務者から徴収しなければならない。但し、本人及びその扶養義務者が、その費用を負担することができないと認めるときは、この限りでない。

2 前項の規定による費用の徴収は、本人又はその扶養義務者の居住地又は財産所在地の市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)に嘱託することができる。

3 政府は、前項の規定により、市町村長に対し費用の徴収を嘱託した場合においては、その徴収金額の百分の四に相当する金額を、その市町村(特別区を含む。)に交付しなければならない。

附 則

この法律は、昭和二十四年七月一日から施行する。

別表

地方少年委員会及び地方成人委員会の名称

地方少年委員会及び地方成人委員会の位置

地方少年委員会及び地方成人委員会の管轄区域

関東地方少年保護委員会

東京都

東京高等裁判所の管轄区域

関東地方成人保護委員会

近畿地方少年保護委員会

大阪市

大阪高等裁判所の管轄区域

近畿地方成人保護委員会

中部地方少年保護委員会

名古屋市

名古屋高等裁判所の管轄区域

中部地方成人保護委員会

中国地方少年保護委員会

広島市

広島高等裁判所の管轄区域

中国地方成人保護委員会

九州地方少年保護委員会

福岡市

福岡高等裁判所の管轄区域

九州地方成人保護委員会

東北地方少年保護委員会

仙台市

仙台高等裁判所の管轄区域

東北地方成人保護委員会

北海地方少年保護委員会

札幌市

札幌高等裁判所の管轄区域

北海地方成人保護委員会

四国地方少年保護委員会

高松市

高松高等裁判所の管理区域

四国地方成人保護委員会

(法務総裁・内閣総理大臣署名)

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